「博士の愛した数式」
小川洋子
新潮社
数学と恋愛。
この2つが結びつくなんて、思いも寄らなかった。
数学といえば、苦手な受験科目。問題の答えはきちんと決まっている
のだが、その答えを見つけるために方程式を解きほぐしていく作業には、
何の楽しみを見つけることもできなかった。
一方、恋愛も、あまり得意とはいえない。こうすれば上手くいくという
完璧な方法は存在しない。答えがどこにあるか分からないまま、進んで
いかなければならない。
好きになった相手に近づけた瞬間は楽しいが、傷ついたり、悲しいこと
もある。
「博士の愛した数式」に登場するのは、風変わりな数学博士と、小学生
の子持ちの家政婦だ。この2人の間で共有できる話題は、皆無に等しい。
まして、博士の記憶できる時間は80分に限られており、前の日の会話の
内容さえ覚えていないからだ。2人が共有できたのは、数字に関する話題
だけだった。
一見、無味乾燥だという先入観を持ってしまいがちな数字の世界。
しかし、家政婦の私は、博士とやりとりするうちに、数字が持つ世界の
奥深さに気づいていく。数字は、ひとつひとつをじっくり見ていくと、
これまで気がつかなかった法則を発見できることがある。数字同士の関係
を探っていくと、似たもの同士の集まりだったり、意外なつながりがあっ
たり、人間関係のようにも感じられる。
家政婦の私は、数字の話題を通して、数字の世界を中心に生きている
博士の心に触れることになる。ただし、2人の間では、「好き」とか
「愛している」とか、相手に自分の思いをぶつけるチャンスはない。
それでも、家政婦は、さらに記憶を失っていくことになる博士の人生に
寄り添っていく。
著者は、数学と恋愛に共通項を見出し、人の感情を織り交ぜ、心にしみる
物語に仕立て上げた。
恋愛という言葉からイメージするものとは、少し離れてしまうかもしれない
が、「人を好きになるって、こういう感じもいいなぁ」とじんわりしみてきた。
“彼氏”との出会いもいいけど、一緒の時間、一緒の世界をじっくり共有でき
る相手との出会いも素敵だ。
小川洋子
新潮社
数学と恋愛。
この2つが結びつくなんて、思いも寄らなかった。
数学といえば、苦手な受験科目。問題の答えはきちんと決まっている
のだが、その答えを見つけるために方程式を解きほぐしていく作業には、
何の楽しみを見つけることもできなかった。
一方、恋愛も、あまり得意とはいえない。こうすれば上手くいくという
完璧な方法は存在しない。答えがどこにあるか分からないまま、進んで
いかなければならない。
好きになった相手に近づけた瞬間は楽しいが、傷ついたり、悲しいこと
もある。
「博士の愛した数式」に登場するのは、風変わりな数学博士と、小学生
の子持ちの家政婦だ。この2人の間で共有できる話題は、皆無に等しい。
まして、博士の記憶できる時間は80分に限られており、前の日の会話の
内容さえ覚えていないからだ。2人が共有できたのは、数字に関する話題
だけだった。
一見、無味乾燥だという先入観を持ってしまいがちな数字の世界。
しかし、家政婦の私は、博士とやりとりするうちに、数字が持つ世界の
奥深さに気づいていく。数字は、ひとつひとつをじっくり見ていくと、
これまで気がつかなかった法則を発見できることがある。数字同士の関係
を探っていくと、似たもの同士の集まりだったり、意外なつながりがあっ
たり、人間関係のようにも感じられる。
家政婦の私は、数字の話題を通して、数字の世界を中心に生きている
博士の心に触れることになる。ただし、2人の間では、「好き」とか
「愛している」とか、相手に自分の思いをぶつけるチャンスはない。
それでも、家政婦は、さらに記憶を失っていくことになる博士の人生に
寄り添っていく。
著者は、数学と恋愛に共通項を見出し、人の感情を織り交ぜ、心にしみる
物語に仕立て上げた。
恋愛という言葉からイメージするものとは、少し離れてしまうかもしれない
が、「人を好きになるって、こういう感じもいいなぁ」とじんわりしみてきた。
“彼氏”との出会いもいいけど、一緒の時間、一緒の世界をじっくり共有でき
る相手との出会いも素敵だ。