ぷらいべったーより再掲。
お題が「幸せそうなSS」だったので幸せそうなガウリナを目指しました。
結婚式のその後で。短いです。
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――まだ、耳の奥でベルの音が鳴っている。
すっかり日の暮れてしまった夜に、あたしは小さな宿のベランダに出ていた。涼しい風が吹きぬけて、あたしの髪を揺らしていく。すぐ近くに、先ほど式を挙げたばかりの教会が建っているのがよく見えた。昼間はまるでお祭りみたいに騒がしかった教会も、今はまったく違う雰囲気を醸し出していて。
「リナ」
名前を呼ばれて、振り返る前に後ろから肩を抱かれる。あたしよりも少し体温の高い手は、相棒の手。自称保護者じゃなくて、伴侶になった人の手だ。
「寒くないか?」
「ううん。全然」
さっきまできっちりと正装していたガウリイは、今はもうゆったりとしたいつものシャツを着ている。さらさらに梳かれていた金髪が、ほとんど元に戻ってしまっているのは、シャワーを浴びたからか。まあ、さっきまでのガウリイの顔はちょっと見ていて落ち着かなかったから、あたしとしては今の方が良いけどね。
「終わっちゃったね、結婚式」
「楽しかったな」
嬉しそうに笑ってみせたガウリイに、あたしもこくりと頷いた。――本当に楽しかった。
父ちゃんはずっと泣いていて、母ちゃんと姉ちゃんは笑っていて。来てくれたアメリアはなんとゼルと一緒だった。どうやら探して連れてきてくれたらしい。シルフィールや、ミルガズィアさんも、メンフィスも。来てくれた皆が、嬉しそうに祝福してくれて。ケーキも、料理もとても美味しかった。
赤の竜神に誓った言葉と、響いた鐘の音と、歓声と。まだ、耳の中で反響してはあたしの胸の内をくすぐる。なんだか照れくさいような、むず痒くて堪らないような。でもそれ以上に、やっぱり「嬉しい」という気持ちが一番に心を占めている。
――これが”幸せ”なのか。
凄く月並みで面白みもなくて、それでもその言葉以外にこの気持ちに当てはまる言葉が見つからないから、しょーがないから認めてあげる。そう、きっとあたしは今「幸せ」なのだ。
「幸せだなあ」
ぽつりと、隣で彼が呟いて。あたしは思わず顔をあげてまじまじとガウリイを見つめる。その視線に目をぱちくりと瞬かせて、彼は首を傾げた。
「どうした?」
「……あたしも今、おんなじ事考えてた」
なんだがすっごく恥ずかしい。思わず両手に顔を埋めたあたしに、彼は隣でくつくつと笑った。その震えが肩を抱いた手から伝わってくる。
「やっぱり幸せ者だ、オレは」
そんなに嬉しそうな声を出さないでほしい。あたしはどんな顔をすればいいのだ。赤くなってしまっているのは、鏡を見るまでもなく自分自身で分かっていた。
「笑っててくれよ、リナ。ずっと、オレの隣で。これからも」
「……あったりまえでしょ! 絶対、死ぬまで、離してやんないんだからね。ガウリイもガウリイの持ってるモノも、全部、あたしのモノになったんだから」
――勿論、代わりにあたしの全部も。ガウリイにあげるから。
最後まで言わなくても、きっと彼には伝わったのだろう。声をあげて笑って、彼はあたしを思い切り抱き締めた。
「それでこそ、リナだ!」
お題が「幸せそうなSS」だったので幸せそうなガウリナを目指しました。
結婚式のその後で。短いです。
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――まだ、耳の奥でベルの音が鳴っている。
すっかり日の暮れてしまった夜に、あたしは小さな宿のベランダに出ていた。涼しい風が吹きぬけて、あたしの髪を揺らしていく。すぐ近くに、先ほど式を挙げたばかりの教会が建っているのがよく見えた。昼間はまるでお祭りみたいに騒がしかった教会も、今はまったく違う雰囲気を醸し出していて。
「リナ」
名前を呼ばれて、振り返る前に後ろから肩を抱かれる。あたしよりも少し体温の高い手は、相棒の手。自称保護者じゃなくて、伴侶になった人の手だ。
「寒くないか?」
「ううん。全然」
さっきまできっちりと正装していたガウリイは、今はもうゆったりとしたいつものシャツを着ている。さらさらに梳かれていた金髪が、ほとんど元に戻ってしまっているのは、シャワーを浴びたからか。まあ、さっきまでのガウリイの顔はちょっと見ていて落ち着かなかったから、あたしとしては今の方が良いけどね。
「終わっちゃったね、結婚式」
「楽しかったな」
嬉しそうに笑ってみせたガウリイに、あたしもこくりと頷いた。――本当に楽しかった。
父ちゃんはずっと泣いていて、母ちゃんと姉ちゃんは笑っていて。来てくれたアメリアはなんとゼルと一緒だった。どうやら探して連れてきてくれたらしい。シルフィールや、ミルガズィアさんも、メンフィスも。来てくれた皆が、嬉しそうに祝福してくれて。ケーキも、料理もとても美味しかった。
赤の竜神に誓った言葉と、響いた鐘の音と、歓声と。まだ、耳の中で反響してはあたしの胸の内をくすぐる。なんだか照れくさいような、むず痒くて堪らないような。でもそれ以上に、やっぱり「嬉しい」という気持ちが一番に心を占めている。
――これが”幸せ”なのか。
凄く月並みで面白みもなくて、それでもその言葉以外にこの気持ちに当てはまる言葉が見つからないから、しょーがないから認めてあげる。そう、きっとあたしは今「幸せ」なのだ。
「幸せだなあ」
ぽつりと、隣で彼が呟いて。あたしは思わず顔をあげてまじまじとガウリイを見つめる。その視線に目をぱちくりと瞬かせて、彼は首を傾げた。
「どうした?」
「……あたしも今、おんなじ事考えてた」
なんだがすっごく恥ずかしい。思わず両手に顔を埋めたあたしに、彼は隣でくつくつと笑った。その震えが肩を抱いた手から伝わってくる。
「やっぱり幸せ者だ、オレは」
そんなに嬉しそうな声を出さないでほしい。あたしはどんな顔をすればいいのだ。赤くなってしまっているのは、鏡を見るまでもなく自分自身で分かっていた。
「笑っててくれよ、リナ。ずっと、オレの隣で。これからも」
「……あったりまえでしょ! 絶対、死ぬまで、離してやんないんだからね。ガウリイもガウリイの持ってるモノも、全部、あたしのモノになったんだから」
――勿論、代わりにあたしの全部も。ガウリイにあげるから。
最後まで言わなくても、きっと彼には伝わったのだろう。声をあげて笑って、彼はあたしを思い切り抱き締めた。
「それでこそ、リナだ!」
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