前回の続きです!三回じゃ終わらなかった...(;`・ω・´)
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金色の髪、金色の睫毛。目を開けたら、瞳は薄いブルー。
彼は目を覚ますと、まずあたしの名前を呼ぶ。
「リナ」
その繰り返しに、あたしはもう慣れてしまった。
「はいはい、居るわよガウリイ」
「...良かった」
──でもなんだか物凄く反応に困る。
むずがゆい気分を、あたしは意識して振り払った。
ハンサムだし、優しいし、見舞いに来る女の子の一人や二人いそうなのに、なんで来ないのだろう。
資料によれば心臓病は二年前にかかったもので、それまでは至って元気だったらしい。
家族も皆健在。祖母だけは十年前に他界。
「腹減った...」
「あんた病人の癖に元気ね…」
聞きたいことは色々あるけど、聞いて良いものか分からない。
話し相手になるって、結構難しいかも。
「リナは腹減らないのか?」
呑気な質問を投げてくるガウリイに、あたしはため息をついた。
「あたしは死神よ?人間とは違うの」
「...つまらん」
言って、ガウリイはしばらく黙った。医者の先生と看護士さんが朝の検診に来たからだ。
あたしも、姿はガウリイ以外には見えないけど、一応窓際に寄る。
「ガブリエフさん、最近は調子が良いみたいですね」
「はあ」
「何か気になる事とか、体調でいつもと違うことはありますか?」
「...特にないです」
淡々と先生の質問に答えていくガウリイ。
「このまま行けば退院出来るかもしれませんねえ」
──嘘だ。
笑顔の先生の言葉に、あたしは苦い思いを噛み締めた。
ガウリイだって嘘だと分かっているだろう。なぜなら、あたしがいるのだから。
「...ありがとうございます」
でも、ガウリイは笑って言葉を返した。
──ああ、この人は大人なのだ。
二人が去ってから、ガウリイはあたしを見て苦笑した。
「なんて顔してんだ、リナ」
優しく頭を撫でられて、余計悔しくなる。
「...なんで今あたしに優しく出来るのよ」
「ばあちゃんの遺言なんだ。女子供にゃ優しくしろってね」
「......あたしは死神よ?」
「死神でも、オレには女の子に見えるから」
あたしは、見たこともないガウリイのお祖母ちゃんにちょっとだけ感謝した。
次の日も、その次の日も、さらさらと時間が過ぎていく。
ガウリイは相変わらず呑気な様子で、でも段々食が細くなって行くのはあたしにも分かった。それがちょっとだけ寂しい。
「暇だなー」
「本でも読んだら?」
「本なんか読んだら寝ちゃうだろ?」
「なんでそーなるのよ!」
あたしのツッコミに、ガウリイはあははと笑った。
「リナは面白いなー」
「......」
なんだかなあ。緊張感の無い奴。
「本は嫌いなんだよ。無理やり読もうとしても、頭に全然入って来ないし」
うへえ、とばかりに顔をしかめて言うガウリイに思わず笑ってしまう。
「へえ、あたしは好きだけどなー。読むだけでちょっと世界が広がるじゃない」
「リナは読書家なのか」
「まあね...」
あたしが死神界の人気作家を教えようとした時、ガウリイの顔が急に曇った。
「ガウリイ?」
「......う、あ」
胸を押さえて顔をしかめる。
発作だ。
あたしは慌ててナースコールを押そうとして、固まった。
──押せない。
あたしはこの人間界で、ガウリイ以外のものには触れられないのだ。
ただそばに居ることしか、今のあたしには許されない。
「あ......リナ...」
「ガウリイ...っ」
ガウリイは苦しそうな息をして、身体を丸める。
──どうしよう。どうしよう。
頭の中が真っ白になる。
こんな時はどうすればいいか、あたしは知っている。死神は人間の生死には干渉しない。だから、ただ見ていればいい。
だけど、そんな事出来ない。
苦しんでいるガウリイの、あたしは手を取った。
「ガウリイ!」
ナースコールまでガウリイの腕を引っ張る。驚いた顔をしたガウリイも、あたしの意図に気付くと苦しげに顔を歪めながらも、ナースコールを手に取った。
かちゃ、とボタンがきちんと押されたのを確認して、あたしはほっと息をつく。
だけど、ガウリイはまだ苦しんでいる。手を離そうとしたら、ガウリイにその手を掴まれた。
「リナ......はっ…はあっ」
「ガウリイ、大丈夫。今、お医者さん来るから」
努めて落ち着いた声を出すと、ガウリイは弱々しく微笑んだ。
「ありがと...な」
まだ。ガウリイの寿命はまだ先なのに。
それでも、あたしは喉の奥が熱くなって、苦しくなった。
続く
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次回に続く!
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金色の髪、金色の睫毛。目を開けたら、瞳は薄いブルー。
彼は目を覚ますと、まずあたしの名前を呼ぶ。
「リナ」
その繰り返しに、あたしはもう慣れてしまった。
「はいはい、居るわよガウリイ」
「...良かった」
──でもなんだか物凄く反応に困る。
むずがゆい気分を、あたしは意識して振り払った。
ハンサムだし、優しいし、見舞いに来る女の子の一人や二人いそうなのに、なんで来ないのだろう。
資料によれば心臓病は二年前にかかったもので、それまでは至って元気だったらしい。
家族も皆健在。祖母だけは十年前に他界。
「腹減った...」
「あんた病人の癖に元気ね…」
聞きたいことは色々あるけど、聞いて良いものか分からない。
話し相手になるって、結構難しいかも。
「リナは腹減らないのか?」
呑気な質問を投げてくるガウリイに、あたしはため息をついた。
「あたしは死神よ?人間とは違うの」
「...つまらん」
言って、ガウリイはしばらく黙った。医者の先生と看護士さんが朝の検診に来たからだ。
あたしも、姿はガウリイ以外には見えないけど、一応窓際に寄る。
「ガブリエフさん、最近は調子が良いみたいですね」
「はあ」
「何か気になる事とか、体調でいつもと違うことはありますか?」
「...特にないです」
淡々と先生の質問に答えていくガウリイ。
「このまま行けば退院出来るかもしれませんねえ」
──嘘だ。
笑顔の先生の言葉に、あたしは苦い思いを噛み締めた。
ガウリイだって嘘だと分かっているだろう。なぜなら、あたしがいるのだから。
「...ありがとうございます」
でも、ガウリイは笑って言葉を返した。
──ああ、この人は大人なのだ。
二人が去ってから、ガウリイはあたしを見て苦笑した。
「なんて顔してんだ、リナ」
優しく頭を撫でられて、余計悔しくなる。
「...なんで今あたしに優しく出来るのよ」
「ばあちゃんの遺言なんだ。女子供にゃ優しくしろってね」
「......あたしは死神よ?」
「死神でも、オレには女の子に見えるから」
あたしは、見たこともないガウリイのお祖母ちゃんにちょっとだけ感謝した。
次の日も、その次の日も、さらさらと時間が過ぎていく。
ガウリイは相変わらず呑気な様子で、でも段々食が細くなって行くのはあたしにも分かった。それがちょっとだけ寂しい。
「暇だなー」
「本でも読んだら?」
「本なんか読んだら寝ちゃうだろ?」
「なんでそーなるのよ!」
あたしのツッコミに、ガウリイはあははと笑った。
「リナは面白いなー」
「......」
なんだかなあ。緊張感の無い奴。
「本は嫌いなんだよ。無理やり読もうとしても、頭に全然入って来ないし」
うへえ、とばかりに顔をしかめて言うガウリイに思わず笑ってしまう。
「へえ、あたしは好きだけどなー。読むだけでちょっと世界が広がるじゃない」
「リナは読書家なのか」
「まあね...」
あたしが死神界の人気作家を教えようとした時、ガウリイの顔が急に曇った。
「ガウリイ?」
「......う、あ」
胸を押さえて顔をしかめる。
発作だ。
あたしは慌ててナースコールを押そうとして、固まった。
──押せない。
あたしはこの人間界で、ガウリイ以外のものには触れられないのだ。
ただそばに居ることしか、今のあたしには許されない。
「あ......リナ...」
「ガウリイ...っ」
ガウリイは苦しそうな息をして、身体を丸める。
──どうしよう。どうしよう。
頭の中が真っ白になる。
こんな時はどうすればいいか、あたしは知っている。死神は人間の生死には干渉しない。だから、ただ見ていればいい。
だけど、そんな事出来ない。
苦しんでいるガウリイの、あたしは手を取った。
「ガウリイ!」
ナースコールまでガウリイの腕を引っ張る。驚いた顔をしたガウリイも、あたしの意図に気付くと苦しげに顔を歪めながらも、ナースコールを手に取った。
かちゃ、とボタンがきちんと押されたのを確認して、あたしはほっと息をつく。
だけど、ガウリイはまだ苦しんでいる。手を離そうとしたら、ガウリイにその手を掴まれた。
「リナ......はっ…はあっ」
「ガウリイ、大丈夫。今、お医者さん来るから」
努めて落ち着いた声を出すと、ガウリイは弱々しく微笑んだ。
「ありがと...な」
まだ。ガウリイの寿命はまだ先なのに。
それでも、あたしは喉の奥が熱くなって、苦しくなった。
続く
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次回に続く!
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