真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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原発事故 NO2 東海再処理工場の火災・爆発事故

2013年04月21日 | 国際・政治
 下記は、「原子力の社会史 その日本的展開」吉岡 斉(朝日選書624)の中から「東海再処理工場の火災・爆発事故」の概要について記述している部分を抜粋したものである。この事故でも、高木仁三郎が指摘していた「隠蔽、改ざん、捏造」に類する「虚偽報告」が問題となった。

 2011年の福島第1原発の事故でも、重要機器の非常用復水器が、東電の主張と違って地震直後に壊れたのではないかとして、現地調査を決めた国会事故調査委員会に、東電は、建物の内部は明かりが差し照明も使えるのに、「真っ暗」と虚偽の説明をし、現地調査を断念させていたことが報じられた。

 事故が起きるたびに、こうしたたぐいの問題が報じられる。原発自体の危険性の問題もさることながら、原発に関わる組織や人間がかかえる問題も深刻であると思う。あらゆる事態を想定し、安全に万全を期すのではなく、利益のために安全を蔑ろにし、事故が起きると取り繕うというような姿勢に、福島第1原発の事故後もなお、変化が見られないのである。きちんとした対処がなされないまま、原発を再稼働し、維持し、推進するということのリスクは、あまりにも大きいと思う。
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         第6章 転換期を迎えた原子力開発利用(1995~ )

4 分水嶺となった東海再処理工場の火災・爆発事故

 高速増殖原型炉「もんじゅ」事故によって大きく揺らいだ動燃に対する国民の信頼を、完膚無きまでに失墜させたのが、1997年3月11日午前10時6分に、動燃の東海再処理工場のアスファルト固化処理施設(ASP)で発生した火災・爆発事故であった。
 この事故の概要を説明しておこう。東海再処理工場には、再処理の各工程、施設の各所から排出される低放射性廃液を、アスファルトと混ぜて固めるアスファルト固化施設がある。その内部のアスファルト充填室には、低放射性廃液をアスファルトで固化したものを一杯に詰めたドラム缶が多数おかれている。その1本が充填の20時間後に発火し、またたく間に周囲の多くのドラム缶に火が燃え移った。作業員は下請け会社の社員だったため、動燃職員の指示をあおいだ。動燃職員は上司と相談の上水噴霧による消火を命じた。火災発生から6分後、作業員はスプリンクラーを使った消火行動を1分間おこなった。だがその頃から、放射能を含む煙が充填室から施設全体に広がり、火災発生から約30分後までに、作業員は全員避難を余儀なくされた。この予期せぬ事態を終息させようと関係者が懸命に努力していた午後8時4分、充填室付近で爆発が起き、アスファルト固化処理施設の窓と扉のほとんどが破損した。爆発によって発生した火災は3時間あまりにわたって続いた。そして施設の破損箇所から、大量の放射能が外部へ拡散していった。


 この原稿を書いている98年末現在に至るまで、事故原因の詳細はいまだ解明されていないが、最初に起きた火災事故に関しては、ドラム缶内で発熱暴走反応が発生して自然発火をもたらしたものと推定されている。またその約10時間後に起きた爆発事故に関しては、消火作業に使われた水量がわずかであり、完全な消火がされなかったために、ドラム缶に詰められたアスファルト固化体内部で、何らかの発熱をともなう化学反応が進行し、それにより可燃性ガスが部屋に充満し、何らかの引き金で爆発に至ったものと推定されている。原子力安全委員会は、火災爆発事故調査委員会を設置して事故原因調査を進めさせ、調査委員会は97年12月15日に報告書を提出したが、そのなかで事故原因を特定することはできなかった。

 この事故によって動燃の安全対策の不十分さがクローズアップされることとなった。また事故に際して動燃がとった対応行動も、きわめて不適切なものであった。安全対策の不十分さの筆頭にあげられるのは、アスファルト固化という方法を採用したこと自体である。アスファルトは可燃物であり、発火した場合には、内蔵された放射能を、まき散らすリスクがある(減速剤に黒鉛を用いる原子炉と同様のリスク)。セメント固化のほうがベターであり、それが世界の標準的方法である。にもかかわらず動燃は、コストが安く海洋投棄にも都合のよいアスファルト固化の方法を選んだ(前述のように80年代初頭まで、科学技術庁は中低レベル放射性廃棄物の海洋投棄計画に固執していた)。
 また動燃は、アスファルト固化処理施設で火災事故や爆発事故が起こることをほとんど想定せず、消火訓練もまったくおこなっていなかった。


 次に動燃の事故対応行動も、多くの問題点を有するものだった。それは大きく2つに分けることができる。第1に、消火作業がきわめて不適切なものとなった。まずマニュアルの記述が不備だったため、現場作業員の判断で消火活動を開始できず、消火開始が遅れた。またマニュアルの消火手順が守られなかった。放水開始の前に充填室の換気を中止しなかったのである。そのためフィルターの目詰まりによる機能喪失と、外部への放射能漏洩を招いた。さらにわずか1分間の散水をおこなっただけで消火作業を中止し、十分な消火確認もおこなわなかった。1981年に起きたベルギーのユーロケミック社のアスファルト固化施設での事故に懸念をいだき、動燃は82年に燃焼実験をおこない、完全消火まで8分間の散水が必要であるとの結果を得ていたが、それが生かされなかった。そうした不適切な消火活動によって、適切な対応がなされていれば火災事故だけですんだところが、爆発事故に発展した

 第2に消火活動にからむ虚偽報告事件が発生した。動燃が科学技術庁に提出した事故報告書には、午前10時13分に消火を確認したのち、10時22分に目視で再確認したと記載されていたが、実際には消火確認していなかったことが、事故から1ヶ月後の4月8日に露見したのである。それは簡単に訂正できるはずの単純ミスにすぎなかったが、ひとたび政府・自治体・マスコミ等に流した情報について、もしその訂正をおこなえば、「もんじゅ」事故で失墜した動燃の信用がさらに低下するのではないかと幹部職員たちが恐れ、口裏合わせをおこなおうとしたが、それが作業員一人の抵抗により発覚したのである。この虚偽報告事件の発覚は、国民の動燃への不信を決定的なものとし、動燃解体論を呼び起こした。マスコミは動燃を「うそつき動燃」呼ばわりするようになった。

 ・・・(以下略)


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