ゆるい感じで。

「スレイヤーズ」のガウリナメインの二次創作ブログサイトです。原作者様、関係者様には一切関係ございません。

そしてまた一歩進む。(ガウリナ)

2018-10-26 21:10:32 | スレイヤーズ二次創作
ぷらいべったーより再掲。
二部終了直後くらいの二人です。短い。

------------------------------------------------
 その時、あたしは確かに少しだけ疲れていた。
 厄介な問題の解決の為に奔走して、結果今回もなんとか生き延びて。
 ――あたしも、ガウリイも生きている。ちゃんと、この場に立っている。
 それにほっと安堵のため息を吐いて、あたしは辺りを見回した。ちりちりと焦げ付くような臭いは、魔法の余波で草木に多少被害が及んだせいだ。転がっているのは黒々とした魔物達の残骸。あまり見ていて気持ちの良くないそれから視線を逸らして、あたしは空を見上げる。すっかり日は落ちて、ちらちらと瞬く星が見えていた。

「――リナ、大丈夫か」
「ん。なんとかね」
 声を掛けてきた相棒に、あたしはにっと笑ってVサインをして見せる。それにようやく、ずっと険しい顔をしていた彼も緊張を解いたようだ。
「終わったな」
「……そうだね」
 当面の危機は去った。これ以上は、此処にいる意味もない。
「あ~、早くあったかいお風呂に入ってふかふかのベッドで寝たい!」
 それにお腹も空いている。まだ宿の食堂はやっているだろうか。
 腹の虫を落ち着かせて、身体を綺麗にして、ぐっすり眠って。この厄介事を持ちこんだ依頼主からきっちり依頼料をふんだくって。
 ――早く、こんな事件を忘れてしまいたい。
 かさついていた唇を舐めたら、血の味がしてあたしは思わず顔をしかめた。
 
「じゃ、さっさと行こうぜ」
 ガウリイの声に促されて歩き出す。そうやって歩き出した所で、あたしは足元の何かに躓いた。
 ――あ。
 疲れていたのか気が抜けていたせいか、あたしは呆気なくバランスを崩して転びそうになって。
「おっと。大丈夫か?」
 倒れる直前で、振り向いたガウリイがあたしの身体を受け止めてくれる。
「ん。ありがと、だいじょーぶ」
 咄嗟に口から出た声は、なんだか思った以上に弱弱しく響いた。――ありゃ。思った以上に、どうやらあたしは参っているらしい。
「だいじょーぶ、そうには見えねえなあ……おぶるか?」
 心配そうな声が頭の上から降ってくる。その声と、あたしを支える彼の胸が、腕が、温かくて力が抜けそうになって。だけど。
「要らないわよそんなのっ。大丈夫、歩ける!」
 ぐっと足と腹に力を込めて、あたしは彼から身体を離した。
「ほんとか~?」
「へーきよ、へーき」
 我ながらカラ元気な笑顔を向ければ、ガウリイは疑いの眼差しをあたしに向けながらも渋々引きさがる。

 ――こうやって、あたしを支えてくれる自称保護者に。相棒に。甘えて寄りかかって、一人で立てなくなるのが怖いのだ。あたしは。
 元々一人旅から始まったあたしの旅なのに、いつの間にかこんな風に旅の連れが出来て。別れも、不条理な喪失も目の当たりにして。いつ彼があたしの目の前からいなくなってしまうのか、それが明日になるか十年後になるかも何も分からないのに。あたしは。
 一人になる事を恐れている自分が、怖い。

「それじゃ、リナ」
 ふと顔を上げれば、そこに彼の差し出した手のひらがあった。
「また躓いたら危ないからな」
 微笑んだガウリイの、その笑みが眩しい。思わずその手を取れば、力強く握られる。普段剣を握るその手は大きくて、節くれだっていて。少しだけあたしより体温が高い。強い手だった。
「……ありがとね」
 寄りかかるんじゃなくても。手を握ってくれるだけで、隣を歩いてくれるだけで、あたしはまた歩き出せる。それくらいなら、許容しても良いかもしれない。
「どーいたしまして」
 柔らかい声と繋いだ手の温かさに、あたしの中の不安が、ふわりと薄れて行くのを感じていた。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿