ゆきみちゃんのこと (その1)
松下センセの教えを守り、「軽はずみのココロ」を大事にしている私ではありますが、普通学級で「医療的ケア」を実現させることは、そう簡単なことではありません。
普通学級の子どもに看護師がついているのは、千葉県では、1校だけなのです(多分…)。
ただ、「鈴花ちゃん」という女の子のおかげで、「気管切開の子ども」が保育園へ行くのは当たり前のことと、社会の人たちが知っていることは、大きな支えになります。
「鈴花ちゃんの贈り物」は、いろんなところで感謝されていくことでしょう。
誰かが、がんばって変えてくれたこと、伝えてくれたことは、後から生まれ育つ子どもたちを、確かに支えてくれています。
松下センセの「ランソの兵」の教えは、松下センセのことを知らない人たちにも、確実に広がっています(^.^)
さて、「シンチョウのココロ」にとらわれることは避けなければならないのですが、教育委員会との交渉のために、最近の医療的ケアについての本を調べてみました。
でも、市販されている医療的ケアに関するものは、ほとんどが「養護学校」のもので、あまり参考にはなりませんでした。
考えてみれば、「障害児の高校進学」について、市販されている本を探しても、「0点でも高校へ」と書かれている本がないのと同じことでした。
結局、一番チカラをもらったのは、歩さんや折田くんの歩いてきた道でした。たくさんの資料を読み直して、とにかく真正面から、声をあげていくしかないのだと教えられました。
そして、何より、医療的ケアを受けながら、ひとりの子どもが、小学校1年生を生きることの意味を教えてくれるのは、『ゆきみつうしん』です。
何かの集会で手にして以来、ずっと大切にしているもので、ゆきみちゃんの一年間の作文やプリントが収められています。
ゆきみちゃんは、1993年12月1日生まれの女の子。
私の娘より、3つ年下でした(*^。^*)
そして、ゆきみちゃんは2001年3月25日、一年生の修了式を終えて、二日後に亡くなりました。
私は、ゆきみちゃんに会ったことはありませんが、ゆきみちゃんの言葉の大ファンです。
人工呼吸器をつけていたこととは関係なしに、ゆきみちゃんの言葉は、いつも詩のことばでした。
☆ ☆ ☆
入学しき
わたしは、王さま
みたいな 気もち
でした。 おかあさ
んとうんどうじょう
にならんで、六年生
のおにいさんとたい
いくかんに入りました。
ドキドキしました。
☆ ☆ ☆
楽しかったことを書くときも、がまんしたことを書くときも、そして、どんな哲学者よりも深い言葉をつぶやくときも、ゆきみちゃんは詩人でした。
1年生の生活科の最後、大きな木の絵に、「できるようになったこと」を書いた作品があります。
「字がかける」
「お友だちがたくさんできた」
「てつぼうをながくもてる」
「お友だちとパソコンでゲームができる」
「はがきがかける」
「おふろそうじができる」
「たしざんやひきざんができる」
そして、もうひとつ、次の言葉があります。
「わたしはいきができる」
この言葉は、私が一生の間に出会った言葉のなかでも、もっとも素敵な言葉です。
ときどき、何かの拍子に思い出します。
「わたしはいきができる」
「わたしはいきができる」
そうして、その言葉を何度も思い出すうちに、勝手に言葉をつなげて考えるようになりました。
□ □ □ □
《わたしはいきができる》
わたしはここに いる
わたしはいきが できる
だから、わたしはここにいることが できる
ほかのだれも、わたしのかわりに、ここにいることが できない。
うちゅうのまんなか、いのちのまんなか、
ここに いることができるのは、わたしだけ。
いきているわたしだけ。
いま、わたしはいきている。
いきて、ここに、
いる。
いきているのは、しんぞうがうごいているってこと。
わたしのしんぞうがうごいているってこと。
いきているのは、まっかなちがからだのなかをながれているってこと。
わたしのちがいきてるってこと。
いきているのは、わたしがいきをしているってこと。
わたしがいきをしなくなくなったら、
どんなにこきゅうきががんばっても、
どんなにおかあさんがバクバクしてくれても、
わたしは、ここに、
いなくなる。
わたしがいきているのは、わたしがいきをすることができるから。
ね、そうでしょ。
「わたしはいきができる」
わたしは、1ねん1くみ35にんのなかまのひとり。
1くみのみんなといっしょにここにいる。
ずっとずっと、いっしょに、いる。
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