ようこそ就学相談会へ2017(その3)
《就学相談会と「事件」のこと ②》
去年の夏以来、何度も聞こえてきたのは、「ボクが殺されとったらどないすんねん!」という声だった。
誰の声かはすぐに分かった。
「ぼくの手、おちゃわんタイプや」という本にあった言葉の声。
◇
留守番をしていた6歳の息子が、帰宅した母親に話したことば。
「そうや、言うこと思いだした。テレビ見てたら、三時から、ティータイムニュースの時間のとき、お手々のおかしい赤ちゃん 一歳半の女のあかちゃんをな、お母さんがおふとんをかぶせて殺したんやて!
そいで……父母の会いうのがあるいうとったよ。
ぼくらのよう行く会のこと。
もしも、ボクが殺されとったらどないすんねん!
お母さんがボクを殺しとったらどないすんねん!
なあ、お母さん」
「殺すはずナイッ!」というキツイ口調の私の言葉にはじめて胸のつかえをおろした様子です。
(『ぼくの手、おちゃわんタイプや』先天性四肢障害児父母の会編 三省堂 1984年)
◇
「どないすんねん」という恐怖をやわらげてくれるのは、「犯人が捕まる」ことより、「殺すはずない」と言い切る人が、自分のまわりにどれだけいるか、だと思う。
子どもにとって、「犯人」が「親」だと聞いてしまったら、「犯人が捕まれば安心」という訳でもない。
だから母親や父親だけでなく、きょうだいや友だちや、近所の人や、学校の先生や、コンビニのお兄さんが、みんなが「殺すはずない」と言ってくれること。
「だいじょうぶだよ。わたしたちがあなたを守るから」
そう言ってそばにいてくれる人の存在を、子どもがどれだけ感じ、言葉をあびるか。
それが、大切なことなのだとおもう。
だからこそ、できるかぎり、できるかぎり、子どもを分けてはいけない。
命を助けるために「入院」することが必要なときでさえ、可能な限り、家族や安心できる大人が、そばにいてあげることが必要なのだ。
そういう誰かといっしょにいて安全だと感じられること。
他者といっしょにいて安全だと感じられること。
安全なつながりがたっぷりあることが、子どもにはとても大切なこと。
◇
障害があるから、地域の小学校のふつう学級に入れないという形で、「孤立」させる子を、一人も出さないということ。
障害があるから、きょうだいと同じ小学校に通えない、という形で「無力」だとおもう子を、一人も出さないということ。
障害があるから、定員が空いているのに不合格にされるという形で「透明」にされる子を、一人も出さない、ということ。
「誰の目にもとまらず、誰にも知ってもらえず、どちらを向いても安全に感じられないという思い」を、子どもにさせない、ということ。
「世の中に自分の居場所をみつけようとして」いた子どもたちに、信頼できる仲間のいる場所を保障する、ということ。
それらはどうしたって私たちが一番大切にすべきことなんじゃないんだろうか。
(つづく)
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