貴方の恋人が、友人が、かって恐ろしい犯罪を犯した凶悪犯だと知ったら?
「自分だったらどうするだろうか」。
そんな難題を突きつけられる大変重たい厳しい内容の本である。
薬丸岳著「友罪」。2013年5月発刊。
1997年、世の中を震撼とさせたあの猟奇的神戸児童連続殺人事件をモチーフに書かれた小説。
事件そのものを取り上げたのではなく、その少年が社会復帰してからのある時期をフィクションとして描いたもの。
飽くまでもフィクションであり、事実ではない創作の世界なのだか、どうしてもあの事件に結び付けて読んでしまう。
この類の本は普段はあまり読むことはない。読書家の友人から面白かった、是非読んでみてと勧められたのが2年前。
しかし内容が内容だけにあまり気が進まず、未読のままだった。
元少年Aが今年6月「絶歌」とう自伝を出版、9月には自らのホームページを立ち上げ、話題となった。
とても許し難い行為に憤りを感じたが、と同時に友の勧めたこの本が読みたくなった。
重量も内容も重たい「友罪」を昨夜完読、深く考えさせられている。
主人公は益田純一、ジャーナリストを目指す27歳の青年。挫折を経験し、ある町工場で働きながら再起の機会を狙う。
同じときに入社したもうひとりの若者鈴木秀一。彼は過去に犯した罪で重い十字架を背負って生きている。
無口で人付き合いの悪い陰険な鈴木は益田に徐々に心を開き始め、二人は打ち解けあっていく。
鈴木は益田を唯一の親友と思い始め、慕っていく。
しかしある日あることをきっかけに、鈴木の過去に疑いを持ち始め、それが確信に変わり悩む益田。
いろいろな十字架を背負った人間が様々な形で鈴木と向かい合っていく姿。苦悩の渦がそこにある。
これ以上詳しくは書けないが、最後に益田が鈴木を友と認め、書き記した手紙には胸が熱くなるものがあった。
もしこの本を元少年Aが「絶歌」を出版する前、ホームページを立ち上げる前に読んでいたら、
私の読後感も少し違ったものになっていたかもしれない。
小説の中の鈴木秀一と元少年Aは別人物とわかっていても、しかし・・・・。
犯罪者にも生きる権利はあるのだから、小説の中の鈴木には同情の気持ちが起こる。
が、今回の元少年Aの自伝出版、ホームペー立ち上げ。
これは一体なんなの?罪の償い、事件への反省とは全く逆のことのように思える。おぞましいことだ。
鈴木と元少年Aがどうしてもダブる小説「友罪」の著者薬丸岳氏は今何を感じているだろうか?