真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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「大イスラエル主義」とガザ猛攻撃

2023年11月29日 | 国際・政治

 イスラエル軍は、ハマスの攻撃を受けて、これまでに1万数千人の子どもを含むパレスチナ人を殺害し、猛烈な爆撃でガザのライフラインの大部分も破壊しました。だから、たとえ停戦が実現しても、パレスチナの人たちは、到底もとの生活には戻れない状態になっていると思います。それが、イスラエルの「大イスラエル主義」の思想に基づく戦略であることは、ネタニヤフ政権(リクード)の政治家や政権に関わる極右の政治家の発言から、疑う余地がないと思います。
 だから、イスラエル軍による常軌を逸した無差別なガザ爆撃や、病院、難民キャンプ、学校等に対する攻撃は、パレスチナ人を恐怖に陥れるとともに、ライフラインの破壊によって、再びもとにもどれないようにして、「パレスチナの地」からパレスチナ人を追い出すことが目的なのだということです。

 先日、アラブ・ニュースは、下記のようなことを伝えていました。
 エジプトは、ガザのパレスチナ人をシナイに押し出そうとするイスラエルのプランに対し、法的措置を取ると圧力をかけたという記事です。イスラエルのガザ地域猛攻撃によって、エジプトに押しよせる200万を超える民間人を受け入れることを、カイロは拒否するというような内容です。
Egypt threatens legal action against Israel for plan to push Gaza Palestinians to Sinai.
Egyptian Prime Minister Mostafa Madbouly reiterated Cairo's refusal to take in Gaza's more than two million strong civilian population as Israel's onslaught on the territory persists.”

 エジプトは、イスラエルの「大イスラエル主義」に基づくガザ猛攻撃の意図をきちんと見抜いて対応しているということだと思います。

 だから、国際社会が、イスラエルの政治家の「大イスラエル主義」の考え方の過ちをきちんと指摘して、国際法を守るよう圧力をかけるべきだと思います。戦闘休止が2日間延長されたといっても、それは、国際世論の非難をかわすガス抜きのようなもので、いずれ再び一方的な爆撃や襲撃がくり返される可能性が大きいだろうと思います。

 現在、戦争犯罪を重ねるイスラエルに制裁を課す動きや、ネタニヤフ首相に逮捕状を出すような動きはありませんが、それは、アメリカがイスラエルと「特別な関係」にあり、今回もいち早く軍事支援を表明したからだと思います。
 世界中に数え切れないほどの基地を置き、圧倒的な軍事力と経済力を持っているアメリカの影響力の大きさを象徴しているように思います。また、下記の「イスラームに何がおきているのか」小杉泰編(平凡社)からの抜粋文にあるような、善悪を逆様に見せる情報操作も見逃せません。

 
大イスラエル主義」の考え方を持つイスラエルの政治家の見逃すことのできない発言は、以前からくり返されていますが、しばらく前、下記のような報道がありました。
 
イスラエルの極右政党党首のスモトリッチ財務相が「パレスチナ人など存在しない」といった暴言を連発し、パレスチナやアラブ諸国が猛反発している。イスラエルとパレスチナの間では暴力の連鎖で死傷者が膨らんでおり、緊張が悪化する恐れがある。
 同氏は19日にパリで開かれたユダヤ系フランス人らの会合で「パレスチナ人はこの100年未満でつくられた」「歴史も文化もない」などと述べた。演壇で示された「大イスラエル」とする地図には隣国ヨルダンも含まれていた。”

 また、メナヘム・ベギンの率いた「ヘルート」の流れを汲むネタニヤフ首相をはじめとするリクード所属の政治家が、「イスラエルの支配がイスラエルの地全域に及ぶべきだ」と考えていることも見逃してはならないと思います。
 だから、不当な支配に抵抗するハマスの奇襲攻撃を受けて、ネタニヤフ首相は「血まみれの怪物を根絶やしにする準備できている」などと語り「ハマスの殲滅」を宣言したのだと思います。
 モシェ・フェイグリン氏が、この問題の唯一の解決は、ガザの完全な破壊であり、核兵器なしで、ドレスデンや広島のように破壊することだと言ったこと、また、政権に近い政治家が、アラブ人のイスラエルに対する悪感情が反ユダヤ主義に起因している以上、彼らと平和裏に共存しうると考えるのは幻想に過ぎないと言ったり、ガザ市民すべてを潜在的なハマス・ハマス支持者とみなし、丸ごと攻撃対象とみなすような発言をしていることなどを踏まえて、イスラエルに圧力をかけ、平和主義に徹した行動を働きかけるべきだと思います。
 パレスチナ人の生命や人権を尊重する立場で、イスラエルに対する制裁や、戦争犯罪をくり返す人たちに対する逮捕状を考慮すべきではないかと思うのです。

 下記は、「イスラームに何がおきているのか」小杉泰編(平凡社)から抜萃しましたが、9・11がパレスチナの問題と深くかかわっていることがわかります。イスラエル・パレスチナ戦争の問題は、イスラエル建国以来の問題であり、昨日今日の問題ではないということです。

 臼杵陽氏の指摘を踏まえれば、私たちが、アメリカの巧みな情報操作によって、”アメリカが表彰(リプレゼント)する世界からこぼれ落ちる多くの人々”の思いをくみ取ることができなければ、世界の平和はないということだと思います。
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        「<世界>はムスリム虐殺に沈黙するのか? ビン・ラーディンとパレスチナ」
                                                   臼杵陽

 パレスチナ問題に沈黙する<世界>
 世界を変えた「9・11」はアメリカの悲劇の日であったが、パレスチナにとっても悲劇の日となった。パレスチナは、あたかも囚人のように、人々の敵意の視線にひとたび晒された上でその姿を消してしまったからである。全世界はアフガニスタン、そしてその難民に目を向けた。アメリカが犯人と指名したウーサマ・ビン・ラディーンを匿ったタリバーンが彼を米側に引き渡さないために、米軍がアフガニスタンに空爆を開始した。しかし、問題の根源はパレスチナではないのか、と中東イスラム世界の多くのムスリムは考えたはずである。なぜなら、パレスチナ難民はすでに半世紀にわたって放置され、イスラエル建国直前のデイル・ヤースィン村の虐殺に始まり、これまで幾度となくパレスチナ人虐殺事件が起こってきたにもかかわらず、<世界>はその虐殺には沈黙してきたからである。
 事件発生直後からDFLP(パレスチナ解放民族戦線)が犯行声明を出したとの報道が流れた。パレスチナの現状から判断してDFLPによる犯行はありえなかった。事実、パレスチナ暫定自治区のラーマッラーにあるにDFLPの事務所が即座に報道に否定した。しかしテロの犯人探しの過程で、パレスチナが世界の矛盾の中心的な問題であることを図らずも露呈した。テロとパレスチナを結びつける報道はこれだけではなかった。アメリカの国際メディアを代表するCNNも事件直後からエルサレムのパレスチナ人が歓喜している映像を流し始めた。「東エルサレム市街」と称する場所で、パレスチナ人女性が「ザガーリード」と呼ばれる喜びを表現する舌笛を鳴らしていた。この映像は執拗に繰り返して流された。
 誰もが湾岸戦争時の油にまみれた海鳥の姿と重ね合わせたことだろう。アメリカの代表的なメディアによる「事実」の捏造である。パレスチナ人たちは、悲しみに沈む世界に対して、歓喜乱舞する者達として対峙させられた。パレスチナはテロを支持しているという意図的なメッセージが込められた、湾岸戦争以来、何度も経験した政治的な構造であった。それような構図に抗するように、アラファートPLOの議長は、アメリカ国民に対して哀悼の意を表明し、犠牲者のために献血までも行うという政治的パフォーマンスを行わざるをなかった。アメリカのメディアは、テロを支持するパレスチナ人を拡大して見せる一方で、そのテロから自らを守るためとして、パレスチナ人への国家テロとでもいうべきイスラエルの暴力的な蛮行を世界の視野から遠ざけるメカニズムとして強力に作用したのである。

 なぜパレスチナ問題は今回の事件を通じて黙殺されなければならなかったのか。自爆テロによるこの悲惨なジェノサイドに関して直視しなければならないのは、アメリカが表彰(リプレゼント)する世界からこぼれ落ちる多くの人々がこの前代未聞のテロ行為に拍手喝采した現実である。無差別虐殺であるこのテロを礼賛しているからではなく、アメリカが攻撃されたという事実に対して少なからず留飲を下げた人々が存在するということこそ注目すべきであろう。それは「反米」という大きな共鳴板があったからに他ならない。アメリカのいう<世界>の反対側から現実を考えてみる必要がある。アメリカが各地域で起こる諸問題に積極的に介入している以上、アメリカの<帝国>的な振る舞いをもとに、今回の悲惨な事件を位置づけて見る必要があるだろう。その意味で、パレスチナ問題こそがその核心にある。なぜなら世界のムスリムにとってパレスチナはイスラエル建国以来、黙殺され続けてきた未解決の問題の象徴であるからだ。<世界>はパレスチナ人の虐殺に対して沈黙してきたのである。
 アメリカ自体は「9・11」以降、急速に戦争モードへと入っていき、自制のメカニズムも発動させず、予定通りというべきであろう。10月7日には米英軍によるアフガニスタンへの空爆を開始した。アメリカは正義を振りかざすカウボーイさながらに、断固としてテロと戦う、という決然たる政治的メッセージを発したのである。本当にビン・ラディーンは犯人になのかどうか、確固たる証拠も開示されないまま、既成事実化された攻撃によってアメリカの作り上げたシナリオ通りに事態は進み、新たな現実が作り上げられている。それは、1990年の湾岸危機、翌年初めの湾岸戦争とよく似たシナリオであった。

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