真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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原発事故 NO1「もんじゅ」ナトリウム漏洩と情報の秘匿・捏造

2013年04月20日 | 国際・政治
 「原発 高木仁三郎の鳴らした警鐘1」で取り上げたように、原子力は、日本では科学的実態や技術的実態がないまま、また、産業的基盤もないまま、「札束で学者のほっぺたを引っぱたけばいいんだ」という言葉(中曽根康弘氏)に象徴されるような政治的思惑によって導入された。そして、三井や三菱、住友などの旧財閥を引き込み、国家主導のトップダウン型で開発が進んだ。したがって、一企業、ましてや一個人が、その国家的推進体制に異を唱えることなど許さないという状況のもと、寄せ集めの集団と技術によって開発が進められたのである。
 そうした開発・推進を、高木仁三郎は「議論なし、批判なし、思想なし」であると批判した。原発が事故をくり返す理由や、事故のたびに「隠蔽、改ざん、捏造」が問題となる理由の一端は、そこにあるというわけである。

 下記は「原子力の社会史 その日本的展開」吉岡 斉(朝日選書624)の中から、高速増殖炉「もんじゅ」のナトリウム漏洩事故の概要と、事故後の情報秘匿や捏造について記述している部分を抜粋したものである。
 福島第1原発の事故は「想定外」の津波によるものだ、という言い訳を受け入れることができるだろうか。
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          第6章 転換期を迎えた原子力開発利用(1995~ )

1 高速増殖炉「もんじゅ」事故とそのインパクト

 1995年12月8日夜、福井県敦賀市にある動燃の高速増殖原型炉「もんじゅ」で二次冷却系からのナトリウム漏洩が起きた。漏洩したナトリウムは空気中の水分や酸素と反応して激しく燃焼し、空気ダクトや鉄製の足場を溶かし床面に張られた鋼鉄製ライナ-上に落下してナトリウム酸化物からなる堆積物を作った。事故原因については、A、B、Cと合計3グル-プある冷却系のうち、Cループは配管に差し込まれたナトリウム温度計のステンレス製保護管の先端部分が、微小運動をくり返すことによる金属疲労により破断し、その折れた開口部から配管内のナトリウムが保護管の内部を通り、直接配管室の室内にでたものと推定されている。事故の経過について本書でくわしく述べる紙面はないので、他の文献を参照していただきたい(たとえば、もんじゅ事故総合評価会議著『もんじゅ事故と日本のプルトニウム政策──政策転換への提言』、七つ森書館、1997年。読売新聞社科学部著『トキュメント「もんじゅ」事故、ミオシン出版、1996年。緑風出版編集部編『高速増殖炉もんじゅ事故』、緑風出版1996年。)
   

 この事故に対して動燃がとった対応行動は、きわめて不適切なものであった。まず第1に、運転者(当直長)の判断の誤りにより、警報がなった12月8日午後7時47分以降、1時間33分にわたって原子炉を手動停止せず、ようやく9時20分に停止したのに加え、停止後のナトリウム緊急ドレン(抜き取り)も大幅に遅れたため、適切な判断がなされた場合に比べて数倍(推定700キログラム)のナトリウムが漏洩したのである。原子炉停止後もナトリウム漏洩は続き、配管部分のナトリウム抜き取りが終了したのは、夜半過ぎの午前0時15分となった。さらにその間、空調システムを停止しなかったために、放射性物質トリチウムを含むナトリウム・エアロゾルが原子炉建屋全体に拡散し、その一部は環境に放出された。こうした運転者による一連の判断の誤りの一因は、マニュアル(異常時作業手順)の不備であった。またこの事故では周辺自治体への通報の遅れも問題となった。福井県及び敦賀市への通報は事故の約1時間後となったのである。

 動燃は第2に、意図的な事故情報の秘匿・捏造をおこなった。動燃は12月9日午前2時5分(1巻分)と、16時10分(2巻分)の2回にわたり、事故現場のビデオ撮影をおこなったが、公表したのは後者のビデオテープのうち1巻(11分)を、肝心のナトリウム漏洩部分の映像を削除して編集したものであった。そのことが露見したきっかけは、事故の3日後の12月11日未明(午前3時25分)に、福井県と敦賀市の職員4人が安全協定に基づいて強行した立ち入り調査であり、そのとき撮影されたビデオテープにはナトリウム漏洩部分が写っており、事故の深刻さをうかがわせるものであった。

 このビデオテープ映像の印象と、動燃が発表していた映像の印象とが、あまりにも食い違うことを福井県などから追及された動燃は、やむなくビデオテープの秘匿・捏造の事実をみとめ、動燃もんじゅ建設所の大森康民所長と佐藤勲雄副所長が隠蔽工作の責任者であったことを明らかにし、両名を含む4名を更迭した。(後任の所長には本社企画部長の菊池三郎が、副所長には動力炉開発推進本部次長の鈴木威男がそれぞれ就任した)。また科学技術庁は1月12日、動燃理事長の大石博の更迭を決めた。その翌日の1月13日未明、事故情報秘匿・捏造事件の社内調査の担当者だった動燃総務部次長の西村成生が自殺した。これは動燃の体質による社内調査の難航を、一つの背景とした事件であり、国民の動燃不信をさらに強めた。

 ・・・(以下略)

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