<あらすじ>
銀河堂書店に勤める物静かな青年「月原一整」は人づきあいは苦手だが、
埋もれている名作を掘り起こす名人、「宝探しの月原」と言われ、信頼されている書店員である。
しかしある日起こった万引き事件が思わぬ顛末となり、彼は責任をとって、銀河堂書店を退く。
傷心の月原は以前からSNSで交流のあった桜風堂書店を営む老人を訪ね、心通わす。
最初は心の傷を癒す旅のつもりであった月原は、老人に乞われ桜風堂書店を任せられる。
月原には銀河堂書店に勤めているときから、心に温めていた世に出したい作品があった。
いろいろな出会いと協力のもと、彼の掘り出した宝者ような1冊は奇跡を起こす。
この小説を手にして読み進み、まず感じたことは書店員の本に対する愛情の深さです。
私は書店員をかなり軽く見ていました。申し訳ないという気持ちでいっぱいです。
とても大変なお仕事なのですね。
それぞれに担当部門が決まっており、POPを書いたり、ポスターを描いたり、
本を売るために様々な工夫をし、少しでも多くの本を売り出そうと努力しています。
あとがきを読むと、この辺りはかなりリアルに描かれているようです。
出版業界も不況で、毎日のように全国どこかで書店が閉店になっている昨今です。
我が家からの二つの最寄り駅前にもそれぞれ本屋がありました。数年前に両店舗とも閉店。
今では週刊誌などはコンビニで買えますので、小さな本屋はあまり必要性を感じません。
が、私のように書店で本を買うことなく、図書館でばかり借りて読んでいる者にとっては、
この小説は読んでいて少し心苦しいものがありました。
優しい人たちで溢れているこの本は、とても読みやすく心が温かくなる本でした。
登場人物のその後はどうなるのだろうと余韻を残す本でもありました。
やや尻切れトンボの感がありますが、続編があるそうです。
是非続きを読んでみたいと思います。