(1)東京文化財ウイーク
10月も終わりに近づいたある日、ふと、文化財ウイークの事が思い出されて、近くの区の施設にパンフレットを貰いに行った。東京都では、文化の日を中心とする東京文化財ウイークを設けて、文化財の公開や各種イベントを行っているが、この機会を逃すと、来年まで見られない文化財があるからである。
今年は10月29日から11月6日迄が、文化財の一斉公開期間で、都内約270か所にある約460件の文化財が公開されている。このほか、10月1日から11月30日の期間に、島を含む区市町村等において、各種の文化財関連事業が実施される。公開事業以外のイベントとしては、文化財めぐりが54件、特別展が63件、講座・講演会が39件、現地観賞会が32件、実演その他が24件、東京都選定歴史的建造物の公開が13件、それに古民家めぐりが11件もある。これだけあると、期間内に全てを見て回るのは無理のように思えるので、以前から、特別公開される文化財やイベントの中から、どれかを選んで見に出かけている。文化財ウイークは、文化財を身近に感じてもらう事を目的としているが、対象となる文化財の選定には自由度があるようで、動植物や民俗芸能、さらに景観までも含まれている。その一方で、著名な文化財が選ばれていないこともある。文化財の中には見学するのに予約が必要なものもある。また、文化財めぐりや講演会などは、事前の申し込みが必要なものが多い。ただ、パンフレットの入手時期が遅いため申込期限が切れていることがあり、また、予定が立てにくい事もあって、これまでは、予約してまで出かける事はしていない。

東京文化財ウイークのパンフレットは、今年から、期間内に行われる特別公開・企画事業についてのガイドと、通年公開の文化財ガイドに分かれるようになった。特別公開の対象となっている文化財の中にも、通年で見学できるものもあるので、文化財ウイークの終了により、全ての文化財が非公開になるわけではない。ただ、期間中であれば、ポストカードの配布や、説明員による解説が受けられる場合がある。
(2)増上寺
それでは、今年を含めて、これまでに見に行った文化財の中から、特別公開の文化財を中心に、幾つかを取り上げる。最初は増上寺とその周辺である。日比谷通りに面して聳える増上寺の三解脱門は、増上寺の造営当時の面影を残す唯一の建造物として重要文化財に指定されている。今年は、法然上人八百年御忌記念として、11月30日まで有料で楼に上る事が出来るようになっている。徳川家の霊廟は特定日に限り無料で公開されていたが、今回は、来年の1月31日まで有料で公開されている。しかし、文化財ウイークの対象となる文化財は、その何れでもなく、都の有形文化財に指定されている経蔵の方である。

増上寺の経蔵は1605年の創建で、1802年に現在地に移設されている。構造は土蔵造り白壁仕上げ、屋根宝形瓦葺で、内部に八角形の輪蔵が置かれている。輪蔵とは回転式の書架のことで、回転させると収容されている経典を読んだ事になると言われている。この輪蔵には家康が寄進した大蔵経(重要文化財)が納められていたそうだが、現在は収蔵庫の方に移されている。経蔵の内部公開は2日間だけなので、この日を逃すと来年まで待たねばならない。ただ、三解脱門や霊廟に比べれば、地味な文化財の公開という印象はある。
増上寺の周辺では、芝東照宮のイチョウや、旧台徳院(第二代将軍秀忠)霊廟惣門が、公開される文化財の対象に選ばれている。公開は通年なので、いつ来てもよい。
(3)妙定院

妙定院は第九代将軍家重の菩提のために創建されたといい、増上寺の別院に位置づけられている。妙定院も空襲の被害に遭っており、本堂や書院は焼失したが、熊野堂と上土蔵は土蔵造りであったため焼失を免れている。熊野堂と上土蔵は、平成19年に解体修理され、現在地に移築されたが、文化財ウイークにおいて特別公開されるのは、この二つの土蔵であり、何れも国登録有形文化財(建造物)に指定されている。熊野堂は熊野大権現を本尊とする妙定院の鎮守として1796年に建立され、本尊のほか妙見菩薩や虚空蔵菩薩、不動明王など神仏を祭っていたが、内部はこれまで非公開であったという。上土蔵は棟札から1811年の上棟とされるが、既存の建造物がもとになったと考えられている。修復前の上土蔵は、収蔵を目的とする二階建ての蔵であったが、現在は須弥壇を移設して、仏像などを置くような空間になっている。公開日を逃すと、内部の拝観や展覧会の観覧は、また来年という事にはなるが、外観だけであれば、通年公開されている。所在地は港区芝公園4-9-8。最寄駅は大江戸線赤羽橋。
10月も終わりに近づいたある日、ふと、文化財ウイークの事が思い出されて、近くの区の施設にパンフレットを貰いに行った。東京都では、文化の日を中心とする東京文化財ウイークを設けて、文化財の公開や各種イベントを行っているが、この機会を逃すと、来年まで見られない文化財があるからである。
今年は10月29日から11月6日迄が、文化財の一斉公開期間で、都内約270か所にある約460件の文化財が公開されている。このほか、10月1日から11月30日の期間に、島を含む区市町村等において、各種の文化財関連事業が実施される。公開事業以外のイベントとしては、文化財めぐりが54件、特別展が63件、講座・講演会が39件、現地観賞会が32件、実演その他が24件、東京都選定歴史的建造物の公開が13件、それに古民家めぐりが11件もある。これだけあると、期間内に全てを見て回るのは無理のように思えるので、以前から、特別公開される文化財やイベントの中から、どれかを選んで見に出かけている。文化財ウイークは、文化財を身近に感じてもらう事を目的としているが、対象となる文化財の選定には自由度があるようで、動植物や民俗芸能、さらに景観までも含まれている。その一方で、著名な文化財が選ばれていないこともある。文化財の中には見学するのに予約が必要なものもある。また、文化財めぐりや講演会などは、事前の申し込みが必要なものが多い。ただ、パンフレットの入手時期が遅いため申込期限が切れていることがあり、また、予定が立てにくい事もあって、これまでは、予約してまで出かける事はしていない。

東京文化財ウイークのパンフレットは、今年から、期間内に行われる特別公開・企画事業についてのガイドと、通年公開の文化財ガイドに分かれるようになった。特別公開の対象となっている文化財の中にも、通年で見学できるものもあるので、文化財ウイークの終了により、全ての文化財が非公開になるわけではない。ただ、期間中であれば、ポストカードの配布や、説明員による解説が受けられる場合がある。
(2)増上寺

それでは、今年を含めて、これまでに見に行った文化財の中から、特別公開の文化財を中心に、幾つかを取り上げる。最初は増上寺とその周辺である。日比谷通りに面して聳える増上寺の三解脱門は、増上寺の造営当時の面影を残す唯一の建造物として重要文化財に指定されている。今年は、法然上人八百年御忌記念として、11月30日まで有料で楼に上る事が出来るようになっている。徳川家の霊廟は特定日に限り無料で公開されていたが、今回は、来年の1月31日まで有料で公開されている。しかし、文化財ウイークの対象となる文化財は、その何れでもなく、都の有形文化財に指定されている経蔵の方である。

増上寺の経蔵は1605年の創建で、1802年に現在地に移設されている。構造は土蔵造り白壁仕上げ、屋根宝形瓦葺で、内部に八角形の輪蔵が置かれている。輪蔵とは回転式の書架のことで、回転させると収容されている経典を読んだ事になると言われている。この輪蔵には家康が寄進した大蔵経(重要文化財)が納められていたそうだが、現在は収蔵庫の方に移されている。経蔵の内部公開は2日間だけなので、この日を逃すと来年まで待たねばならない。ただ、三解脱門や霊廟に比べれば、地味な文化財の公開という印象はある。
増上寺の周辺では、芝東照宮のイチョウや、旧台徳院(第二代将軍秀忠)霊廟惣門が、公開される文化財の対象に選ばれている。公開は通年なので、いつ来てもよい。
(3)妙定院

妙定院は第九代将軍家重の菩提のために創建されたといい、増上寺の別院に位置づけられている。妙定院も空襲の被害に遭っており、本堂や書院は焼失したが、熊野堂と上土蔵は土蔵造りであったため焼失を免れている。熊野堂と上土蔵は、平成19年に解体修理され、現在地に移築されたが、文化財ウイークにおいて特別公開されるのは、この二つの土蔵であり、何れも国登録有形文化財(建造物)に指定されている。熊野堂は熊野大権現を本尊とする妙定院の鎮守として1796年に建立され、本尊のほか妙見菩薩や虚空蔵菩薩、不動明王など神仏を祭っていたが、内部はこれまで非公開であったという。上土蔵は棟札から1811年の上棟とされるが、既存の建造物がもとになったと考えられている。修復前の上土蔵は、収蔵を目的とする二階建ての蔵であったが、現在は須弥壇を移設して、仏像などを置くような空間になっている。公開日を逃すと、内部の拝観や展覧会の観覧は、また来年という事にはなるが、外観だけであれば、通年公開されている。所在地は港区芝公園4-9-8。最寄駅は大江戸線赤羽橋。