英文ケースレポートの書き方
徳田安春
CASE DESCRIPTION その1:病歴を書く
~わかりやすい病歴は「シ・ゲ・キ+α」が重要~
ポイント
では、今回はCASE DESCRIPTIONを書いてみよう。まずは病歴。ポイントはこれ。
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1. 主訴
2. 現病歴
3. 既往歴+アルファ
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つまりは、上の3項目を書くこと。もちろん必要に応じて項目を増やしてもよい。
主訴を含む現病歴の文は主要な症状ではもれなく表す。その主訴がいつからあったかについても書く。既往歴+アルファの「アルファ」には、重要であれば手術歴、外傷歴、内服歴も適宜入れ、必要に応じて生活歴、家族歴も入れる。今回の症例で最も重要な現病歴を中心に記載すればよい。
「主訴」
CASE DESCRIPTIONは論文のメインディッシュなのでたいへん重要。逆に、ここがきちんと書かれていないとリジェクトの可能性が高い。それではサンプルからみていこう。今回はまずA sneeze: an unusual trigger for aortic dissectionから引用した(1)。
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A 57-year-old man developed sudden onset of severe left-sided pleuritic chest pain radiating to his neck and back associated with breathlessness immediately following a forceful sneeze. He presented to the emergency department after 3 h of the onset of symptoms. His medical history included asthma and gout. There was no family history of aortic disease, sudden death and structural cardiac abnormalities. His only regular medication was a salbutamol inhaler.
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上記サンプルでは次の文で起こされている。
A 57-year-old man developed sudden onset of severe left-sided pleuritic chest pain radiating to his neck and back associated with breathlessness immediately following a forceful sneeze.
冒頭文に年齢と性を冒頭に置くのは定型ルールである。ここで、maleではなく、manを使用していることにも気づいた読者は多いだろう。maleやfemaleはなるべく使用しないことだ。
ここで使用されている、下記の構文は応用可能であることがわかる。これをマスターするとCASE DESCRIPTIONの書き出しがスムースになる。
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構文その1:
developed sudden onset of associated with
患者が突然にとを発症した
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一般に、発症様式onsetには、突発sudden、急性acute、緩徐gradualの3種類がある。それぞれの場合にあわせて、上記の構文の突発suddenを、急性acuteや緩徐gradualに置換すればよい。
余談かもしれないが、これらのなかでも突発発症は臨床的に重要である。なぜなら、「突発」というと、病態の機序が「つまる」「さける」「やぶれる」「ねじれる」からいずれかを示唆しているからだ。上記ケースの疾患は大動脈解離であり、大動脈が「さける」病気だ。
「現病歴」
つづきの文をみてみよう。
He presented to the emergency department after 3 h of the onset of symptoms.
ここで、発症3時間後に救急受診していることがわかる。主訴がいつからあったかについて書かれている。これも応用可能な構文である。
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構文その2:
presented to after (with)・・・
患者が・・・のあと(を訴えて)に受診した。
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ここで、to の部分は除いて、
presented with・・・
としてもよい。また、after (with)のあとに「症状の名詞句」を記載すれば、冒頭文としても利用可能である。このとき「症状の名詞句」には
a 3-day history of sore throat
a 2-year history of insomnia
などのように、症状の「期間」を前に置く表現を用いてもよい。
「既往歴+α」
つづきの文をみてみよう。
His medical history included asthma and gout.
これは併存症。pastという形容詞がmedical historyについて無いことでそのことがわかる。もしあれば、完全な既往歴となる。つづきの文をみてみよう。
There was no family history of aortic disease, sudden death and structural cardiac abnormalities.
これは家族歴。大動脈疾患の原因にはMarfan症候群やEhlers-Danlos症候群などの家族歴がある場合もあるので家族歴は重要である。つづきの文をみてみよう。
His only regular medication was a salbutamol inhaler.
薬歴である。疾患の原因のなかには薬剤性のものも多いので薬歴も重要である。
「主訴」
では、別のサンプルをみてみよう。下記はBoerhaave's syndrome presenting as an upper gastrointestinal bleedから引用した(2)。
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A 64-year-old man with no significant medical history presented to the emergency department with haematemesis and melaena. The patient reported overnight retching and vomiting, with a sharp pain localised to his throat after consumption of a boneless tuna salad. The patient denied taking any medications including over the counter medications. The patient had no variceal risk factors.
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上記サンプルでは次の文で起こされている。
A 64-year-old man with no significant medical history presented to the emergency department with haematemesis and melaena.
前述の「構文その2」が使用されている。主訴を示している。また、
with no significant medical history
という形容詞句を主語に付けており、「とくに既往の無い」ということを表現している。
「現病歴」
つづきの文をみてみよう。
The patient reported overnight retching and vomiting, with a sharp pain localised to his throat after consumption of a boneless tuna salad.
追加の病歴である。今回の主訴の前に、嘔吐や前頚部痛などの症状がおきていたことを著している。病歴聴取で判明した重要なストーリーである。これは応用可能な構文である。
病歴上で重要な情報を追加する際に使える。つづきの文をみてみよう。
The patient denied taking any medications including over the counter medications.
追加の病歴のうち、重要な陰性所見である。英語ではpertinent negativeという。これも応用可能な構文である。この2つの構文をペアで覚えると便利。
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構文その3:
reported・・・
患者は・・・があったと言った。
denied・・・
患者は・・・はなかったと言った。
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病歴上で重要なpertinent negative情報を追加する際に使える。・・・には名詞、名詞句などを置けばよい。
「既往歴+α」
病歴で最後の文をみてみよう。
The patient had no variceal risk factors.
医学的に解釈した危険因子がないということをコンパクトに「美しく」表現している。同様に、冠動脈疾患の危険因子が無いという場合には、下記のように書けばよい。
The patient had no coronary risk factors.
そうするとこれも構文として使えるということだ。
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構文その4:
had no ・・・ risk factors.
患者には・・・の危険因子は無かった。
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「トクダネ」ポイント
構文その1:
developed sudden onset of associated with
患者が突然にとを発症した
構文その2:
presented to after (with)・・・
患者が・・・のあと(を訴えて)に受診した。
構文その3:
reported・・・
患者は・・・があったと言った。
denied・・・
患者は・・・はなかったと言った。
構文その4:
had no ・・・ risk factors.
患者には・・・の危険因子は無かった。
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ミニテスト:穴埋め問題(下記のカッコ内を埋めよ)
例:20歳の男性患者が急性発症の重度の腹痛を発症した。
A 20-year-old man developed ( ) onset of severe ( )
解答: acute, abdominal pain
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次回は身体所見の書き方に移る。こうご期待!
参考文献
1)Upadhyaya SG, Large A. A sneeze: an unusual trigger for aortic dissection.BMJ Case Reports. 2013 Dec 3
2)Lee W, Siau K, Singh G. Boerhaave's syndrome presenting as an upper
gastrointestinal bleed. BMJ Case Reports. 2013 Nov 29
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