毎度のことながら、図書館に残っている本を借りてくるので、その順番は成り行き任せである。藤沢周平全集 第二十三巻 周平独言 平成17年 文芸春秋発行は、エッセイ集である。
周平氏が日常感じたことを書き溜めたもので、思いがけないことを気付かせてくれることが多く、小生のような暇人は結構面白く読んでいる。
この中の「三人の予見者」を読んでいたら、登場人物には直接関係がないことであるが、次のようなことにドキッとしたのだった。
“・・・私(周平)が「日本二千六百年史」を読んだころ、天皇はまだ神だった。・・・天皇のために死ぬという言葉は、そのころは危険な甘さをふくむ言葉でもあった。・・・”
小生は、大戦勃発の翌月に誕生したので、周平氏ほど戦前・戦中・戦後の社会を深く承知しているのではないが、それでもこの歳となると戦争について強い感慨や印象を持っている残り少ない世代の一員である。
“坂の上の雲”の時代を経て、終には昭和軍国狂気の時代があった。そして、それはある日突然終わり、急転直下今日のような時代が来た。 そのことは、日本人にとって大きな僥倖だったといえるのである。
またいつこんな狂気の時代が来るのか判らないのである、再びこんな轍を踏まぬよう、大きな目を見開いておかねばならないのである。