ゆるい感じで。

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そして歴史は残される(シルフィール/未来IF)

2020-11-28 18:08:31 | スレイヤーズ二次創作
どもですあきらです~。
というわけで本日の800字です。
シルフィールの未来妄想です。シルフィールが好きなのです……

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 ――シルフィール=ネルス=ラーダという人物について語ろう。彼女は、過去魔獣や魔族により幾度となく窮地に陥り、遂には滅びを迎えるに至ったサイラーグを今日の状態にまで復興に導いた救世主である。
 神官長の娘としてサイラーグに生まれ育ち、巫女頭を務めた彼女が壮絶な厄災に見舞われながらも、その強靭な精神と抜きん出た才覚により、ほぼ不可能と思われたサイラーグの復興を成し遂げるまでの人生をここに残したい。

「……これはちょっと、あまりに私を美化し過ぎでは?」
 羊皮紙いっぱいに書き綴られた原稿の、冒頭だけ読んだ彼女は小さく苦笑して見せた。高齢でありながらも、若かりし頃に描かれたと思われる肖像画の彼女と、その漂わせる気品に変わりはない。
 シルフィール=ネルス=ラーダ。壊滅したサイラーグを復興に導いた女神。その生きる伝説の前で、年若い文筆家志望の青年は緊張と興奮で目を輝かせていた。
「いえいえ、とんでもない。シルフィールさんは私たちにとって本当に伝説の人なんです」
 彼女の生涯については、青年も幼い頃、寝物語に母親からよく聞かされたものだった。かの有名な『デモン・スレイヤー』との冒険。悲劇的な父親との別れと再会。それでも希望を抱き街の復興に尽力した胆力。
「でも、サイラーグがここまで復興したのは、私だけじゃなく皆さんの力です。……私はただ、必死に誰かを頼っていただけで」
 そう微笑む少し切なげな笑みが、彼女の生涯が。歴史に残る事なく消えていくのが青年には我慢ならなかったのだ。――彼女に見せた原稿は、まだ未完成だった。生の声を聞き、そして残したい。その想いを汲んで、彼女と青年を繋いでくれたのは、飲み屋で出会った気の良い老人だった。確かランツと名乗っていたか。
「聞かせてくれませんか。昔の話を。貴女の物語を歴史に残したいのです」
「……、」
 少しだけ躊躇って。それから彼女は、また小さく苦笑した。
「少し恥ずかしいのですが。……それでは聞いてくれますか? これは私の人生最大の恋と、そしてその終わりが始まりなのです」



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