《子どもの生活が分けられること》
9月22日、『障害∩社会的養護』というシンポジウムに参加してきました。
タイミングよく、19日のニュースでは「ダウン症の赤ちゃん養子に迎えた夫婦~不安はあるけど…笑顔も増えた 特別養子縁組の今」という特集もありました。
今まで、里親や里子のことは「社会的養護」「児童福祉」の分野として語られてきました。
一方で、親のいない、あるいは育てられない障害児は、児童養護施設ではなく障害児施設ときちんと分けられていて、障害児が「里親」に預けられる話も稀なことでした。
近年、社会的養護のなかで、「障害」のある子が増えたという話が多くなりましたが、そこで語られるのは「発達障害」「ADHD」といわれる子たちです。「知的」というワードが出る場合も、必ず「軽度」というワードがセットです。
それは、「教育」の分野では「境界」とか「ボーダー」というワードで語られてきた子でした。
つまり「普通学級」で「やっていけるか」という教育の「判定基準」と、社会的養護という「生活」の場(養育環境)の「判定基準」は、同じまなざしの下にあったことが分かります。
そもそも教育委員会の判定以前に、障害児の判定をしているのは「児童相談所」です。
そこでは、普通学級で無理と判定される子を、ふつうの「養護施設」や「里親」に預けるという発想も現実もありませんでした。
◇
一方、私たちの運動の中で、就学前の問題として語られてきたのは、「保育園」「幼稚園」「療育」でした。
当たり前といえば当たり前なのですが、「ふつう学級」を目指すには「親がいる」ことが大前提としてありました。
教育委員会や学校の決定に逆らってくれる親、公的機関と闘ってくれる親がいなければ、「みんなといっしょにいたい」という子どもの願いが叶えられることはありませんでした。
そこでは、親のいない子どもがどうしたら「分けられない」でいられるかというテーマは語られてはきませんでした。
◇
それらの状況は何を表しているか。
私たちの「当たり前」、養護施設の当たり前、障害児施設の当たり前、児童相談所の当たり前、学校の当たり前というたくさんの当たり前の中で、「みんなと一緒に」という希望を持つことさえできなかった子どもがいたということです。
「学校」で分けられる以前に、自分を育ててくれる「親」の代わり(社会的養護)が決められる段階できっぱりと分けられてきた子どもたちがいたのです。
世界中の誰からも忘れられて、だまって「分けられる」子どもが、そこにはいました。
(つづく)
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※ ダウン症の赤ちゃん養子に迎えた夫婦
~不安はあるけど…笑顔も増えた
特別養子縁組の今
9/19(水) 関西テレビ
「特別養子縁組を、自分の意志で選択しましたと…」
彼女は未成年。
以前つきあっていた交際相手との思いがけない妊娠で出産しました。
お腹の子が生まれたら、特別養子縁組に出すと決めていました。
岡田卓子(たかこ)さん。縁組を仲介するNPO法人・ベビーポケットの代表です。
産んでも育てられない女性達から、赤ちゃんを引き受けてきました。
未成年の女性「終わっちゃう。一緒にいる時間が」
岡田さん「痛みは産んだ人じゃないとわからないしね。やっぱ血と肉をわけるってそういうことだと思いますよ。しかしだからといって連れて帰れるかって言ったら、それはやはりできないからね。」
岡田さんは問題を抱えた女性たちが出産できるよう見守っています。
交際相手の裏切り、未成年、貧困など赤ちゃんを手放す理由は様々です。
彼女たちが選択したのは特別養子縁組。
子供と産みの親の法的な関係は消滅し、血のつながりがない育ての親と戸籍上の親子になる制度です。
子供の福祉を守るための制度で、施行から今年で30年が経ちます。
育ての親になるのは、不妊治療などの末、子供を授かることができなかった夫婦です。
樋口藍子さん 「ようこそ関西へ!かわいいな~」
樋口さん夫婦も岡田さんから2人の赤ちゃんを託され、育ての親になりました。
岡田さん 「なんかいつもあなたは変わらないねぇ」
樋口さん 「あ、はい」
岡田さん 「首は?」
樋口さん 「首がやっと座ったんです。1歳3~4か月で」
妹のみぃちゃんにはダウン症があります。
ダウン症の子を託したいという連絡に、周囲は不安の声ばかりでした。
迎えてみると、みぃちゃんの成長は想像以上にゆっくりです。
1歳半をすぎてもまだ、ハイハイやお座りはできません。
樋口さん 「他の子と比べるから、みぃちゃん小さいなってなるけど、みぃちゃんなりに大きなったなって。ゆっくりだけどね。比べたらちっちゃいよ、ほんとに。だんだん抜かされていくけど。」
心配なことはたくさんあります。でも、笑顔が増えていく毎日です。
『2人のママにひまわりを~特別養子縁組で結ばれた家族~』
9月24日(月)午後3時50分~関西テレビで放送