碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

言葉の備忘録50 サマセット・モーム『昔も今も』

2011年07月31日 | 言葉の備忘録

今、凝っているのが、サマセット・モームの小説。

どういうタイミングか、読みやすい新訳が出てきたことがきっかけだ。

「お菓子とビール」(行方昭夫・訳)が岩波文庫で、「昔も今も」(天野隆司・訳)がちくま文庫から。

16世紀のイタリアを舞台に、あのマキャベリを主人公とした「昔も今も」を読み終わったのだが、これがすこぶる面白かった。

ストーリーはもちろん、人間に対する鋭い観察・洞察、会話の妙、独特のユーモアに唸らされる。

開高健さんが繰り返し愛読したというのも納得。

この後、「お菓子とビール」を読んだら、次は「人間の絆」や「月と6ペンス」も読み直してみたい。

明日から8月だ。

サマセット・モームの夏。

ちょっといいかもしれない(笑)。



このイタリアには、自分の眼でしかと確かめたうえでなければ、他人を信じるような愚か者は一人もいない。

賢者はもてる卵をすべて一つの籠にいれておきません。

人が後世に記憶されるのは、その偉大な行為によってではありません。文筆家がその行為を記述する見事な文章によって記憶されるんです。

幸運の女神は、いかに好機をつかみとるか、その方法を心得ている者を寵愛される。

―――サマセット・モーム『昔も今も』


『週刊新潮』で、NHK「パソコン受信料」についてコメント

2011年07月31日 | メディアでのコメント・論評

NHKの諮問機関が発表した「パソコンからも受信料」は、なかなか衝撃的。

さっそく『週刊新潮』が記事にして、そこでコメントをしています。


ついに地デジ化でNHKを待つ
「受信料」日照り


7月25日午前0時、テレビは地上デジタル放送へと完全移行した(被災3県を除く)。

松本正之・NHK会長と広瀬道貞・民放連会長は揃って記者会見に臨み、順調な切り替えを強調してみせた。

が、テレビを取り巻く環境は“順調”とはいえない。

「若い世代のテレビ離れが進み、ネットを使う時間が明らかに増えています」と、放送記者が解説する。

「NHKの調査では、10代男性の土曜日のテレビ視聴時間は、昨年が2時間34分と、5年の間に50分以上も減った。ネットは1時間5分と、倍以上に。動画サイト自体が“生中継”する番組も増えています」

そもそもテレビを持たない若者が増えている。

「今のパソコンには地デジチューナーが組み込まれているものが多く、一人暮らしの大学生などは、必要ならそれでテレビを見ているのです」(IT評論家)

NHKの受信料が干上がる? 受信料は、NHKが映るテレビがあればこそ、支払い義務が生じるからだ。

で、地デジ化の陰で、ひっそり報じられた記事に注目。

「パソコンからもNHK受信料を、という“衝撃的”なものでした」と、先の記者。

「昨秋から“フルデジタル時代における受信料制度のあり方”を、NHK会長の諮問機関が検討していた。その答申が出て、テレビ番組のネットへの同時配信の必要性を認め、受信するパソコンからも受信料を徴収すべし、とあったのです」

上智大学の碓井広義教授(メディア論)は、「NHKはネット配信をお金になる事業として組み込もうと考え、パソコンからも受信料を、とまずアドバルーンをあげてみたのではないでしょうか」

が、観測気球は若者の反発で火ダルマに。しかも同時配信には、まず放送法改正が必要。日照り近づく?

(週刊新潮 2011.08.04号)


・・・・別のメディアからも、この件に関して論評を求められていますので、整理した上で原稿を書くつもりです。



「イチオシ!モーニング」「イチオシ!」&「トークDE北海道」

2011年07月30日 | テレビ・ラジオ・メディア

早朝6時25分からHTB「イチオシ!モーニング」に出演。

いつも司会をしている石澤綾子アナウンサーが旭川の旭山動物園から。

スタジオには、代わりに吉田理恵アナウンサーがいる。

谷口直樹アナ、吉田アナと私が並んでみると、3月までやっていた「ほんわかどようび」のまんまだ(笑)。





旭山動物園は、「うさぎの目線でオオカミを見る」という新しい施設が面白かった。

私はニュースで、航空大機墜落事故、小松左京さんの逝去などについてコメント。



それと、来週末8月6日から札幌シアターキノで公開されるドキュメンタリー映画「二重被爆~語り部・ 山口彊(やまぐち・つとむ)の遺言」を紹介させていただいた。

一人でも多くに方が観てもらいたいと思う。


9時54分からはUHB「のりゆきのトークDE北海道」。



道産のとうきびを使った簡単料理が登場したが、私でも出来そうで、ちょっとやってみたくなった。

そして、午後3時45分からの「イチオシ!」にも。




番組終了後は、来月放送予定のプロデユース番組についての打ち合わせ。

大事な点の進展ありで、少しほっとする。


夜、豊平川の花火大会があった。

ビルの向こうに打ち上がる大輪の花火をクルマの中から見る。



街の中は、浴衣姿の女性を含め、久しぶりで見る賑やかさだ。

札幌に、北海道に、夏が来たんだなあ、と実感です。





朝ドラ「おひさま」の“雪のない真冬”

2011年07月29日 | テレビ・ラジオ・メディア

故郷の信州・松本が舞台ということもあり、NHK朝ドラ「おひさま」を見ている。

今週、このドラマが描いているのは「昭和22年1月」だ。



夫に赤ちゃんの世話をフォローしてもらいながら、ヒロイン・陽子は学校の先生に復帰している。

井上真央も、がんばってます(笑)。

それはいいのだが、見ていて、何か違和感があって、もやもやしていた。

で、今日、わかった。

雪がないのだ!(笑)



厳冬の信州、松本や安曇野の1月だというのに、道に雪がない。

最近でこそ、温暖化の影響か、雪のない年末年始があったりするが、私の子供時代、昭和30~40年代でも12月、1月は雪があるのが普通だった。

ましてや昭和20年代なら、冬は冬らしく、今よりしっかり寒かったはずだ。

もしかしたら、時代考証というか、この時代の気象記録に基づいて、雪がないようになっているのかもしれない。

だったら「ごめんなさい」だけど(笑)、それならそれで珍しいことなのだから、「今年のお正月は雪がなくて楽だねえ」くらいの台詞は言わせたほうがいい。

セットで作られた町や道に、雪を用意する必要がないのは、「美術」的にも、「予算」的にも助かるのかもしれないが、季節感という意味では、真冬の松本や安曇野を表現するのに、やはり雪は欲しいわけです。

という、信州人の“ないものねだり”でした(笑)。


***************************


本日(金)、
HTB「イチオシ!モーニング」&「イチオシ!」、
UHB「のりゆきのトークDE北海道」、
生出演です。

道内の皆さん、
よろしく
お願いします。


「地デジ化」達成、テレビは何を流すのか

2011年07月28日 | 「東京新聞」に連載したコラム

『東京新聞』に連載しているコラム「言いたい放談」。

今回は、先日のアナログ終了・地デジ化達成について、書かせてもらいました。



 「地デジ化」達成、さて内容は


二十四日正午、東北三県を除く全国で、番組のアナログ放送が終了した。

では、完全にデジタル化された日本のテレビは、私たちに何を見せてくれるのか。

そう思いながら、この日の午後の各局を眺めていた。

驚いたのはフジの「FNS27時間テレビ」だ。

スタジオで行われていたのは「レディース相撲」である。

木下優樹菜と鈴木紗理奈が、まわし姿で組み合い、髪だけでなく胸まで掴んだりする珍勝負を、男性タレントたちがはやし立てていた。

また、その後の中継ではマツコ・デラックスと仙台放送の新人男性アナウンサーが登場。

二人が互いの股間をさわり合う様子を延々と映し出して、呆れた。

この生中継はあの南三陸町からなのだ。

ふと当たり前のことに気づく。

地デジ化は「電波の送り方」の変更に過ぎないのである。

その電波を使って「何を流すか」は問題にもされていない。

高画質も高音質も結構だが、大事なのは中身だ。

地デジ化達成のその日に女相撲や被災地でのオフザケを見せようとするセンス、それで視聴者が喜ぶと思っている認識があまりに情けない。

完全デジタル化とは、地上波がBSやCSと横並びとなって視聴者から厳しく選択されるということでもある。

高画質・高音質で「これまで通り」を繰り返す地上波テレビを、視聴者はどう判断していくのだろう。
     
(東京新聞 2011.07.27)

地上波の完全デジタル化について、共同通信でコメント

2011年07月27日 | メディアでのコメント・論評

先日、地上波の完全デジタル化に関して、共同通信の取材を受けた。

その後、岩手日報、茨城新聞、山陰中央新報(島根)など全国各地の新聞に配信された記事は、以下の通り。

放送界の大先輩である山川静夫さんや、萩本欽一さんと並んでのコメントなので、恐縮です。


◎声上げる視聴者に
 
 碓井広義(うすい・ひろよし)上智大教授(メディア論)の話


地上波だけでなく、BSも簡単に視聴できるなど受け取れるソフトが広がった点が大きい。電波は国民の財産。視聴者はこれを機に、良い番組は良い、おかしな番組はおかしいと積極的に声を上げていくべきだ。

一方、デジタル化の進捗(しんちょく)度は地域によって異なる。地域ごとに移行するのは技術的には可能で、(東北3県を除き)全国一斉にアナログを止めたのは乱暴だ。テレビを本当に必要とする人が声を出せずに困っているのではという懸念が残る。



◎心に響く番組を

 元NHKアナウンサーの山川静夫(やまかわ・しずお)さんの話


デジタル放送の映像は美しく、双方向のデータ放送も便利だが、データばかりの放送となってはいけない。例えばかつての大相撲中継では、先輩アナウンサーたちの放送には様式美が備わっていた。

最近のテレビは、安直な笑いでタレントたちが盛り上がる場面が目立つ。手間を掛けないといけないのはアナログ放送時代と変わらない。作り手はデジタル放送でも、心に響く、受け手にきちんと伝わる番組を目指してほしい。内容が大切だ。


◎良かったと思えるように

 コメディアン萩本欽一さん


地上波テレビが24日、東北3県を除きデジタル放送に完全移行した。テレビの黄金期を支え、移行をPRする「地デジ化応援隊」にも参加したコメディアンの萩本欽一(はぎもと・きんいち)さん(70)は、この転換点をどう受け止めたのか。
   ×   ×
強引に「テレビを買い替えろ」っていう話だから、ご不満のある方もいると思います。実は僕もそう。なかなか買い替えない1人でした。

負担を強いることに、誰も謝らないのも気になっていたんですね。そんなとき、地デジ化応援隊の話が来たから、じゃあ僕が代表して「ごめんね」って謝ろうと決めて、引き受けたんです。

ただ、その後いろいろと話を聞いて「なるほど」と思ったの。これからは見るだけのテレビから、使うテレビになる。参加できたり、情報を発信できたり、もっと大きな仕事をしてくれるようになるんだなって。それが分かって、僕もようやく買い替えました。

だからこそ思うわけ。「ごめんね」の次には「必ずもっと楽しめる、気持ちの良いテレビをつくります」という言葉がないといけない。デジタルになって良かったと思ってもらえる番組をつくらないと、失礼だなって。

テレビ番組で大切なのは発明と発見です。放送開始から60年近く。最近はそれも頭打ちになってきました。デジタルに変わったのを機に、新しい形のテレビ番組をつくることで、みんなに「良かった」と思ってもらいたい。そのために僕も覚悟を持って、もう一度テレビに挑戦していきます。(談)


意欲的なドラマ「IS~男でも女でもない性」

2011年07月26日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

『日刊ゲンダイ』に連載している番組時評「テレビとはナンだ!」。

今週の掲載分は、テレビ東京のドラマ「IS~男でも女でもない性」について書きました。


重い性のテーマをうまく
エンタメにしている「IS」


テレビ東京が続けている社会派ドラマの新シリーズ「IS~男でも女でもない性」(月曜夜10時)が始まった。

初回はIS(インターセクシャル)の解説と、主人公である星野春(福田沙紀)一家の“これまで”で構成されていた。

ISは数千人に一人の割合で存在する。

生まれた時、男女の判断が肉体的に困難だ。

親が早い段階で性別を決定し、処置も行われるが、本人が自覚する性別と合致しないケースもあるという。

これは難しいテーマだ。

下手に扱えば、「誤解や差別を助長する」といった批判の矢が飛んでくる。

その意味で制作陣はとても慎重に、また丁寧に物語を構築している。

何より両親(高橋ジョージ・南果歩)が、戸惑ったり、悩んだり(母子心中の危機さえあった)しながらも、ISである我が子と真摯に、そして明るく向き合ってきたことがいい。

サブタイトルは「男でも女でもない性」となっている。

だが、このドラマの基本にあるのは、ISが「男でもあり女でもある性」であり、一つの個性であるという認識だ。

変な被害者意識も強調することなく、エンターテインメントの形でこの重いテーマを表現している。

主演の福田は、内面の性を隠しながら女子高校生として過ごすという複雑な役柄を好演。

“ワケあり風”同級生役の剛力彩芽にも期待したい。

(日刊ゲンダイ 2011.07.25)

実相寺昭雄監督の軌跡をたどる「実相寺昭雄展」

2011年07月25日 | テレビ・ラジオ・メディア

川崎市市民ミュージアムで開催中の『実相寺昭雄展 ウルトラマンからオペラ「魔笛」まで』を見てきた。

私の”お師匠さん”の一人である実相寺監督が亡くなったのは2006年11月29日。

早いもので、もう5年近くが過ぎたことになる。





今回の企画展を見て、懐かしさと同時に、監督の“凄さ”をあらためて実感した。

まさに、ウルトラマンからオペラまでの広がりと奥行き。

テレビディレクター、映画監督、オペラ演出家としてはもちろん、趣味といわれる絵や書、そして監督が大好きだった鉄道に関しても、すべて一流の仕事を残している。

会場にあった寺田農さんの文章の通り、やはり実相寺昭雄は“天才”だったのだ。


私にとって、監督との出会いであり、初めての仕事だったドラマ「波の盆」。

「遠くへ行きたい」で監督が担当する際は、プロデューサーとしての自分の番組をそっちのけにして、ADを務めた。

監督と一緒に、神田、鎌倉、気仙沼、そして長崎などへ出かけたロケは、ひたすら楽しかった。

また、私がプロデュースした番組では、監督に何度もタイトル文字を書いていただいた。

ひと目で監督の作とわかる、あの独特の字体が好きだった。

それから、映画「帝都物語」も、私が仲人をさせていただいた荒俣宏さんの原作だったこともあり、企画段階から公開まで、さまざまな思い出がある。

第一に、荒俣さんと実相寺監督、それぞれ自分にとって大切な知り合いが、一つの作品で出会ったことが嬉しかったのだ。

展示会場を見て回りながら、そうしたあれこれを思い浮かべていると、時間を忘れてしまう。

9月4日まで開催されているので、また足を運ぼうと思っています。



(監督の画文がマグネットに)


(実相寺家の「長男・ちな坊」が文明堂のカステラに)


(ミュージアムの中庭)


(怪獣やロボットを思わせる旧・溶鉱炉)

アナログ波での放送が終了

2011年07月25日 | テレビ・ラジオ・メディア

はい、確かに見届けました(笑)。

24日正午に、ブルーバックに説明文字という画面に切り替わり、12時間後の25日午前0時に、見事な「砂嵐」になりました。

合掌。














本日正午、地上アナログ放送が終了する(はず)

2011年07月24日 | テレビ・ラジオ・メディア

通信社から取材を受けた。

そう、本日(24日)正午、東北3県を除く全国で、地上アナログ放送の電波が止まるのだ。

昭和28(1953)年2月1日、NHKがテレビ放送を開始。

民放は、同年8月28日に、日本テレビがスタートした。

それから58年。

ずっと流され続けてきたアナログ電波が止まるわけだ。

地デジ化に関しては、アナログ放送の「全国一斉停波」ではなく、各地域の事情を勘案した「さみだれ式停波」を主張・支持してきた私としては、言いたいことはたくさんありますが(笑)、まずは停波の瞬間を、きっちり見届けたいと思っています。


<このブログに書いた関連記事>

『週刊新潮』で、“震災とテレビ”についてコメント 
2011年03月19日
http://blog.goo.ne.jp/kapalua227/e/39875c4071a897cf5a27d720a09e734a

「地デジ難民のゼロ化」運動について 
2011年03月09日
http://blog.goo.ne.jp/kapalua227/e/e4979a7cd3fa170184c763ca38deef84

「日刊ゲンダイ」で、地デジ移行とNHKについてコメント 
2010年10月14日
http://blog.goo.ne.jp/kapalua227/e/1629bc78c962e9ecb473a12e9441fb79

来年の今日、アナログ波は一斉に止まるのか 
2010年07月24日
http://blog.goo.ne.jp/kapalua227/e/1dcb56d06a4dcbbfa6f5e78d8d0e6b70

「体験授業」参加の皆さん、ありがとう

2011年07月23日 | 大学

本日、オープンキャンパス「体験授業」に参加して下さった高校生の皆さん、そして父母の皆さん、おつかれさまでした。

昨年にも増して多くの参加希望者が集まってくださいました。

関東はもちろん、岩手、富山、長野、静岡、愛知、岐阜、広島などからも。

感謝します。

ただ、スタジオに入るキャパのこともあり、定員100名で2回の授業、つまり200名しか参加してもらえませんでした。

整理券配布の段階で、すぐに満杯となり、たくさんの方をお断りすることになりました。

せっかく来てくださった生徒さんに、“体験”してもらえなかったことは私も残念です。

この場を借りて、「ごめんなさい」。

来年は、何らかの改善を図りたいと思います。

スタジオに入ってもらった生徒さんたちは、とても熱心に、また積極的に参加してくれました。

こちらは、「ありがとう」です。

みんな、プロンプターに表示されたニュース原稿を読むのが、とても上手で、びっくりしました。

カメラの操作にも楽しそうにトライしてくれました。

少しでも、実習の雰囲気を感じてもらえたのであれば、嬉しいです。

そうそう、嬉しいといえば、参加者の1人が、「ブログ、いつも読んでます」「碓井先生がいらっしゃるので上智の新聞学科を受験します」と言ってくれたこと。

実話ですよ(笑)。

それから、先日、出張講義をさせてもらった鎌倉学園高校から2名が来てくれたことも嬉しかったです。























思えば、私が受験生だった1970年代には、オープンキャンパスなどというイベントはありませんでした。

高校3年の夏休みに、信州から一人で上京し、親戚の家に1泊させてもらい、受験しようと思っていた4つの大学を回っただけです。

いずれの大学も夏休み中だったのでキャンパス内は静かで、のんびりと散歩をしたような”一人見学ツアー”でした。

地方で暮らす高校生だった私にとって、受験雑誌などで見るだけだった大学の構内を実際に歩くのは、結構いい刺激になりました。

志望していた大学のキャンパスに立ってみたことで、何となく雰囲気が気に入ったり、その逆もあったりして(笑)、行きたい大学(第一志望)が入れ替わりました。

何事も、「現地」「現物」というのは、なかなかインパクトがあるんですね。

最終的に受験したのは、このときに訪ねた4校のみでした。


本学は各学部、各学科が基本的に少人数制で、新聞学科も定員は60名と小さな枠です。

受験生にとっては大変かもしれませんが、新聞学科に興味のある諸君は、ぜひチャレンジしてみてください。

配布したメッセージにも書いた通り、来年の春、キャンパスで皆さんに会えるのを楽しみにしています。

もう一度、「おつかれさまでした」。



   (体験授業をサポートしてくれた碓井ゼミ生たち)

明日23日(土)のオープンキャンパスで、体験授業

2011年07月22日 | 大学

今週末の23日(土)・24(日)の両日、本学はオープンキャンパス。

23日(土)には、私も「テレビ番組を作ろう~テレビリテラシーを学ぶ~」をテーマに、体験授業を行います。

1回目 12:00~12:45
2回目 14:30~15:15




いずれも定員制で、開始30分前に整理券が配布されます。

集合場所は、2号館地下1階、AV-1教室。

以下は、高校生の皆さんへの、当日用メッセージです。



上智大学オープンキャンパス2011
新聞学科体験授業
「テレビ番組を作ろう~テレビリテラシーを学ぶ~」

文学部新聞学科教授 
碓井広義


皆さん、こんにちは。新聞学科の「体験授業」にようこそ。

新聞学科は1932年に創設され、来年80周年を迎える伝統ある学科です。名称に「新聞」を掲げていますが、もちろん新聞だけが研究対象ではありません。

活字・映像にまたがるジャーナリズム(報道)を中心に、マス・メディアである「新聞」「放送」「出版」「広告」についての<研究・教育拠点>となっています。

本学には「テレビセンター」と呼ばれるスタジオがあります。ここでは、実際に映像を制作することで、「いかにして映像で伝えるか、映像で語るか」を学ぶ、「テレビ制作」という実習授業を行っています。

今日、皆さんに“体験”してもらうのは、この授業の一部ですが、とても短い時間しかありませんので、一種の“スタジオ公開”“スタジオ見学”だと思って下さい。

たとえば、テレビ局から送り出されるニュース番組が、どんなふうに作られているのか。複数のカメラの役割、副調整室(サブ)の機能、出演者やスタッフの動き、といったものに注目してください。

ここで大切なのは、目の前のスタジオで展開されていることと、最終的にテレビ画面から流されていることの“関係”についてです。情報を文章で伝える新聞などと比較しながら、テレビというメディアの“特性”を考えてみましょう。

スタジオ以外では、AVルームで、学生たちが「テレビ制作」という授業で実際に制作した映像作品(テレビ番組)が見られるようになっています。

「テレビ制作Ⅰ」で制作したのは「ソフィアのひみつ」をテーマとする5分の情報番組。また、「テレビ制作Ⅱ」では、「あの人に学ぶ」というテーマで10~15分のドキュメンタリー番組を作りました。カメラに初めて触った学生も多かったのですが、なかなかの力作ぞろいですので、ぜひ、ご覧ください。

来年の春、この四谷キャンパスで、皆さんと再会するのを楽しみにしています。




今週の「読んで書いた本」 2011.07.22

2011年07月22日 | 書評した本たち

猛暑が続いていたと思ったら、台風の影響か、一転涼しくなって、びっくり。

皆さん、体調にご注意を。


今週の「読んで(書評を)書いた本」は、以下の通りです。

川上弘美 
『天頂より少し下って』 小学館

武田 徹 
『私たちはこうして「原発大国」を選んだ』 中公新書ラクレ

ひし美ゆり子・樋口尚文 
『万華鏡の女~女優ひし美ゆり子』 筑摩書房

原山擁平 
『セクハラの誕生』 東京書籍


* 上記の本の書評は、発売中の『週刊新潮』(7月28日号)に
  掲載されています。




・・・・武田徹さんは信頼するジャーナリストの一人。

その著作のほとんどをリアルタイムで読んでいる。

原発関連では、すでに『原発報道とメディア』(講談社現代新書)という新著も出ていて、こちらも鋭い分析に富んでいます。

ひし美ゆり子さんといえば、やはり「ウルトラセブン」のアンヌ隊員だ。

放映当時、中学生だった私は、モロボシダンとアンヌの“異星間結婚”の現実性を心配していたが、杞憂に終わりました(笑)。



四谷「いーぐる」で、『なぎさホテル』を読む

2011年07月21日 | 本・新聞・雑誌・活字

放送界には、いくつかの「賞」がある。

この何年か、ギャラクシー賞の選奨委員をさせていただいているが、別の賞の審査委員も務めることになった。

夕方からの教授会まで、研究室にこもって、ひたすら候補作を、何本ものDVDを見る。

確認のために2度、3度と見たりもする。

で、途中、さすがに疲れて、ひと休み。

大学から歩いてすぐのところにある、大好きな店、ジャズ喫茶「いーぐる」へ。

ほんと、有難い(笑)。



一番落ち着く、いつもの席(大きなJBLスピーカーの前)に座り、アイスコーヒー。

書評予定の本、伊集院静さんの自伝的エッセイ『なぎさホテル』を読む。

しばし、すべてを忘れて、本に没頭。

読みながら、「いいなあ」、「いいねえ」と声に出さず、つぶやく。

でも、シアワアセな時間は早く過ぎるのだ(笑)。

気がつけば、教授会が始まる直前だった。

大急ぎでキャンパスに戻る。

節電のために、かなり蒸し暑い会議室。

議案のあれこれを聞きながら、まだ頭の中には、伊集院さんが「なぎさホテル」から見たという、逗子の海のイメージが広がっておりました。

「テレビショッピング」は“番組”なのか?

2011年07月21日 | テレビ・ラジオ・メディア

天野祐吉さんが「朝日新聞」に連載している、コラム「CM天気図」を愛読している。

19日のそれは、「テレビショッピング」について書かれており、いつにも増して「その通り!」と拍手したくなるような内容でした。


CM天気図
しつこいようですが

コラムニスト・天野祐吉


広告と批評は親戚だと、昔からぼくは言ってきた。たとえば、広告よりも書評を見て、ぼくは本を買うことが多い。広告よりも吉田秀和さんの批評を読んで、CDショップへ走ることのほうが多かったりする。

その場合は、批評が本やCDを売ったわけで、すぐれた批評にはその商品を売る広告性があるし、逆に言えば、すぐれた広告には、その商品に対する批評性が含まれていると言っていいだろう。

が、音楽とか本にはあっても、電化製品や食料品のような身近な商品に対する批評はあまりない。すぐ思いつくのは「通販生活」とか「暮しの手帖」とか、ほんのわずかだ。

こういう雑誌は、「商品ジャーナリズム」と呼んでいいと思うのだが、「テレビショッピング」もそれと同じと言えるだろうか。

商品の取り上げ方や選び方に、ジャーナリズムの視点があるんだろうか。その紹介の仕方に批評の目が行き届いているんだろうか。

残念ながら、そういうものがあるとはとても思えない。番組とは名ばかりで、全編CMといった感じのものがほとんどだ。

番組の中に入るCMには時間の制限があるのに、全編CMなんて、そんな番組が許されるんだろうか。

いまは、商品が地上にあふれている時代である。活字の世界だけでなく、テレビにも商品ジャーナリズムの番組があっていいと、ぼくは思っている。とくにいまはそれが必要なときでもある。

もし広告主との関係でそういう番組ができないのだとしたら、テレビはカネの世界の御用機関でしかないことになる。

そんなものになっていまうには、テレビはあまりにも大きな可能性を持った、面白いメディアなのに。

(朝日新聞 2011.07.19)


・・・・以前、「日刊ゲンダイ」に「氾濫する通販番組に惑わされる視聴者」という特集記事が掲載されたことがある。

記事は、通販番組(テレビショッピング)が低予算で制作できて利益も大きい、といった話を紹介した後、以下のような文章が続く・・・・


この種の通販番組の位置付けをご存知だろうか。民放連の改訂版放送基準解説書によると、なんと生活情報番組なのだという。

民放連は放送基準のなかで週間のコマーシャルの総量を18%以内とするとしているが、通販番組は生活情報番組だから、この枠外。いくら増えても構わないわけだ。あまりにもテレビ局のご都合主義ではないか。
 
「商品をストレートに視聴者にアピールする通販番組は、対面販売に近い。利便性やメリットばかりを強調し、欠点やネガティブな客観情報は一切報じない。これはもうCM以上にCMですよ。公共の電波を使って、こうした番組を平気で垂れ流すテレビ局の姿勢は、もうけ主義と言われても仕方ありません」(上智大教授の碓井広義氏=メディア論)

(日刊ゲンダイ 2010.08.21)


・・・・通販番組(テレビショッピング)は、視聴者=買い手と見なした、とてもストレートな“物売り”の時間だ。

「生活情報番組」などと、いかにも建前風に言われると、やはり違和感があるのです。