碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

【気まぐれ写真館】 2022年の「大晦日」

2022年12月31日 | 気まぐれ写真館

2022.12.31


今年、CMでも輝いていた「2人の女優」

2022年12月31日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム

 

今年、CMでも輝いていた「2人の女優」

 

長澤まさみさんと川口春奈さん。

今年を代表する女優ともいえる2人は、CMでも輝いていました。

 

長澤まさみさん

クボタCM

「クボタが描く未来 スマートアグリソリューション」篇

 

作家の井上ひさしさんが、座右の銘にしていた言葉があります。

「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをゆかいに、ゆかいなことをまじめに」

今年の春から初夏にかけて、長澤まさみさんが出演した、クボタのCM「クボタが描く未来 スマートアグリソリューション」篇は、まさにそんな1本でした。

「アグリソリューション」とは、英語の「アグリカルチャー(農業)」と「ソリューション(解決)」を合わせたもの。

ITを駆使した「スマート農業」によって、生産から消費までをトータルでサポートする。それが「スマートアグリソリューション」です。

目指すのは、食品の流通過程で生まれる「付加価値の繋がり」。

でも、そのままだと結構難しい話になってしまう。

CMの舞台は、どこの町にもありそうな、八百屋さんの店先でした。

買い物客の皆川猿時さんに、店員の長澤まさみさんが「テレビ出られるよ!」と呼びかけています。

登場したテレビリポーターは、パックンさん。

彼が「フードロスのない、サステナブルな食料システム」について解説を始めると、すかさず長澤さんが言い切ります。

「大丈夫、それクボタがやる!」

農機具のトップメーカーが、農業全体の未来を探る。

そんな取り組みを、ユーモアと共に、わかりやすく表現していました。

優れたコメディエンヌでもある長澤さんが「ふかいことをゆかいに」伝える、振り切った演技が何とも気持ちいい。

今期ドラマの話題作『エルピス―希望、あるいは災い―』(カンテレ制作・フジテレビ系)ともひと味違う、長澤さんの魅力がそこにありました。

 

川口春奈さん

カシオ計算機 GショックCM

「MY TIME 川口春奈」篇

 

川口春奈さんもまた、今年大活躍した女優の一人です。

NHK朝ドラ『ちむどんどん』でヒロインの姉を演じ、仕事と家庭の両立に悩む姿が共感を呼びました。

また、今期ドラマ『silent』(フジテレビ系)では主演を務めました。高校時代の恋人(目黒蓮さん)と8年ぶりに再会するヒロインです。

彼は耳が聴こえなくなっており、それが突然姿を消した理由でした。

空白の時間を埋めると同時に、自分たちの「これから」を探っていく2人。

それぞれのドラマの中で、大きく異なる役柄をしっかり演じ分けながら、自身の存在感を示して見事でした。

現在放送中のカシオ計算機「Gショック」の新作CMは、川口さんが主役の「密着取材番組」を思わせます。

機材が並ぶ撮影現場。そして本番前の舞台稽古。

そこに流れる川口さんのモノローグも、リアル感のあるドキュメンタリータッチになっています。

「出来ないことが出来るようになる瞬間が好きです」

川口さんは、さらに言います。

「俳優って全ての役をゼロから始めることだから、ずっと大変だし、ずっと楽しいです」

この1年を振り返り、次回作への決意を述べているかのような川口さん。

きっと来年も、真摯に作品と向き合う姿が見られるに違いありません。

 

 


言葉の備忘録306 僕たち・・・

2022年12月30日 | 言葉の備忘録

2022.12.30

 

 

 

 

僕たちビートルズが

伝えようとしたメッセージは、

「今 この瞬間を生きろ」

ということだった。

 

 

ジョン・レノンの言葉

   映像の世紀 バタフライエフェクト

 「ロックが壊した冷戦の壁」

      NHK総合 2022.12.30放送

 

 


新海誠監督『すずめの戸締まり』のこと

2022年12月30日 | 映画・ビデオ・映像

 

 

新海誠監督『すずめの戸締まり』を

観てきました。

 

東日本大震災を軸とした、

災害がモチーフの

ロードムービー。

 

アニメだからこその

想像力と

ビジュアルの力を

感じました。

 

「行ってらっしゃい」

「行ってきます」

 

そんな会話が、

これほど

響くとは・・・。

 

重いテーマですが、

多くの人が

共感できる作品と

なっています。

 

 


2022年ドラマ界を総括  強い印象を残した秀作5本を解説

2022年12月29日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

<TV見るべきものは‼ 年末拡大版>

2022年ドラマ界を総括!

強い印象を残した

“秀作5本”を解説

 

今年も暮れようとしている。3年目となったコロナ禍。ロシアによるウクライナ侵攻。不況と値上げ。岸田政権による軍事国家へのまい進など、安全も安心も得られないままの年末だ。

それでもドラマの世界では、見るべき成果がいくつかあった。強い印象を残した秀作で、この一年を振り返ってみたい。

■「妻、小学生になる。」の奇抜な設定は「生きるとは何か」というテーマのためだった

1月クールで挙げたいのは、「妻、小学生になる。」(TBS系)だ。

10年前、新島圭介(堤真一)は妻の貴恵(石田ゆり子)を事故で失った。以来、圭介も娘の麻衣(蒔田彩珠)も無気力なままだ。

ある日、父娘の前に見知らぬ小学生・万理華(毎田暖乃)が現れ、自分は「新島貴恵」だと主張する。実は貴恵が万理華の体を借りて一時的に現世に戻ったのだ。この奇抜な設定は、「生きるとは何か」というテーマのためだった。

最終回では、万理華の姿をした貴恵との「最後の一日」が描かれた。

だが、それは特別なものではない。一緒に朝食を作り、食卓を囲む。3人で麻衣の洋服を買いに出かける。あくまでも「日常」であり、だからこそ愛おしいのだ。

人は結末の見えない有限の時間を生きている。その時間の使い方の中に生きることの意味を見いだせるのだと、このドラマは伝えていた。

■「17才の帝国」は独自の世界観を提示する意欲作

次が5~6月に放送された「17才の帝国」(NHK)である。

舞台は202X年の日本。斜陽国として世界から取り残されようとしている現状を変えるための実験が行われる。ある地域の政治を、人工知能(AI)が選んだ若者たちに託してみようというのだ。

「総理」は17歳の高校生、真木亜蘭(神尾楓珠)だ。彼が実現しようとする純粋な政治と、それを苦々しく思う旧来の政治家たちの対比にリアリティーがあった。

また緊張感のある映像、架空の街のランドスケープデザインをはじめとする美術、さらに音楽も含め、独自の世界観を提示する意欲作だった。

脚本はアニメ「けいおん!」などで知られる吉田玲子。プロデューサーを務めたのは、「カルテット」(TBS系)や「大豆田とわ子と三人の元夫」(カンテレ制作・フジテレビ系)を手掛けた佐野亜裕美。そして制作統括は「あまちゃん」などの訓覇圭だ。

■「あなたのブツが、ここに」ドラマが時代を映す鏡であることを再確認した

夏ドラマで出色だったのが「あなたのブツが、ここに」(NHK)だ。

「ブツ」とは宅配の荷物を指し、描かれたのは宅配ドライバーとして働くシングルマザーの奮闘だ。コロナ禍で追い込まれた市井の人たちの苦境と心情をリアルに描いて秀逸だった。

物語は2020年秋から始まる。主人公は小学生の一人娘(毎田暖乃)を育てる、29歳の亜子(仁村紗和)だ。

大阪のキャバクラ店で働いていたが、コロナ禍で店は休業状態。さらに給付金詐欺の被害に遭う。結局、母親(キムラ緑子)がお好み焼き店を営む兵庫県尼崎市の実家に身を寄せ、宅配ドライバーの仕事に就いた。

物語には感染状況の推移が織り込まれ、理不尽なものに振り回されるつらさと滑稽さが浮き彫りにされていく。

ある時、疲れて落ち込む亜子が、売り上げが激減してもお好み焼き店を続ける理由を母に問いかけた。

その答えは「いったん休んだらな、もう立ち上がられへん気いするんよ。逆にこのまま乗り切れたら、何があっても大丈夫な気いする」。

印象深いセリフが多い脚本は、「マルモのおきて」などを手掛けてきた櫻井剛のオリジナルだ。制作はNHK大阪放送局。ドラマが時代を映す鏡であることをあらためて思わせる一本だった。

■社会現象になった「silent」

10月クールは実り豊かなものとなった。まず、「silent」(フジテレビ系)がある。

ヒロインの紬を演じたのは川口春奈だ。高校時代の恋人・想(目黒蓮)と8年ぶりに再会するが、彼は耳が聞こえなくなっていた。

それが突然姿を消した理由であり、空白の時間を埋めながら自分たちの未来を探っていく2人。音のない世界で歩み寄る男女の本格派ラブストーリーだった。

手話による会話場面がじっくりと描かれ、見る側は表情のかすかな変化も見逃すまいと画面から目が離せない。

とっぴな事件や出来事ではなく、それぞれの日常を丁寧に見せることで静かな共感が広がっていった。

やがてロケ地に人が集まる「聖地巡礼」現象が起き、見逃し配信サイト「TVer」の再生回数が最高記録を更新し、放映時のツイート数も国内トレンド1位を獲得するなど、一種の社会現象となる。

役者陣の演技力はもちろんだが、登場人物たちの複雑な感情を繊細に表現する演出も見事だった。

■「個」としての生き方が問われた「エルピス」

最後は「エルピス─希望、あるいは災い─」(カンテレ制作・フジテレビ系)。

アナウンサーの浅川恵那(長澤まさみ)とディレクターの岸本拓朗(真栄田郷敦)が、死刑囚の冤罪事件の真相を探っていく物語だ。

それは平坦な道ではなかった。テレビ局という組織独特の「常識」や「タブー」に揺さぶられ、さらに社会の闇というべき巨大な力に翻弄される。その過程で問われたのは「個」としての生き方だ。

制作陣は1990年に起きた「足利事件」など、現実の冤罪事件に関する文献を参考にしたと表明している。

冤罪事件は警察や裁判所など公権力の大失態だが、マスコミが発表報道に終始したのであれば、結果として冤罪に加担したことになる。

自分たちにも批判の矛先が向きかねないリスクを抱えながら、テレビ局を舞台にこうしたドラマを作るのは実に挑戦的だ。

脚本は朝ドラ「カーネーション」などの渡辺あや。プロデューサーは、「17才の帝国」と同じ佐野亜裕美である。

来年も、作り手の強い意志を感じられる作品が、一本でも多く登場することを期待したい。

(日刊ゲンダイ「TV見るべきものは‼年末拡大版」2022.12.28)


【気まぐれ写真館】 師走の「みちまるくん」

2022年12月28日 | 気まぐれ写真館

NEXCO中日本オリジナルキャラクター「みちまるくん

海老名SA(上り線)にて


言葉の備忘録305 いいクルマ・・・

2022年12月27日 | 言葉の備忘録

 

 

 

いいクルマを選んでください。

いいクルマを褒めてやってください。

 

 

三本和彦(自動車ジャーナリスト)

 BS日テレ『おぎやはぎの愛車遍歴』#46

 追悼特番(アンコール放送)2022.12.24

 

 


【気まぐれ写真館】 夕暮れの三日月

2022年12月26日 | 気まぐれ写真館

2022.12.26


しんぶん赤旗に、『脚本力』の書評

2022年12月26日 | 本・新聞・雑誌・活字

 

 

しんぶん赤旗に、

『脚本力』の書評が

掲載されました。

 

ありがとうございます!

 

 

 

 


言葉の備忘録304 人びとの・・・

2022年12月25日 | 言葉の備忘録

カクタスの花

 

 

 

人びとの日常における

何気ない行動にも、

その人びとの人生に

ぬきさしならぬ意味がふくまれ、

波瀾もひそんでいるのだ。

 

 

池波正太郎 『剣客商売 辻斬り』

 

 

 


【気まぐれ写真館】 2022年のクリスマス・イブ

2022年12月24日 | 気まぐれ写真館

2022.12.24


今年も満腹にしてくれた、テレ東の「グルメドラマ」たち

2022年12月24日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム

 

今年も「満腹」にしてくれた、

テレ東の「グルメドラマ」たち

 

深夜の「グルメドラマ」はテレビ東京のお家芸。

今年もまた、何本もの作品が登場し、見る側を満腹にしてくれました。

 

愛する仕事と町中華

『ザ・タクシー飯店』主演・渋川清彦

昔から「安くておいしい店はタクシードライバーに訊け」と言われてきました。

街なかを流しながら、休憩時間に立ち寄った店で食事をする彼らは、味、値段、そして店の雰囲気にも敏感だからです。

『ザ・タクシー飯店』の主人公・八巻孝太郎(渋川清彦)は、クルマで走ること自体が大好き。

さらにもう一つ、偏愛しているのが町中華です。

たとえば、東京・志村坂上の「丸福」。偶然入ったにもかかわらず、一瞬で店に馴染む感じが町中華の達人っぽい。

見知らぬ客との小さな交流を楽しみ、注文した「チャーハン」と「きくらげ玉子炒め」をじっくりと堪能します。

食べながら「たまらん、おかずとチャーハンのエンドレスループ!」と心の中でつぶやくあたりは、『孤独のグルメ』へのオマージュでしょうか。

そこに「人生は選択の連続。自分が正解と思えば正解なんだよな」といった、八巻らしい言葉が加わります。

在京キー局の連ドラ初主演という渋川さんですが、どこか訳あり風でいて、仕事と食にこだわりを持つ男がよく似合う。

車中での客とのやり取りも含め、しっかり「人間ドラマ」になっていました。

 

飯テロならぬ、「酒テロ」ドラマ

『晩酌の流儀』主演・栗山千明

『晩酌の流儀』のテーマは、「家飲み」を極めること。

不動産会社に勤務する伊澤美幸(栗山千明)は、一日の終わりに、おいしく酒を飲むことを最上の喜びとしています。

そのためには努力を惜しみません。まず、定時退社したいので、集中して仕事をします。

次が最高の状態で酒と向き合うための「準備」で、それがサウナだったりする。

さらに、スーパーで安くて旨い食材を買う。

モットーは「家飲みで一番大事なのは、最小のコストで最大のパフォーマンスを出すこと」。

帰宅後の手早い料理で、「しめさばカルパッチョ」や「麻辣にら玉」などが食卓に並びます。

そして最大の見せ場が、待望の1杯目。

まるで恋人を見るような目で、ビールが注がれたグラスを見つめ、やがて静かに、しかし情熱的に黄金色の液体を喉に流し込む。

そして2杯目。

美幸は「これが私の流儀だ!」と宣言し、別のグラスを冷蔵庫から取り出します。

適度に冷えた状態のグラスで飲み続けたいんですね。

番組冒頭、美幸が「ドラマを見終わった後、あなたもきっと、お酒を飲み始める」と宣言します。

まさにその通り。飯テロならぬ、完璧な「酒テロドラマ」でした。

 

食との出会いは一期一会

『絶メシロード season2』主演・濱津隆之

『絶メシロードseason2』の主人公は須田民生。

演じたのは前作同様、映画『カメラを止めるな!』の濱津隆之さんです。

絶メシとは、「絶滅してしまうかもしれない絶品メシ」のこと。

地方の町に長くひっそりと生息する、枯れた店でしか出会えない味です。

そんな絶メシを求めて、民生は週末になると1泊2日の旅に出る。

金曜の夜、クルマで出発して現地で車中泊。

翌日の土曜、自分のカンを頼りに絶メシを見つけて味わい、夜には自宅に戻ってくる。

登場するのは、全て実在の店です。

千葉県鴨川市の「真珠の庭」は、歴史を感じさせる外観と店内。

女将さん(藤田弓子)の「ガードを突き破って懐に飛び込んでくる接客」も昭和っぽい。

注文した「金目鯛の煮魚定食」は煮汁がしっかり染みており、甘みと生姜のバランスも抜群。

追加で頼んだ「車エビのカツレツ」は、準備に4日かけた労作。どちらも大満足でした。

とはいえ、高齢者である店主は「次に来てくれた時はマンションが建ってるかもしれないよ」と笑う。

失ってしまうには惜しいですが、絶メシは一期一会の覚悟も必要です。

物語はお店の取材を基に構成されており、濱津さんが放つ独特のリアル感が光っていました。

 

不変のパターンが生む幸福感

『孤独のグルメ Season10』主演・松重豊

2012年にスタートした『孤独のグルメ』は、今年で10周年。めでたい!

主人公は、個人で輸入雑貨を扱っている井之頭五郎(松重豊)。

商談で訪れるさまざまな町に「実在」する食べ物屋で、「架空」の人物である五郎が食事をする。

そんな「ドキュメンタリードラマ」ともいえる基本構造は、ずっと変わっていません。

東京の渋谷区笹塚にある店は、そば屋さんなのに、なぜかメニューには沖縄に傾倒した品が並ぶ。

「しからば、揺さぶられてやろう」と意気込む五郎。

注文したのは「とまとカレーつけそば」です。

食べながら「うーん、初めてなのに、これは俺が食べたかったものだ」と心の声を発する。

無用なウンチクや解説に走らず、ひたすら実感だけを独白していく。この不変のパターンがたまりません。

このドラマ、10年の間に「グルメドラマ」というジャンルを広めると共に、「ひとり飯」を一種の文化にまで高めました。その功績も大きい。

しかも、多くの後続番組が『孤独のグルメ』との差別化に腐心する一方で、元祖は堂々の「いつも通り」を貫いています。

新シーズンでも、そこにいるのは孤高の「ひとり飯のプロ」です。

食に対する「好奇心」「遊び心」、そして「感謝の気持ち」。

この3つがある限り、井之頭五郎は永遠です。

 


言葉の備忘録303 天才は・・・

2022年12月23日 | 言葉の備忘録

 

 

 

天才は

寧(むし)ろ

努力を発明する。

 

 

小林秀雄 「モオツァルト」

 

 

 


川口春奈「Gショック」CM 伝わる真摯さ

2022年12月23日 | 「日経MJ」連載中のCMコラム

 

 

 密着取材番組風、伝わる真摯さ

カシオ計算機 Gショック

「MY TIME 川口春奈」篇

 

今年、大活躍した俳優の一人が川口春奈さんだ。

NHK朝ドラ「ちむどんどん」でヒロインの姉を演じ、仕事と家庭の両立に悩む姿が共感を呼んだ。

また秋ドラマ「silent」(フジテレビ系)では主演を務めた。高校時代の恋人(目黒蓮さん)と8年ぶりに再会するヒロインだ。

彼は耳が聴こえなくなっており、それが突然姿を消した理由だった。空白の時間を埋めると同時に、自分たちの未来を探っていく2人。

異なる役柄を演じ分けながら、自身の存在感を示して見事だった。

カシオ計算機のGショックの新作CMは、川口さんが主役の密着取材番組を思わせる。

機材が並ぶ撮影現場。本番前の舞台稽古。そこに流れるモノローグもドキュメンタリータッチだ。「出来ないことが出来るようになる瞬間が好きです」。

さらに「俳優って全ての役をゼロから始めることだから、ずっと大変だし、ずっと楽しいです」。

この1年を振り返り、次回作への決意を述べているかのような川口さん。来年も真摯に作品と向き合う姿が見られるに違いない。

(日経MJ「CM裏表」2022.12.19)

 


佐藤二朗のハマり役 「ひきこもり先生シーズン2」で見せる完全没入の圧巻演技

2022年12月22日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

佐藤二朗のハマり役

NHK「ひきこもり先生シーズン2」で見せる

完全没入の圧巻演技

 

あの男が帰ってきた。

ひきこもり歴11年のメタボ中年、上嶋陽平(佐藤二朗)だ。NHK土曜ドラマ「ひきこもり先生シーズン2」である。

かつて陽平は梅谷中学校の不登校クラスで非常勤講師を務めていた。生徒は家庭の事情も本人の性格も異なるが、「不登校の問題は命の問題」という点で共通していた。

2年ぶりの学校だが、校内の空気は以前よりも重い。不登校クラスの生徒へのいじめも横行している。

そんな中で起きたのがホームレス襲撃事件だ。陽平が副担任をサポートする3年A組の生徒、松田篤人(寺田心)がその現場にいた。

篤人は寝たきりの母親(高橋由美子)の面倒を見る、ヤングケアラー。心の中に鬱屈をため込んでいた。

生徒たちは表面的にはおとなしい。教師の指示にも素直に従う。周囲から浮くことを恐れ、自分の意見や気持ちを口にしないのだ。問題を抱えていても、「大丈夫」としか言わない。そんな姿が実にリアルだ。

陽平自身も精神的に不安定な元ひきこもりだ。だからこそ生徒たちが抱える苦しさが分かる。彼らの気持ちに“共振”することができる。それが救いとなっていく。

佐藤が見せる、完全没入の演技は圧巻。「鎌倉殿の13人」の比企能員にも負けないハマり役だ。

前作は全5話だったが、今回は2話完結で今週末の後編で終わってしまう。見逃すことなかれ!

(日刊ゲンダイ「テレビ 見るべきものは!!」2022.12.21)