今回もCOPDの臨床所見の続きです。
2.触 診
a.心最強拍動点の剣状突起下への移動
COPD患者では、肺の過膨張によって、心臓の位置が正中の下方へ移動する。 これにより、1秒率が50%以下となった患者では、心最強拍動点point of maximum impulse(PMI)が剣状突起下へ移動することが多い。 肺性心によって右室肥大をきたした患者では、傍胸骨領域の収縮期前方隆起をみることがある。 左心室肥大がない場合、滴状心となるため、心臓のサイズは小さくなっていることが多い(drop heartまたはmicrocardia)。
3.打 診
a.打診上の過剰共鳴音:hyper-resonance
正常肺では打診上は共鳴音resonanceであるが、COPD患者では、肺の過膨張によって、打診では過剰共鳴音hyper-resonanceとなる。 また、巨大なブラやのう胞などの部位では、打診上は太鼓音tympanyとなる。 一方、胸水貯留があると、打診音は濁音dullnessとなる。
4.聴 診
a.呼吸音低下:diminished lung sounds
COPD患者では、肺胞組織の破壊によって、びまん性の呼吸音低下が認められる。
b.吸気早期のクラックル音:early inspiratory crackles
慢性気管支炎型chronic bronchitis type(CB type)のCOPDでは、中~大気道の閉塞病変を有し、吸気早期のクラックル音が聴取されることがある。 吸気早期のクラックル音が聴取されるCOPD患者では、1秒率が40%以下となっていることが多い。 吸気早期~中期のクラックル音early-to-mid inspiratory cracklesが聴取されたら、気管支拡張症の合併も考慮する。 COPDのクラックル音は口腔へ放散するが、心不全のクラックル音は放散しない。
c.Ⅱ音の肺動脈成分(P2)の亢進と三尖弁閉鎖不全雑音
COPD患者で肺高血圧症を合併するとⅡ音の肺動脈成分(P2)が亢進する。 右心室が拡大すると三尖弁閉鎖不全をきたし、吸気時に増強する収縮期雑音を聴取する(Carvallo徴候)。
d.強制呼気時間forced expiratory time(FET)の延長
深呼吸の後に、できるだけ早く呼気させ、呼気にかかった時間を測定する。 この時間が6秒以上となった患者では、1秒率が50%以下となっていることが多い。
今回は以上です、次回はバイタルサインについて考えていきましょう。