前振りが長くなりました。
この映画で一番ひっかかったのは、学力テストの場面です。
映画の中の、他のすべての場面で、
子どもの気持ち、子どもの思いに寄り添おうとする校長先生。
ただ、一つだけ校長先生が気づいていない子どもの表現があります。
それが、学力テストの場面です。
同じクラスの仲間は、学力テストの会場である多目的室でテストを受けている。
障害のあるその子が、「なぜ自分はみんなといっしょじゃないのか」、と問う場面があります。
「自分も、多目的室に行かなくてもいいのか?」
「自分はなぜ多目的室に行かせてもらえないのか?」
その子の、問う顔。
その子の、問う表現。
その子の、問うことば。
それに対して、誠実に、丁寧に、答える校長。
一見それは、いつもの優しい校長と同じ態度に、みえる。
だから、子どもはその「丁寧さ」に、うなずかざるを得ない。
その「誠実さ」にうなずかざるを得ない
でも、その子は感じている。
いつもと何かが違う。
いつもとどこかが違う
いつもなら分かる校長先生のことばが、わからない。
いつもとどこかが違う
その子は、そういう顔をしている。
わたしにはそうみえる。
それは、校長がその時だけ、『教師』として、
自らの教師の作法だけで、子どもに答えたから。
あの場面の校長の説明は、
通常の「教育評価」の話としては分かるが、
その子が「多目的室…」とつぶやいた問いの答えではない。
その子の「多目的室…」という問いの答えにはなっていない。
なぜなら、そのやり方は、いつもとは違うやり方だから、
いつもは、目の前のみんなと生きる作法としての学力をまなんでいるその子に対して、その子を排除して成り立つ全国一斉学力テストという「させる教育」の作法で向かい合ったから。
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