真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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隠されるアメリカの犯罪、作られるプーチン像

2023年02月04日 | 国際・政治

 イングリッシュ・プラウダが、すでに報じていましたが、日刊IWJ(independent web journal) も、2月3日、下記のような記事を掲載しました。
 オバマ政権下の2014年、”ユーロマイダン・クーデター当時、ウクライナ担当だったヌーランド米国務次官が、上院公聴会で天然ガスパイプライン「ノルドストリーム2」が「海の底の金属の巨塊」になって嬉しいと失言”し、早速、”この失言を報じたロシア『RT』(モスクワに拠点を置くニュース専門局・ロシア・トゥデイ)は、昨年9月のパイプライン爆破は西側のテロという主張を繰り返し、「最大の受益者は米国」であり、ラブロフ露外相は、米国要人による「興味深い自白である」”と指摘したという内容です。

 くりかえし取り上げて来ましたが、バイデン大統領も、ロシアがウクライナに侵攻する前の声明で、”ロシアがウクライナに侵攻した場合、ノルドストリーム2を停止するよう緊密に調整してきた”と明かしています。そして、記者会見で、つぎのようなやり取りがあったことも報道されています。

 ABC News(https://twitter.com/i/status/1490792461979078662)
Pres. Biden: "If Russia invades...then there will be no longer a Nord Stream 2. We will bring an end to it."
Reporter: "But how will you do that, exactly, since...the project is in Germany's control?"
Biden: "I promise you, we will be able to do that." http://abcn.ws/3B5SScx”                               


 バイデン大統領の、”もしロシアがウクライナに侵攻したら、ノルドストリーム2を終らせる”との発言に、女性記者が、”そのプロジェクトはドイツのものであるのに、どうやって終らせるのですか”と質問。バイデン大統領は、”私は約束する、私たちにはそれが可能だ”、と答えているのです。
 こうしたノルドストリーム2をめぐる重大な発言や ウクライナが、米国の資金提供を受けてペストや 炭疽たんそ 菌などの病原体を使った生物兵器の開発をひそかに進めていたという情報(ロシアが侵攻を開始した2月24日に、ウクライナ保健省が東部ハリコフとポルタワの研究施設に病原体の緊急廃棄を指示したとする文書も「証拠」として公表)およびチェルノブイリ原子力発電所で、放射性物質をまき散らす「汚い爆弾」を作っていたという情報などを無視して、ウクライナ戦争を語ろうとするから、プーチン大統領を侵略的悪魔に仕立てあげる必要が出てくるのだと思います。
 ノルドストリーム2が有効に機能すると、ヨーロッパ諸国に対するロシアの影響力が拡大し、アメリカの覇権や利益が損なわれるため、トランプ前大統領も、「悲劇だ。ロシアからパイプラインを引くなど、とんでもない」などと発言しているのです。そして、様々な「制裁」を課したのです。
 
 でも、日本のメディアは、ノルドストリームの問題をウクライナ戦争と関連させることはほとんどせず、「爆破」に関しても、”ウクライナへの全面侵攻を続けるロシアに多くの疑いの目が集まっている”などというNATO諸国の報道を、小さくそのまま伝えているのです。
 せっかくロシアが、ドイツとともに進めてきた天然ガスパイプラインを、自ら爆破するなどということは考えられないことだと思います。
 さらに言えば、ノルドストリーム2が有効に機能すると、ヨーロッパ諸国との関係が深まり、ロシアの将来は明るいのに、わざわざこれからという時に、ウクライナ戦争を始め、それを台無しにするようなことをするわけもなかったと思います。アメリカによる武器売却や供与、合同軍事訓練、また、上記のような細菌兵器や大量破壊兵器の製造などによる挑発が、ウクライナ戦争のきっかけだと私は思います。

 ラブロフロシア外相の指摘するように、ビクトリア・ヌーランドの失言やバイデン大統領の発言が、爆破がアメリカによるものであることを示していると思います。そうしたアメリカの犯罪を見逃すから、戦争が始まったばかりでなく、戦争が拡大するのだ、と私は思います。

 そして、今に気になるのが台湾有事です。アメリカ政府の要人や米軍関係者が次々に台湾を訪問し、また、多額の武器の売却や供与をくり返しました。
 それに連動するように、日本の防衛予算の大幅増額の計画が進んでいます。
 また先日、ロシアと戦うNATOのストルテンベルグ事務総長が日本を訪れ、岸田首相と会談して連携強化を確認しています。さらに、アメリカのオースティン国防長官がフィリピンを訪れ、防衛協力の方針を打ち出しています。それらはすべてアメリカの戦略に基づく対中戦争の準備であり、平和構築のためではないと、私は思います。

 2月1日、朝日新聞は、”安保政策転換 首相は具体論に応じよ”と題する社説を掲載し”戦後の安全保障政策の歴史的な転換というのに、「手の内を明かせない」などと言って具体的な説明を避けてばかりでは、一向に議論が深まらない”と非難しています。そして、野党が、敵基地攻撃に使える米国製の巡航ミサイル「トマホーク」の購入数や、「存立危機事態」における敵基地攻撃はどんな場合に開始するかを問うたことに対する岸田首相のこたえが、「手の内を明らかにしない」というものであったことを、問題視しています。当然だと思います。
 でも、私は「トマホーク」の購入数はともかく、”「存立危機事態における敵基地攻撃”などというのは、日米安保条約のもとでは、日本が決められることではないだろうとも思います。
 すでに取り上げましたが、「指揮権密約」で、下記のように約束されていることが、新原昭治氏が発見した、アメリカの機密解禁文書で明らかになっています。
敵対行為、もしくは差し迫った脅威をともなう敵対行為に対して、すべての日本軍は、海上保安庁も含めて、合衆国政府によって任命された最高司令官の統一指揮下(under the unified command of a Supreme Commander)に入る。(The Special Assistant for Occupied Areas in the Office on the Secretary of the Army(Magruder) to the Assistant Secretary of the States Far Eastern Affairs(Rusk),FRUS,1950,VL.Ⅵ VI,P.1341) 
 
 下記は、「検証・法治国家崩壊 砂川事件と日米秘密交渉」吉田敏浩(創元社)からの抜萃ですが、どこまでも法や道義・道徳基づき、こうした問題に向き合わない限り、日本が望まない中国との戦争に巻き込まれることを避けることはできないと思います。
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                Part1 マッカーサー大使と田中最高裁長官

 「安保法体系」を「憲法体系」よりも優先させる
 この日米両政府と米軍の望みどおりの最高裁判決は、「米軍駐留は合憲」と判断したことで、事実上、安保条約の合憲性も認めたことになります。安保条約にもとづく米軍の駐留が合憲なら、米軍の日本における法的地位を定めた行政協定(現在の地位協定)も、それに基づく刑事特別法も合憲となる、と連鎖的に判断を下したことになるのです。
 そして最高裁判決は、「伊達判決」が指摘し、弁護団も「台湾海峡危機」の例をひいて追及した「日本が直接関係のない武力紛争に巻き込まれ、戦争の惨禍が日本に及ぶおそれ」をもたらす、米軍の日本国外での軍事行動のための基地使用の事実、「米軍駐留は違憲」に通じる実態には目を向けず、問題にしませんでした。それは結局、日本に直接関係のない海外の紛争に、米軍が日本の基地から出動することを、最高裁判所が認めたことを意味します。
 つまり、最高裁は「安保法体系」を「憲法体系」よりも優越させる判断を下したのです。主権在民にもとづく独立国家の根幹である憲法の法体系よりも、軍事同盟である安保条約の法体系を上位に置いたのです。
 それはマッカーサー大使をはじめ米政府。米軍にとって、願ったりかなったりの判決でした。「安全法体系」による米軍の基地運営や訓練実施や戦闘作戦への出動など軍事活動の自由という特権が「憲法体系」によって制約されないことを、この最高裁判判決が保障したことになるのですから。
 日本政府も安保条約によるアメリカとの軍事同盟を通じ、アメリカ中心の資本主義陣営に属して共産主義陣営と対峙するという政策をとる以上、日本における米軍の特権を認める必要があり、最高裁判決を歓迎するのは当然でした。
 田中最高裁長官がこの日本政府の政策に同調し、安保条約に肯定的だったことは、前出の彼自身の発言などからもわかります。
 東京地裁に指し戻された砂川裁判は、伊達秋雄裁判長らとは別の裁判官らのもとで審理されました。そして1961年3月27日、検察側の言い分を認め「米軍駐留は合憲」という最高裁判決を支持し、刑事特別法違反の罪で罰金2000円(求刑は懲役6カ月)の有罪判決が7人の被告に言いわたされました。
 判決当日の「朝日新聞」夕刊記事には、次のような解説が載っています。
「弁護団では、『駐留米軍が日本の戦力となっていることは誰が見てもハッキリしている。それこそ、”一件明白”に違憲の存在なのである』と主張、在日米軍の”性格”と”実態”をやりなおし審でもくり返し訴えていた。
 だが、結局、『上級審の裁判所の裁判における判断は、その事件について下級審の裁判所を拘束する』という裁判所法〔第四条〕の”鉄則”は動かず、この点についての結論も『最高裁と異なる判断は許されない』ということになった」
 こうした差し戻し審の判決からも、最高裁判決が拘束力と権威のある判例となり、以後、他の米軍基地がらみの裁判、違憲訴訟が起こされても、地裁や高裁が「米軍駐留は違憲」や「安保条約は違憲」といった判決を出すことは、まずできなくなるだろうという、日米両政府と米軍の思惑も裏づけられたのではないでしょうか。
 実際、その後、米軍基地内の土地の強制使用の取り消し・返還を求める民事訴訟など、米軍基地がらみの裁判では、「米軍駐留は合憲」と前提したうえで、安保条約が違憲か合憲かの法的判断は司法審査権の範囲外という、「統治行為論」をもちいた判決が出されるようになりました。砂川事件最高裁判決の判例が下級審の裁判所に対して、いわばしばりをかける効果をもたらしたのです。日米両政府と米軍の思惑どおりの展開でしょう。
 
 

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