真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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日米地位協定とキャンプ・ハンセン5・15メモの記述

2012年11月10日 | 国際・政治
 辺野古に続いて、ここでは「日米行政協定の政治史ー日米地位協定研究序説」明田川融(法政大学出版局)からキャンプ・ハンセンの部分を抜粋した。
 著者がここで指摘しているのは、県道104号線を封鎖して行われる危険な実弾砲撃演習の問題であり、地元住民が日本の公道を使用する場合も、米軍の演習を妨げないことを条件として許されるという問題である。同様に県民の漁業や漁船の航行も、水域内では合衆国軍隊の権利が優先される。そして、それは米軍が沖縄返還以前に使用していた「施設および区域」を、引き続き使用するということなのである。
 こうした基地の外へ被害や環境破壊をもたらす規定が、キャンプ・ハンセンの他にも、北部演習場、キャンプ・シュワブ、キャンプ・ハーディ、金武ブルー・ビーチ訓練場などにもあるという。長く、この5・15メモが伏せら、公開されなかった理由が察せられる。また、日米地位協定や5・15メモで、「基地」という用語が全く使われず、常に「施設および区域」というような独特な言葉が使われる理由もそこにあるのだと思う。提供しているのは「基地」だけではないということである。
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②キャンプ・ハンセン
                 施設委員会
                                   1972年5月15日
メモ番号 871
メモの宛先:合同委員会
件名:キャンプ・ハンセン

1、参照文書:日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6
  条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協
  定

2、参照文書の第2条第1項(a)の諸規定に従い、合衆国が、以下に記され、同封
  の諸文書に示される施設および区域の使用を許与されることを合意する。
a、施設名:キャンプ・ハンセン
b、施設番号:FAC 6011
c、所在地:沖縄県名護市、国頭郡金武村、宜野座村、恩納村
d、主たる使用目的:住宅、管理、および訓練
e、区域の範囲:大略は同封の四に示すとおり。
 (1) 陸上区域:同封の四に示すとおり、約1,998,000平米
 (2) 合衆国所有以外の建物:なし
 (3) 水域:同封の二に示すとおり、北緯26度29分59秒 東経127度59分38
    秒の真方位90度と北緯26度29分44秒、東経127度59分43秒の真方位
    90度の間の、陸地から500米の距離に接する水面域から成るキャンプ・ハ
    ンセン訓練区域のLVT出入り地点
 (4) 空域:
  (a) キャンプ・ハンセン上空の、高度2,000フィートまでの全空域
  (b) Rー177(イーズリー射撃場):北緯26度27分 東経127度54分から始
     まり、北緯26度30分、東経127度58分を経て、北緯26度31分、東経1
     27度59分を経て、北緯26度32分、東経127度59分を経て、北緯26度
     29分、東経127度52分を経て、始点にいたる。高度3,000フィートまで。
 (5)イーズメント
  (a) 日本国政府は、公道104号線および、108号線を横断するユーティリティ
     ・システムのためイーズメント(水道および電気のための3メートルの幅と
     下水および排水のための6メートルの幅)を提供する。かかるイーズメント
     は、合衆国軍隊がこれらのユーティリティ・システムの使用、修理、保守、
     交換または検査を行うのに供するものである。合衆国軍隊が、公道の境
     界内にあるユーティリティ・システムを修理、保守、交換する時は、日本国
     政府との調製がはかられる。イーズメントの正確な位置は、詳細な調査の
     完了後に確定され、このメモランダムを実施するための現地の不動産に
     関する合意に組み入れられる。
  (b) 略
f、使用期間:無制限
g、備考                                                          
 (1)使用条件:
  (a) 合衆国政府は、必要であれば、返還後できるだけ速やかに合同委員会が
     使用条件を検討し明確にするとの了解を以て、返還以前の期間に使用し
     ていたと同じく本施設および区域を引き続き使用する。1952年12月17
     日の第32回合同委員会で承認された「陸上訓練演習場への立ち入り、責
     任、警戒通告」に関する合同委員会合意が適用される。
  (b) 本施設・区域内では実弾射撃が認められる。合衆国軍隊により使用される
     兵器は、水陸両用師団に標準的に編成される兵器の一般的分類に入るも
     のである。ヘリコプターおよび固定翼航空機による、空対地の着弾区域実
     弾射撃が認められる。爆発物処理が許される。爆破訓練は指定された射
     撃場で行われる。
  (c) 使用時間:
 1、上記2のeの(3)に記す水域は、必要により毎日
   2、上記2のeの(4)に記す空域およびR-177(イーズリー射撃場)は常時
  (d) 用途:
   1、上記2のeの(3)に記す水域は、水陸両用訓練のために使用される。実弾
     射撃は行わない。信号目的のためおよび合衆国軍隊の移動の統制のた
     めに、信号弾を使用することができる。この訓練のために、水陸両用部隊
     が通常装備する一切の兵器の空包射撃が認められる。 水中爆破は認め
     られない。
   2、上記2のeの(4)の(a)に記す空域は、有視界飛行による航空機の運用を支
     援するために使用される。
   3、上記2のeの(4)の(b)に記す空域は、空対地訓練のために使用される。
  (e) 通告の方法:現地の合衆国当局は、上記2のeの(3)に記された水域の使
     用に関して、現地の防衛施設局と通告の方法を調整する。
 (2)その他:
  (a)参照文書の第2条第4項(a)の諸規定に基づき、以下の使用が許可される。
   沖縄電力株式会社および沖縄県(水道設備)は、かかる公益事業体(筆者註
   沖縄電力および沖縄県)が所有し、管理し、または規制し、本施設および区域
   内に在るユーティリティ・システムの下部または上部の土地共同使用が許与
   される。上記の土地の正確な位置は、現地調査によって確定され、このメモ
   の修正によって追加される図面上に表示される。合衆国政府は、要請された
   時はいつでも、これらのシステムの運用に関わる検査、保守、修理およびそ
   の他の諸活動を目的とするユーティリティ保守人員の出入りを保証する。
  (b)合衆国政府は、要請されたときはいつでも、沖縄電力株式会社に対して、同
   封3に示されているとおり、本施設および区域の一部ではないがそれらの内
   にある施設の運用に関する検査、保守、修理およびその他の作業を目的とす
   るユーティリティ保守人員の出入りを保証する。
  (c)略(筆者註 上記2のgの(2)の(a)および(b)で許与した使用に関し、メモ番
   号870と同様、米国政府が日米地位協定第18条の義務を負わない旨の規
   定)
  (d) 上記2のeの(3)に記す水域内において、合衆国政府は、合衆国軍隊が使用
   中に漁業および航行がそれを妨害しないとこを条件として、いかなる制限も課
   さない。
  (e)同封の4に指定された施設および区域内で、地元住民が出入り路および公
   道104号線を使用することは、かかる使用が合衆国軍隊の訓練の行動を妨
   げないことを条件として許される。
  (f)略(筆者註 返還に伴い日本政府に移管される沖縄県の水道設備がこのメ
   モの施設および区域から除外されること、同設備に対する沖縄県の出入を米
   国政府が保証すること、水道管の上部または下部の土地は引き続き日米地
   位協定の適用を受けること等に関する規定)

3、参照文書の第2条第4項(b)の諸規定に従い、合衆国政府が以下に記す施設
  および区域の使用を認められることに合意する。参照文書の関連する諸条項
  は、特定の使用区域内においてのみ、かつ実際に使用される間のみ適用され
  る。
 a、合衆国軍隊は、訓練の目的で、本施設および区域の一部ではないがその境
  界内に在る貯水池へ出入りする権利を有する。これらの水源を使用して行わ
  れる訓練:
 (1) 浮き橋の建設および使用
 (2) 水質浄化部隊用訓練
 (3) 渡河技術訓練
 (4) 小型船舶操作訓練
 (5) サーフ・トレーニング
 (6) 水陸両用車輌を使用する人員の教化
 (7) ヘリコプターからの消火訓練
 (8) ヘリコプターによる空ー海救助訓練
 b、必要とされる期間:年間100日を越えないこと
 c、備考:
 (1) 使用条件:
  (a) 実弾または空砲射撃は、貯水池使用区域では行わない。信号弾は使用し
     ない。水中爆破は認められない。
  (b) 合衆国の現地当局は、計画的に貯水池区域を使用する前に原則として15
    日前に現地防衛施設局通告する。しかしながら、予想し難い場合は、計画
    的使用の7日前までに事前通告を行う。
  (c) 貯水池使用区域内では、合衆国軍隊は恒久的建築物の建設を行わない。
  (d) 使用期間中に貯水池使用区域内に、合衆国軍隊が建てたいかなる仮設
    建築物も、各々の使用期間が終了し次第合衆国軍隊によって撤去される。
  (e) 合衆国政府は、本施設および区域内の貯水池を汚染しないよう予防措置
    を執る。
  (f) 詳細事項の追加は、必要に応じ、合衆国の現地当局と日本国の現地当局
    との間で合意することができる。
 (2) その他:上記の第2条第4項(b)による使用は、日本国政府が貯水池の管理
    機関(沖縄県)との内部調査を終了した時に効力を生じる。日本国政府は、
    1972年6月30日までに上記の調査を完了する。
(筆者註 以下、承認通告、受理、付託、承認の項および日米双方の議長、代表者の署名は省略する。なお同封の4文書として、配置計画図および技術部図面、1972年3月24日付キャンプ・ハンセン訓練区域LVT出入点(全)水域、1972年4月26日キャンプ・ハンセン(除外財産)、1971年8月25日付「キャンプ・ハンセン」と題された位置および境界地図)

                                                              
 http://www15.ocn.ne.jp/~hide20/ に投稿記事一覧表および一覧表とリンクさせた記事全文があります。一部漢数字をアラビア数字に換えたり、読点を省略または追加したりしています。また、ところどころに空行を挿入しています。青字が書名や抜粋部分です。 

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