ゆるっと読書

気ままな読書感想文

【人間の土地へ】日本で暮らす私は、何を大切に生きるのか

2021-01-31 15:33:16 | Weblog


「とにかく、読んでみてほしい」というしかない1冊。

テレビや新聞などでは、なかなか分からない。知ることができない、シリアという国。
そこで暮らしている人々の暮らしや習慣について、著者が出会った人々や出来事を通して 描かれている。
読み進めるうちに、遠い国のことだという先入観は消えていき、 生きていくうえで、必要なものは何なのか? という問いが浮かんできた。

シリアと日本との間には、様々な違いがある。
日本は、経済的に豊かであるとされ、空爆で生命が脅かされることはない、安全だ。
シリアの情勢は悪化し、一般の市民が安全で暮らせる状況ではなくなった。
しかし、情勢が悪くなる前のシリアの人々の生活の営み、家族の関係に「豊かさ」を感じるところもあった。

シリアの人々は、家族を大切にする
助け合う
男性と女性の役割の違いがある
土地に根差した暮らし、経済がある 日本とは異なる部分も多いけれど、日本で暮らす人々、家族と共通する部分もある気がしてくる。

著者は、日本人女性で初めて世界2位の高峰K2に登頂した小松由佳さん。
小松さんはK2登頂後、山の麓で生活を営む人々に興味を持つ。
シリアで出会った人たちと交わり、日本とシリアを行き来する。
シリアの知人、友人を通して、情勢が急速に悪化していく過程を見てきた。

私たちが「内戦」と呼ぶものを、別の人は「革命」と呼ぶ。
立場が変われば、捉え方が変わる。
立場も、本人が主体的に選んだものとは限らない。
大切な家族を守るため、生活を維持するため、目の前にあった方法を選択した結果かもしれない。
正義とは、善悪とは、何か。
日本で暮らす私自身は、何を大切にして、生きるのか? 問い直した。
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【エンド・オブ・ライフ】命には必ず終わりがある。積極的に考えたいテーマではないが、読後は晴れやか。

2021-01-12 19:59:11 | Weblog








「命には必ず終わりがある」ということは、分かっているけれど、
自分自身の「死」には、向き合いたくない。
身近な人、大切な人の「死」についても、積極的に考えたいものではない。

ただ、向き合わざるを得ない時は必ず来るし、
考えたくなくても、考えなくてはならない時が必ず来る。

そう思い、佐々涼子さんのノンフィクション「エンド・オブ・ライフ」を購入した。
いつでも読み始められるように机の上に置いていたのだが、「重そうだなぁ」「気が沈んでしまうかも」という気持ちがあり、表紙をめくるまでに少し時間がかかった。

新しい年を迎え、「えいっ!」と気合いを入れて読み始めたら、
一気に、読み終えてしまった。
確かに「重い」エピソードも綴られている。

しかし、あぁ、こういう命の閉じ方もあるのだと、教えてもらえた。
必ずしも「辛い」「重い」ばかりではないのだということを知ることができ、
救われる。

自分自身が希望するような命の閉じ方ができるのかどうかは分からない。
考えていても、いざ、その時が近づいてきたら、心が揺れて乱れてしまうかもしれない。

でも、命には必ず終わりがあるということに向き合わないまま、
ただ恐れている状態より、本書を通していくつかのケースを知ることができたのは
良かったと思う。

重いテーマだと敬遠する気持ちのハードルを乗り越えて、ぜひ、読んでほしい1冊。

エンド・オブ・ライフ (集英社インターナショナル)
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