慢性閉塞性肺疾患
部位別の診察では、胸鎖乳突筋発達と気管短縮、樽状胸郭があった。
これらの所見がある場合は、慢性閉塞性肺疾患chronic obstructive pulmonary disease (COPD)を考える。
喫煙歴で80歳まで2箱吸っており、20歳から吸っていたとすると120pack-Yearとなる。
一般的に40 Pack-year以上では慢性閉塞性肺疾患のリスクが高い。
以上より、本症例はCOPDに罹患していると考えたほうがよい(ガイドラインでは肺機能検査が必須なので、確定のためには安定期になってから検査を行えばよい)。
細菌性肺炎
右背下部で聴取されるcoarse crackles (holo-inspiratory crackles)は、細菌性肺炎を示唆する。
これで病歴で疑われた呼吸器系の感染症の可能性が高いこととなった。
次に行うのは、肺炎を確認する検査(胸部単純X線写真)と肺炎の起炎菌を特定するための喀痰検査、血液培養検査ということになる。
喀痰検査ではもちろん培養を提出するが、グラム染色によるスメア(塗沫検査)も行う。
スメアによって、肺炎の起炎菌を現行犯逮捕することができる。
喀痰の場合には定着菌colonizationによる汚染contaminationの影響を受けることがあり、培養結果のみでは、状況証拠ということで、真犯人ではないことがある。
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胸部単純X線写真で右下肺野に浸潤影あり。
喀痰グラム染色:グラム陽性双球菌Gram-positivediplococcus (GPDC)
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胸部単純X線写真から肺炎の診断が確定した。
喀痰グラム染色でグラム陽性双球菌を認めた場合には「肺炎球菌」を考える。
肺炎球菌性肺炎の初期治療ではセフトリアキソンが選択されることが多い。
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救急室でセフトリアキソンの静注が開始され、入院となる。
入院3日目に喀痰培養から肺炎球菌Streptococcus pneumoniaeが検出され、感受性検査結果より、ペニシリン感受性であることが判明し、抗菌薬をペニシリンGに変更になった。
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培養結果とともに感受性検査結果をフォローすることは重要である。
当該菌に感受性があり、抗菌スペクトラムができるだけ狭く、安価で、副作用の少ない抗菌薬を使用すること(de-escalation)が望まれる。
このような診療をantimicrobial stewardshipと呼び。
耐性菌の蔓延化を予防するために効果的な診療である。
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退院前に肺炎球菌ワクチンを接種した。
元気に退院となった。
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高齢者やCOPD患者では肺炎による死亡率が高くなる。
予防効果は完全ではないが、リスクの高い患者ではお勧めする。
また、毎年のインフルエンザ予防接種ももちろん推奨される。
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最終診断:肺炎球菌性肺炎。COPD。
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