ゆるっと読書

気ままな読書感想文

【おとなの進路教室】自分はどこに立ち、どこに向かうのか?

2010-01-24 22:56:19 | Weblog
おとなの進路教室。
山田 ズーニー
河出書房新社

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【おとなの進路教室】自分はどこに立ち、どこへ向かうのか?

私の場合、エッセイやコラムは、新聞や雑誌の立ち読みで済ませてしまうので、書籍でまとめられたものを読むことが少ない。「この著者、いいな」と感じて、同じ著者の書籍を2冊、3冊と追いかけて、連続して読むことも少ない。

山田ズーニー著の『あなたの話はなぜ「通じない」のか』を古本屋の棚で目にした時にも、最初は購入するつもりはなかった。ただ、「文章の書き方」をテーマにしたいくつかの書籍の中に、参考文献として「伝わる・揺さぶる!文章を書く」(PHP新書)が紹介されており、「山田ズーニー」というインパクトある名前は記憶に残っていた。
『あなたの話はなぜ「通じない」のか』は、「ありがちな自己啓発本」と思いながらも、「どんな著者だろう?」と手に取った。しかし、パラパラと目を通していくうちに「なんか面白そうかも」と思い始め、購入して読み終えて、「面白かった!」になったのだった。

 私にとって山田ズー二ーの著書2冊目となった「おとなの進路教室」(河出書房新社)は、『あなたの話はなぜ「通じない」のか』よりもさらに共感を感じる内容だった。
「おとなの進路教室」のなかで取り上げられているテーマは、「仕事と勉強」「就職・転職」「生き方」などだ。
個人的にはこうしたテーマで悩む季節を少し通りすぎた感じもあるが、自分自身の「悩みの季節」を振り返り、現在の立ち位置や、今後の方向性を再確認することができた気がする。

 山田ズーニーに対して「この著者、いいな」と思ったのは、著者自身が悩んだり、失敗した経験をさらけ出しながら、「仕事をすること」「仕事と勉強の違い」「生き方」などのテーマについて、考え方や見方を提示しているからだ。「こうしたら成功できる」「この方法が戦略的だ」という答えではなく、著者自身が悩んだ結果、「こんな考え方や見方があると気づいた」と投げかける。

著者自身が答えを見つけようともがいている姿が見えることが、なんとも魅力的。
新年早々、山田ズーニーとの出会いは、私にとって「今年の出来事」に入るくらい印象的なものだった。

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【製薬業界の闇】米国の製薬企業がしていること

2010-01-17 22:07:02 | Weblog
製薬業界の闇
ピーター・ ロスト
東洋経済新報社

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【製薬業界の闇】米国の製薬会社がしていること

米国最大手製薬企業ファイザーの社員ピーター・ロスト氏が書いた告発本の
翻訳。

どんなビジネスも利益をあげなければ継続できないが、人の命や健康を踏みにじって利益をあげるビジネスは許してはいけない。

特に、人命に関わる「医薬品」を製造・販売している企業の経営陣は、その点を十分に認識しなくてはならない。

これらの企業の社員は、高い倫理観を持ち、公正な販促活動をしなければいけない。

こうしたことは正論だが、米国の製薬企業の実態はかけ離れているようだ。

本書は、製薬企業の一社員の目線から、その実態を垣間見ることができる1冊だといえる。

ロスト氏は、ファルマシアの医薬品の販売方法に問題があることに気がつき、調べ上げ、会社に対して報告した。改善の必要性を訴えた。

ファイザーに買収された後には、その問題をファイザーにも伝えている。

また、製薬業界が反対を示していた医薬品の逆輸入については、一個人として逆輸入を認めるよう求める意見を公に出した。

米国の医療保険や医療は、マイケル・ムーア監督が映画「シッコ」で描いたように、歪んでいる。医療を受けるのに多額のお金が必要で、薬を購入できない人がたくさん存在する。
隣国カナダまで薬を買いにいったほうが、国内で買うより断然安くなるような状況があるという。

ロスト氏自身は、もともとファイザーと敵対するつもりはなかったらしいが、さまざまな行動を起こしていった結果、ロスト氏vsファイザーという構造になってしまう。

会社は、都合の悪いロスト氏にプレッシャーをかける。上司が誰かも分からず、仕事も与えられない「窓際族」とする。

ロスト氏は、ファイザー社や会社側の弁護士事務所からのメールや文書を証拠として記録した。さまざまな法律を学んで、自分を守るために使える規定を見つけ、論点を整理した。精神的に相当タフだ。このような人物は、米国でも少ないにちがいない。

メディアに取り上げられ、上院議員にも支持者が現れるなど、注目を集めるところまではたどり着いたが、本書の最終章でも、ロスト氏の戦いは終わっていない。

米国の政治が、こうした製薬業界の状況を変えることができるのかはみえない。
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【映画「戦場でワルツを」】アニメーションの役割

2010-01-01 18:59:56 | Weblog
 
アニメーションで描いたドキュメンタリー的映画。

テーマはとても重い。パレスチナ難民虐殺。

主人公は、その時、現場の近くにいたはずだが、すっぽり記憶が抜け落ちている。
関係者に会い、話を聞きながら、記憶を掘り起こしていくストーリーになっている。

私にとって印象的だったのは、心理学者が語ったアマチュアカメラマンの話。

従軍していたアマチュアカメラマンは、悲惨な現場を見ても「旅行気分になれるから平気だ」と言っていた。カメラのレンズを通して見ることで、現実から一定の距離を保つことができたからだ。

しかし、ある時、カメラが壊れた。カメラマンは、現実を直視しなければならなくなった。現実に「素手で触れる」ことになり、耐えられなくなった。そういう話だった。

この映画で、アニメーションという手法を採用したのは、「映画として見れる」ものにするためだったのではないだろうか。

人は、辛く、苦しく、悲惨なものからは目を背けたいものだと思う。
あまりに重いテーマをそのまま取り扱うと、「見たくない」映画になってしまう。

アニメという手法は、アマチュアカメラマンにとってのカメラと同じように、フィルターのような役目を果たしているように感じた。


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【伴走者たち】走る理由

2010-01-01 18:57:56 | Weblog
伴走者たち―障害のあるランナーをささえる (ドキュメント・ユニバーサルデザイン)
星野 恭子
大日本図書

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【伴走者たち】走る理由

視覚障害者の陸上競技に関心があり、星野恭子著の「伴走者たち」に目を通した。
視覚障害者と互いにロープを持ち、隣を走る人を「伴走者」と呼ぶ。
最近は、市民マラソンに参加する視覚障害者もいるようで、ランナーと伴走者が走る姿は珍しいものではないようだ。

本書では、障害者ランナーや伴走者を対象にしたインタビューが中心になっている。
走ることと無縁だった人が走り始めたきっかけや、走ることの楽しさを語る。
人と人のつながりが生まれ、生きがいを見つけた人もいる。

さらりと気軽に読み通せる1冊。
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