今からおよそ140年前、子どもが学校に行くのが当たり前になる時代が始まった。
義務教育という名称は今と同じだが、当時の義務は、大人になったらお国のために死ぬ義務を教える教育だった。武士が殿様のために死ぬ時代から、すべての国民が天皇のために死ぬ覚悟が求められた。それに合わない者は「非国民」といわれた。障害者もそれに含まれた。そもそも障害児者は、「廃人」とも呼ばれた。障害の種類・程度などの知識はなかった。「五体満足」でないことそれが恥であり、障害者だった。生きていることに意味がない者。精神薄弱も脳生マヒもろうも精神障害も、「言葉」が通じない、その基準で失格扱いされた。どの障害も精神病院か座敷牢に閉じこめられる運命だった。
特殊教育が、盲学校・ろう学校から始まった理由。それは、盲・ろう者が、知能は普通であると認められたから。それはまた、脳性マヒやポリオ、知的障害、精神障害といった違いを、その時代は知らなかったことを示している。そして、脳性マヒや知的障害の人に、心があることも一部の人しか知らなかった。そんな時代に、特殊教育は始まった。だから、特殊教育には、最初から障害児の「心」や「気持ち」を大事にするという発想はなかった。なぜなら、心が無い者、感情がない者、悲しみや愛情の無い者が、白痴・精神薄弱、脳性マヒ、身体障害、と「理解」されてきたのだから。その者たちは、「教育不能」「教育対象外」と理解された。重度の障害児を、「教育不能」「教育対象外」とみたのが「特殊教育」の始まりだ。
だから、「特殊教育」に希望はない、のだ。
どんなに「特殊教育」の中身を改良・改善しようが、「特殊教育」という「枠組み」を守ろうとする限り、そこに本当の希望はない。
その証拠に、今の時代、特殊教育は「特別支援教育」と名前を変えたが、最初の「ふつうじゃない・障害児」の教育は「分けて行なう」という基本は一つも変わっていないのだから。
特殊教育ははじめから間違っていた、と認め、ただの「特別支援教育」という名称の変更ではなく、最初に「分けた」ことを間違いと認めるところからしか、新しい教育は始まらない。
徳川幕府が「大政奉還」したように、特殊教育を「大政奉還」することが必要なのだ。
そして、「士農工商」という身分制度を廃止し「四民平等」の世の中に変えたような、時代の変化が必要なのだ。子どもはみんな同じ、一人ひとり違う、ただの子どもなんだから。
障害児と健常児という二種類の子どもがいるのではなく、障害のあってなくても「ただのふつうの子ども」「子ども時代を生きる子ども」がいるだけなのだから。
「分けた」ことが間違いだった。
だから、「分けた中身」をよくしよう、で、よくなるわけがないのだ。一番肝心の最初の間違いが、そのままなのだから。
「分けた」ことが間違いだった。
だから、「分けない」ことから、その一歩からはじめなければならないのだ。
「分けてできること」は、分けないでもできることなのだ。
「分けないで必要な配慮をすること」は、できることなのだ。
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