本と猫好きの日日社会メモ

本当の豊かさって何?などとたまに考えつつ、日日生活に流されながら、猫と戯れ本を読む・・そんな毎日を時々アップします。

「鹿の王」上橋菜穂子著

2017-08-27 09:45:02 | 本・雑誌、読書
久々に「早く次を読みたい!」と思う本を読みました。



「鹿の王」は、2015年の本屋大賞を受賞した小説ですが、タイトルから内容が想像できなくて当時から気になっていました。

しかし、単行本の上下2冊を買うまでに至らず、気になるな~のままでした。

それで、新聞の広告欄を見ていたら、文庫版4巻で出ていることを知り、まずは1巻を買ってみました。

初めての本やドラマになかなか入れないところがあるので、この小説も1巻前半は割と退屈だなあと感じましたが、後半から引き込まれて、慌てて2巻以降、4巻までまとめ買いをしました。

この小説は、本屋大賞の他に、日本医療小説大賞を受賞しており、医療ミステリーという言い方もされていますが、自分はヴァンという主人公が、自分の出自や「家族」を考えるところを描いたところに惹かれました。

愛する者を守るため、国を滅ぼしかねない疫病に対峙する。と書くと月並みですが、自分の身近な人を守るために、ただ自分のできることをしている主人公の姿に、読みながら、国とは何なのか、権力とは何なのかを考えました。



最近、親の介護をしていて、元気な時に社会的な地位や名誉を手にしても、結局、死ぬ間際に「ありがとうございました」って言える力とそういう気持ちになる状態にあることが人間としての幸せではないか。

とか

結局、人間も特別なものではなくて、他の動物と同じように、生きるために死ぬまである程度の負荷をかけて生きないといけないのではないか。

動物が餌を確保できなくなったら死ぬしかないのと同様に人間も退職したら楽隠居ではなくて、死の瞬間まで心身ともにそれなりの健康を保つため、生きるための努力をし続けないといけないんじゃないか。

なんてことを親を見つつ考えています。


そういう状況で読んだこの小説がスッと自然に入ってきて、この作者の考え方、好きだなあと思いましたが、あとがきを読んで、ご両親の看護、介護をされたと書いてあって、やはりそうだったのかと納得しました。



この小説が本屋大賞を受賞し、多くの方に受け入れられているということは、読み方は違うかもしれませんが、日本人の多くが、国や地域というものより、もっと本源的なもの、自然界の一員としての人間が生きることについて、考えているんじゃないかななんてことも思いました。

いくら政治家やマスコミが日本の在り方とか、日本人としてうんぬんかんぬんと言ってみても、日本全体の経済力を上げるために、長時間労働をして、家族や地域のことにあまり知らないままでいいのか。

日本人が世界とか国とか大きな目で考えられなくなったのではなくて、そのまえに考えなければいけないことに気がついて、考えているんじゃないかと思います。

国が豊かになって、それなりの生活ができるからじゃないかと言われるかもしれないけれど、手に入れた環境に合った考え方でいいんじゃないかと思うし、自分の置かれた環境の中のことを考えている方が自然な気がします。



本からちょっと離れてしまったし、ちょっと大袈裟?
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