ある日、芭蕉の代表作である「おくのほそ道」が読めて、鉛筆による習字もできるという一石二鳥の本を見つけ、さっそく買い求めた。しかし、事情があって習字は中断されたままになり、本も積んでおかれることになった。今回、100分de名著の中に「おくのほそ道」が含まれている事を知り、積んでおいた本を本棚から取り出してみた。
【書誌】
書名「えんぴつで奥の細道」。ポプラ社。書:大迫閑歩書。監修:伊藤洋。
2006年発行。 原著:芭蕉「おくのほそ道」。
この本は、「おくのほそ道」の全文と、その文字を薄くして鉛筆でなぞれるようにした文とがあり、それに加えて、現代語訳と注釈がつけられているので、鉛筆でなぞりながら、「おくのほそ道」をじっくりと読むことが出来る。「えんぴつで奥の細道」は途中までしか読んでいなかったため、通して読むのは今回が初めてということになる。
芭蕉の「おくのほそ道」の旅は、江戸の千住に始まり、各地の俳人たちの助けも借りて大垣に至る、半年近くの長旅となる。この旅において芭蕉は、「不易流行」という俳諧の理念を生み出し、さらに「軽み」の理念も考えるようになったという。100分de名著のテキストでは、「不易流行」と「軽み」は芭蕉の人生観、宇宙観でもあったとしている。
「おくのほそ道」は文学作品であり、事実とは異なる記述も見受けられる。実際の芭蕉の旅がどうであったかは、同行した曽良の旅日記により、ある程度は分かるが、これについては、別の機会に取り上げることにしたい。
ところで、“えんぴつで”という「なぞり本」のシリーズは他にも出ており、その中には100分de名著で取り上げられている、「徒然草」「枕草子」「方丈記」「般若心経」「菜根譚」「老子荘子」などの著作も含まれている。これらの本を100分de名著のテキストと組み合わせれば、名著の内容をより理解できるようにもなるだろう。ただ、なぞり本の場合は、図書館で借りるわけにはいかない。そのうえ、鉛筆で書いたものを消せば、また習字に使えるので、読み終わったあと処分するのは勿体ない。それ故、なぞり本を購入する場合は、本棚が溢れてしまうことがないよう、不要な本は処分することも必要になる。