ゆるっと読書

気ままな読書感想文

【殺人者たちの午後】インタビューという不思議な行為

2011-11-28 00:11:54 | Weblog
殺人者たちの午後
クリエーター情報なし
飛鳥新社

 

「殺人者たちの午後」は、イギリスの作家トニー・パーカー氏による殺人者たちのインタビュー集です。日本語訳は、沢木耕太郎氏。

 

人は人を殺すとき、どんな状態で、どんな思いでいたのか。

 

人を殺した後、どんなふうに生きていくのか。

 

とても重いテーマと思うのですが、殺人者も「人」。

 

人を殺す人と、殺さない人との間にある「何か」は、見えるようで、見えないと感じさせる本でした。

 

個人的に興味深かったのは、沢木さんの「訳者あとがき」です。

 

「すぐれたインタビュアーとはどういう存在なのか」。

 

ということについて、沢木さんは次のように書かれています。

 

「まず、何より好奇心を持っていること。」

 

「次に、本質的なところで世界と人とに肯定性と謙虚さを持っていること」

 

「そして、最も大事なものが、理解力と、想像力といってもよい洞察力を持っていることである」

 

取材させていただく機会のある私にとって、頷かされるポイントずばりです。

 

さらに、沢木さんは「インタビュー」という行為について、次のように書かれています。

 

「それにしても、インタビューとは不思議な行為である。多くの場合、一面識もない相手と、インタビューという方法を媒介にして人間と人間との関係を構築していく。もちろん、そこには限界がある。理解したいという情熱と、理解されたいという願望がぶつかり合い、訊ね、答え、耳を澄ませて聴いてもなお、やはりどうしても到達できないところがある。それがインタビューという方法を媒介して切り結ぶ人間関係の限界でもあるのだ」

 

「殺人者の午後」が出版されたとき、ある雑誌に沢木さんが紹介されていたトニー・パーカーの手紙の一節。この「あとがき」からのものでした。

 

「書くことは才能や天性とはまったく関係がない。重要なのは、孤独に耐える力と決断力、勤勉さ、そして取材対象者との密接な結びつきである」

 

 インタビューを介して築く人間関係には、限界があります。その限界に、孤独を感じることもありますが、それでもなお相手と密接な関係をつくろうと、最大限ぎりぎりのところまで相手に迫っていく努力をできるかどうか――。

 

 これは、インタビューだけでなく、人と向き合う仕事をしている人には通じるところがあるかもしれません。

 

トニー・パーカーの手紙の一節、実は、私、今年の手帳に写してありました。

 

そろそろ2012年の手帳にしなくては!

 

もう一回、写しておきたいと思います(*^_^*)。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【ボクには世界がこう見えていた】ある障がい者の経験の記録

2011-11-21 20:29:36 | Weblog
ボクには世界がこう見えていた―統合失調症闘病記 (新潮文庫)
クリエーター情報なし
新潮社

 

小林和彦さんの「ボクには世界がこう見えていた 統合失調症闘病記」(新潮文庫)は、

早稲田大学を卒業して、アニメのお仕事をされていた小林さんが、精神に障がいをきたしたときの体験、入院生活や治療のこと、お仕事のことなどについて記録した本です。

 

発症したとき、小林さん自身の目に、何が、どのように見えたのか。

どんなことを考えたのか。

どんな行動をしたのか。

統合失調症と診断されて、病について考えたことなどが盛り込まれています。

 

とても辛く、苦しい体験が書かれている箇所は、読んでいるほうも苦しい感じがしてきます。しかし、辛い経験をされた後、現在も治療を続けながら生活されている著者が、最終章に書かれていることは、とても素敵です。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

『一番わからないのは、みんな“この一線を越えてしまったら帰ってこれなくなる”という、正気と狂気の境で踏みとどまった経験があるのかないのか、ということだ。そこから一歩踏み込んだらどうなるのか、ということを知っているのだろうか。(中略)』

『でも、本当に越えてはいけない一線を越えて、何とか人格までは破壊されずに生還できた人間として、その先に見えた世界を克明に書き記すことは、僕の責務であるような気がする。精神科医や専門家でも、病気のリアルな体験はしていないだろうし、一般の人たちにとっても参考になるはずだ』

 

『統合失調症は、どんなに辛い幻覚妄想に襲われても、死に至る病ではない。全ての統合失調症患者にとっての一番大きな使命は「生きていく」ことであると思う』

 

『“普通に生きる”ことが健常者でも難しいご時世ならば、必ずしもノーマルな生き方をしなくったっていいのだ。病気とうまくつきあいながら、飼いながらしながら、個性的に生きていけばいいと思う』

(最終章 「障害があっても」より引用)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

幻覚や妄想の状態は、障がいのない人には、なかなか分からない部分が多く、家族にとっても同様かもしれません。

障がいを抱えたご本人は、たった一人でその状態を向き合わなくてならず、深い孤独を想像します。

 

それでも「生きていく」。

力強い言葉です。

 

障がいのある・なしに関わらず、どんなに辛く、たいへんなことがあっても、

とにかく「生きていく」こと。

 

最近、本当にそう思うことが多くなりました。

 

 

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【大津波のあとに】静かに受け止める

2011-11-07 21:36:45 | Weblog

 東日本大震災のあと、それまで以上に、テレビを見なくなりました。

 

テレビ番組は、「悲惨さ」を強調するばかり。

しばらくすると、今度は、被災された家族の話や、支援者の活動をとりあげて、

今度は、ひたすら「感動」を煽っているように見えました。

 

そんなテレビ番組を見ても、何もならないように思ったからです。

 

・・・というのは、言い訳。

自分が被災地へ行って報道してもいないのに、偉そうな言い訳です。

 

私の場合、本当は被害の映像を見ることが怖くて、耐えられませんでした。

気分が悪くなり、眠れなくなりそうな気がして、テレビを見ることを避けました。

 

でも、先日、今年3月に被災地で撮影された映画「大津波のあとに」を見にいきました。

 

静かな映画です。

余計な音楽やナレーションはありません。

「悲惨さ」や「感動」をやたらと煽るような演出も特にないと思います。

 

被災地に行き、監督が見たもの、出会った人が、そのままの映画。

大津波のあとの風景に、自分も立って、見ているような感覚になりました。

 

怖さはなく、ただ「受けとめるしかない」と思いました。

 

テレビで見ていた映像よりも、現実を、現実として、感じられる映像だったからです。

 

登場する人々の言葉や姿に、何度も、泣きました。

優しさ、強さに胸を打たれました。

優しさや強さの裏にある深い悲しみを想うと、涙が止まりませんでした。

 

私にとっては、まさに今、震災に向き合うために見るべき映画だったと思います。

 

ご関心のある方は、ぜひ。

 

渋谷のアップリンクにて1119日より上映

「大津波のあとに」

http://www.uplink.co.jp/x/log/004181.php

 

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【武器としての決断思考】読書は格闘技らしいです

2011-11-03 18:19:38 | Weblog
武器としての決断思考 (星海社新書)
クリエーター情報なし
講談社

 

京都大学客員教授の瀧本哲史(たきもと・てつふみ)氏の「武器としての決断思考」を読みました。

 

この本は、

「自分で考えて、自分で決める」ということを、どのように行えばよいかを示した本です。

 

具体的にいうと、一つのテーマについて賛成、反対の立場から、メリット・デメリットを考え、それらを比較して必ずどちらかを選ぶ。その手順を示しています。

 

どんな状況にさらされても、目の前にある出来事や情報をこんなふうに整理して、比べて、最後にこうやって対応方法を決めれば大丈夫だよ~。と言っています。

 

こういうことを知っていると、役に立つことがあるかもしれないと思わされましたので、

その時点で、著者の勝利かなm(_ _)m

 

「武器」といえるほどではないと思いましたが、大学生や20代~30代の人には受けそうな気がしました。

 

本書の中で印象に残ったのは「読書は格闘技だ」という指摘です。

 

さらっと読んで終わりにするのではなく、1ページ、1ページ咀嚼しながら読む。

 

疑問があれば、立ちどまって考える。

 

前のページに立ち戻って考えなおしてみる。

 

つまり、著者の言っていることを鵜呑みにしたり、受け流したりせず、疑問をもったり、反論したりしながら読みなさいということ。

 

読書=「著者とガチで勝負」らしいです。

 

読書も「気合いだぁ~!!!」の世界ですね。

 

ちなみに、瀧本氏は、東大法学部を卒業して、大学院をスキップして助手として採用されるも、マッキンゼーに転職。独立後、企業の再建などを手掛けて、現在、京大で授業をもったりしているそうです。京大で担当している授業は「意思決定論」「起業論」「交渉論」。

 

いわゆるエリートになるであろう学生たちが、「考え方を教えてほしい」「決断の仕方を教えてほしい」というニーズをもっている時代なのかなぁ・・・。

 

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする