私どもの次女は何万人に一人という病気をもって生まれてきました。
スタジウェバー症候群という症例の少ない病気で、
顔の赤いあざが目と脳にかかっているのが特徴です。
とても元気で順調に成長していましたが、
2歳9ヶ月の時の三種混合の予防接種がきっかけで、
けいれん発作がでるようになりました。
楽しみにしていた幼稚園でしたが、
体調をくずし年長の途中から行けるようになりました。
小学校入学に際しては、発作の影響で学習面の遅れがありましたから、
予想していた通り就学時健康診断でひっかかり、
教育委員会の就学指導を受けましたが、
普通学級で行きます、との親の希望通り、
6年間普通学級で過ごしました。
…四季折々の行事にも楽しく参加し、
つらいこともありましたが、親子共々周りに助けられながら、
地域に関わることで、多くのお友だち、お母さんたちと知り合い、
共に励まし合う仲間ができました。
中学校生活も、
当然多くのお友だちと校区の中学へと考えていたのですが、
薬の関係で朝が苦手なことや、
目薬を日中、何回もつけなければいけない事、
顔のあざのこと等を考えると、
個々の障害・能力に応じて対応してくれる少人数の環境の方が
本人にとって楽であろうと、
親が積極的に校区外の特殊学級を選択したのでした。
特殊教育が本人に合うか合わないか、じっくり考えたつもりでも、
入ってみてしばらくしてから、
娘に「みんなと一緒の中学に、本当は行きたかった!」
「私だけがどうして別の学校に行かなければならないの!」
と言って泣かれた時には、胸がはりさけそうになりました。
こんな純粋な気持ちをどうしてくみ取ってあげられなかったのだろう。
親として、子どもの大事な人生を台無しにしてしまった。
中学に入るところからやり直すことはできないし、
取り返しのつかないことをしてしまったと悔やみました。
毎日の生活も、普通学級との交流はあっても、やはり分けられた場所、
娘は小学校時代に戻りたいと、
仲良く関わってくれたお友だちのことを口にするようになりました。
やがて、きめ細やかな指導に、
そして特殊学級の友だちにも反発してしまう状態になり、
中学2年の11月には、とうとう学校へ行きたくないと、
てこでも動かなくなってしまいました。
…3年生になってからも、
自分なりの意思で休みがちながらも登校、行事には参加しながら、
「私も高校行く」と言い出しました。
今度こそ、子どもと家族でよく話し合って決めようと、
…親としては、もう娘の望まない場に行かせて、
つらい思いをさせたくはない。
本人が望んでいる生き方や生活をさせてやりたいと思い、
なんとしても高校生としての生活をスタートさせてやりたいのです。
…私どもは、中学校3年間の特殊学級での娘の姿から、
もう一度“ふつうで生きたい”と親子で奮いたちました。……。
~『みんなで楽しも 千葉県の統合教育Ⅱ』より~
これは、高校入試制度の中に、
「特別配慮申請書」も「自己申告書」もなかった時代(1994)に、
Iさんが高校の先生たちに書いた手紙の一部です。
Iさんが「会」にやってきたのは、中3の12月の終わりでした。
Iさんは、上記の内容を話しながらも、
受験することをあきらめている様子でした。
当時、障害児の高校進学はいまよりずっと難しい状態でした。
それでも、私たちはIさんに話しました。
そこまで、娘さんの気持ちを感じているなら、
たとえ、不合格になったとしても、普通高校を受験させてあげませんか。
「ほんとうは、みんなと一緒の中学に行きたかった」という
子どもの言葉を聞いて、Iさんが本当に悔やんでいるなら、
今度こそ、子どもの思いを一番に考えてあげるべきではないですか。
現実的に考えれば、いまから高校に合格するのは難しいかもしれません。
でも、中学に入るときも、子どものために、
子どもが苦労しないようにと考えてあげて「選択」したんですよね。
でも、子どもはそのことを、
「私だけがどうして別の学校に行かなければならないの!」
と訴えたんじゃなかったのですか。
今度こそ、子どもの気持ちを大事にするいい機会なんじゃないでしょうか。
子どもの「高校に行きたい」
「みんなと一緒の学校にいきたい」と願う気持ち、
それは当然のことだよねと、親が伝えてあげるには、
当たり前に受験することが一番ではないですか。
Iさんは、その場で、会から受験をすることを決めたのでした。
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