真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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ウィンズケール・ファイヤー イギリスの事故と放射能汚染 NO2

2013年07月28日 | 国際・政治
 「核燃サイクルの闇 イギリス・セラフィールドからの報告」秋元健治(現代書館)「Ⅵ」は、「繰り返される事故──とまらない放射能漏洩──」と題して、数々の事故や廃液の漏洩などによる放射能汚染問題を取り上げている。イギリスでも、日本と同じような事故が繰り返されていることがわかる。そして、そうした事故を隠蔽しようとし、過小評価しようとする組織的な動きが存在することも同じである。

 「四番目の恐怖」広瀬隆・広河隆一(講談社)の中の「ウィンズケール」に、ジャニー・スミスという女性の次のような証言が出ている。

「別の奇妙な話があります。ロングタワーの中学校に3人の寮母さんがいたのですが、それぞれ子供が一人ずつあって、3人とも同じ時期に白血病にかかってしまったのです。スティーブン(証言者の子供)の医師は、白血病に気づいても、すぐには知らせてくれませんでした。放射能の問題に深入りしたくなかったのでしょう。ここでは誰もがあの工場に関係しているため、話したがりません。政府側がニセの報告書を出してくるので、本当の患者の総数はつかめないほどです。」

 この地域は、小児の白血病が平均的な地域の10倍されているようであるが、実態はそれ以上にすさまじいようなのである。また、同書には食物連鎖に関わる下記のような文章がある。

 「ここウィンズケールでも、メルリン夫妻の飼っているアヒルの卵が孵化したとき、12羽のうち7羽は目が見えなかった。1983年夏のことだ。翌年4月に、夫妻は子供の健康のため引越したが、10羽孵化したうち、3羽は翼が異常に短く、2羽は目が見えなかった。この鳥たちは図(アメリカ・コロンビア川における再処理工場下流の濃縮サイクルの図-略)に示されるように、体内に放射性物質を濃縮してゆく。これはコロンビア川での実測データである。
 水→プランクトン→魚→アヒル、と進む生物の食物連鎖のなかで、それぞれの体内放射能は、驚くほどの割合で濃縮度が高まってゆく。それがウィンズケールの再処理工場のまわりでは、家庭のなかで使っている掃除機の埃から、かなりのプルトニウムを検出する状態である。
 すべての国の政府当局が、この濃縮原理を隠し続けたまま原子力プラントを運転し、悲劇を招いてきた。
 わが国は大丈夫か。実は、問題のウィンズケールに向けて大量の死の灰を船で輸送してきた国こそ、わが日本なのである。」


 原発は、その建設費用や廃炉費用、事故発生の場合の補償費用、廃棄物の処理費用、半永久的に続けなければならない廃棄物の管理などを考えると、民間企業が独自に取り組めるものではなかった。軍事力増強のために原爆や水爆の開発を迫られた原子力先進国はもちろん、原子力の平和利用ということで、原子力政策を推進したわが国なども、それは国家主導であった。したがって、隠蔽や過小評価、住民無視なども国家的なようである。
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 繰り返される事故──とまらない放射能漏洩──

(ⅰ)B204での事故 ・・・略

(ⅱ)高レベル放射性廃液の漏洩 ・・・略

(ⅲ)アイリッシュ海に漂う黒い油膜

 セラフィールドから伸びる海洋放出管から、アイリッシュ海へ低レベル放射性廃液が日常的に流されていた。これは、マン島住民やアイルランド共和国政府の強い非難にもかかわらず、何十年間も続けられた。アイリッシュ海はそれを囲むような海岸線と海流の関係で、放出された廃棄物は、関係者の思惑と違ってあまり拡散せず海底に沈殿した。放射性物質は、潮流や嵐で陸に押し戻され沿岸を汚染した。アイリッシュ海で採れる海産物も、放射能を含んでいた。グリーンピースは長年、英国核燃料公社にたいしアイリッシュ海への放射性廃液の投棄の中止を求めていた。しかし成果はなかった。グリーンピースは実力行使を決意した。

 1983年11月、ヨークシャー・テレビが放送した”ウィンズケール・核の洗濯場”が世の関心を集めていた頃、グリーンピースは、放射性廃液をアイリッシュ海に流す海洋放出管を塞ぐことを宣言した。公社は、密かに海洋放出管の沈められた海底へダイバーを送り、パイプの排水口の形状を変えた。そのためグリーンピースが用意した蓋は合わず、海洋放出管を塞ぐことに失敗した。

 グリーンピースは、公社が高等裁判所に要請し交付された妨害行為の差し止め命令を無視していた。この違法行為の実行後、裁判所はグリーンピースに5万ポンドの罰金の支払いを命じた。しかしイギリス国民の多くは、誰が本当の意味の無法者であるか疑問に思った。なぜならグリーンピースの潜水チームのボートは、高い放射能で汚染されていたからだ。それはセラフィールドから放出が許されない非常に高い放射能レベルのだった

 ことの経緯は、次のようである。1983年11月14日、グリーンピースの船外機付ゴムボートは海洋放出管の先端がある海上へ到着した。そのとき彼らは、海面に浮遊する黒い油膜を発見した。ガイガーカウンターで放射線レベルを測定したら、針が振り切れてしまうほどだった。
 グリーンピースのデイビット・ロバーツは言う。
「マサチューセッツ大学で借りたガイガーカウンターを黒い油膜に近づけたら、針が目盛りを飛び越え作動しなくなった。しかし故障する前、1秒間500カウント以上の高い値を示した。私たちは被爆の危険性を考え潜水を中止した。そしてボートが強い放射能で汚染されたのか心配になった」
 グリーンピースは、港へ引き返した。そして国内放射線防護委員会にゴムボートの放射能汚染の検査を依頼した。やはりボートの底部から高い放射能が検出された。
 このことを知らされた英国燃料公社は、放出管の先端付近の海面を調査し始めた。公社の船で調査に向かった職員は、海面に溶剤の強い匂いがする油膜が漂っているのを発見した。油膜からは、50から100ミリレムの高いガンマ線が計測された。それは通常のバックグラウンド放射能レベルの5000倍から1万倍という異常なレベルだった。


 この件に関して核施設検査局が緊急に調査を始めた。その報告書が出てきたのは翌1984年2月で、放射性廃液の異常放出の原因として運転ミスを指摘し、再発防止に技術的な対策を講じることを英国核燃料公社に要求した。しかしその報告書に書かれていることだけが、異常放出のすべての真相ではなかった。

 グリーンピースのボートが海上にあったとき、セラフィールドでは海洋放出管へ流れていく放射性廃液を汲み上げていた。おそらくは一時的に廃液の放出を停止し保管しようとしていた。このとき作業員が廃液を誤ったタンクへ入れてしまった。いったんそこに入れてしまえば、構造的にもう取り除くことは不可能だった。そのためスタッフは、本来その容器に入れられるべき廃液と一緒に、やむなく海洋放出管から海へ排出した。海は高い放射能で汚染された。

 海岸に漂着した海藻などから高い放射能レベルが検出されたので、海岸線が25マイルも立入禁止となった。しかし禁止措置は、2日間だけだった。この公社の異常放出は、下院でも問題視され、ワルダーグレイプ環境大臣は、放射性廃液の異常放出の原因調査を開始すると飛べた。


 一方、英国核燃料公社は、グリーンピースの行動は無責任だと非難した。ウィンズケールの広報担当者は言う。「グリーンピースの妨害行為はとんでもない違法行為だが、一般の人びとやわれわれ労働者には、何の危険もなかったのは幸いだ。海洋放出管からの排出量と放射能レベルは、通常では、以前より減少している。これはセラフィールドで施設の改良がすすんでいる結果だ。グリーンピースによって干渉されたパイプ状況が調査され、安全が確認されるまで、排出は中止する。その間、廃液は施設内に貯蔵する。」

 1983年12月、農業、漁業、食料省は、海産物には事故前と比べて放射能量に異常は見られず、魚介類の放射能レベルは通常より高いが、急速に減少していると発表した。英国核燃料公社は、放出された放射能廃液はあくまでも規制内だと弁明した。しかし核施設検査局は、操業許可制限値を大幅に上回るレベルの放射性廃液の排出がなされたことで、公社を起訴した。


 1983年11月の異常放出から3年後、1986年12月、再びセラフィールドの海洋放出管から、許されない高い放射能レベルの廃液が海に流された。施設周辺の住民は、海岸に近づかないよう警告された。セラフィールド周辺でのモニタリング結果について農業、漁業、食糧省のジョンマグレガーは言う。
 「人びとは、”必要のない海岸の使用を避けるべき”だ。海岸で放射能汚染の高い場所がある。人びとが汚染度の高い小石や砂を手に取ることは、ありそうもないが、もしそんなことをすれば皮膚から被爆するだろう」
 ”必要のない海岸の使用を避けるべき”という曖昧な表現は、危険であるのかどうかが明確でなく、事故の程度が軽いという印象を人びとに与えかねなかった。また”人びとが汚染度の高い小石や砂を手に取ることは、ありそうもない”というのもまったくおかしなものだった。高い放射能が海に放出されたならば、人びとの安全のため一定期間、海岸は立ち入り禁止にすべきだった。海岸には、人びとに警告する警官の姿どころか、立ち入り禁止の掲示板すらなく、立ち入り禁止はマスコミの報道で伝えられただけだった。


(ⅳ)”隠蔽する文化”・・・略


 http://www15.ocn.ne.jp/~hide20/ に投稿記事一覧表および一覧表とリンクさせた記事全文があります。一部漢数字をアラビア数字に換えたり、読点を省略または追加したりしています。また、ところどころに空行を挿入しています。青字が書名や抜粋部分です。

コメント (3)
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