今回から新シリーズ、「COPD」について考えていきましょう。
まずはじめに COPD患者では様々な特徴的な臨床所見を認める。 喫煙者(過去の喫煙者を含む)を診察する場合、COPDの所見がないかどうか注意を払うとよい。 特に、労作時呼吸困難や湿性咳を訴える患者の診察では必須である。
1視診
a.口すぼめ呼吸:pursed-lip breathing
COPD患者、特に肺気腫型では呼気時に口をすぼめる傾向がある。 呼気時における肺胞虚脱を防止する役割があり、呼吸数も調節している。 肺胞虚脱を防止するという治療効果を有していることから、自己positive end-expiratory pressure(PEEP)とも呼ばれる。
b.呼吸補助筋の肥大:accessory muscle hypertrophy
COPDが進行すると、呼気の抵抗に抗するため、呼吸補助筋が肥大する。 胸鎖乳突筋の筋腹サイズが患者自身の親指のサイズより大きくなったとき、病的発達といえる。
c.呼気時における外頸静脈の怒張
呼気時に気道抵抗が増加するため呼気時に胸腔内圧が上昇し、静脈還流が低下することにより外頸静脈の怒張が認められる。 このような呼吸性の変動が激しくなるために、特にCOPD急性憎悪では、静脈圧の測定は困難になる。 この場合、吸気時の静脈圧を測定すればよい。
d.頸静脈波におけるV波の増高
肺性心cor pulmonaleを有する患者では、三尖弁閉鎖不全をきたし、頸静脈波形でV波の増高を認める。 更に進行すると、CV波結合(CV merger)を認め、X'谷が消失し、収縮期に外方へ盛り上がるような波形を呈する。
e.気管短縮:short trachea
胸骨上縁より甲状軟骨下縁までの距離は、正常で3~4横指であるが、COPD患者では1~2横指と短縮していることが多い。 これは、肺の過膨張によって縦隔と気管が下方へ牽引されたために生じるものであり、見掛け上の短縮である。
今回はこの辺で、続きは次回に。