碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

NEWSポストセブンで、「TVマンと芸能人の結婚」について・・・

2016年12月31日 | メディアでのコメント・論評



NEWSポストセブンで、「テレビマンと芸能人の結婚」について話しました。

TVマンは芸能人と結婚できるって本当? 
照明マンはモテる説も

今年も芸能界でさまざまなカップルが結婚した。芸能人同士がやはり多いが、少数だが毎年、必ずいるのが女優や女性タレントとテレビ関係者との結婚だ。今年6月には、アイドリング!!!の元メンバー、谷澤恵里香(25)がテレビ制作会社に勤務する男性との結婚を発表した。2015年にはキンタロー。(34)が、11年にはギャル曽根(30)が、谷澤同様に制作会社勤務の男性と結婚している。シェリー(32)も14年に日本テレビの社員と結婚した。

このような話を聞いて、「芸能人と付き合うためにテレビマンになるぞ!」と思う若者がどれほどいるかは分からないが、実際によくある話なのか、気になるところではある。

元テレビプロデューサーで上智大学教授(メディア論)の碓井広義さんに尋ねてみた。

「一般論として、打ち合わせやリハーサル、本番、さらに番組によってはロケやナレーションなど、ある期間に濃密な時間を過ごすスタッフと出演者が親しくなりやすいということはいえます。実際に、誰と誰が付き合っているという話を聞くこともありました。女性スタッフは少ないこともあり、いずれも男性スタッフ、女性芸能人という組み合わせです。

私の身近なところでは、当時は局アナなのでまだ芸能人ではありませんでしたが、私が参加していた制作会社『テレビマンユニオン』の後輩ディレクターが元TBSの小島慶子さん(43)と結婚しました。背が高く、筋肉質でハンサムな男です。私とは年が離れているので詳しく聞いたわけではありませんが、同社が制作している『世界ふしぎ発見!』(TBS系)のミステリーハンターとして小島さんが出演していたこともあり、その縁で仲良くなったのでしょう。

『ふしぎ発見!』のロケでは、一週間くらいかけてジャングルの奥地に行くようなこともあります。通常、ロケのメンバーは、ディレクター、AD、カメラ、音声、ビデオエンジニアの5人くらいで、そこに出演者やその関係者が加わりますが、小島さんのような局アナの場合は通常一人で参加します。不慣れな土地で行動をともにした時に、小島さんが『頼れる人だな』と思ったのかもしれませんね」(碓井広義さん・以下「」内同)


二人のように結婚に至ればメデタシだが、一般企業でいえば男性社員が取引先の女性に手を出すようなもので、会社にとってはリスクも高い。恋愛禁止を通達されることはないのだろうか。

「決まりとしては聞いたことがありませんが、『商品に手を出すな』というのは暗黙のルールとしてあります。ただ、業界には女性芸能人と付き合うのを男の勲章と見る風潮もあり、破ったからといって悪く言われることもありません。

もちろん、暗黙のルールを守る人も多いですよ。私も地方ロケなどの際に、女性芸能人が同じホテルに泊まっていても、打ち合わせがあるからといって部屋に行くようなことは絶対にしませんでした。出来るだけオープンな場でやり取りしました」


基本的には自由恋愛ということだが、テレビマンと恋に落ちる女性芸能人はいずれもタレント。女優とは縁がないのだろうか。

「ドラマの撮影中はスタッフも常にバタバタしているので、女優さんと話せる機会はほとんどありません。女優さんの場合は待ち時間が長いので、共演俳優と仲良くなりやすいですね」

6月に結婚を発表した優香(35)と青木崇高(36)もドラマ共演がきっかけだ。女優狙いはハードルが高いといえそうだが、そんな中でも女優にモテる職種があるのだという。

「知り合いの照明マンが、ある女優さんと結婚しました。残念ながらその後、二人は離婚してしまいましたが、照明マンがモテるのには理由があります。10代20代の若い女優さんは、どんなふうに撮ってもきれいに映りますが、30代になると、照明一つで美しさがまるで違います。女優さんにとって、自分が美しく映るかどうかは照明マン次第なのです。私の知人は、その女優さんを美しく見せるためにひたすらいい照明を当て続けました。彼女も『いつも私にいい照明が当たっている』と感じて好意に気づいたのかもしれません。

恋愛までいかなくても、女優は照明マンに好かれていないといけないので、現場で女優からの差し入れが一番多いのも、照明部門でした(笑い)」


恋愛も職業選択も、個人の自由。どうぞご参考までに。

(NEWSポストセブン 2016.12.29)



毎日新聞で、「紅白歌合戦」についてコメント

2016年12月31日 | メディアでのコメント・論評



毎日新聞で、「紅白歌合戦」についてコメントしました。


紅白歌合戦
強まるバラエティー色、狙いは視聴率回復?

大みそかに放送される第67回NHK紅白歌合戦。昨年は8年ぶりに、1、2部ともに視聴率が30%台にとどまった(関東地区、ビデオリサーチ調べ)。今年は、目玉のSMAP出演はかなわなかったが、バラエティー色をさらに強めて人気回復を図る構えだが、成否はいかに--。

30日、会場となる東京都渋谷区のNHKホールでリハーサルがあり、出場歌手が取材に応じた。東京都庁前から中継で出場するTOKIOの国分太一さん(42)は「NHKホールでは見せられないようなパフォーマンスとエンターテインメント性を見せられると思う」と自信を見せた。

出場歌手は全46組。矢島良チーフプロデューサーは選考基準を「今年の活躍、世論の支持、番組の企画演出に合致する歌手」と説明するが、国民的ヒットソングが少ない中、基準が見えにくくなっている。うち6組がメドレーを歌い、デビュー曲での出場もある。

一方、企画枠では今年海外で注目されたタレントの渡辺直美さんと「PPAP(ペンパイナッポーアッポーペン)」のピコ太郎さんがショーを披露。人気映画「シン・ゴジラ」も登場し、タモリさん、マツコ・デラックスさんもゲスト出演する。

審査員でも話題作りに余念がない。出場歌手の一人、星野源さんとドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」(TBS)でカップルを演じ、注目を集めた俳優の新垣結衣さんを選んだ。

こうした番組の変化について碓井広義上智大教授(メディア論)は「今年の活躍が明確ではない歌手は選ばないという努力は見られる」と評価する一方で「番組の哲学がなく、バラエティーなのか歌番組なのかわからない」と指摘する。

バラエティー色を強めていることについて矢島氏は「1年を締めくくる歌の祭典だが、テレビの祭典でもある。いろいろな要素から今年はこういう1年だったと振り返ってもらいたい」と話している。

放送は、総合テレビとラジオ第1で31日午後7時15分から。【須藤唯哉】

(毎日新聞 2016.12.30)

北海道新聞「2016年回顧 放送」で解説

2016年12月31日 | メディアでのコメント・論評



北海道新聞の特集記事「2016年回顧 放送」で、解説しました。


2016年回顧 放送
キャスター退任 報道の後退危惧

昨年来、政府や政治家から放送局への圧力とも取れる発言が続いている。2月に高市早苗総務相が、政治的に公平性を欠くと判断した放送局へ停波を命令す る可能性に言及し、民放の番組キャスター6人がこれに「表現の自由を保障する 憲法や放送法の精神に反する」と抗議する声明を出した。そんな中で3月、 NHKで23年間続いた国谷裕子キャスターの「クローズアップ現代」が終了。 TBS-HBC「NEWS23」から岸井成格アンカー、テレビ朝日-HTB 「報道ステーション」から古舘伊知郎キャスターが退任した。

いずれも鋭い批評で知られた3氏だけに、本紙に「放送時評」を寄せている上智大文学部新聞学科の碓井広義教授(メディア論)は「これでいいのか、と突っ込んで視聴者に考えさせるジャーナリズムが後退し、ニュース番組は政府が決めた結果を知らせるだけにならないか」と危惧する。「局のトップが口を出さなくても現場で『面倒が起きそうな報道はやめよう』と自主規制するようになれば、それは政権のメディアコントロール成功を意味する」と言い、放送が立ち位置を 固め直すことを期待する。

調査会社ビデオリサーチは関東地区で10月、リアルタイムの視聴率だけでなく録画した番組の再生も反映した「総合視聴率」の集計を始めた。また、NHKは地上波放送を2019年からネットで常時同時配信する方針を表明した。膨大なコンテンツを自由に見られる動画配信サービスが浸透する中で、出版界に電子書籍が登場したような変革の波が放送にも訪れている。

変革の姿勢を最も感じさせるチャンネルとして、碓井教授はNHKEテレを挙げる。障害者やマイノリティーのための情報バラエティー「バリバラ」では8月、民放のチャリティー特番に対し、障害者を使った〝感動ポルノ〟ではないかと疑問を提示。また、新トーク番組「ねほりんぱほりん」は痴漢冤罪経験者などさまざまな人たちの本音を人形劇の形で引き出すユニークな作りで注目された。「11年に教育テレビから呼称が変わり、総合でもBSでもない独特なポジションで挑戦的な番組を作ってきた努力が花開いている」と評価する。

ほか、話題を呼んだ番組では放送開始50周年の日本テレビ-STV「笑点」が司会を桂歌丸から春風亭昇太へ交代し、今後も番組が続くことを宣言した。NHKの大河ドラマ「真田丸」は史実に基づきながら大胆な省略やユーモアを交える三谷幸喜の脚本が光った一方、連続テレビ小説は「あさが来た」「とと姉ちゃん」「べっぴんさん」と実在人物がモデルの路線で人気を堅持。第4シリーズとなったテレビ朝日―HTB「ドクターX~外科医・大門未知子」は新たな登場人物を加えて高視聴率を保ち、TBS-HBC「逃げるは恥だが役に立つ」は、今どきの結婚観というテーマとエンディングの〝恋ダンス〟人気で社会現象化した。


道内局では、UHBが7月の参院選と今月の日ロ首脳会談に合わせ、テレビ番組と並行してネット独自の特番を制作して道外でも話題となった。ラジオでは、HBCとSTVが石狩管内とその近郊でワイドFM放送を開始。一方、地方ラジオ局の深夜番組では全国最長寿の45年半に及んだSTV「アタックヤング」と、韓流ブームに先駆けて韓国のポップスを15年間伝え続けたFMノースウェーブ「ビーツオブコリア」がともに3月で終了した。

テレビの黎明期から活躍した放送作家の永六輔さん、はかま満緒さん、名司会で知られた大橋巨泉さん、小川宏さんが亡くなった。(渡部 淳)

(北海道新聞 2016.12.28)



「TV見るべきものは!!」年末拡大版~2016年のテレビ界

2016年12月30日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評



日刊ゲンダイに連載しているコラム「TV見るべきものは!!」。

今回は、年末拡大版ということで、この1年を総括しました。


TV見るべきものは!! 年末拡大版

高市総務相が「電波停止」発言を
撤回していないことを忘れるべきではない

今年2月、衆院予算委員会で高市早苗総務大臣が、政治的に公平性を欠くと判断した場合の「電波停止」に言及した。確かに総務大臣は電波停止の権限をもつ。しかし、放送の政治的公平をめぐる議論の場で、その権限の行使を強調したこと自体、放送局に対する一種の恫喝(どうかつ)であり圧力だ。

放送法第4条の「政治的公平」の原則が政治の介入を防ぐための規定であることを踏まえ、政権のメディアに対する姿勢があらためて問われた。しかも現在に至るまで、高市総務相がこの発言を撤回していないことを忘れるべきではない。

続いて3月には、NHK「クローズアップ現代」の国谷裕子キャスター、TBS系「NEWS23」の岸井成格アンカー、そしてテレビ朝日系「報道ステーション」の古舘伊知郎キャスターの3人が降板した。いずれも毀誉褒貶(きよほうへん)はあるものの、特定秘密保護法、安全保障関連法など、この国のかたちを変えようとする政治の流れの危うさを、テレビを通じて伝え続けた人たちであることは事実だ。

こうした“もの言うキャスター”が時を同じくして画面から消えたことは、政権が目指すメディア・コントロールの“成果”でもある。実際に各局の報道番組はマイルドになり、たとえば南スーダンへの自衛隊「駆けつけ警護」などについても、本質に迫る報道が行われているとはいえない。来年は今年以上に、報道番組が何をどう伝え、また何を伝えないのかを注視していく必要がある。

■断然光った「逃げ恥」

ドラマでは、先日最終回を迎えたばかりの「逃げるは恥だが役に立つ」(TBS系)が断然光った。今どきの恋愛・結婚観というテーマへのアプローチの仕方が秀逸で、エンディングの“恋ダンス”も人気となり社会現象化した。同じTBS系では、漫画家の世界やコミック誌の現場をのぞかせてくれた黒木華主演「重版出来!」(脚本は「逃げ恥」の野木亜紀子)、前田敦子が新境地を開いた「毒島ゆり子のせきらら日記」なども挙げたい。

また、石原さとみ主演「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子」(日本テレビ系)は、出版社の校閲部という舞台設定が新鮮だった。石原のファッションがインスタグラムなどSNSを通じて話題となり、若い女性たちを番組へと誘導した。この秋から、テレビ番組を録画で見る「タイムシフト視聴」の本格的調査・運用が始まったが、「地味スゴ」は、「逃げ恥」と並んで録画視聴の多さが目立ったドラマだ。

深夜枠ながら存在感を見せた「黒い十人の女」(日本テレビ系)は、市川崑監督が半世紀前に映画化した作品の現代版リメークだ。TVプロデューサー(船越英一郎)が抱える9人の愛人と妻(若村麻由美、快演)、合わせて10人の女たちの“たくましさ”がリアルで笑えた。

最後にNHKだが、大河ドラマ「真田丸」は三谷幸喜の脚本が功を奏した。全体は、いわば“三谷流講談”であり、虚実ない交ぜの面白さがあった。真田信繁(堺雅人、好演)をはじめとする登場人物たちのキャラクターも含め、歴史の真相は誰にも分からない。史実を足場に、ドラマ的ジャンプを試みた三谷に拍手を送りたい。

来年の「井伊直虎」は、近年ではすっかり鬼門となった、女性が主人公の大河である。1年後、「あれは杞憂だった」と言える内容と出来であることを祈るばかりだ。

(日刊ゲンダイ 2016.12.28)

年末特集! 今年出版された、「映画」がもっと楽しくなる本

2016年12月30日 | 本・新聞・雑誌・活字



本のサイト「シミルボン」に、以下のコラムを寄稿しました。

https://shimirubon.jp/columns/1677032


年末特集! 
今年出版された、「映画」がもっと楽しくなる本

2016年もあと数日。ほんと、早いですねえ。年齢を重ねるごとに、1年が過ぎるのが加速度的に早くなっているような気がします(笑)。

というわけで、年末でもあり、今年出版されたエンタメ関係の“オススメ本”を紹介してみます。今回のジャンルは「映画」にしました。


『健さんと文太 映画プロデューサーの仕事論』
日下部五朗 (光文社新書)


今も週に1度は映画館のスクリーンと向き合うが、最も映画館に通ったのは70年代の学生時代だ。ただし、封切りを観るのはバイト代を手にした直後のみ。普段は二番館や三番館、そして名画座が定番だった。特に、数百円で2、3本の映画を観ることができる名画座は、学生には有難かった。

おかげで小中学生の頃に公開された高倉健の任侠映画も、オールナイトの特集でほぼ全作を追いかけることができた。

思えば60年代の後半の東映は、『日本侠客伝』『昭和残侠伝』『網走番外地』という3つのシリーズを同時進行で製作していたのだから、健さんも、東映も尋常ではない。いや、狂気の沙汰だ。

一方、73年に始まった『仁義なき戦い』シリーズはリアルタイムで観ている。映画館いっぱいに罵声と銃声が響き渡っていた。菅原文太は本物のやくざじゃないかと思ったものだ。

毎回スクリーンに映し出される筆文字で、「日下部五朗(くさかべ ごろう)」という、どこか凄味のある名前を覚えてしまった。こんなトンデモナイ映画ばかり作るのは、一体どんな人なのかと想像していたが、やはりトンデモナイ人(もちろん褒め言葉です)だったことが本書でわかる。

著者は、「プロデューサーは自分のコントロールできない監督、俳優と組んではいけない」と言う。何より「自分の意志が通せるかどうか」が問題なのだと。そこにあるのは、映画はプロデューサーが作る、という自負と自信だ。

こういう人物が語る高倉健や菅原文太が、面白くないわけがない。「健さんが制服の男とすれば、さしずめ文太は普段着の男」などと、さらりと言ってのける。ここでは紹介できないような秘蔵エピソードも満載だ。


『映画を撮りながら考えたこと』
是枝裕和  (ミシマ社)


『幻の光』で監督デビューして21年。今年公開された『海よりもまだ深く』は、是枝監督にとって12作目にあたる。本書は、テレビディレクター時代から現在までの取り組みを自ら総括する一冊。時に「ドキュメンタリー的」と評される作品が生まれる背景が興味深い。独自の創作・表現論でもある。


『ダルトン・トランボ~ハリウッドのブラックリストに挙げられた男』
ジェニファー ワーナー:著、梓澤登 :訳 (七つ森書館)


第二次大戦後、ハリウッドで吹き荒れた赤狩り旋風。売れっ子脚本家だったトランボも直撃を受け、仕事を奪われた。しかし彼は偽名で傑作を書き続け、『ローマの休日』などで2度アカデミー賞を受ける。あふれる才能と不屈の精神。闘い続けた男の70年の生涯は、この本を原作に映画化され(『トランボ~ハリウッドに最も嫌われた男』)、日本でも今年公開された。


『「世界のクロサワ」をプロデュースした男』
鈴木義昭 (山川出版社)


『生きる』、『七人の侍』など数々の黒澤明監督作品で、プロデューサーを務めたのが本木荘二郎だ。しかし、黒澤自身が語りたがらなかったこともあり(その理由は本書で)、日本映画の“正史”から置き去りにされてきた。この本は、本木の初の本格評伝であり、起伏に富んだ映画人の軌跡を明らかにする労作だ。高校時代にお世話になった“歴史と教科書の山川出版社”から出たことも、何やら嬉しい。


『鬼才 五社英雄の生涯』
春日太一 (文春新書)


1960年代に、『三匹の侍』(フジテレビ系)でテレビ時代劇の既成概念を打ち破り、80年代には、『鬼龍院花子の生涯』『極道の妻たち』などの大ヒット映画を生んだ五社英雄監督。毀誉褒貶の激しい63年の人生を、作品分析、本人の言葉、そして取材による事実の掘り起こしで見事に再構築した、熱い快作である。


『いつかギラギラする日~角川春樹の映画革命』
角川春樹、清水節 (角川春樹事務所)


つい最近も、カップヌードルのCMが見事なパロディにしていた映画『犬神家の一族』。その公開から40年が過ぎて、「製作者・角川春樹」も74歳となった。本書は70本にもおよぶ「角川映画」の流れをたどり、その意味を探るノンフィクションだ。元々は書籍の販売戦略だった映画製作が、目的を超えた文化運動へと転化し、やがて時代を動かしていくプロセスが明かされる。


『最も危険なアメリカ映画~「國民の創生」から「バック・トゥ・ザ・フューチャー」まで』
町山智浩 (集英社インターナショナル)


映画は社会の“合わせ鏡”だ。テーマや内容は、そのときどきの時代や社会を映し出している。たとえ、それが隠されたものであっても。著者は過去のアメリカ映画を検証し、トランプを次期大統領に選んだ国の本質に迫っていく。中でも『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が、意図して“描かなかったこと”の分析は出色。どの作品も見直したくなること必至だ。


『怪獣から読む戦後ポピュラー・カルチャー~特撮映画・SFジャンル形成史』
森下 達 (青弓社)


大ヒットが続いている『君の名は。』と並んで、今年の映画界を席巻した感のある『シン・ゴジラ』。62年前の『ゴジラ』公開から現在まで、「特撮映画」とその解釈はいかに変遷してきたのか。気鋭の研究者である著者は、SFという文化と交差させながら、「非政治性」をキーワードに解読していく。

産経新聞で、SMAP最後の「スマスマ」についてコメント

2016年12月29日 | メディアでのコメント・論評



産経新聞で、SMAP最後の「スマスマ」についてコメントしました。


SMAP 永遠ノムコウに
最後の「スマスマ」録画出演 
見納め 感謝と惜別 

年内で解散する国民的グループ、SMAPの冠番組「SMAP×SMAP」(フジテレビ系)が26日、最終回を迎え、メンバー全員のそろった姿が見納めとなった。過去の名場面が放送された後、事前に収録された代表曲「世界に一つだけの花」がラストステージとなった。

5人の生出演はなかったが、番組終盤、SMAPとして「スマスマ20年、そしてグループ活動28年、みなさまの気持ちに、深く感謝いたします。ありがとうございました」とのメッセージが画面上に表示された。

花に囲まれたスタジオで「世界に-」を歌い終えた後、5人は並んで深々と頭を下げた。中居正広さん(44)は後ろを向き、肩を震わせて目元をぬぐった。木村拓哉さん(44)、稲垣吾郎さん(43)、草なぎ剛さん(42)、香取慎吾さん(39)もそれぞれ神妙な表情を浮かべ、ファンへの感謝をにじませていた。

■最後の「スマスマ」 見納め…感謝と惜別

「SMAPは日本のライフライン」「またいつか5人に会えると信じて待っています」。「SMAP×SMAP」最終回では、番組に寄せられたファンのファクスが続々と画面で紹介された。21日発売のベスト盤「SMAP 25 YEARS」は出荷枚数でミリオン(100万枚)を突破。国民的グループへの感謝と解散を惜しむ“SMAPロス”が広がった。

番組は平成8年4月に始まり、20年9カ月にわたって放送。ゲストに手料理を振る舞う「ビストロSMAP」などの人気コーナーが相次いで生まれ、最高平均視聴率は14年1月14日の34・2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。最終回では、メンバーの脱退や不祥事からの復帰など、節目となる場面も放送された。

東京・渋谷のスクランブル交差点沿いのビルにはこの日、最終回を伝える看板広告が掲げられ、写真撮影をする通行人の姿も目立った。

上智大の碓井広義教授(メディア論)は「『スマスマ』はドラマや司会など個人の活躍が目立った5人がそろう貴重な番組で、いわばSMAPの『ベース基地』だった。だからこそ多くの人々が解散と番組終了を惜しむのだろう」と話した。

(産経新聞 2016.12.27)

週刊朝日の特集「2016 お騒がせな人々」で解説 (その2)

2016年12月28日 | メディアでのコメント・論評



週刊朝日の特集記事「2016 お騒がせな人々」で解説しました。

そのパート2です。

年忘れワイド 
2016 お騒がせな人々
円楽、宮崎元議員…
不倫で離婚しないのはもっともキツい制裁?

著名人の不倫が多々発覚した2016年。そのなかで報道陣を「さすが」とうならせたのは三遊亭円楽だ。

6月に一般女性との不倫が発覚、その後の囲み会見は独演会のようだった。

「軽率な行動」と全面的に不倫を認め、「身から出たさびだと妻に伝えると『さびも味になる』と言われた」と涙。報道陣から謎かけを頼まれると「今回の騒動とかけまして、今東京湾を出ていった船と解きます。その心は航海(後悔)の真っ最中」とキメた。

「いろんな意味の遊びが、落語という文化を支えている。師匠がその共通認識に上手に触れたので笑って終わることができた。地に足のついたしゃれっ気でうまかった」(上智大学の碓井広義教授[メディア論])

円楽は離婚もせずに仕事も順調。ところが、だ。12月になって、この3月に群馬の釈迦尊寺の住職の誘いを受けて「出家」していたことが判明。僧名は「楽峰圓生(らくほうえんしょう)」で、大名跡、三遊亭円生の名を「襲名」した。師匠は取材に対し「(出家は)邪魔にならない。出家後の変化はない」と答えたが、不倫発覚は出家後の6月。出家は世俗を離れ修行の道に専念することを意味するはずだが、煩悩を捨て切れなかった?

歌舞伎界では、10月に八代目中村芝翫を襲名する直前の中村橋之助の不倫が発覚。相手は京都の人気芸妓・市さよで、妻の三田寛子と面識があり、浮気現場が三田との結婚披露宴会場のホテルだったから、さあ大変。「不徳の致すところ」と8回も繰り返した橋之助の謝罪会見の2日後、三田が雨の中、稽古場の前で「いま一度夫婦で立ち返ってよく考える時間を神様に与えていただいた」と柔和に対応。

「歌舞伎役者の浮気はまあ仕方ないという(世間の)思いに、梨園(りえん)の妻の見事なフォローが上乗せされて、これ以上つっこむのをやめようという感じになった」(碓井教授)

卑屈にならず、梨園の妻として本物感があった、というのだ。

一方で、こんな意見も。

「夫に浮気されたら、もうちょい感情ぶつけようよ(笑)。自分を主語にせず『主人が』と言える女でないと梨園では通用しないということがよくわかったわねー」(テレビウォッチャーの吉田潮さん)

とにもかくにも三田の神対応で修羅場を乗り越え、東京での襲名興行は無事に成功。同時に襲名した3人の息子は、父の不徳の“背中”はどうかまねしないでほしい。

政界でトップ・オブ・ゲスに君臨したのは前衆院議員の宮崎謙介氏。妻で衆院議員の金子恵美氏の出産を前に元グラビアアイドルと不倫をし、人間としての欲が勝ったと言い訳をした。宮崎氏は現在、都内で会社経営に携わっているとか。吉田さんは言う。

「離婚しないで針のむしろで生きるっていうのは、奥さんが制裁を与えるパターンでもっともキツく、なかなかいい(笑)。妊娠中に不倫された例ではゆうこりんこと小倉優子もいるけど、キャラとしてはプラスになる。ママタレ界は戦国時代、被害を被った方が支持されるから」

不倫の“豊作”とも言える今年。最後は、吉田さんに〆てもらおう。

「ネタに感謝。ありがとう、著名人!」

(週刊朝日 2016年12月30日号)


かつて暮らした町と家のやわらかな記憶

2016年12月27日 | 本・新聞・雑誌・活字



本のサイト「シミルボン」に、以下のレビューを寄稿しました。

https://shimirubon.jp/reviews/1676907


かつて暮らした町と家のやわらかな記憶

高校を卒業し、大学生となって上京するまで、ずっと親元に住んでいた。実家は商売をしていたから、「父親の転勤で引越し」みたいなことは一度もなかった。

一人暮らしを始めて最初に住んだのは、大学に近い下宿屋で、これが東横線の日吉だ。それ以降は、何度か引越しを経験している。東急大井町線の大岡山(東工大がある)。渋谷区神山町(道の向かい側はNHK)。そして、一旦、信州の小諸(教員の独身寮)に移って、また東京へ。今度は渋谷区の富ヶ谷だった。その後も、あちこち移り住んできた。

振り返れば、それぞれの町、それぞれの家に、それぞれの思い出がある。とはいえ、記憶はかなり薄れてきていて、細かい道筋や住宅の配置など、かなりあやしい。

その点、四方田犬彦さんの記憶力、また再現力はすごい。明治学院大教授で映画史の教鞭をとる四方田さんには、自らが住んだ町を舞台にした『月島物語』(集英社)『月島物語ふたたび』(工作舎)などの著書があるが、『四方田犬彦の引っ越し人生』(交通新聞社)は、少年時代からの「引越し体験」と「住んだ町と家の記憶」を綴ったものだ。

この本を書いた55歳の時点で、海外も含め17回も住まいを変えていた四方田さんだが、一番興味深く読ませてもらったのは、1970年代の渋谷界隈をめぐる記述だ。「区役所通り」が、いつの間にか「公園通り」になっていった頃・・・。

それは、1973年に上京し、東横線沿線に住んでいた当時の学生としては当然で、銀座も新宿も、もちろん池袋もあまり馴染みがなく、「街」といえば渋谷だったのだ。このころに、渋谷のどこかで、そう、大盛堂の本屋さんとか、駅裏の古本屋さんとかで、少し年長の大学生である四方田さんとすれ違っていても不思議ではない。

ある町に暮らしたり、ある家に住んだりすることが、都会では、かなり偶然性による部分が大きい。「たまたま」ってやつだ。ところが、後から思うと、その町、その家で暮らしたことが、自分に小さくない影響を与えていたりする。この本を読んでいて、数十年ぶりで、以前住んでいた場所を訪ねてみたくなった。

【気まぐれ写真館】 街なかのスケート場 2016.12.26

2016年12月27日 | 気まぐれ写真館



だから、「事典」は面白い

2016年12月26日 | 本・新聞・雑誌・活字


本のサイト「シミルボン」に、以下のコラムを寄稿しました。

https://shimirubon.jp/columns/1676835


だから、「事典」は面白い

所属している新聞学科の学生たちに本を薦める時、必ず入れる一冊がある。『現代ジャーナリズム事典』(三省堂)だ。この本の監修は武田徹(ジャーナリスト・恵泉女学園大学教授)、藤田真文(法政大学教授)、山田健太(専修大学教授)の3氏。 いずれも信頼できる研究者だ。

事典を”通読”してみる

厚さ3センチ、378ページ、約700項目が記載された事典である本書を、“引く”とか、“拾い読み”とかではなく、頭から“通読”してみた。

あらためて、優れた事典は“引く”だけの書物ではなく、わくわくする“読みもの”でもあることを再認識した。項目の並びは「あいうえお順」で、思想、倫理、理論、表現、権利、事件、報道など多岐にわたるが、読み進めるうち、「ジャーナリズムの過去・現在・未来」の全体像が徐々に浮かび上がってきたからだ。

ジャーナリズムの「論点」

新聞におけるニュースバリューは、記事が掲載された紙面と文章の量、そして論調で確認できる。ならば事典ではどうか。”割かれた字数”が重要度を示すと考えていいだろう。

本書の場合、”長めの文章”で構成された項目は以下の通りだった。「戦時下の情報統制」「メディアと権力」「言論・出版・表現の自由」「個人情報」「報道被害」「報道倫理」「メディアリテラシー」「ジャーナリズム教育」などだ。これらを見ただけで、監修者、編集委員、そして執筆者たちの姿勢や問題意識が伝わってくる。

次に独特の整理法にも好感をもった。たとえば、「秘密保護法制」という項目がある。ここでは明治憲法下における軍事機密の扱いから、最近の特定秘密保護法まで言及している。それによって、特定秘密保護法をめぐる問題を歴史的視点に立って考察することが可能になる。

また「自主規制制度」についても、わざわざ出版、新聞、放送の3つに分けて述べている。こうした姿勢が事典としての精度を上げているのだ。

記述にも多くの配慮が為されている。例を挙げれば、「報道倫理」に関する要点を解説した後、「倫理違反を違法行為として罰してよいのか、そもそも倫理とは何なのか」という大きな課題を示すことを忘れていない。

さらに「発掘!あるある大事典2事件」「テレビ離れ」「図書館の自由」など、この事典ならではの項目設定にも注目したい。

中でも驚くのは、「電通」が入っていたことだ。広告業界を牽引してきた一方で、寡占化やガラパゴス化など「日本の社会的コミュニケーションの閉鎖性を促してきたのではないか」と厳しい指摘も行っている。

もちろん、「ソーシャルメディア」などの新語も収容されていた。市民の多くが発信者になることの意義だけでなく、「誹謗中傷やデマが拡散しているなどの問題点も指摘されている」との記述も重要だ。

事典の”日常使い”

アナウンサー志望の女子学生が鞄の中に「アクセント辞典」を忍ばせ、“ゼミ飲み”の席でもチェックしている姿を見かけたことがある。その意気や良しだ。

ならばジャーナリスト志望の学生諸君は、すべからく本書を常時携帯し、随時ひも解くべきだろう。そのための並製(ソフトカバー)仕様でもある。

そして、異色の「事典」たち

荒俣宏『喰らう読書術』(ワニブックスPLUS新書)の中に、興味深い提言があった。

荒俣さんは、今こそ「教養主義」的な読書が必要な時代ではないかというのだ。全集や事典には「体系の本質」があると説いている。

また、成毛眞『教養は「事典」で磨け~ネットではできない「知の技法」』(光文社新書)は、 書評サイト「HONZ」代表が勧める事典活用法だ。

「ある分野の素人には、その分野を学んでいく過程を楽しむ権利がある」と成毛さんは言う。編者の個性が前面に出た事典は意外と古びない。小刻みな知のインプットを行うのに最適だ。図鑑を含む事典が、実に有効な教養書だと知った。

たとえば、手元に以下のような事典がある。そのジャンルで知りたいことがあった時はもちろん、ランダムに開いてみたりする。発見や再発見の連続で、大いに刺激されるのだ。

重金敦之『食彩の文学事典』(講談社)は、文士たちの描いた食べ物が一堂に会する、画期的な文学辞典だ。たとえば大根。池波正太郎「剣客商売」には猪の脂身と大根だけの鍋が登場する。水上勉は「皮をむくな」と寺での小僧時代に教えられたと書く。250冊から抽出された和食のエッセンスが味わえる。

瀧口雅仁『古典・新作 落語事典』(丸善出版)は、新作を含む約700席を収載した画期的な事典。あらすじに続く解説も秀逸だ。たとえば三遊亭圓朝作とされる「死神」では、グリム童話などとの関係を辿る一方で、六代目圓生や十代目柳家小三治、立川志の輔の型にまで言及している。個人で成し遂げた金字塔だ。

重木昭信『ミュージカル映画事典』(平凡社)は、誕生から現在まで、ミュージカル映画の軌跡を辿りながら、その全体像を提示した本邦初の事典である。登場する作品は約3200本。本編はもちろん、年度別作品一覧、邦題・原題・人名索引の充実ぶりにも驚かされる。これを一人で完成させた著者に拍手だ。

【気まぐれ写真館】 窓辺のクリスマス・イブ 2016.12.24

2016年12月25日 | 気まぐれ写真館

週刊朝日の特集「2016 お騒がせな人々」で解説 (その1)

2016年12月24日 | メディアでのコメント・論評


週刊朝日の特集記事「2016 お騒がせな人々」で解説しています。

そのパート1です。

年忘れワイド 
2016 お騒がせな人々
LINEで自滅したベッキー、川谷、乙武、文枝
・・・それぞれの後始末

ゲス不倫の衝撃で幕を開けた2016年。“お騒がせな人々”を総ざらいする。まずはその不倫問題の主役から……。

「このタイミングで私に?と、ただただ驚きました」

12月15日、都内で開かれた会見に今年のお騒がせ女王、ベッキーが笑顔で登場した。不倫騒動後、初となるテレビCMがLINE(年末年始に声の出演)に決まったのだ。

そもそもベッキーと「ゲスの極み乙女。」の川谷絵音の不倫騒動は、1月6日の謝罪会見後に週刊文春に掲載されたLINEのやりとりが決定的証拠となった。ベッキーが書いた〈センテンス スプリング!〉は2016年の流行語大賞にノミネートされた。

「まさに因縁のツールを宣伝するのだから、並々ならぬ意志の強さを感じます」

と舌を巻く上智大学の碓井広義教授(メディア論)は、こんな前向きなベッキーを、“十分たたかれたよね”と世の中も迎え入れる雰囲気になったと話す。

「9月に川谷君が交際相手の未成年女性と飲酒した問題が発覚して、シーソーで言えば川谷君の価値が下がった分、ベッキーが浮上した感じがある」


川谷は、ベッキーが犠牲を払う間にも「なんで俺が謝るんだ」とバンド活動を続けたが、飲酒問題で自粛に入った。ファンによれば、自粛前の最後のライブで「28歳はいい年にしたい」と言ったとか。マスコミへは、何かあればまた俺が悪者になる、と漏らしたとも。

こんな川谷を「ガキやな」と失笑するのはテレビウォッチャーの吉田潮さん。

「素直すぎにもほどがある。取り繕うこともできず、恋愛哲学をそのまま言って、おこちゃまだ」

一方、復活するベッキーにはこんなエールを送る。

「皆が“優等生キャラ”から引きずりおろしたがっていたけど、そのキャラを卒業できたのはめでたい」

ベッキーがクリーンなイメージだったからこそ世間の驚きも大きかったわけだが、男性でイメージを覆した人物といえば5股不倫を告白した乙武洋匡氏だろう。今春、参院選立候補のうわさがあった中で“まさか”の発覚だった。

碓井教授は言う。

「あと一歩で国会議員だったのに、ハシゴから滑り落ちた感じ。最もがっかりしたのは、発覚後に奥さんに謝罪コメントを書かせたこと。あれで世間は乙武君のあざとさを見抜きました」


不倫の後始末を妻にさせて、結局離婚したが、こんな意見もある。

「離婚が悪い結末とも言えない。世間はどこかで障がい者の性についてきれいにとらえたいという思い込みがあるし、それに(何人もの子育てが大変な)奥さんのために外で……もわからないでもない」(吉田さん)

この秋から乙武氏は振り切ったキャラで動き出す。11月、「ワイドナショー」(フジテレビ系)に9カ月ぶりに出演。〈復帰させて頂けるときはゲスの極み乙武!としてぜひ〉と話し、その後ツイッターも再開し、話題を呼んでいる。

「才能があるし、新ビジネスでも展開するのでは」(同)

一方、伝統芸能の世界では、大物が次々と不倫を暴かれた。まずは73歳の桂文枝。2月に35歳年下で演歌歌手の紫艶との20年交際が発覚し「嫁さんを裏切るようなことになって」と謝りつつも、不倫は「事実と違う」と否定。すると紫艶がフェイスブックに師匠とおぼしき人物の全裸写真を掲載した。しかもその手元には「新婚さんいらっしゃい!」のロゴ入りクッションが──。

碓井教授は「対応も相手選びもまずかった。師匠、その人にいっちゃったかー」と苦笑い。

「文枝師匠は相手を支える足長おじさん風だったと言い訳したため、彼女の感情が悪化した。師匠が出る番組を見て視聴者が心から笑えない。話が落ちず、自分が落ちちゃった」


文枝は離婚せず、6月に8期目となる上方落語協会の会長に決まったが、「体力的な面も考えてこれで最後にしたい」と今期限りでの勇退を発表した。

「この騒ぎで根こそぎ体力を奪われたと思う。ネットに下半身ぺろ~んなんて書かれ、男の沽券が大変」(吉田さん)

(週刊朝日 2016年12月30日号)

【気まぐれ写真館】 天皇誕生日の夕景 2016.12.23

2016年12月24日 | 気まぐれ写真館


街と人~変わるものと、変わらないもの

2016年12月23日 | 本・新聞・雑誌・活字



本のサイト「シミルボン」に、以下のレビューを寄稿しました。

https://shimirubon.jp/reviews/1676706


街と人~変わるものと、変わらないもの

『靖国』のときも、「すごい書名だなあ」と思ったが、『東京』っていうのもすごい。読めば、ずばりのタイトルなのだが。

坪内祐三『東京』(太田出版)は、東京の街を歩きながらの青春回想記だ。本の帯には「自伝青春譜」とある。

ただし、歩いたのは2004年から07年にかけて(雑誌「クイック・ジャパン」での連載)だから、その時点での「現在」と「青春時代」が語られている。

目次を開いて、ランダムに読む。自分が好きな街。知っている街。気になる街。訳ありの街。一度も行ってない街。

坪内さんが書くその街との関係と回想に、自分自身の街との関係と回想が微妙に絡み合う。読みながら、やけに内省的になっていることに気づく。

たとえば、赤坂。坪内さんにとっての赤坂を読みながら、自分のいた会社が長くあったあの街を思い出している。私の80年代は赤坂がベースになっていた。

まだ焼けていない「ホテル・ニュージャパン」の和室で行われた構成会議。

一ツ木通りに面していた頃のTBSの地下にあった「ざくろ」で、先輩からごちそうになった「しゃぶしゃぶ」の味と値段に驚いた、駆け出しAD時代の自分。

ここのカレーが大好きで、週に一度は食べていた「トップス&サクソン」。

殿山泰司さんが座っている隣のテーブルで、文庫本を読みながらコーヒーを飲んだ喫茶店「一新」。

・・・こうしてすぐに挙げられる場所や店が、この本には全部出てくる。

他にも、神保町や早稲田や下北沢など、はやり読みながら勝手な回想に没入してしまう街がある。

街は変わる。変わってきた。そして、坪内さんも、これを読んでいる私も。その一方で、街にも、自分たちの中にも、どうしようもなく変わらないものがある。その両者を感じさせてくれる一冊だ。

文章との相乗効果を見せる北島敬三さんの写真もいい。まるで自分の記憶のワンシーンのようだ。

そうそう、巻末に坪内さんと北島さんの「エピローグ対談」が載っている。

では、「プロローグ対談」はどこかと思ったら、何と、カバーの裏側に印刷されていた。ぺろりと脱がして、読む。

でも、これって、図書館に収められた場合、どうなるんだろう。図書館では、本を必ず加工する。カバーを表紙に貼り付けたりするのだ。借りた人は、この大切な対談が読めるんだろうか。余計な心配だけど。

書評した本: 『皇室をお護りせよ!~鎌田中将への密命』ほか

2016年12月23日 | 書評した本たち



「週刊新潮」に、以下の書評を寄稿しました。

米軍で大隊長も務めた日本人 
男が戦後、果たした役割とは


鎌田 勇 
『皇室をお護りせよ!~鎌田中将への密命』 

ワック 1728円

80年代に、『戦後の検証~吉田茂とその時代』と題する、4夜連続放送のドキュメンタリー番組の制作に携わった。当時すでに高齢化していた元GHQの人々など、日米の当事者・関係者の証言を集め、占領期を立体的に捉え直す試みだった。

その制作過程でかなりの資料に当たったが、不十分だったようだ。恥ずかしながら、鎌田銓一・陸軍中将  のことを本書で初めて知った。明治29年生まれ。陸軍幼年学校、陸軍砲工学校、京都帝大などを経て渡米。イリノイ大、MITで学ぶ。さらに昭和8年からは日本軍将校のまま米軍の工兵連隊に入隊し、大隊長まで務めた。帰国後は陸軍省交通課長などを歴任。野戦鉄道司令官として、北京で終戦を迎えた。この特異なキャリアが、戦後の鎌田に大きな“役割”を担わせることになる。

昭和20年8月28日、厚木飛行場にマッカーサー司令部の先遣隊が到着した。降り立った隊長が出迎えの日本人たちに向かって言う。「ミスター・カマダはどこだ?」と。この人物こそ、米軍工兵連隊の大隊長時代の部下、テンチ大佐だった。

やがてマッカーサー元帥も乗り込んできて、GHQによる日本占領が本格的に開始される。鎌田はテンチ大佐との「工兵の絆」を生かし、米軍との調整で最前線に立つ。中華民国軍(国民党軍)の名古屋進駐が目前に迫った時、これを阻止すべくマッカーサーを動かしたのも鎌田だ。

いや、それ以上に驚いたのは、「政府の要となるべき終連は、あまり機能していなかった」という記述だ。吉田茂の要請で、終連(終戦連絡中央事務局)の参与に就任していたのは、あの白洲次郎である。前述の番組でも、占領期における白洲の活躍や武勇伝を紹介したが、鎌田の知られざる貢献はそれ以上かもしれない。特に皇室の保持に関してはそうだ。

実は鎌田の息子である著者。自宅でマッカーサーにピアノ演奏を聴かせた少年は、日本に一人しかいない。


東野圭吾 『恋のゴンドラ』
実業之日本社 1296円

スキー場を舞台とする連作短編集だ。表題作の主人公・広太は、同棲している美雪の目をかすめ、他の女性と泊りがけでスキー場へ。女性4人組とゴンドラに同乗するが、なんとその中に美雪がいた。7つの話が見事にリンクし、恋という名のサスペンスを堪能できる。

(週刊新潮 2016.12.22号)