「日米行政協定の政治史ー日米地位協定研究序説」明田川融(法政大学出版局)で取り上げている5・15メモの「鳥島射爆場」に関する部分を抜粋した。鳥島射爆場は、沖縄県が”劣化ウラン弾の使用が許可されているのではないか”という疑念を表明したところである。
この「鳥島射爆場」のメモには、下記のとおり、用途の項目に「2,000ポンドを超えない、一切の航空機用の通常型爆弾を使用する空対地射爆撃」とある。確かに劣化ウラン弾は核爆発を伴わない2,000ポンド以下の兵器かも知れない。しかし、その環境にもたらす影響を考えると、「通常型爆弾」として扱うことには、疑問がある。劣化ウラン弾は、低レベルであるとはいえ、放射性物質である重金属の粉塵や微粒子を環境に拡散させ、環境を汚染する兵器であるといわれている。人体に影響を及ぼす心配がある。
また、劣化ウラン弾は、国連の人権小委員会が、「大量破壊兵器」である核兵器や化学兵器、生物兵器と同様に、「無差別的な殺傷効果のある兵器」として、その生産や拡散を制限するよう求めた兵器の一つでもある。
劣化ウラン弾射撃事件発覚当時、米側は、”装填する弾丸を決定する海軍兵站センターが作成する弾丸カタログの誤りによる発射である” と説明したという。しかし、沖縄県は、”劣化ウラン弾の使用が許可されているのではないか”との疑念を表明したのである。同書には、”この事件については、その報告が遅延したことも看過できない。米国政府が在日大使館を通じて外務省に事件の報告を行い、外務省がそれを公表したのは「誤射」から1年が経過した時点であったが、それも事件がマスメディアによって先に報じられたためであった。”とある。
環境破壊や人的被害の心配、また、事件発覚前後の米国政府の対応を考えると、日米地位協定にある「相互協力」の内容が疑われる問題の一つではないかと思う。
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④鳥島射爆場
施設分科委員会
1972年5月15日
メモ番号:973
メモの宛先:合同委員会
件名:鳥島射爆場
1、参照文書:日本国とアメリカ合衆国の間の相互協力及び安全保障条約第6
条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する
協定
2、参照文書の第2条第1項(a)の諸規定に従い、合衆国政府が以下に記され、
同封の諸文書に示される、施設および区域の使用を許与されることを合意す
る。
a、施設名:鳥島射爆場
b、施設番号:FAC 6077
c、所在地:沖縄県島尻郡仲里村字宇江城
d、主な使用目的:空対地射爆撃場
e、区域の範囲:大略は同封の1から3に示すとおり。
(1) 陸上区域:同封の3に示すとおり、約39,100平米
(2) 合衆国所有以外の建物:なし
(3) 水域:
区域1:同封の2に示すとおり北緯26度35分30秒、東経126度50分06 秒を中心とし、鳥島に接する半径3海里の円弧内の水面域。
(4) 空域:北緯26度36分、東経126度50分を中心とする半径5海里の、高度
15,000フィートにいたる円
f、使用期間:無制限
e、備考:
(1) 使用条件:
(a) 使用時間:上記の2のeに記す水域および空域は、06:00時から24:00
時まで常時。
(b) 用途:2,000ポンドを超えない、一切の航空機用の通常型爆弾を使用す
る空対地射爆撃。夜間は、照明弾の投下、航空機用訓練弾の投射、お
よび写真用フラッシュ・カートリッジの投下のために使用される。爆発物
処理が行われる。
(c) 通告の方法:合衆国当局は、当該射爆場を使用する予定がない時は、
当該日の3日前までに防衛施設庁へ通告する。
(2) その他:上記2のeに記された水域は、使用期間中、合衆国軍隊による排
他的使用のために制限される。漁業(特に餌釣漁において)を許可するた
め、現地での調整を行うことができる。
(筆者註 以下、承認勧告、受理、付託、承認の項、および日米双方の議長、代表者の署名は省略する。なお、同封の3文書として、1967年8月15日付基地配置図、空軍図面、1972年8月15日付基地配置図・空軍図面、1972年8月24日付鳥島水域、1971年8月24日付「鳥島射爆場」と題する位置および境界地図)
http://www15.ocn.ne.jp/~hide20/ に投稿記事一覧表および一覧表とリンクさせた記事全文があります。一部漢数字をアラビア数字に換えたり、読点を省略または追加したりしています。青字が書名や抜粋部分です。
この「鳥島射爆場」のメモには、下記のとおり、用途の項目に「2,000ポンドを超えない、一切の航空機用の通常型爆弾を使用する空対地射爆撃」とある。確かに劣化ウラン弾は核爆発を伴わない2,000ポンド以下の兵器かも知れない。しかし、その環境にもたらす影響を考えると、「通常型爆弾」として扱うことには、疑問がある。劣化ウラン弾は、低レベルであるとはいえ、放射性物質である重金属の粉塵や微粒子を環境に拡散させ、環境を汚染する兵器であるといわれている。人体に影響を及ぼす心配がある。
また、劣化ウラン弾は、国連の人権小委員会が、「大量破壊兵器」である核兵器や化学兵器、生物兵器と同様に、「無差別的な殺傷効果のある兵器」として、その生産や拡散を制限するよう求めた兵器の一つでもある。
劣化ウラン弾射撃事件発覚当時、米側は、”装填する弾丸を決定する海軍兵站センターが作成する弾丸カタログの誤りによる発射である” と説明したという。しかし、沖縄県は、”劣化ウラン弾の使用が許可されているのではないか”との疑念を表明したのである。同書には、”この事件については、その報告が遅延したことも看過できない。米国政府が在日大使館を通じて外務省に事件の報告を行い、外務省がそれを公表したのは「誤射」から1年が経過した時点であったが、それも事件がマスメディアによって先に報じられたためであった。”とある。
環境破壊や人的被害の心配、また、事件発覚前後の米国政府の対応を考えると、日米地位協定にある「相互協力」の内容が疑われる問題の一つではないかと思う。
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④鳥島射爆場
施設分科委員会
1972年5月15日
メモ番号:973
メモの宛先:合同委員会
件名:鳥島射爆場
1、参照文書:日本国とアメリカ合衆国の間の相互協力及び安全保障条約第6
条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する
協定
2、参照文書の第2条第1項(a)の諸規定に従い、合衆国政府が以下に記され、
同封の諸文書に示される、施設および区域の使用を許与されることを合意す
る。
a、施設名:鳥島射爆場
b、施設番号:FAC 6077
c、所在地:沖縄県島尻郡仲里村字宇江城
d、主な使用目的:空対地射爆撃場
e、区域の範囲:大略は同封の1から3に示すとおり。
(1) 陸上区域:同封の3に示すとおり、約39,100平米
(2) 合衆国所有以外の建物:なし
(3) 水域:
区域1:同封の2に示すとおり北緯26度35分30秒、東経126度50分06 秒を中心とし、鳥島に接する半径3海里の円弧内の水面域。
(4) 空域:北緯26度36分、東経126度50分を中心とする半径5海里の、高度
15,000フィートにいたる円
f、使用期間:無制限
e、備考:
(1) 使用条件:
(a) 使用時間:上記の2のeに記す水域および空域は、06:00時から24:00
時まで常時。
(b) 用途:2,000ポンドを超えない、一切の航空機用の通常型爆弾を使用す
る空対地射爆撃。夜間は、照明弾の投下、航空機用訓練弾の投射、お
よび写真用フラッシュ・カートリッジの投下のために使用される。爆発物
処理が行われる。
(c) 通告の方法:合衆国当局は、当該射爆場を使用する予定がない時は、
当該日の3日前までに防衛施設庁へ通告する。
(2) その他:上記2のeに記された水域は、使用期間中、合衆国軍隊による排
他的使用のために制限される。漁業(特に餌釣漁において)を許可するた
め、現地での調整を行うことができる。
(筆者註 以下、承認勧告、受理、付託、承認の項、および日米双方の議長、代表者の署名は省略する。なお、同封の3文書として、1967年8月15日付基地配置図、空軍図面、1972年8月15日付基地配置図・空軍図面、1972年8月24日付鳥島水域、1971年8月24日付「鳥島射爆場」と題する位置および境界地図)
http://www15.ocn.ne.jp/~hide20/ に投稿記事一覧表および一覧表とリンクさせた記事全文があります。一部漢数字をアラビア数字に換えたり、読点を省略または追加したりしています。青字が書名や抜粋部分です。