ゆるい感じで。

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君と墜落【4】(ガウリナ/パラレル)

2013-10-11 02:26:53 | スレイヤーズ二次創作
最終回です(`・ω・´)

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あれから、急な発作が増えた。
あたしはそのたびに黙って見ていることしか出来ない。
ただ、そんなとき彼はすぐにナースコールを押して、あたしの手を痛いくらい強く握った。あたしは、それに応えて握り返す。
「ガウリイ」
呼びかけるあたしの声は、彼にとってどう聞こえているのだろうか。しっかりした頼りになる声?それとも泣きそうな弱々しい声?

時間がどんどん過ぎていく。
死神としての仕事は、あとどれくらい残っているのか。
考える間もなく、彼の寿命は数日後に迫っていた。

「ねえガウリイ」
「なんだ?」
「後悔してないの?」
「何が......?」
「一つだけ願いを叶えるって話。他に叶えて欲しい事とか、無かったの?」
彼は最近ほとんど眠っていたが、珍しく起きている時に、訊ねてみた。
「......そうだな」
彼の豊かな金髪はもう色褪せてしまっている。だけど、青い瞳はまだきらきらしている。生きている証。
「オレが死んだら、死神にして欲しかったかも。......そしたら、またリナと会えるだろ?」
「......ばーか」
そんな事が出来るわけない。人間は人間で、死神は神様だから。だけど、そんな事を願うガウリイにあたしは胸がいっぱいになった。
「...でもそしたら、リナとあんまりしゃべれなかったしな。...このままで良かったかな」
「そうよ。大体あんたお人好しっぽいから、死神なんか務まらないわよ」
「そーか?オレから言わせれば、リナもお人好しだと思うけど...」
ゆっくりしゃべるガウリイは、だるそうに腕を上げた。あたしの顔を人差し指でつつく。
「そんな辛そうな顔さしちまって、ごめんな」
「......ばか」
涙が出そうになって、だけどこらえた。
あたしは死神。人の死を見守り、その魂をかの地に送るのが使命。あたしは今までその仕事をきちんとこなしてきた。
だけど、どうして今あたしはこんなに不安と悲しみでいっぱいなのだろう。人間に必要以上の情を抱いてはいけない、と。分かってはいても、苦しくて堪らない。

「リナ...泣くなよ」
堪えていたはずの涙は、いつの間にかこぼれてしまっていた。
「オレな、リナの事好きだ。たぶん初めて会った時から。......一目惚れって奴だな」
「......いま、さら」
「遅かったな。悪い。ありがとな、ずっとそばに居てくれて」
あたしは黙って首を横に振った。
「あたしも......すき」
鼻の奥がつんとして、涙が止まらなくて、それしか言えない。
ガウリイは嬉しそうに笑った。
「な、リナ。お願いしていいか?」
「?」
「死神に叶えて欲しい願い、じゃなくて、オレからリナに、一つお願い」
「なによ」
「キスしてくれ、ほっぺで良いから」
照れたように言ったガウリイに、あたしは驚いた。そして、苦笑した。
まったく、最期の願いがそれだなんて。
「......ありがたいと思いなさいよ。あたしの、ファーストキス!」
彼は笑って目を閉じた。


それから、彼は意識を失った。しばらくして医者と看護士が慌ててやってきて、彼を色んなチューブや装置と繋いだけど、彼がもう意識を取り戻す事はないだろうことは、あたしが知っていた。
彼はまだ生きている。けど、もうあたしと話すことは無い。
「......ガウリイ」
最後に触れた彼の唇は、なんだかかさかさしていた。
あたしは最後にもう一度だけ泣いて、それから顔を上げた。最後の仕事が残っている。

医者から連絡を受けたのか、一人の女性が見舞いに来た。たぶん彼の母親だろう。静かに彼の寝顔を見つめる姿は、儚げだった。
今まで見舞いに来なかった理由は知らない。ガウリイは家族の話をしなかったから。だけど、最期に少しだけでも会えれば良かったのにな、と思った。

あたしは銀色の鎌を構えた。
振りかぶって、しゅっと振り下ろす。
その切っ先はガウリイの身体の上で止まる。
「おやすみ、ガウリイ。良い夢を」
あたしは最期に挨拶してから彼の魂を刈り取った。
きらきらと光る魂を抱いて、そっとかの地へと送り出してから、あたしはその場を去った。


「リナ」
あたしを待っていた姉ちゃんは、哀しげな顔をしていた。
「ただいま姉ちゃん。...だけど、さよなら」
「行ってしまうのね」
あたしはもう決めていた。
人間界へ墜ちる、と。

人間が死神になることは出来ない。けど、神が人間の輪廻に墜ちることは出来る。
──あたしが人間に生まれ変われば、その先でガウリイの魂を持つ人に出会う事が出来るかもしれない。いや、出会うまで何度だって生まれ変わる。

「だからいつも言ってたのに」
──一人の人間に必要以上の情を抱いてはいけない。墜ちてしまうから。
「あたしはもう、死神の仕事、続けられそうにないからさ。ごめんね」
「後悔しない?」
「......しない。絶対」
姉ちゃんはあたしの頭を思いっきりぐしゃぐしゃにして、馬鹿、と言った。
「ありがとう」
笑って、あたしはその場から消えた。


墜ちる。墜ちる。
──君と会えるならどこへだって。


終わり

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ちょっと最後は抽象的になってしまいました。(書き直したい・・・
こんな話もたまにはありかな?と、思います。

ここまで読んでくださった方、ありがとうございます!
次は幸せなガウリナを書きたい!というかゼロシル早く続き書けよっていう(笑)

ではでは、また次回!


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