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2016-02-16 | こんなとき総合診療科

第110回医師国家試験についての緊急座談会

 

司会T:来年以降の受験者のために、今回の国家試験の傾向を分析してみましょう。座談会形式で進めます。受験者Aさん(関西の大学6年生)と、国試分析で著名な総合系指導医のS先生をお招きしています。まずは、Aさんに感想をお願いします。

 

受験者A:今年の問題は臨床の現場で考えられるかを問う問題が目立ったと感じました。肺炎球菌性肺炎治療でセフトリアキソン投与中に肺炎は改善傾向。痰の培養からM RSAが検出された。その後の治療をどうするか。抗菌薬を追加するのか、継続するのか、変更するのか・・・、など。

 

指導医S:感染症と総合診療系の問題が多かったですね。

 

受験者A:従来の国家試験であれば菌そのものについての知識で対応出来ていましたが、今年の試験では患者さんの状態をみていますか、目の前の患者さんへどの様に抗菌薬を使っていくか考えられますかと問われていると感じました。

 

指導医S:この傾向はこれからどんどん顕著になるでしょうね。このことが意味するのはたいへん重要です。国試予備校や国試対策会社の重要性が低下するということですから。

 

司会T:それはなぜでしょうか?

 

指導医S:国試予備校や国試対策会社は過去問の分析と解説が中心です。新しい傾向に対応するのは本質的に困難です。また、そのような会社は、臨床現場で医学生を指導している人材がいません。

 

司会T:なるほど、実践能力を問う問題への対応が弱い、ということですね。Aさん、その他の傾向はどうでしょうか?

 

受験者A:輸液の選択を問う問題も目立ちました。それぞれの状況に応じた輸液の選択は従来の試験より深く問われていました。

 

指導医S:これも実践力についての問題です。受験予備校や対策会社のみならず、大学病院の実習でもこれらの知識を身に付けることは困難です。

 

司会T:そうですね。輸液の選択について医学生が関与することは通常の大学病院ではないでしょうね。ちなみに、闘魂外来では輸液の選択などの実践的な判断など全て医学生に考えてもらっています。

 

受験者A:そうですね。わたしも闘魂外来で勉強した内容が国試でもたくさん出ていましたので、とても助かりました。

 

司会T:(照れながら)ありがとう・・・。

 

指導医S:そういう意味では、市中病院でどの程度実習したかがカギとなるでしょうね。

 

司会T:大学病院で実習して、受験予備校の教材だけで勉強していると危ないということでしょうか?


指導医S:そうです。休日や放課後を利用して、信頼できる指導医がいる市中研修病院で実習や見学をするとよいでしょう。

 

受験者A:本当にそのとおりでした。患者さんの状態に応じた対応を考える臨床の現場に即した問題が以前より増えている印象です。受け身で実習をするだけではなく、なぜその検査なのか、なぜその治療なのか、患者さんのどこに注目すべきなのか、そうした一つ一つの経験を積み重ねて学んでいく必要を感じた試験となりました。

 

司会T:厚労省と文科省も闘魂外来方式の実習を「間接的に」支持しているということになりますね。本日は多忙なところ緊急でお集まりくださりありがとうございました。

 

~~~座談会終わり~~~

 

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