聖橋を渡り右手の湯島聖堂は今回パスして、坂を下り坂を上がる。息を整え休まずに歩けば、関東三大天神の一つ湯島天神の銅製明神鳥居が見えてくる。湯島天神、正しくは湯島天満宮というべきだが、これからの時期は混雑する。露店の間を通り抜け、本殿に進んで参拝を終えてから境内を一回りする。梅まつりは始まっていて、すでに咲いている梅もあるが、男坂と女坂の間にある梅林の開花はもう少し先のようだ。
湯島天神の創建は雄略天皇の頃で、天之手力雄命を祀っていたと言う。中世になって村人により菅原道真が祀られるようになる。法印堯恵の「北国紀行」には、文明19年(1487)に湯島を訪れた時の記述に、“古松遥かにめぐりて注連の中に武蔵野の遠望をかけたるに寒村の道すがら野梅盛んに薫ず。これ北野の御神と聞きしかば”とあるので、湯島には天神社があり、梅林もあったのだろう。
湯島天神から不忍池に出て、弁才天を回り込んで清水観音堂の下に出る。月の松が気になるが、石段を上がるのは止めにして五條天神に行く。天神というのは医薬祖神のことで、大己貴命(大国主)と少彦名命を祀っているが、寛永18年(1641)に菅原道真を合祀している。創建年代は定かでないが、法印堯恵の「北国紀行」には、“武蔵野の東の境、忍岡に優遊し侍り。鎮座社五條天神と申し侍り”とあるので、文明19年(1487)には五條天神として鎮座していたことが分かる。五條天神は天神山の山上にあったが、後に黒門近くに移り、昭和3年に稲荷社に隣接する現在地に移っている。参拝を終えて外に、今日の目的はこれにて終り。伊豆栄の横を上がり東照宮の牡丹を横目に、行楽客に紛れて駅へと向かう。