前回からの続きです
症例5 60歳男性 主訴:発熱
1ヶ月前にめまい感が数分間あり、近医を受診している。MRIの結果、陳旧性脳梗塞があったため、痙攣、症候性てんかんが誘発されたのではないかと診断されカルバマゼピン、抗痙攣薬が処方されている。
2週間前より発熱が認められ、体温が39℃まで上昇した。発熱に対して抗菌薬2種類が投与されたが、効果がなかった。血圧130/80mmHg、心拍数70bpm、呼吸数16回/分で身体所見に異常は認めていない。
この患者のポイントは原因不明の発熱である。熱があるにもかかわらず、心拍数70bpmと比較的徐脈である。また自覚症状が熱以外になく、比較的全身状態が良い。そこで薬剤熱が考えられる。原因不明の発熱では感染症、腫瘍、膠原病の3つがあげられるが、薬剤熱も重要である。薬剤熱は薬を中止すれば良くなるので、早い時点で薬剤熱の可能性を考えると治療がしやすくなる。感染症でも比較的徐脈をきたすものがあるが、病歴と身体所見で疑うことが可能であり、薬剤熱は全身状態が良くて、所見があまりないという特徴がある。
症例6 45歳男性 主訴:倦怠感
来院の2週間前より倦怠感を自覚している。アルコール依存症があり、ビールを毎日3ℓ以上摂取していた。血圧140/70mmHg、心拍数70bpm、呼吸数18回/分、体温に異常はみられない。意識清明、浮腫なし、静脈圧は正常、肝硬変の身体サインもない。Lab dataでNaが119mEq/ℓ、尿中のNaが5mEq/ℓ、尿のosmolarityが50mOsm/ℓ。低ナトリウム血症の原因と治療がこの症例のポイントである。
この患者の特徴はビールを大量に飲酒していることである。ビールの過剰摂取が原因で低ナトリウム血症を起こす、beer potomaniaという疾患があり、この患者の治療においてナトリウム補正が早すぎると、橋中央ミエリン溶解をきたしやすくなるので、注意が必要である。beer potomaniaの場合、尿中の尿素の排泄低下により低ナトリウム血症が起こりやすくなる。
beer potomaniaの治療には生理食塩水が使われるが、あまり症状がない患者の場合は水分制限だけでも改善する。この患者も水分制限によって回復した。この症例では治療の際に生理食塩水を使用しないほうが良いということがピットフォールになっている。
おわりに、薬を複数以上処方すると、特に副作用が出やすく、高齢者では腎機能や肝機能、薬物代謝機能が低下している方が多いので、薬を慎重かつ上手に使うことは最も重要である。
このシリーズは以上です、話変わって、いよいよ今日から日本のプロ野球が開幕しますね、今年はなんといっても、男気黒田のいる広島東洋カープが大注目ですね、ソフトバンク松坂も気になりますが、ペナントレースどうなるか楽しみですね、では次回に。