ゆるっと読書

気ままな読書感想文

【祝婚歌】心に響きます

2011-10-30 09:49:02 | Weblog
一本の茎の上に
クリエーター情報なし
筑摩書房

 

 

茨木のり子さんのエッセイ「一本の茎の上に」(筑摩書房)のなかに、とても素敵な詩が紹介されていました。

茨木さんは「いっぺんで好きになってしまった」と書いていますが、

私も、とても素敵な詩だと思います。

 

 

 

吉野弘さん「祝婚歌」という詩です。

結婚する二人に贈られたものですが、特に下記に引用している後半の箇所は、長年つれそわれたご夫婦、彼氏・彼女の間でも

心に響きそうです。

 

 

正しいことを言うときには

少し控えめにするほうがいい

正しいことを言うときは

相手を傷つけやすいものだと

気付いているほうがいい

立派でありたいとか

正しくありたいとかいう

無理な緊張には

色目をつかわず

ゆったり ゆたかに

光を浴びているほうがいい

 

健康で 風に吹かれながら

生きていることのなつかしさに

ふと 胸が熱くなる

そんな日があってもいい

そして

なぜ胸が熱くなるのか

黙っていても

二人にはわかるのであってほしい

 



この詩 

離婚調停中のご夫婦に、弁護士さんがこの詩を見せて、「ほんまに、別れていいんやね?」って、意思を確認するために使われることもあるそうです(;一_)

 

結局、男女の関係は、お互いに、「出会えてよかった」って、思いあえるかどうか。なのかもしれないですね。

 

 

 

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【小指のおかあさん】夢を実現するためのステップ

2011-10-20 21:33:32 | Weblog
小指のおかあさん
クリエーター情報なし
ポプラ社

 

 

玉田さとみさんの「小指のおかあさん」は、玉田さんの次男で聴覚障がいのある宙さんの誕生と子育てについて、そして、日本初の手話で学べる学校「明晴学園」設立までの道のりについて書かれた本です。涙したり、温かい気持ちになったり、うなづいたり、いろいろな思いを抱いた本でした。

 

本書の帯には、「あきらめなければ、夢は叶います」と書かれています。

 

読み終えて感じたのは、「あきらめない」ということは、単純に「気持ち」の面であきらめないというだけでなく、「どうしたら実現できるか」を考えて、実践していく、壁にぶつかっても実践を続けていくことなんだろうなぁ。と思いました。

 

私は、気持ちだけで行動しがち。

特に明確なゴールの設定がなく、

もちろん戦略もきちんと立てたりしていないです。

「これは、取り組んでみたいことだわ。うん、よし、やってみよう」。

みたいなノリだけで行動して、うろうろしています。

 

行動したことを後から後悔することはないけれど、でも、それだけではダメなのかもしれないと、最近、思うようになりました。

 

素敵だなと思う人たちは、自分の事業を起こしていたり、自分のブランドを確立していたりします。ゴールが明確で、ゴールに到達するために戦略をたてて、思考錯誤しながらでも、進んでいってるように見えます。

 

取材や情報発信をする人は、人と人の間を情報でつなげる媒介者です。

いわば「他人のふんどしで相撲をとってる」ので、「あなた自身は何をしている人?」と問われた時に答えることが難しいです。

それにしても、私自身は何をどうしたいのか、もう少し明確に、ゴールと戦略について考えないといけないように思います。

 

 

 

夢を実現するためのステップとして、参考になったは、玉田さんたちが実践した4つの活動です。

 

1:問題点を整理する(問題の数値化、見える化)

2:専門家になる(どんな質問を受けても答えられるようにする)

3:行政への要望

(一方的なお願いをするのではなく、相手が賛同したくなるような材料を用意する)

4:新しい分野を創りだす(新しい価値観の創造、賛同する人たちを仲間に)

 

自分たちの活動や要望について伝える具体的な手法「1分プレゼン」のアイデアも、「なるほど」でした。

 

 

自分の思いを、一方的に発するだけでは、相手には届かないということ。

相手の心に響くように、そして、相手が共感し、自分の活動に賛同したり、協力してくださるように伝えることが大事ということ。

 

この点も、心にとめておきたいと思ったポイントでした。

 

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【敗れざる者たち】勝負の舞台

2011-10-05 00:21:26 | Weblog
敗れざる者たち (文春文庫)
クリエーター情報なし
文藝春秋

 

 

沢木耕太郎のスポーツノンフィクション「敗れざる者たち」。

初版は1979年。かなり古い作品で、取材対象となった野球選手、ボクサー、競馬関係者の現役時代を、私はまったく知りません。

 

カシアス内藤、榎本喜八、土屋正孝…。

正直にいうと、名前を聞いても分かりませんでした。

 

でも、この作品は10代、20代の時ではなく、ちょうど今、読んでよかったなと思います。

 

「敗れざる者たち」には、「勝負の世界に何かを賭けて、喪っていった者たち」というテーマで貫かれた、6つの短編が収められています。

 

プロの世界に入ったものの、ヒーローになれなかったスポーツ選手たちに注目して、

天才の素質をもった者が、なぜ天才になれなかったのか。

プロの舞台に上がったものの、活躍できる人とできない人を分けるものは何なのか。

プロの勝負の舞台から、いつ、どのように降りるのか。

引退後の人生は?…。

こんな問いを持ちながら、取材されたものだと思います。

 

私が、一番じんときたのは、「3人の3塁手」という作品の中で、

著者が、巨人の長島茂雄選手と3塁のポジションでライバルだった難波昭二郎氏を取材して感じたことを書いた箇所でした。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

眼を上げると、壁に大きな写真が掲げられていた。長島と難波が映っている。それは東の長島と西の難波との写真ではなく、“栄光の背番号3”の長島と、“栄光の背番号3”を売る難波がパブリシティ用に握手している写真だった。

不意に訳もなく理不尽としかいいようのない、熱い衝動がこみあげてきた。

 幸せですか、大事なものを手にいれたのですか、心残りはないのですか、口惜しくはないのですか、本当に幸せですか・・・。

 (中略)

 そんなことを言う権利は誰にもありはしないのだ、と気づいたからである。

 誰が“本当に”などと断言できよう。たとえ“形”だけでも、たとえ“もろく”とも、幸せの姿を身にまとうために、人は悪戦苦闘し、難波もまた悪戦苦闘してきたのだから。

 (中略)

 忘れ去ろうとし、彼はできた。

彼にそれができたのは、何かが欠けていたからだ。プロスポーツマンとしての何かが。しかし、それは大事な何かを持っていたということと同じなのだ。プロスポーツ以外の世界で生きるための・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 一選手として活躍できるかどうかは、プロ野球という舞台での勝負。

しかし、活躍の機会に恵まれず、選手として必要とされなくなった時、目の前にある現実をどう受けとめ、その後の人生をどのように切りひらいていくのか。

それもまた、一つの勝負だと思いました。

 

 

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