次を書くつもりで、12月14日に労働問題解決・・自治体最前線(1)を書いておりましたが、
労働問題解決・・自治体最前線(1)
もう12月も終わりになりました。
それでは、前回予告(?)していたとおり、労働紛争解決システムについて、いまあるそれぞれのシステムについて東京都の方が比較をされておりましたので、それを参考にしつつ、考えていきます。
職場で働いている時にトラブルが発生した時、例えば給料を払ってくれないとか、パワハラを受けたとか、辞めてと言われたとか、その内容によって、どこに相談するかが、解決の大きな分かれ目になります。
お役所仕事と言われ、全部一か所でやればいいのにと言われそうですね。
確かに困ったことが起こって訳が分からなくなっている時に、ここに相談すればなんでも解決してくれるというところがあれば、心強いです。
しかし、労働の問題はとっても複雑で、各問題が起こってきた時代が違い法律が少しずつ整備されてきたため、たくさんの法律に分かれてしまっています。また問題の性格によっては、ばしっと白黒がつくもの(例えば給料の未払い)とグレーなところがあるもの(例えばパワハラなのか、指導なのか判断が難しいとか)があって、それぞれの組織(機関)が得意とするもの、苦手とするもの・・というかどちらかと言えば扱えないものがあります。
それでは早速・・
まずは労働基準監督署、この機関の性格は行政手続と刑事手続きを行うところで、ここにいる労働基準監督官は司法警察官の職務を行っています。ですからかなり権限を持っていて、臨検とか尋問、帳簿や書類を提出させたりとか、究極は逮捕、捜査なんてことも行います。
権限を持っているということは権限を濫用しないために厳格にその権限を制限しているというところもあって、ここでは労働基準法を中心として扱える案件が限られています。
ですからここにパワハラの話で相談に行っても他のところに相談したほうがいいですという話になります。また解雇についても解雇の際の「解雇予告手当金が払われない」なんて話はいいですが、「辞めてくださいと言われました」といってもそれは「解雇なの?」「退職を求められたの?」。「あなたが辞めされられるかどうかの是非は判断できないよ」ってことにもなります。
次に行政機関でいうと厚生労働省の出先機関である労働局
まずは2001年にスタートした個別労働関係紛争解決促進法に基づき、総務部企画室というところで「あっせん」というものを行っています。
これは紛争調整委員会という弁護士と大学教員、社労士で構成される組織が、1チーム3人体制で労働者、使用者側に働きかけて問題解決を図るものです。しかし、委員会の構成を見るとわかるとおりお忙しい方々の委員会。実際は1人で対応します。また基本的には1回で終了することが多く、過半数は相手方(特に経営者側)が不参加で打ち切りが多くなっています。
それから「助言・指導」労働紛争調整官が口頭で助言。指導を文書で行うようですが、東京都の方のお話によると昨年は指導ゼロだそうです。また案件としては事実確認に基づいて一定の判断ができる事案を扱うようです。・・福岡であまり聞いたことがないので、伝文形ですみません。
もう一つ「総合労働相談」これは労働局が民間相談員を活用して行っていますが、これも東京都の方の資料によると社労士6割、人事担当経験者が3割だそうです。そうすると・・専門家といえどもすべての分野のエキスパートとは限らず、人事担当経験者というとかなり企業寄りの発言があったりで、労働者にとっては残念なアドバイスを受けないとも限りませんので、助言は助言として参考にできるところを参考にする程度に考えていた方がよいようです。
ついでに・・最初にあげました労働基準監督署にも「総合労働相談窓口」がありますが、基本これと一緒と考えていいものです。たまに労働基準監督署に「申告」に行ってくださいというとなぜか相談窓口に行って相談だけ受けて、何もしてもらえそうにないと思う方がおられます(設置の仕方が紛らわしいのがいけないですが)。労基署にも相談窓口があると頭の隅に置いていただくと申告に行って何やらアドバイスだけ受けて時間を損しちゃったなんて失敗は避けられます。
次に同じ労働局でも雇用均等室
ここでは、「雇用機会均等法」「育児介護休業法」「パート労働法」を扱っていて、紛争解決援助、調停(機会均等調停会議)、助言・指導・勧告を行っています。ですから、セクハラを受けたとか、育児休業を取ったら配置転換になったなんて相談はこちらが主管ということになります。
う~ん、確かにここが監督官庁とも言えるところなんですが、そうであるからこそ、対応が堅いイメージが・・あくまで私の感覚ですが、まず問題が発生したら、一般的な相談窓口で相談を受けて、ある程度どういう解決があるか理解した上で最終的に活用するのがいいんじゃないかなと思います。但し、最終的とはいいますが、ここに上がっている法律の問題って結構白黒がつけにくいところがあって、結局は裁判した方がいいですなんて助言を受ける可能性は高いだろうと思います。
そして自治体の労働相談窓口・・これは最後に書きます。
行政はここまでで次は民間の労働相談窓口
まずは労働団体・・いわゆる労働組合。いまは一人でもはいれる組合が各地域にありますので、ちょっと調べて組合に助けを求めるのも。非常に熱心に取り組んでくれます。但し、組合ができた背景がありますから自分にはちょっと合わないなというところもありますので、そこは入る前に十分リサーチしてください。複数組合の事務所を訪ねて行ってお話を聞いてみて、自分に合うところを選べばいいと思います。
それから注意すべきは「組合」だってこと。組合とは組合員が助け合って活動するもの。自分の問題が解決したら知らん顔を決め込む方もいるようですが、自分の当面の問題が片付いた後も加入を続け、キチンと組合費を払って活動を続けることが必要。そこは理解の上で助けを求めてください。問題解決の際は、組合に動いてもらいますので当然その費用が発生し、それを解決後求められますのでそこもちゃんと理解してください。
最近労働組合活動は低調と言われますが、圧倒的な力を持つ企業に対し、個人が集まって交渉していくというのは有効な方法だということは・・もう皆さん理解されている話ですね、すみません。
それからNPO団体・・要件を満たせばNPOは設立できますので、組織によっては何だ?というところもあるかもしれませんが、基本組織を立ち上げても問題解決を図ろうという非常に熱心でボランタリー精神に溢れている方々。専門知識を持った方々が集まっているところも多いと思います。但し、それが地方にどれくらいあるかはわかりません。私のリサーチ不足だと思いますが、福岡で名前が思い浮かぶところはありません。
そして弁護士団体・・東京都資料によると「法的対応に詳しいが、法手続き以外は他を紹介することになる」とあります。また弁護士が行う無料相談とかありますが、「労働」というテーマがついていないと労働分野に詳しくない弁護士に当たることもあり、ちょっと違う助言が出てくることもあります。
行政・民間ときて、次は司法的な解決策
裁判になります。裁判は詳しくないので、裁判を起こそうと思う場合はまずは弁護士さんに相談してください。
まあ裁判までやろうという段階になると本人がインターネットなどでかなり調べている場合が多いようです。
それから裁判所で行うものとして労働審判。2006年4月にスタートしたものですが、簡易な手続きで短時間に終わるということがあり、2007年1,494件から2010年3,375件(25.9%増)と知名度が上がるに従い激増です。但し、以前に受けたこの制度に関する研修会でそろそろ問題が出てきているという話もありました。
ついでに行政内部不服審査手続き
労災保険については、労働基準監督署。雇用保険については職業安定所(いわゆるハローワーク)。健康保険は健康保険組合・けんぽ協会。厚生年金については日本年金機構ということです。これも東京都担当者資料から抜粋引用しました。
そして最後は自治体の労働相談窓口、PR的感じたらご勘弁を・・でも結構活用できますよ。
個別労働関係紛争解決促進法20条にかろうじて根拠を置いておりますが、私たちが企業さんとお話をするときは、「何の権限もありませんが・・」で始まります。何の権限もないから、相談者が取りうる解決策すべてを検討し、その時点のベストを提案する。
権限のある官庁があってそっちで解決した方がいいと思えば、そちらを紹介する。
あくまでご協力をお願いするという形で企業さんへ話を聞きに行く。
「あっせん」という方法を取り、効果を上げています。
企業と話をする際に、あらゆる分野の行政を行っている自治体の強みがあるから結構実現する。企業と自治体はいろんなところで接点がありますから、たとえ部署が違っていても普通の企業さんであれば100%話を聞いてくれる。行政機関であれば、悪いようにはしないだろうという信用もありますよね。・・逆に言えば我々のことを門前払いにするってことは、かなり悪質な企業さんの可能性もあって、そうなると解決が難しいなと我々担当者も暗くなってしまいます。
自治体の労働相談について、素直に問題点を言えば、職員によって対応に違いがでてしまうこと。もちろん複雑な案件になって複数回の相談になれば相談員間で協議してより良い解決策を見つけられますが、最初の対応でちょっと説明が不足したり、嫌な感じを受けてしまったら、それで終わり(これはどの機関も変わらないことかもしれませんね)。
また自治体は説明したとおりいろんな分野があり、そこを人事異動で動いているので、労働基準監督署や労働局に比べると専門性が・・そこは各職員すごく努力はしていますけれど・・。
それから都道府県によって取り組み方に違いがあって、いろんな相談機関があるからもう県がする時代じゃないなんてところも。
今回東京都の資料を活用させていただきましたが、東京都はそれこそ専門家集団。また大都会東京。扱う件数も内容も半端ではありませんので、東京都の場合は是非都にご相談を・・そして福岡でも県内4か所の労働者支援事務所に相談してほしいと思っています。
それでは、超長くなってしまいましたが、ここまで我慢して読んでくださったこと感謝いたします。
なお、この記事に関しては、労働相談担当2年目の私が、独断と偏見を入れつつ書かせていただきました。東京都のご担当者がお話で使われた資料を引用・参考にしているところもありますが、あくまで私の解釈が入ったものとご理解ください。
間違い、勘違いがあるかと思いますので、参考程度にご活用くださいませ。
最後に、労働問題が起こってしまったら、それはしっかり自分に起こったこととして受け止め、まずは「自分で」解決しようと努力すること。
「給料払ってくれません。」・・「あなたはそれを会社に請求しましたか?払えと言いましたか?」・・「・・・」
「ちゃんと働いているのに給料払わんのですか?」・・まずは会社へのあなたのその一言から始まります!!