![]() | 障害者の経済学中島 隆信東洋経済新報社このアイテムの詳細を見る |
私が関心を持って読んだのは、第7章の「障害者は働くべきか」という章。
就労は、賃金や人件費など金銭に関わる経済的なテーマだろう。
障害者就労については、さまざまな課題がある。
企業側の雇用努力や、職場で定着できるような支援体制などが必要とされている。
ただ、著者は根本的な課題として、障害者とその保護者に「働くこと」の意味を理解してもらうことをあげている。
著者は、次のように指摘する。
「養護学校という温室で育てられ、厳しい現実社会で働くということの意味をよく理解していない。なぜ、働くのか。働くのはどういうことか。健常者であればアルバイトや友人関係を通じて自然に働くことの意味について理解を深めていく。他方、隔離された養護学校で育った障害者にはこうした経験が絶対的に不足している」
保護者についても
「自分の子を不憫に思い、その一切の責任を抱え込もうとする。(中略)一般就労という厳しい現実社会に飛び込まなくても、年金と特別手当があれば、福祉的就労をしつつ親掛かりで何とか生活していけるのだ」という。
「働かないことが普通」という意識を持っている障害者、その家族には、どんなに就労のチャンスがあっても難しい。
「働く」「働かない」は最終的には個人の選択になるのかもしれない。
しかし、選択する前に、「諦め」の意識をもってしまい、働くことの喜びや働くことを通じて得られること(人間関係を学ぶこと、困難を乗り越えていく精神力など)を得られないとしたら、とても残念なことだと思う。
本書と直接の関わりはないが、
『少子化が進むことで労働人口は減るのだから、働ける人にはできるだけ働いてもらい、税金を納めてもらうことが、今後の日本を支えていくうえで大切』という指摘を聞いたことがある。
「障害者が働くことは自然なこと」という意識を広げていきたい。

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