真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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「ラッセル法廷」、アメリカの戦争犯罪を裁く[国際法廷へのメッセージ]

2023年02月13日 | 国際・政治

 ラッセルは、ベトナム戦争の状況が、ナチスによるユダヤ人絶滅作戦の状況に類似しているとして、戦争犯罪法廷を提案し、「人類の良心に」と題する文章で、「すべての国の人びとよ、戦争犯罪国際法廷に手をかしたまえ」と呼びかけました。

 下記は、動き出した戦争犯罪国際法廷へのラッセルのメッセージです。アメリカという国が、なぜ戦争をくり返すのか、ということがよくわかります。また、アメリカという国が、なぜ、他国の独裁政権や軍事政権と手を結ぶのかということもよくわかります。

 現在、アメリカと一体となったウクライナがロシアと戦っていますが、アメリカはすでに次の戦争の準備を着々と進めているように思います。アメリカのバイデン政権は、昨年暮に、台湾に対する8回目の武器売却を表明しています。そのうち7回は22年に入ってからのことです。台湾有事が近いことを示しているように思います。そのほかにも気になることがたくさん報道されています。

 その一つは、フィリピンへの働きかけです。アメリカは、2014年にフィリピンとの「新軍事協定」に署名し、フィリピンに米軍を再駐留させることによって、中国をけん制する体制を築いていましたが、最近、オースティン米国防長官マルコス大統領と面会し、「防衛協力強化協定(EDCA)」を締結して、米軍が使える拠点と使用権の拡大をとりつけています。
 さらに、防衛費の大増額を決めた岸田首相が、フィリピンのマルコス大統領と会談し、両国の共同訓練等を強化、円滑化するための枠組の検討を継続し、「円滑化協定(RAA)」の締結につなげたいとの考えを示したということも、アメリカに追随する敵対的な中国政策として見逃すことができません。

 また、アメリカのシンクタンク・戦略国際問題研究所(CSIS)が公開した165ページにのぼる台湾有事に関する報告書は、設定の異なる24の戦闘シナリオを分析しているといいます。アメリカは、中国の台湾侵攻を想定した模擬実験(シミュレーション)を重ねているのです。そして、その報告書で、「日本が要だ」強調されていることも見逃すことができません。
 だから私は、アメリカにと一体となって(事実上、アメリカに代わって)ロシアと戦うウクライナのように、日本がアメリカに代わって、中国と戦う国のひとつになるのではないかと心配なのです。

 次に、中央情報局(CIA)のバーンズ長官が、習近平国家主席が「2027年までに台湾侵攻を成功させる準備を整えるよう、人民解放軍に指示を出した」との見方を示したという報道も重大だと思います。
 アメリカのインド太平洋軍司令官時代に中国の台湾侵攻に警鐘を鳴らしたというフィリップ・デービットソン氏も、自民党本部で講演し、2027年までの中国軍の台湾侵攻の可能性の認識は、以前と変わらないとの見解を示したといいます。

 さらに、アメリカの下院は、今月10日、中国に関する特別委員会の設置を超党派の賛成多数で可決したという報道もありました。その際、マッカーシー下院議員が「私が最も心配していることの一つは、中国の後塵を拝することだ」と主張し、「これは現政権で始まったことではないが、現政権は明らかにに状況を悪化させた。我々の経済を弱体化させ、中国の脅威に対し、脆弱にした」とバイデン政権を批判したといいます。それは、このまま中国が成長を続け、影響力が拡大すると、アメリカの覇権や利益が損なわれるので、座視しないということだと思います。中国の後塵を拝することになると、現在のアメリカ社会を維持することができなくなるのだと思います。

 こうしたアメリカの対中姿勢を、下記のようなベトナム戦争に関わる「ラッセル法廷」の内容や湾岸戦争時にブッシュ大統領の戦争犯罪を問うため、ラムゼイ・クラーク元アメリカ司法長官の呼びかけによって開かれた「クラーク法廷」の内容、さらには、アメリカのアジアや中東、ラテンアメリカなどでの武力行使の事実を踏まえて考えると、よほどのことがない限り、「台湾有事」は、2027年ころまでに、必ず起こるということだと思います。

 だから、私は、将来を自民党政権に委ねていてはきわめて危ういと思うのです。

 下記は、「ラッセル法廷─ベトナム戦争における戦争犯罪の記録─」ベトナムにおける戦争犯罪調査委員会編(人文選書8)からバートランド・ラッセルの「国際法廷へのメッセージ」の全文を抜萃したものです。
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                    国際法廷へのメッセージ
                                                バートランド・ラッセル

 戦争犯罪国際法廷がここに召集されたのは、アメリカがベトナムで残虐な戦争をつづけているからであります。この戦争の原因は、世界人口のわずか6パーセントを占めるにすぎないアメリカが、世界の自然資源のじつに60パーセントを支配しているという事実にあります。
 この帝国を守るためにアメリカの資本家たちは、アメリカの経済支配にたいする人民の抵抗を粉砕しようとして、巨大な軍隊と軍事機構を創設しなければなりませんでした。アメリカはまた、全世界から社会革命を除去しようと努力し、そのなかでいくつかの技術を発達させております。アメリカの支配者たちは、侵略の近代的形態は国内の破壊活動である、と口癖のように言います。しかし、彼らのいう国内の破壊活動とは、被圧迫民族の献身的で自己犠牲的な指導者がいだく社会的変革への要求にほかならないのです。
 実際には、侵略の近代的形態は、外国勢力の利益を擁護するかいらい政権の樹立です。かいらい政権は、次のような基本的性格をもっています。つまり、彼らは外国投資の現地保証人として機能し、彼らかいらいの売国的行為に戦いをいどむような政治的敵対者をすべて残忍なやりかたで粉砕する、そして社会革命の勢力が手におえないほど強力になると、彼らは支配者であるアメリカが、社会革命の鎮圧という、ほかならぬその目的のために自ら創設した巨大な軍事機構を用いるよう懇願するのであります。ある国々が外国資本家に従属する腐敗した独裁政治の打倒に成功したとします。するとアメリカは、莫大な金を投じてCIA(中央情報局)をあやつり、アメリカの権力に刃向かう人民の政府を買収したり、抹殺したり、クーデターによって転覆したりするのです。
 こうした残酷な搾取の代価が一般民衆の苦難と飢餓と疾病──アジア、アフリカ、ラテン・アメリカ諸国の第一の特徴──であることを、アメリカ政府はよく承知しています。アメリカによって任命され、保護されたこれらの国の社会的勢力は、苦難や飢餓や疾病を解決する能力がないだけではありません。彼らの存在こそ、じつはこれらの害毒を永続させるものなのです。貧しい国々から飢餓や疾病を取り除く方法はただひとつしかありません。それはかいらい政権を打倒し、アメリカの力に立ち向かうことのできる革命をおこすことです。現在ベトナムでおこっていることがまさにこれです。だからこそアメリカは、あらゆる種類の拷問と殺人実験をおこない、ベトナム人民の革命を押しつぶそうとしているのです。
 アメリカが現在、ベトナムでおこなっていることは、かつてのヒトラーが東ヨーロッパでおこなったこととまったく同じであり、その理由も基本的にはまったく同じものです。アメリカは、ベトナムが人類史上の英雄的かつ重要な事件であるばかりでなく、アメリカの力にたいする一つの危険な徴候えあることを認めています。アメリカは、ヒトラーがスペインにたいしたと同じやり方でベトナムをを考えているのです。スペイン革命は、他のヨーロッパ諸国に革命の息吹を吹き込むことができるものでした。
 そこでナチは、現地のファシストとともにこの革命を押しつぶそうとし、非人道的な兵器や大量殺戮の実験的方法をためす試験場としてスペインを利用したのです。アメリカが現在ベトナムでおこなっていることの意義の深刻さは、ここにあるのです。
 ベトナムで、アメリカは有毒化学薬剤、毒ガス、神経麻痺ガス、細菌兵器、黄燐ナパームや悪魔的な破砕爆弾を実験していますが、これはたんにベトナムを破壊するためではなく、さらに他の戦争に備えるためでもあるのです。ベトナムで実験したガスやナパームを、アメリカ政府はすでにラテンアメリカ諸国に持ちこんでいます。ペルーで、コロンビアで、ヴェネズエラで、そしてボリヴィアで、現在、これらの兵器は、土地改革、食糧、および警察による拷問の廃止のためにたたかっている農民パルチザンにたいして使用されているのです。世界の革命はつづき、それにたいして世界の反革命は凶暴に立ち向かう。これがベトナム問題のもつ偉大な意義であります。
 これは基本的な教訓であり、この教訓を無視しようとするものは、たんに有害な幻想をふりまくだけでなく、他の諸国民を幾世代にもわたって苦しみと死の犠牲にさらすことになるでしょう。
 侵略という言葉は、軍隊による国境の侵犯という意味で用いられる習慣になっています。しかしこれは、国連や、国際司法裁判所や、ハーグにとって都合のよい、形式的で習慣的な意味での侵略にすぎません。世界市場もまた侵略の一つの主要な形態であって、国際価格は貧しい国々には不利な結果をもたらし、富める国々はアジア、アフリカ、ラテン・アメリカ諸国を窮乏させるためにこの国際価格をつくりだすのです。飢餓に苦しむ1千万人のインド人は、現在一種の侵略を経験しています。強国や支配者集団が、世界の人民を無慈悲にも搾取しているのです。
 だからこそ、これらの機関に被圧迫民族の要求や苦悩を反映させることができないし、全世界の被圧迫民族とまったく無関係な種類の侵略しか、現在公認されていないのです。たしかにアメリカは、ベトナムに武力侵略をおこなっていますが、これは、もうひとつの、もっとも根本的な意味での侵略がベトナム人民の革命が搾取国の侵略に挑戦しているからなのです。
 この戦争犯罪国際法廷は、私がここに述べたような方向で世界のできごとを見る勇気を、全世界人民に与えるものと私は期待しています。私は、この法廷が今後も存続されることを希望します。そうすれば法廷は、将来必要なときに開廷し、全世界人民がすべてベトナムの例にならうまでは、今後とも避けることができないであろう戦争犯罪を暴露し、告発することができるでしょう。

 

 

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