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記念日や行事・歴史・人物など気の向くままに書いているだけですので、内容についての批難、中傷だけはご容赦ください。

須磨浦山上遊園 にカーレーターが開業した日

2011-03-18 | 歴史
1966(昭和41)年3月18日、須磨浦山上遊園の ロープウェイ鉢伏山上駅と回転展望閣の間にカーレーター(冒頭の画像参照)が開業した。
カーレーターとは、山の斜面を複数のゴンドラ(二人がけの座席)を、斜面にしかれたベルトコンベアを使って運ぶことによって、人を運ぶ、登山用交通機関(システム)である。従来のベルトコンベアやエスカレーターと違い、途中で速度の変化する、ベルトコンベアによる人の輸送方法として、1960年頃にベルトコンベア製造会社である日本コンベヤ(以下参考の※1参照)により開発された。
須磨浦山上遊園に開設されたものの他、これより1年早い1965(昭和40)年に、滋賀県大津市木戸にあるスキー場びわ湖バレイに開設され全長約2kmのカーレーターが約23分で山ろくと山頂を結び、多くの人を運んでいたが、このシステムは設備が大がかりな割には輸送能力がリフトとあまり変わらない、乗り心地が悪いなど、様々な問題があり、あまり普及せず、カーレーターが導入されたのは日本どころか、世界でもこの二ヶ所だけであった。
さらに、その設備の大がかりさゆえに、老朽化するのが早く、維持費がかさむこともあって、1975(昭和50)年10月、びわ湖バレイのカーレーターが廃止され、代わってゴンドラリフトが開業。そのリフトも2008(平成20)年には、大形ロープウエイに切り替えられているため、今では、日本、いや全世界で唯一、須磨浦山上遊園にのみカーレーターが存続していることになる。
須磨浦山上遊園は、我地元・兵庫県神戸市の須磨区須磨浦公園内にあるので、先ず、その須磨浦公園の説明を簡単にしておかなければいけないだろう。
須磨浦公園は、記紀の日本列島の国産みの神話に登場する淡路島を望む鉄拐山、八伏山(いずれも六甲山地の山)を含む傾斜地と海岸沿いの松原から形成された景勝地であるが、ここは、もと御料林(皇室財産土地)であった鉄拐、鉢伏山地(約80ha=ヘクタール,約80万㎡)を、1924(大正13)年に昭和天皇御成婚記念として、また、1934(昭和9)年には、国道沿いの松原(約8ha=8万㎡)の有償払い下げを受けて後、整備し、1935(昭和10)年に、面積約103.8haの公園として開設されたものであり、開堰当時から黒松・染井吉野の植栽が行なわれ、現在は公園の主要な景観を構成している。公園は、神戸市が管理・運営しており、24時間入園可能で、入園料は無料である。
歴史的には有名な『源氏物語』の須磨の帖や源平一の谷の合戦の舞台として知られ, 園内には「敦盛塚」をはじめ史跡や碑がたくさんある(以下参考の※2、※3参照)。さらに現在は桜の名所として知られ、春にはふもとから鉢伏山の山頂まで約3,200本の花でおおわれみごとである。また、「日本の名松100選」にも選ばれるほどの美しい松も楽しませてくれる。そして、園内には、六甲全山縦走路(以下参考の※4:「六甲山麓」の六甲全山縦走を参照)が通っており、ハイキングする人のための登山道や周遊路も整備されている。
須磨浦山上遊園は、この六甲山系の西南端にある・鉢伏山と旗振山(鉢伏山頂より北、尾根道を少し〔6~7分〕歩いた先にある。旗振山は鉢伏山よりも標高が高いにもかかわらず一般の地図には記載されることは少なく、鉢伏山の一部のような扱いになっていることが多い。位置関係や山の名の由来などは以下参考の:※4「六甲山麓」の旗振山を参照)の山頂一帯に広がる須磨浦公園内の植物園・遊園地を含む緑ゆたかな公園であり、1959(昭和34)年に開園し、山陽電鉄グループの須磨浦遊園㈱が運営・管理している。
須磨浦公園には、山陽電鉄の須磨浦公園駅があり、同駅ホームに直結(乗降口は駅の直上)した須磨浦ロープウェイに約3分乗り、駅に着くと、今やここだけにしかないカーレーターに乗り換えられる。ベルトコンベヤーに取り付けられた2人乗りの椅子に乗り継ぎ、ガタゴトと全長 91m、25度の急勾配を、ゆすられながらゆっくりと登ってゆくと須磨浦山上遊園山頂エリアに着く。しかし、冒頭でも書いたように、決して、乗り心地の良い乗り物ではない。
ただ面白いのは、須磨浦山上遊園のホームページのカーレーターについての施設情報“に、ちゃんと、以下のように断り書きされていることである。
“カーレーターはロープウェイ山上駅と回転展望閣を結んで、昭和41年3月に開通いたしました。その姿も当時のままで、「乗り心地の悪さ」が評判です。
「いもむし」に乗った感じをお楽しみください。
なお、振動がありますので、体調の優れないお客さま、また、妊婦の方は平行してあるハイキングコースをご利用ください。“・・・と。
びわ湖バレイのカーレーターでは、全長約2kmと長かったため、ガタガタとよく揺れる乗り物に23分も乗っていると非常に疲れると評判が悪かったようだが、須磨浦山上遊園の場合は、路線距離は91m 、所要時間も約2分と短いので、むしろ、今の時代に、日本一ダサイ、乗り心地の悪い乗り物を経験して見るのも面白いのではないか。
当園もそれを売り物にしてのであるから・・・。それが厭なら、絶景の景色を楽しみながら脇にあるハイキングコースを登ればよい。兎に角、須磨浦公園内は何処を歩いても無料なのだから・・・。
ただ、カーレーターには、“ベルトコンベアを使用しているため、大量輸送を得意とするのはもちろん、従来のベルトコンベアや動く歩道、エスカレーターなどと違い、乗るときはゆっくりとしたスピードで動くが、途中から速くなるという、「速さの変化するベルトコンベア」であるため、非常に輸送効率が良いとされている。また、乗り場では、ゴンドラの動く速さをある程度調節することができるので、高齢者や小さい子供も乗り降りしやすいようになっている・・・といった特徴も知っておいてよね。ただ、輸送効率が良いといってもその実力を発揮できるほの搭乗者が今はいないのが残念だけどね(^0^)。
カーレーターが着いた山頂エリアには須磨海岸紀淡海峡それに、六甲山地まで360度のパノラマを楽しめる回転展望閣や林間の散策路があり、さらに観光リフトで谷を渡ったところにはふんすいランド、サイクルモノレール等が設置された遊園地がある。
園内の様子は右マップを参照 ⇒ 須磨浦山上遊園:園内マップ
兎に角、施設の殆どは開園時(1959年)からのものであり、昨・2010(平成22)年の6月23日付け朝日新聞・「ますます勝手に関西遺産」の特集:“須磨浦山上遊園”にも取り上げられていた(以下参考の※5:「asahi.com:ますます勝手に関西遺産」のここ参照)通り、今では、何処の遊園地にもあるようなジェットコースターもなければ、愛らしいマスコットもいない。電飾きらめくものも、パレードもない。それに、広い敷地に乗り物はわずかしかないが、回転展望閣の1階レストルームには、1960年代~1980年代に流行ったジュークボックスが、 2階ゲームコーナーには、インベーダーゲームが設置されているなど、昭和レトロ感を楽しむことができるところだ。関西では2001(平成13)年開業のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)に人気が集中する一方、甲子園阪神パーク宝塚ファミリーランド神戸ポートピアランド近鉄あやめ池遊園地などの、身近にあった私鉄系の遊園地が相次いで閉鎖に追い込まれるなど、遊園地を取り巻く環境は厳しい中、来園者数も少しは増えているらしい。今日もこのブログを書くので、検索してみると、この記事が利いたのかどうか知らないが、この乗り心地の悪いカーレーターに乗って、それを楽しんでいる人達の声を聞くことが出来たのが嬉しい。良く言うところの逆張りの商法だろうが、何でも規模の豪華さと新しさに誘われてそれに引っ張りまわされている内に、気がついてみると今まで楽しんで来た施設がなにもなくなってしまっていることに気がついてももう遅い。それは、そんなムードに誰もが振り回されていること自体にに問題があるのだが、そんな浮ついた世の中で、時代遅れを逆手にとってしぶとく頑張っているところなど同じ関西人として賞賛の拍手を送りたい。
回転展望閣の西には、名所として知られる梅林、ハマナス園、フジの園といった植物園が広がっており、素晴らしい景観と季節の花などのんびりと散策しながら楽しめるところが一杯ある。ただ乗り物に乗って遊ぶだけではなく、素晴らしい景観や花などが無料で楽しめる遊園地など今の時代素敵なのではないだろうか。そして、時代遅れのカーレーターに乗って楽しむ心のゆとりもあって良いと思うのだが・・・。
この周辺には須磨離宮公園 や歴史が古いにもかかわらずとてもユニークで面白いものも見られる須磨寺神戸市立須磨海浜水族園なども有るので時間があればついでに立ち寄られるとよい。
(冒頭の画像は、須磨浦山上遊園のカーレーター。Wikipediaより)
参考:
※1:日本コンベヤのウェブサイト
http://www.conveyor.co.jp/
※2:須磨観光協会
http://www.suma-kankokyokai.gr.jp/
※3:神戸観光壁紙写真集:須磨区
http://kobe-mari.maxs.jp/kobe/index_115.htm
※4:六甲山麓:サイトマップ
http://www62.tok2.com/home/rokkousanroku/sightmap.html
須磨浦山上遊園
http://www.sumaura-yuen.jp/
※5:asahi.com:ますます勝手に関西遺産
http://www.asahi.com/kansai/travel/kansaiisan/
カーレーター - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%BC
須磨浦カーレーター
http://ochaplarail.web.fc2.com/sumaura.htm