碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

産経新聞で、「マッサン」高視聴率について解説

2015年03月31日 | メディアでのコメント・論評

「マッサン」平均視聴率22・2% 
「ごちそうさん」抜き過去10年で最高 関西地区

28日に放送が終了したNHK連続テレビ小説「マッサン」の全150回を通じた平均視聴率が、関西地区で22・2%と過去10年で最高だった「ごちそうさん」の21・7%を超えたことが30日、ビデオリサーチの調べでわかった。関東地区では21・1%。

エリー(シャーロット・ケイト・フォックスさん)の死を乗り越え、理想のウイスキー造りを実現したマッサン(玉山鉄二さん)の姿を描いた最終回の平均視聴率は関西25・1%、関東23・2%だった。

昨年9月の初回視聴率が関西19・8%、関東21・8%と好スタートを切り、北海道余市町に舞台を移した中盤あたりからさらに人気を集め、週間ランキングの上位をキープし続けてきた。

当初、朝ドラ史上初の外国人ヒロインの起用が視聴者に受け入れられるかといった不安もささやかれたが、上智大学の碓井広義教授(メディア論)は「ふたを開けてみれば夫を支え続けた妻という構図がある意味で朝ドラの王道に乗った。企業の開発物語に偏らず、夫婦愛とのバランスを保ったことも、主要視聴者である女性の支持を得た」と分析。「ドラマのなかに伏線を張り、さまざまなキャラクターにスポットを当てたことも、視聴者を半年間飽きさせなかったのではないか」と話す。

視聴率が西高東低になった理由について碓井教授は「『カーネーション』のときもそうでしたが、関西の人々は架空の物語より実在の人物の生き方から何かを学ぼうとする傾向が強い。このことが視聴率の差につながったのでは」と推測している。


制作統括の桜井賢チーフ・プロデューサーは「大勢のみなさまにごらんいただき、心より感謝します」とコメントした。

(産経WEST 2015年03月30日)


【気まぐれ写真館】 桜、咲く (ご近所)

2015年03月31日 | 気まぐれ写真館


先輩たちによる「ゼミ説明会」

2015年03月31日 | 大学





【気まぐれ写真館】 桜、咲く (四谷)

2015年03月31日 | 気まぐれ写真館






読売新聞で、「報ステ」古賀氏発言問題についてコメント

2015年03月31日 | メディアでのコメント・論評



報道ステーションで言い争い
「降板」めぐり元官僚と古舘氏

テレビ朝日系のニュース番組「報道ステーション」で27日、コメンテーターの元経済産業省官僚、古賀茂明氏がニュースの内容から逸脱した発言を続け、キャスターの古舘伊知郎氏と言い争いになる場面が映し出された。

テレビ朝日は番組の混乱を陳謝したが、ニュース番組のあり方が問われることにもなりそうだ。

古賀氏の発言は放送開始から約20分後。古舘キャスターが中東情勢の解説を求めると、いきなり「テレビ朝日会長らの意向で、今日(の出演)が最後」などと切り出し、「官邸の皆さんにはバッシングを受けてきましたが、(視聴者の)皆さんのおかげで楽しくやらせていただいた」と述べた。

古舘キャスターは「今の話は承服できません」「(番組を)降ろされるということは、違うと思います」と反論したが、古賀氏は「古舘さんは『自分は何もできなかった。申し訳ない』とおっしゃった」「(楽屋での会話を)全部録音させていただきました」などと続けた。

さらに約15分後、エネルギー政策などで安倍首相を批判した古賀氏は「I am not ABE」(私は安倍ではない)と印刷した紙を示した。

テレビ朝日広報部では、古賀氏は番組内容に応じて呼ぶゲストの一人であり、「降板」ではないと説明。「古賀さんの個人的意見や、一部事実に基づかないコメントがなされたことについて、承服できない思いです。番組が一部混乱したことを、視聴者の皆様におわび致します」とした。

碓井広義・上智大教授(メディア論)は「古賀氏の発言は『番組を降ろされた』という私憤の表明と受け取られかねず、公共の電波を使うテレビ番組としてふさわしくない。テレ朝会長らの個人名を挙げたのも行き過ぎだと思う」と批判。「テレ朝にも古賀氏を起用した責任はあるのではないか」と指摘している。

(読売新聞 2015年03月30日)


【気まぐれ写真館】 桜、咲く (ご近所)

2015年03月31日 | 気まぐれ写真館


産経新聞で、テレ朝「報道ステ」古賀発言騒動についてコメント

2015年03月30日 | メディアでのコメント・論評



元官僚・古賀氏「会長の意向で・・・」
古舘氏「今の話は承服できない」

報道ステーション「降板」めぐり応酬


テレビ朝日系ニュース番組「報道ステーション」で27日、コメンテーターを務めた元経済産業省官僚の古賀茂明氏が自身の「降板」をめぐって古舘(ふるたち)伊知郎キャスターと激しく応酬する一幕があり、波紋を広げている。テレ朝などの意向で降板になったことを主張した古賀氏に対し、同局広報部は「『降板』には当たらない」と反論し、不快感を示している。

27日の放送で、中東情勢について意見を問われた古賀氏は「テレビ朝日の早河(洋)会長や古舘プロジェクトの佐藤(孝)会長の意向で、今日が最後(の出演)」と発言。「菅(すが)義偉(よしひで)官房長官をはじめ、官邸にバッシングを受けてきたが、激励を受け、非常に楽しくやらせていただいた」と話した。

これに対し、古舘氏は「今の話は承服できない。4月以降も機会があれば出ていただきたい。『降ろされる』というのは違う」と反論。古賀氏は「古舘氏は『何もできなかった。本当に申し訳ない』と仰った」「全部録音させていただいている」などと応じた。

その後も、古賀氏は「I am not ABE」と書いた紙を掲げ、「裏で圧力をかけるのはやめてもらいたい」などと発言。古賀氏は過去に同番組に出演した際、安倍政権に批判的な発言をしていた。

テレ朝広報部は「金曜コメンテーターはテーマに沿ってその都度、各分野の方々に出演を依頼している。古賀氏もそのうちの一人で、『降板』ではない」と説明している。

上智大の碓井広義教授(メディア論)は「出演をめぐってトラブルがあったのなら、制作側は生放送で何かが起こることを予測できなかったのか。古賀氏にとっては息苦しさを感じたうえでの発言だったのだろうが、テレ朝会長らの個人名を挙げたのは行き過ぎだ」と話している。

(産経新聞 2015.03.29)

書評本: 和田 誠『ぼくが映画ファンだった頃』ほか

2015年03月30日 | 書評した本たち



映画も好きですが、映画に関する本も好きです。

中でも和田誠さんの『お楽しみはこれからだ―映画の名セリフ』(文藝春秋)シリーズ。

第1作目が登場したのは40年前ですが、ずっと愛読書です。

俳優や名場面のイラストも楽しいし、文章から映画が立ち上がってくるようで、堪りません。

和田さんの新しい映画本も楽しめます。


以下、週刊新潮に書いた書評です。

和田 誠『ぼくが映画ファンだった頃』
七つ森書館 2160円


神は細部に宿る。それは映画を語る際も同様だ。敬愛するワイルダーやヒチコックに関する文章はもちろん、タイトル、ポスター、伏線などの話も映画好きには堪らない。さらにジェイムズ・ステュアートとの対談までが収録され、贅沢な映画コラム集となっている。


松田賢弥
『絶頂の一族~プリンス・安倍晋三と六人の「ファミリー」』
講談社 1620円


本書には安倍晋三総理をめぐる6人が登場する。祖父・岸信介、父・安倍晋太郎、父の異父弟で叔父の西村正雄、晋太郎の隠し子(晋三の異母弟)といわれる男性、妻・昭恵夫人、そして母・安倍洋子だ。「昭和の妖怪」を源流とした血脈の呪縛が、今この国を動かしている。

(週刊新潮 2015.03.26号)

HTB北海道テレビ「イチオシ!」 2015.03.27

2015年03月29日 | テレビ・ラジオ・メディア
今週のHTB国井美佐アナウンサー


HTB「イチオシ!」で、いつものコメンテーターです。

札幌は15~17度という“猛暑”。

ついに春到来か、という陽気でした。

春といえば、局内で「イチオシ!」「イチオシ!モーニング」春バージョンの新作ポスターを発見。





番組内では、ドラマ風「イチオシ!刑事(デカ)」プロモーション映像も公開されました。

いやいや、ヒロさんも、国井アナも、なかなかの役者ぶりです(笑)。









【気まぐれ写真館】 札幌 2015.03.27

2015年03月29日 | 気まぐれ写真館


卒業の日 2015.03.26 (2)

2015年03月29日 | 大学





























卒業の日 2015.03.26 (1)

2015年03月29日 | 大学







































「金曜オトナイト」最終回のゲストは、いとうせいこうさん・・・

2015年03月27日 | 金曜オトナイト


BSジャパン
「大竹まことの金曜オトナイト」
最終回

2015年3月27日(金)
夜11時30分~深夜0時00分

【ゲスト】
いとうせいこうさん



ついに最終回です。

オジサンたちが、毎週、勝手なこと、過激なことを、言いたい放題の番組。

それが2年間、全102回の放送です。

よくぞ2年も続いたもんだ。

放送界の奇跡ですね、これは。

最終回のゲストは、いとうせいこうさんです。

小説『想像ラジオ』は、日本で生まれた21世紀の世界文学といえる傑作だと思っています。

この番組のラストにふさわしいゲストとトークになっていますので、ぜひご覧ください。


いやあ、本当に終了なんですねえ。

寂しくなるなあ。

でも、プロデューサー時代の私も、スタッフにいつも言っていました。

「いつまでもあると思うな、親と、レギュラー」って。


何事も、始まりがあれば、終わりがある。

「オトナイト」は、十分やり切ったと思うし、この番組で、100人もの人たちに会えたことに感謝です。

大竹さん、もえちゃん、繁田さん、スタッフの皆さん、本当におつかれさまでした!

そして、「オトナイト」ファンの皆さん、ありがとうございました!



始まった、遠藤湖舟写真展「天空の美、地上の美。」

2015年03月26日 | 舞台・音楽・アート


日本橋高島屋で開催されている、遠藤湖舟写真展「天空の美、地上の美。」

初日の25日、見に行ってきました。

松本深志高校の同級生で、写真部の仲間でもあった遠藤湖舟君。



ちなみに、湖舟(こしゅう)は本名です。


展示は、全体がひとつの交響曲のような構成になっていて・・・・

第一楽章「月」
第二楽章「太陽」
第三楽章「空」
第四楽章「星」
第五楽章「ゆらぎ」
第六楽章「かたわら」


遥かな宇宙、そして私たちの足元を見つめた写真は、いずれも美しく、そして静かです。

見る人が、いつの間にか、自分自身と対話している。そんな写真でもあります。





ぜひ、会場で本物と出会ってみてください。

日本橋高島屋の8階ホールで、4月5日まで開催しています。



コメントした、「クローズアップ現代」やらせ疑惑問題の文春記事

2015年03月26日 | メディアでのコメント・論評


独占スクープ
「記者に頼まれ、架空の人物を演じた」出演者が告白

NHK『クローズアップ現代』
やらせ報道を告発する

看板報道番組の「詐欺特集」で、
社会部敏腕記者は禁断の“取材”に手を染めた。
知人に「多重債務者」、「ブローカー」の役を依頼。
舞台となった「事務所」も実在しない。
しかもこの“やらせ”は、
「NHKスペシャル」佐村河内問題の発覚直後に行われたのだ。


3月1日、大阪市北区にあるANAクラウンプラザホテルのロビーラウンジで、3人の男が深刻な表情で膝を突き合わせていた。2人の男性は番組出演者。スーツ姿に眼鏡の男は、NHK大阪社会部のN記者だ。真ん中に座った50代の男性は、こう抗議を始めた。

「どうして“クローズアップ現代”であの映像が使われたのか聞きたいだけ。(知らないところで)全国放送されてしまったんでね」。

N記者は、不安気にキョロキョロと視線を泳がせながらこう応えた。「いやー、絶対にバレないと自信を持っていたんですけど」。

三者会談はその後、堂島ホテルに場所を移して続けられた。男性は再びこう不満をぶつけた。「知り合いにも、『あのブローカー、お前に似てる』って言われますわ。自分、(ブローカーを)やってないし」。

N記者は更に声を潜め、囁くようにこう依頼した。「今回みたいに本当にバレちゃマズい時には、音声を二重三重に変える。絶対に声紋鑑定(で本人と特定)は出来ない。松木さんじゃないかと言ってこられる方に対しては、シラを切っていただいて。今後もそういう方向でやっていくということで」。

縋(すが)るような眼差しで懇願するN記者は、一体何を守ろうとしていたのか――。

「NHKでやらせの映像が流された」。今年に入り、ある関係者から小誌に情報が寄せられた。問題となったのは、『クローズアップ現代』(以下、クロ現)で昨年5月14日に放送された『追跡“出家詐欺”~狙われる宗教法人~』という回だった。

月曜~木曜の午後7時半から放送されるクロ現は、国谷裕子キャスターが司会を務める報道番組。政治経済から社会世相まで、幅広いテーマを掘り下げて伝えるNHKの看板番組だ。

番組中盤に問題のシーンが

「この番組のやらせに巻き込まれた」と言うのが、冒頭でN記者に抗議していた松木康則氏(仮名)である。松木氏が憤懣やるかたない表情でこう語る。「私は北新地のクラブで従業員をしています。ところが、クロ現では“ブローカー”のテロップを付けられ犯罪者であるかのように流されました。その憤りは今も収まりません」

松木氏の証言を聞く前に、番組の内容を紹介する。番組が扱った“出家詐欺”とは、お寺で得度(出家の儀式)を受ければ戸籍上も法名への変更が可能となる制度を悪用したもので、宗教法人と結託して多重債務者を別人に仕立て上げ、ローンや融資を騙し取る詐欺の手口のことである。

番組は13年に立件された、滋賀県の寺を舞台に1億3000万円余りを騙し取った詐欺事件の概要を報じ、出家詐欺が社会に蔓延している現状をリポートするという形で構成されている。やらせが指摘されているのは中盤のリポート部分だ。主要部分を再現する。

≪私たちは、出家を斡旋するブローカーの1人が関西にいることを突き止めました。辿り着いたのはオフィスビルの一室。看板の出てない部屋が活動拠点でした。ブローカーは、『経営が行き詰まった寺などを多重債務者に仲介することで、多額の報酬を得ている』と言います≫

仰々しいナレーションをバックに、記者が「ブローカーの事務所」のドアを開ける。そして、ブローカーへのインタビューが行われた後、ブローカーと多重債務者のやり取りを、外から窓ごしに隠し撮りした映像が流れる。その映像は、次のナレーションから始まる。

≪ブローカーのもとには多重債務者の訪問が後を絶たないといいます。私たちが取材したこの日も数百万円の借金を抱えた男性が現れました。
多重債務者「ちょっと金融のほうが苦しくなりまして。こちらさんにさえ来ればもう一度やり直せると伺って来たもので」
ブローカー「何件ぐらい?」
多重債務者「もう7~8件つまんでもうこれ以上は首つるしかないというところまできてますけども」
ブローカー「まずは別人になるって方法があります。こちらのほうでピックアップしたお寺で得度しましたと申請すれば名前が変わります。少しね費用がかかりますけど。50万円前後」≫

N記者とXがタクシーで迎えに

そして、相談を終えてビルを出た多重債務者を、N記者が追いかけて路上で直撃するシーンが続く。

記者「犯罪につながる認識は?」
多重債務者「もうカードも作れないですし、ローンも組めませんし生きていくために仕方がない」≫

リポートは次のナレーションで締め括られた。

≪多重債務者を出家させ融資を騙し取る出家詐欺。宗教法人を悪用した巧妙な手口が水面下で広がっている実態が明らかになりました≫

番組では記者以外の顔は一切映っておらず、音声も変えられていた。また、事務所内やビルの外観にはすべてぼかしが入っていた。

このリポートは、昨年4月25日に「かんさい熱視線」(NHK大阪)で取り上げられ、5月14日の「クロ現」で全国に放映された。番組に登場した記者がN記者であり、「ブローカー」が松木氏、そして「多重債務者」が冒頭の三者会談にも同席していたXだった。

松木氏の証言に戻ろう。「私はブローカーではありませんし、出家詐欺に携わったことも一度もありません。番組に登場するブローカーは架空の人物です。N記者に依頼されて私が演技したもので、私はこの映像がテレビで流されることすら知らなかったのです」

一体、どういうことか。「一昨年、知人のXから『松木ちゃん、宗教絡みの話、得意だよね』と声をかけられ、N記者に引き合わされて、自分の知っていることをお話ししました。私は昔、寺宝の売買に関わっていたことや、お寺で内弟子となって修行して得度出家式を受けたことがある。実は、自分には前科があり服役した過去があるのですが、贖罪の意味と親不孝をした母親の菩提を弔えればと考えて、修行したんです。ただ、親から貰った名前を変えることに抵抗があり、結局、僧籍を取ることはしませんでした。

また、刑務所に入っている時に知り合った人物から“出家詐欺”の話を聞いたことがありました。番組でしゃべった『50万円』という金額などの話は、十数年前に聞いた、また聞きの話なんです。しばらくしてXから『もう一度、話を聞きたい』と言われ、昨年の3月下旬頃に3人で会うことになったのです」(同前)

昨年3月といえば、NHKは佐村河内守氏の問題で大揺れに揺れていた時期である。“全聾の作曲家”として名を馳せた佐村河内氏にゴーストライターがいたことを小誌がスクープ。「NHKスペシャル」など多くの番組で彼を特集していたNHKは、度重なる訂正とお詫びに追い込まれた。

「NHKは調査委員会を立ち上げ、『事実とは異なる内容を放送したことを真摯に受け止め、反省しなければならない』とする調査報告書を3月16日にまとめ、再発防止を誓いました。局内ではより正確な報道を期すべきであると、再確認されたといいます」(全国紙社会部記者)

まさにその時期に、N記者は禁断の“取材”に手を染めていたことになる。

松木氏が当日を振り返る。「その日は土曜日でした。私は平日はクラブの仕事があるので、土曜日に会うことになったんです。その日、N記者とXは私の自宅までタクシーで迎えに来て、堂島ホテルのカフェに案内されました。お寺についての取材だと思っていたら、N記者はホテルのカフェで私に向かって『ブローカーのような掛け合いをしてほしい』と依頼してきた。Xがブローカーで、私が多重債務者という配役でしてほしいと。

再現VTRでも録るのかなと思いながら、出家に対する知識もあったので自分の意見も出したりしました。すると、N記者が『松木さんのほうが良く知っていますね。松木さんがブローカー役で、Xさんを多重債務者役にしましょう』と言ってきた。N記者は『役』という言葉を使っていたと記憶しています。N記者からは、『こういう流れで』とか『最初のお金がいかに後々、安く感じられるか言ってください』などと指示を受けました」

撮影後には三人で居酒屋に

打ち合わせを終え、N記者は「じゃあ行きましょうか」と言い、2人を新大阪駅近くのオフィスビルの一室に連れて行ったという。

「オフィスはガランとした部屋で、窓際にL字型のデスクが置いてあった。既に部屋にはスタッフが2、3人いて、カメラも隠し撮り風のものも含めて3、4台設置されていた。『顔は出しません。指輪と時計を全部はずしてください』と言われ、セーターを渡されて着替えさせられた。セーターはN記者が『家から持ってきた』と言ってきた。当時、自分は今よりだいぶ太っていたのでピチピチでした。

台本は無く、N記者からは『打ち合わせ通りにやってください』とだけ言われた。やりとりはすべてアドリブ。窓の外がキラッと光ったので、見ると『18禁』のマークが見え、近くに人影とカメラのようなものがあった。隣は風俗店が入居するビルで、そこからも隠し撮りをしているんだと初めてわかりました」(同前)

N記者は、撮影が終わると松木氏とXを居酒屋に誘い、3人は食事をしながら歓談したという。会計はN記者が支払った。N記者の行きつけの店で、居酒屋の店主は小誌の取材に「N記者はよく来られていましたね」と証言した。

松木氏の話が事実であれば明らかなやらせだが、NHKがこうした取材をするとは俄かに信じ難い。

小誌記者は松木氏に、出家詐欺に関わったり、ブローカーをしたことが過去になかったか、あるいはN記者に『ブローカーをしたことがある』と発言したことはないか、幾度も確認をした。だが、松木氏は「一切無い」と繰り返した。松木氏が勤務するクラブの上司にも話を聞いたが、「うちは副業禁止。彼が出家詐欺のブローカーだったなんて、聞いたことが無い」と証言した。

ではなぜ、松木氏は演技をしてしまったのか。松木氏はこう説明する。「Xから『とにかく、俺の顔を立ててくれ』と言われたんです。私は当時、Xから50万円を借りていて、その負い目もあった。そもそもN記者からは名乗られたことも無いし、名刺も貰っていないのです。撮影後の居酒屋でXが彼の社名や名前を口にしたので、NHKの記者でNという名前だと初めてわかったくらい。その時にN記者から、映像をどう使い、どの番組でいつ放送するという説明も一切ありませんでした。Xからはその後も、『またお願いされとんや。薬とか危険ドラッグ知ってる奴、フリできる奴いないか?』と聞かれたりしましたが、断っていました。

今年になって、知人から『NHKのウェブサイトを見てたら、ブローカーの映像がクロ現でも流れていた。全国放映されていたみたいだぞ』と聞かされて驚きました。父親からも、『お前はブローカーなんかしているのか!』と叱責されました。顔は映っておらず音声も変えられていましたが、私は喋り口調や手の動かし方に特徴があって、それで松木じゃないかと。それを知ってN記者に抗議した時も彼は名刺がないと言い、最後まで納得できる説明をしようとしなかった。もしN本記者が、私に前科があることで適当に犯罪者役を演じさせ、報道しても構わないと考えたとしたのなら、絶対に許せません」

このN記者とはどのような人物なのか。

「2004年に、『週刊新潮』がN記者の金沢支局時代のパワハラやセクハラについて報じたことがあります。しかし彼は左遷されることもなく、社会部のメインで活躍を続けている。早稲田大学の雄弁会出身で、大学時代は故・小渕恵三首相の事務所に出入りしていたこともあると聞いている。東京の警視庁担当などを経て、現在は大阪社会部に在籍。敏腕記者という評判で、特に薬物問題に詳しい。凄いネタを取ってくる男として知られ、『クロ現』にも何度も出演してコメントしています」(NHK局員)。

NHK大阪放送局前でN記者を直撃した。

――出家詐欺の番組でやらせの指摘がありますが?
「ちょっと分からないんで」

――映像の人物はブローカーではないのでは?
「いやいや、間違い無くブローカーの方ですよ。そういう風に紹介を受けてロケしていますので」

――「違う」という証言を得ています。Nさんのセーターをブローカー役の松木さんが着ていますよね?
「……詳しいこと、そこまでだって……」

そして、N記者は逃げるように局内に入っていった。多重債務者として映像に登場するXはこう答えた。

――映像がやらせという指摘がありますが?
「オレ、多重債務者やで。(松木氏は)ブローカーやで。裏でやっとるんや」

――松木氏はブローカーを否定していますが?
「犯罪やから、否定はするでしょ」

――N記者のことは元々ご存知でしたか?
「うん」

――映像では直撃を受けてましたが、その時に初めて会ったわけではない?
「(初めて)じゃないよ」

Xはやらせを否定するものの、N記者と元々知り合いだったことは認めた。

撮影で使われたオフィスビルの一室を訪ねた。その部屋に入居する会社の代表がこう証言する。「うちの事務所が撮影に使われていたなんて、まったく知りませんでした。松木さんという名前も知らない。実は昨年の一時期、ビジネスで付き合いのあったXさんに『打ち合わせで使いたい』と言われ、彼に鍵を数ヵ月間貸していました。私は他にもオフィスを持っていて、その時期はこの部屋をあまり使っていなかったものですから。

Xさんが多重債務者だなんて聞いたことありません。分譲マンションを幾つか持っていて賃料収入もあると聞いていたので、お金に困っていないと思いますが。確か、マンションの管理組合理事長もやっていました。N記者もXさんに紹介されて知っていますよ。N記者が東京にいた頃からの付き合いで、彼は真面目そうに見えましたけど、うちの事務所がブローカーの活動拠点だなんてとんでもない。もし勝手にそういう使い方をしたなら、本当に腹が立ちます」

会社代表は、現場となったオフィスの室内を見せてくれた。松木氏の証言通り、窓際にL字型のデスクが鎮座している。窓の向かいには風俗ビルが建っており、松木氏が見たという「18禁」のマークも目視できる。

ブローカー役の人物は架空、多重債務者はN記者の知人のX、活動拠点という事務所はニセモノ――。これをやらせと言わず、何と言うのだろうか。

上智大学の碓井広義教授(メディア論)が語る。「ブローカーが架空の人物だという指摘が事実なら、悪質なやらせと言えます。これを認めたらテレビは何だって撮れるし、それをしないことでメディアは信頼を保ってきた。視聴者を欺いたことになり、『クローズアップ現代』という番組の信頼性を損なう大問題です。早急に内部調査を行い、放送内容が事実でなければ、おわび・訂正などの措置が必要となるでしょう」

冒頭で述べたように、松木氏はN記者にホテルで抗議した際に“口止め”を依頼されているが、3月7日には電話でも再度抗議している。その際には、こんなやり取りがあった。

松木氏「Nさん、自分(松木)の仕事知ってますよね?」
N記者「新地で働いておられますよね」

そしてこう続けた。

「確かに、いつもその仕事(ブローカー)をやってる人のように見えたかもしれないけど、普段新地で働いているのに、それは申し訳なかったと思うんで、その辺はしっかりお詫びしたいと思いますので」

N記者の破綻した弁明

小誌記者がN記者とXを直撃した日の翌日、Xは松木氏に電話してきた。

X「とにかくな、N(記者)ちゃんが言うには『(文春に)記事が載ったら終いやと。足代渡すから、止められへんかな』言うてる。今回、こんなことになったから、『松木ちゃんに足代・御礼を出すから(Xが)動いて』言うてたわ」
松木「いわゆる口止め料。袖の下な」
X「うん」
松木「そんなんで動く人間ちゃうけどな、オレ」

N記者がXに対し、松木氏に“口止め料”を払うと言ったというのだ。

一方、N記者は小誌記者の直撃の3日後、電話をかけてきてまくし立てた。「(松木氏が言っていることは)ガセです。松木氏は●●(罪名)の前科があるような人ですよ。Xさんから『(出家詐欺を)これから本格的にやって行く人がいる』と聞き、そこに(松木氏が)現れた。(松木氏は)信頼性のある話をしたし、(本人は)ブローカーとは言ってなかったけど、そういう意味だと解釈した。Xさんが多重債務者であることは、関係書類で確認しています。やらせじゃない」

だが、「ブローカーの事務所」について聞くと、「プライバシーに関わることだから……」と歯切れが悪い。

N記者は松木氏を中傷し、一方で繰り返しXが多重債務者であると強調する。だが、XXが実際に多重債務者であったとしても、やらせ否定の論拠にはならない。野本記者の言う「これから本格的にやって行く」という話と「ブローカーのもとには多重債務者の訪問が後を絶たない」というナレーションは矛盾するし、そもそもXが鍵を持つオフィスを「ブローカーの活動拠点」としたこと、知人のXを初対面かのように直撃したことだけを取っても、まぎれもないやらせである。

NHKはこの事実をどう捉えているのか。籾井勝人会長を自宅で直撃した。

――「クロ現」で出家詐欺のやらせ報道があったことについてお聞きしたい。
「いや、僕知らないから。広報に聞いてください」

その広報局の回答は次のようなものだった。「今回の番組は、十分取材を尽くして制作したものであり、やらせやねつ造があったとは考えていません。記者がブローカーを演じるように依頼した事実はなく、また記者が『足代、御礼を出すから、何とかならないか』と依頼した事実もありません」

NHKは十分調査を尽くし、受信料を払う視聴者に詳細に報告するべきだろう。

(週刊文春 2015.03.26号)