碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

北海道新聞で、「嵐」休止について解説

2019年01月31日 | メディアでのコメント・論評


「嵐ショック」列島揺らす
CM企業、テレビ、札幌ドーム
「予想せず」対応に追われる

人気アイドルグループ「嵐」の来年末での活動休止発表を受け、さまざな影響が28日、各方面に広がった。テレビ局やCMで起用した企業の関係者らは対応に追われた。グループでもソロでも、多くの出演番組やCMを持つ人気者だけに「全く予想していなかった」と衝撃を隠せない様子。嵐が毎年コンサートを開いてきた札幌ドームの関係者は活動休止を残念がり、CDショップは特設コーナーを用意した。

突然の発表に、ある民放局の社員は驚きながら「業界に与える影響は非常に大きい」と口にする。「メンバー同士がよく話し合い、今回の結論を出したのだろう。約2年後と休止まで時間をかけるのも、ファンの気持ちを考えてのことではないか」と話した。

「嵐」はグループでフジテレビ(道内はUHB)木曜夜の「VS嵐」、日本テレビ(道内はSTV)土曜夜の「嵐にしやがれ」といったテレビ番組に出演している。フジテレビは「VS嵐」の今後の放送予定について「制作上のことはお答えしていない」と述べるにとどめた。

嵐をCMなどで起用する企業からは残念と惜しむ意見や、今後の活動を応援する声が上がった。ただ、メンバーは個々に契約を結んでいるケースも多く、休止後も各社の顔として活躍する姿を見ることができそうだ。嵐はグループとして年賀状のCMに4年連続で出演。日本郵便は「年賀はがきの普及に貢献し感謝しています」とコメントした。

嵐は毎年11月、札幌ドーム(札幌市豊平区)でコンサートを開いてきた。昨年は3日間で延べ約16万人を動員。市内の宿泊施設の予約が取りづらくなるほどだった。ドームを管理運営する札幌市の第三セクター、札幌ドームは「多くのお客さんでにぎわっていただけに残念。嵐に代わるコンサートの招致を進めなければならない」(総務部)としている。

CDショップは早速、嵐のコーナーを設けた。札幌市中央区の「玉光堂四丁目店」は約80種類の関連商品を集めた。28日は開店前からファンが並び、品切れになった商品も多いという。秋本亜以里(あいり)副店長(42)は「活動休止に向けてさらに盛り上がると思うので、ファンに多くの商品を届けたい」と話す。

今回の活動休止発表について、2016年のSMAP解散を巡る騒動を、嵐のメンバーが見て「『着陸』の仕方の大切さを感じたのではないか」と、上智大の碓井広義教授(メディア文化論)は指摘する。

話し合いを重ねたことを強調し、約2年後のグループ活動の休止を、時に笑顔を交えながら穏やかに伝えた嵐の“ソフトランディング(軟着陸)”。「今回、嵐が示した形は、さまざまなグループや芸能人が今後、休止や解散などの局面に立った際のロールモデルになるのではないか」とみている。


(北海道新聞 2019.01.29)




<2月15日発売/予約受付中>

ドラマへの遺言
倉本聰、碓井広義
新潮社

スポーツ報知で、「嵐」活動休止について解説

2019年01月31日 | メディアでのコメント・論評


SMAP解散見て「着陸」考えたか 
「嵐」休止や解散お手本に

アイドルが芸能マスコミだけに気を付けていれば良かった時代と異なり、今はSNSの発達で「一億総ジャーナリスト時代」だと上智大の碓井広義教授(メディア文化論)は指摘した。

「自分の言動が思わぬ形で拡散してしまう時代なので、10~20年前のアイドルとは違うプレッシャーがあるだろう」。

その上で嵐の会見について「運動体としての『嵐』を可能な限り自分たち5人でコントロールする意思を感じた」と語る。16年のSMAP解散を巡る騒動を、同じジャニーズ事務所の後輩に当たる嵐のメンバーが見て「『着陸』の仕方の大切さを感じたのではないか」。

話し合いを重ねたことを強調し、約2年後のグループ活動の休止を、時に笑顔を交えながら穏やかに伝えた嵐の“ソフトランディング(軟着陸)”。

「今回、嵐が示した形は、さまざまなグループや芸能人が今後、休止や解散などの局面に立った際のロールモデルになるのではないか」と碓井教授はみている。

(スポーツ報知 2019.01.29)



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ドラマへの遺言
倉本聰、碓井広義
新潮社

脚本家・遊川和彦の熟練技が光る「ハケン占い師アタル」

2019年01月30日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評


「ハケン占い師アタル」は
脚本家・遊川和彦の熟練技が光る

昨年、「花のち晴れ~花男Next Season~」で連ドラ初主演を果たした杉咲花。今期は「ハケン占い師アタル」のヒロインである。イベント会社で派遣社員として働く的場中(杉咲)は、他人の内面を見通す特殊能力の持ち主だ。同じ部署の面々が抱えるさまざまな悩みを密かに解決していく。

たとえば、自分に自信のない神田和実(志田未来)には小学生時代の光景を見せる。当時、級友たちに「くさい」と言われたことがトラウマとなっている和実だが、本当は「笑顔が嘘くさい」という意味だった。他人に嫌われないことに汲々としている彼女に、「自分に対する愛が欠けている。もっと自分を大切にしようよ!」と説く。

また、コネ入社の坊ちゃん社員・目黒円(間宮祥太朗)には、最愛の母を失ってつらかったのは父親も同じだと教える。そして「少しは大人になれよ!」と叱咤するのだ。アタルがやっているのは「占い」というより「人生相談」であり、アタルは「占い師」というより特殊能力を生かした「カウンセラー」である。

登場人物たちの「悩み」には何かしら普遍性があり、見ている側もアドバイスを自分に引き寄せて聞くことができる。このアタル流「人生のヒント」を支えているのは遊川和彦のオリジナル脚本だ。天海祐希「女王の教室」や松嶋菜々子「家政婦のミタ」を手掛けてきた熟練の技が光る。

(日刊ゲンダイ「TV見るべきものは!!」 2019.01.30)



<2月15日発売/予約受付中>

ドラマへの遺言
倉本聰、碓井広義
新潮社









新著 『ドラマへの遺言』(新潮新書)のお知らせ

2019年01月29日 | 本・新聞・雑誌・活字


<新著のお知らせ>


2月15日に、新しい本が出ます。

 倉本聰・碓井広義
 『ドラマへの遺言』
 新潮新書


長年師事してきた、倉本先生との記念すべき共著です。

 ドラマ界の巨人、脚本家・倉本聰がすべてを語り尽くした! 
 大河ドラマ降板の真相は? あの大物俳優との関係は? 
 愛弟子だからこそ聞き出せた破天荒な15の「遺言」。
 デビュー作から新作「やすらぎの刻~道」まで、
 創作の秘密60年分を説き明かす。



昨年、半年間にわたって日刊ゲンダイに連載した対談を、
新書用に全面的に改訂しました。

本人が言うのもヘンですが、
中身は、すこぶる面白い!

というか、
書評の仕事を
17年続けている私が言うんだから
間違いありません(笑)。


アマゾンでの予約も始まっていますので、
どうぞよろしくお願いいたします。


碓井 広義



ドラマへの遺言
倉本聰・碓井広義
新潮社

『家売るオンナの逆襲』三軒家万智 驚異的売上げの「秘密」 

2019年01月29日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム


『家売るオンナの逆襲』三軒家万智 
驚異的売上げの「秘密」とは!?


帰ってきた「家売るオンナ」の逆襲

女優・北川景子さんといえば、2015年の『探偵の探偵』(フジテレビ系)が、今も印象に残っています。このドラマで、北川さんは全身から怒りのオーラを発するヒロインを、キレのいいアクションも披露しながら演じていました。

その後、実生活ではDAIGOさんの妻(!)になったりしましたが、16年の『家売るオンナ』(日本テレビ系)で、ドラマに本格復帰しました。

その『家売るオンナ』が好評だったことから、日テレは17年に『帰ってきた家売るオンナ』を、スペシャルドラマとしてオンエアします。このとき、三軒家万智(北川)は上司だった屋代(仲村トオル)と、「サンチー不動産」という会社をやっていました。社長は、もちろん万智です。

そして19年1月。連ドラとしてスタートしたのが、『家売るオンナの逆襲』です。前回のタイトルが『帰ってきたウルトラマン』へのオマージュなら、今回は『ゴジラの逆襲』でしょうか(笑)。脚本家・大石静さんのユーモア精神に拍手です。

『家売るオンナの逆襲』では、万智が屋代と共に、懐かしい「テーコー不動産」新宿営業所に帰ってきました。しかも屋代と結婚したので、屋代は「上司」にして「夫」ということになり、これまた小ネタの材料になっています。


三軒家万智 驚異的実績の「秘密」

当然ですが、不動産は高額商品です。そう簡単に売れるもんじゃありません。しかし、万智は違います。何しろ、「私に売れない家はありません!」の人ですから。北川さんがケレン味いっぱいに、このキメ台詞を言い放つたび、その堂々のコメディエンヌぶりに感心してしまいます。

今期もまた、「それが私の仕事ですから!」とばかりに難しい物件を、売って売って売りまくっている万智。その驚異的な成約実績の秘密はどこにあるのでしょう。

たとえば第1話。夫の定年退職を機に、住み替えを計画している熟年夫婦が相手でした。しかし、長年の専業主婦暮らしにうんざりし、離婚したいとさえ思っている妻(岡江久美子)が、どんな物件にも難癖をつけるため、なかなか決まりません。

万智は、この夫婦の自宅を訪問した際に、妻が発揮している「生活の知恵」と「合理的精神」に着目します。その上で、妻自身の「働くこと」に対する甘い認識を指摘し、夫に対して抱いている不満の解決策を提示しました。それによって、墓地に隣接する一軒家を購入し、夫婦2人で暮らすことに着地します。

また第2話では、一人暮らしの女性客(泉ピン子)が胸の内に隠していた、「孤独死」への不安を解消する形で、彼女が愛用していたネットカフェと、それぞれの事情を抱えた利用客の両方を救いました。

さらに第3話に登場したのは、トランスジェンダーの夫を持つキャリアウーマン(佐藤仁美)です。彼女は夫の気持ちを頭で理解しながらも、感情的には、かなり複雑な思いをしています。万智は、娘を含む家族3人が、それぞれ自分を押し殺すことなく暮せる家を勧めていきました。


「課題発見・問題解決」型営業というスゴ技

こうして万智の仕事ぶりを眺めていると、単に「家」を売っているのではないことが分かります。

顧客たちが、どんなことで悩んでいるのか。もしくは何に困っているのか。万智は、彼らが個々に抱えている「課題」を発見し、住む「家」を活用して、その問題を「解決」していきます。つまり、やっていることは、「課題発見」そして「問題解決」だと言えるでしょう。

もちろん、そのためには陰で綿密なリサーチを行います。時には、探偵かと思うような行動にも出ます。徹底的に観察し、課題を見つけ、情報を集め、顧客に合った解決法を探すのです。やはり、タダ者ではありません。

もう一度言うなら、万智はその家族が抱えている、しかも本人たちさえ気づいていない問題点や課題を見抜いていきます。家はその解決に寄与するツールに過ぎません。つまり万智は家を売っているのではない。家を通じて“生き方”を提案している。このドラマのキモはそこにあります。

留守堂謙治の「参戦」と、レジェンドの「天の声」

それから、今期新たに参戦してきた、留守堂謙治(松田翔太)がいいですねえ。フリーランスの不動産屋という設定が面白いだけでなく、万智と互角に張り合うヤリ手でありながら、私生活ではドジというか、結構オチャメで、かわいいところがある。こういう人物の造形、大石さんは実にお上手です。

あと、毎回楽しんでいるのが、「天の声」です。ナレーションでも、語りでもなく、「天の声」。あの『スッキリ』を思い出しますが、こちらは中村啓子さんという大ベテラン、伝説のナレーターが担当しています。

物語の流れや人物について、“正しい日本語”で淡々と説明しているかと思うと、ふとした瞬間に、「お忘れかもしれませんが・・」などと、くすっと笑えるフレーズをはさみ込んでくる。まるで『チコちゃんに叱られる!』(NHK)における森田美由紀アナウンサーみたいな存在です。今度見るときに、注意して聞いてみてください。


<2019年2月15日発売>

ドラマへの遺言
倉本聰、碓井広義
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産経ニュースで、「嵐」活動休止について解説

2019年01月27日 | メディアでのコメント・論評


嵐活動休止へ
「SMAP解散を見て
自分たちなりの着地点。
賢い決断」 

「嵐」活動休止のニュースを見て、彼らは非常に賢いと感じた。大野智さんの解散コメントの中に、2017年6月、活動休止の相談をメンバーと始めたとあったが、これは前年2016年12月のSMAP解散を見て、自分たちなりの着地の仕方を考え、行動した結果だと思う。

残念ながらSMAPの解散の仕方は美しい形ではなく、活動25周年コンサートも、特別番組もできなかった。一方、嵐は来年末まで丸2年をかけ、2020年の東京五輪パラリンピック関連の活動を全うし、さらに全国でのコンサートツアーも行って、ファンにもきちんと別れを告げる。ファンにも関係者にも、“嵐ロス”が生じないよう、配慮している。

2年後といえば、年長の大野さんは40歳。全員アラフォーになり、アイドルとして人として、この先どう生きるか、ある種のライフプランを考える時期だ。5人は俳優として、司会者としてタレントとして、それぞれ光る才能がある。恐らく音楽としては「嵐」5人の活動で完結し、それぞれの道を歩むだろう。

今回の活動“休止”は、限りなく“解散”に近いと思うが、各メンバーが自由に才能を発揮するための、前向きな決断と感じた。

【碓井広義・上智大教授=メディア文化論】

(産経ニュース 2019.01.27)



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倉本聰、碓井広義
新潮社



週刊新潮で、『刑事ゼロ』『記憶捜査』についてコメント

2019年01月26日 | メディアでのコメント・論評


新春ドラマ「丸儲けの女優」「大損する女優」

平成最後の新年は、三寒四温の日々である。が、そうした気候をよそに、テレビの世界ではすでに熱い戦いがスタートした。とりわけ今期は、脂の乗った女優たちの「乱打戦」が繰り広げられているという。その”損得勘定”とともに、新作の見どころをお伝えしよう。

昨今、連ドラではもっぱら「刑事もの」が幅を利かせてきた。今回の1月期ドラマもまた然りなのだが、そこに割って入ったのが「法曹もの」である。

「『リーガル・ハイ』『99・9 刑事専門弁護士』などのヒットもあり、数字が見込めるコンテンツとしてすでに定着しました。実際、前回10月期にも『リーガルV』『SUITS』などの話題作が放映され、そうした流れは今期も健在です」

とは、スポーツ紙の芸能担当記者である。

「なかでも見ものは、17年ぶりの連ドラ主演となる常盤貴子と、同じく6年ぶりの竹内結子の”アラフォー対決”でしょう」

常盤は今回、米国の人気ドラマ原作の『グッドワイフ』(TBS系日曜21時)に主演。専業主婦から16年ぶりに弁護士に復職するという役柄を演じている。

「90年代に”連ドラの女王”と称された常盤自身と重なるような設定ですが、何しろ彼女は2000年、同じ日曜劇場の『ビューティフルライフ』でキムタクと共演し、最終回で41・3%という数字を打ち立てている。当時とはテレビを取り巻く状況は異なりますが、19年ぶりの日曜劇場復帰は注目せざるを得ません」(同)

ライターの吉田潮氏が言う。

「常盤貴子といっても、今の若者には朝ドラの『まれ』のお母さん役のイメージが強いのではと思いますが、初回を見て、日米の弁護士の社会的な環境の違いをうまく反映させ、アレンジしていると思いました。共演の小泉孝太郎もよくサポートしていて、いいスタートを切ったと思います」

対する竹内は、スピンドクター(情報操作のプロ)を題材にした『スキャンダル専門弁護士 QUEEN』(フジ系木曜22時)で、危機管理に長けた弁護士を演じている。が、

「これだけ『ボヘミアン・ラプソディ』がヒットしている時に、QUEENとは間が悪い。実際にクイーンに『スキャンダル』という楽曲があるので、それに掛けているのかと思ったら全くの別物でした」

とは、コラムニストの林操氏である。

「それはともかく、クレバーで意地悪な弁護士というのが、家庭的なイメージの竹内には合いません。オープニングでは彼女の足から少しずつカメラが上がっていくのですが、何だかフラフラしていて、ハイヒールを履き慣れていないんだと思いました。共演の水川あさみがクールビューティーキャラで上手くはまっているだけに、竹内のミスキャストぶりが目立ちます」

果たして初回は、『グッドワイフ』10・0%に対し『QUEEN』は9・3%と、僅差で常盤の”レア度”に軍配が上がったわけである。

弁護士ものでは、他に坂口健太郎と川口春奈の『イノセンス 冤罪弁護士』(日テレ系土曜22時)がある。先の林氏は、

「ここは従来、ジャニーズの俳優枠でした。ところが数字が振るわず、日テレはトライストーンの坂口と研音の川口を投入してきたわけですが、果たして吉と出るでしょうか……」

というのも、先の記者は、

「川口は、13年10月期主演した『夫のカノジョ』で3・0%という21世紀のプライム枠連ドラで最低視聴率(当時)を更新し、打ち切りを強いられた”低視聴率の女王”。坂口もまた、高畑充希との交際が報じられて女性人気は下降気味で、厳しい戦いになりそうです」

前述した「刑事もの」も、1月期は豊作だ。前クールから続く『相棒シーズン17』と合わせ、計5本。新作はバラバラ殺人、密室殺人、通り魔に焼殺と、初回から凶悪事件のオンパレードだが、まずは月9枠から。

「『トレース?科捜研の男?』(フジ系月曜21時)は、テレ朝の『科捜研の女』をもじったタイトルながら、初回は12・3%とまずまずの滑り出しとなりました」(前出記者)

それでも、不安要素は大いにあるという。

「主演の錦戸亮は、クールで陰のある天才法医研究員。ところが、悲鳴を上げた新木優子に心配そうに駆け寄るシーンがありました。感情は乏しいけれど科学的思考で真実にたどり着く役どころなのに、演出がまるで合っていない。これではイケメンで優しいジャニーズのままです」

とは、先の林氏。加えて、

「脚本も、狂言回し役の船越英一郎に頼りすぎです。彼が大声で怒鳴ったり机を叩いたりする場面が目立ち、ひたすら下品キャラになり下がっているのです」

月9初主演の錦戸にとっては、重い試練であろう。

続いてテレ朝系の『刑事ゼロ』(木曜20時)は、沢村一樹が記憶喪失の捜査員を演じ、テレ東系の『記憶捜査?新宿東署事件ファイル?』(金曜20時)は75歳の北大路欣也が、定年間近の刑事役で主演する。

上智大学の碓井広義教授(メディア文化論)が言う。

「沢村は朝ドラ『ひよっこ』に続き、またも記憶を失った役ですが、朝ドラ視聴者とのリンクを狙ったのではないでしょうか。テレ朝の刑事ものという安心感もあるし、凝ったストーリーで差異化を図る、そのひと手間がいいと思います。また北大路は『三匹のおっさん』に出演してテレ東に馴染みました。孫ほどの歳の共演者との世代間ギャップや、現場とキャリアとの対立など、見どころは多そうです」

錦戸とは反対に二人揃って”得した”と言えそうだ。


「ポスト米倉」は?

ベテラン勢に紅一点という布陣では、先の坂口の交際相手として名の挙がった高畑充希主演の『メゾン・ド・ポリス』(TBS系金曜22時)。新米刑事の高畑が、退職警官の住むシェアハウスを舞台に事件解決に挑むストーリーで、
「近藤正臣や小日向文世、角野卓造らコメディもできる演技派たちに、高畑がうまく溶け込んでいます」

林氏はそう評し、あわせて先の吉田氏も、

「その芸達者なおじさんで特に注目なのは、元科捜研で女たらし役の野口五郎。昭和のバラエティ『カックラキン大放送?』で”刑事ゴロンボ”に扮した経験がついに生かされたかと思うと、壮大な人生の伏線回収を見せられているようです」

ともあれ、

「前クールの『忘却のサチコ』で、心の痛手を美食で癒す編集者という役柄を演じ切った高畑は、今回も思い切ってショートカットにするなど、プロ意識が随所に見られる。あるいはこの作品で大化けするかもしれません」(前出記者)

けだし彼女も”得する”側であろう。

お次は、こちらも定番となった「お仕事もの」。有能でサバサバした女性が世の理不尽と対峙して悪を成敗、といった定型はあるにせよ、刑事や弁護士以外でも、ジャンルは実に多彩である。

まずは北川景子が、仕事ひとすじの不動産営業ウーマンを演じる『家売るオンナの逆襲』(日テレ系水曜22時)。これは16年7月期の続編となるのだが、吉田氏は、

「コミカルな部分を残したまま、松田翔太という新たなライバルを迎えて面白く流れていました。北川も共演の仲村トオルも決して演技派ではないので、ああいうドタバタ喜劇だとボロは出にくいのです」

第一話は、12・7%と好スタート。先の記者が言う。

「北川は、前作がDAIGOとの結婚後、連ドラ初主演でした。日テレは彼女を”ポスト米倉”になぞらえていて、実際に作中では『ドクターX』を髣髴とさせる『私に売れない家はありません!』といった決めゼリフもある。数字次第では、その目も十分に出てきます」

”大儲け”が見込めそうな北川に対し、どうにも旗色が悪いのは、

「『よつば銀行 原島浩美がモノ申す!』(テレ東系月曜22時)に主演する真木よう子です」

と、先の記者が続ける。ドラマは都銀の課長役の真木が、業績不振の支店を立て直していく奮戦記なのだが、

「真木は一昨年、クラウドファンディングで集めた資金で雑誌を作ると発表してコミケファンの反感を買って炎上。また12年には、常盤貴子の夫の長塚圭史との”W不倫デート”が発覚しました。今回、それらが蒸し返されるなど、ネガティブな要素が満載です」(同)

不倫相手の妻と同クールで対決とは異なものだが、せっかくの主演に放映前からケチがついてしまったわけである。先の吉田氏は、

「『よつば銀行』はテレ東のドラマBizシリーズの4作目です。前回の『ハラスメントゲーム』は良かったですが、今回は大コケの予感。真木は滑舌もよくないし、キャラクターで売っていくしかありません」

と言い、同じく林氏も、

「日経新聞を購読して『私の履歴書』に目を通すようなおじさん層には受けそうな作品ですが、真木のゴワゴワした安っぽい髪形に、つい目がいってしまう。大胆な行動で銀行の支店を立て直すクールな女性を演じるはずなのに、これでは台無しです」

後妻業とポンコツ女子

異色の”お仕事もの”を二つ。木村佳乃主演の『後妻業』(フジ系火曜21時)。黒川博行氏の原作で、女結婚詐欺師が資産家の老人を狙うラブ・サスペンスに仕上がっている。
「木村の持ち味は、ツンとすましているようで、ヤケクソな役を演じられるギャップ。最近では『世界の果てまでイッテQ!』で、ヘビの燻製を食べるなど三枚目キャラが人気で、今回も関西弁の悪女という新境地に挑んでいます」(前出記者)

先の吉田氏も、

「映画『後妻業の女』(16年8月公開)の、トヨエツと大竹しのぶペアのインパクトは強すぎました。サイコパスの女を演じさせて大竹の右に出る者はおらず、今回のW木村(共演は木村多江)がそれを超えるのは難しいでしょうが、ドラマとしてどう演出するのかは大いに期待しています」

最後に、今月初めに不動産会社社長との”熱愛”が報じられた深田恭子。『初めて恋をした日に読む話』(TBS系火曜22時)は、深田演じるアラサー塾講師が、タイプの異なる男たちに囲まれながら、教え子を東大受験に導くというお話である。これを吉田氏が、

「フカキョンはいつまでキャピキャピした役ができるのかという点で、気になる作品です。もう”しくじり鈍感女子”役はおなか一杯で、女優としては少し不憫な気がしますね」

と案じれば、林氏も、

「また彼女がポンコツ女子を演じているのか、と。年下イケメンに囲まれたアラサーの”ハーレムもの”であり、深田への接待か、とも訝りたくなる作品です。それでいて受験ものでもあり、このタイトル。散漫になりはしまいかと心配です」

そうした指摘もむべなるかなで、何しろ、

「深田は昨年1月期に『隣の家族は青く見える』で”妊活妻”という刺激的な役に挑んだものの、平均視聴率6・2%と惨敗しました。熱愛報道も『番宣なのでは』と囁かれているのですが、開き直った演技で起死回生の2ケタを取るのか、あるいはこのまま沈むのか。見ものです」(前出記者)

新年早々、乾坤一擲というわけである。

(週刊新潮 2019.01.24号)



<2019年2月15日発売>

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倉本聰、碓井広義
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【気まぐれ写真館】 文部科学省にて・・・

2019年01月25日 | 気まぐれ写真館

旧・文部大臣室




「3年A組―今から皆さんは、人質です―」の菅田将暉

2019年01月25日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評



日本テレビ系
「3年A組―今から皆さんは、人質です―」

冷静と興奮・・狂気さえ感じさせる
菅田将暉の名演技に脱帽

男が突然、高校に立てこもった。武器は爆弾。人質は3年A組の生徒全員。しかも犯人は担任教師の柊(菅田将暉)だ。

荒唐無稽な話と思われそうだが、今期ドラマのダークホースかもしれない。事件の背景には、水泳の五輪代表候補だった景山澪奈(上白石萌歌)の存在がある。ドーピング疑惑で騒がれ、周囲から陰湿ないじめを受けていた澪奈が自殺したのだ。

柊は茅野さくら(永野芽郁)をはじめとする生徒たちに、なぜ澪奈は死んでしまったのかを明らかにしろと迫る。男子は何度か反乱を起こすが、制圧されてしまう。

第2話では、澪奈の水着を切り刻み、後をつけ回し、自宅に投石したのが宇佐美香帆(川栄李奈、好演)であることが判明。有名人の澪奈を友人にしたかった香帆は、澪奈がさくらと仲良くなったことを恨んだのだ。

この時、柊は香帆に言う。「自分が同じことをされたらどんな気持ちになるか、想像してみろ」と。さらにみんなに向かって「想像力だよ!」と叫ぶ。冷静と興奮。一種の狂気さえ感じさせる菅田の演技が、このドラマ一番の見ものだ。

澪奈の自殺の真相は? 柊の恋人だった元教師、相楽文香(土村芳)はなぜ心を閉ざしたのか? そして、すでに第1話で柊が屋上から身を投げるシーンが放送されているが、あれが結末なのか? 卒業式の日まで、カウントダウンは止まらない。

(日刊ゲンダイ 2019年01月23日)



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書評した本: 細川展裕 『演劇プロデューサーという仕事』ほか

2019年01月24日 | 書評した本たち


週刊新潮に、以下の書評を寄稿しました。

細川展裕 
『演劇プロデューサーという仕事』

小学館 1,512円

紀伊國屋ホールの場所も知らなかった青年が、幼なじみの鴻上尚史に誘われてプロデューサーになった。以来、「第三舞台」と「劇団☆新感線」を牽引して35年。本書は自伝であり、二つの劇団の活動史でもある。興行としての演劇の舞台裏は、芝居よりも劇的だ。


小林信也 
『柳都新潟 古町芸妓ものがたり』

ダイヤモンド社 1,728円

北前船の時代から栄えた新潟の花柳界。しかし、「和の総合芸術」である芸妓文化も様変わりしている。名妓たちの軌跡。新人の挑戦。芸妓を社員とする株式会社の誕生。作家・スポーツライターの著者が花柳界の素顔と花街の本質に迫るヒューマン・ドキュメントだ。


円満字二郎 
『四字熟語ときあかし辞典』

研究社 2,376円

日常で使われる四字熟語は数百程度。本書に収録されているのは1106語だ。意味や由来、類義の熟語との差異はもちろん、「熟読玩味」の解説を、「かめばかむほど味が出る!」で始める軽妙洒脱な文章によって豊富な用例が示される。読んで楽しむ熟語辞典だ。

(週刊新潮 2018年12月20日)


行方 均 
『ジャズは本棚に在り ジャズ書と名盤』

シンコーミュージック・エンタテイメント 2,376円

著者は音楽評論家にしてレコード・プロデューサー。紹介するジャズ書の一冊目が植草甚一『モダン・ジャズのたのしみ』であることに拍手だ。続いて50年前の粟村政昭『ジャズ・レコード・ブック』というのも見事。本書に並ぶ約90冊はジャズの歴史であり現在だ。

(週刊新潮 2018年12月27日号)



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NHK大河ドラマ「いだてん」 視聴率“一神教”にさよならを

2019年01月23日 | 「毎日新聞」連載中のテレビ評


週刊テレビ評
NHK大河ドラマ「いだてん」 
視聴率“一神教”にさよならを

第1話15・5%、第2話12・0%。NHK大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)」の視聴率(関東地区、ビデオリサーチ調べ)だ。さっそく新聞や雑誌、そしてネットでも「低視聴率」が話題となっている。しかし、これは今回の企画が決まった時から予想できたことで、いわば想定内である。

まず、昨年の「西郷どん」もそうだったが、多くの日本人が好む大河ドラマの舞台は戦国時代と幕末・明治維新の時代だ。その意味で、今年の「いだてん」は明らかに異色作と言える。何しろ「時代劇」ではないどころか、「近現代劇」なのだから。

次に、主人公もまた誰もが知る「歴史上の人物」ではない。日本人として初めてオリンピックに参加したマラソンランナー、金栗四三(かなくりしそう)。1964(昭和39)年の東京オリンピック実現に尽力した水泳指導者、田畑政治(まさじ)。どちらもオリンピックやスポーツの世界では有名な人たちかもしれない。しかし社会全体では、このドラマで初めて知る人が多いのではないか。今回の大河は、そんな「知らない男たち」の物語なのだ。

さらに主演俳優は中村勘九郎と阿部サダヲだ。2人とも良い役者であり、演技力も申し分ない。だが国民的ドラマと呼ばれる枠としては、マニアックなキャスティングであることも事実だ。時代、人物、俳優、そのどれもが異例であること。むしろそこに今回の大河の意味があると言っていい。「これまでにない大河」という挑戦であり、実験である。異色作であり、野心作である。

そんなことができる作り手は、NHKの中にもそうはいない。「いだてん」を制作しているのは、脚本・宮藤官九郎、音楽・大友良英、演出・井上剛、制作統括・訓覇(くるべ)圭の「あまちゃん」チームだ。

朝ドラの歴史の中では、「あまちゃん」もまた王道でも正統派でもない。やはり異色作だった。むしろ朝ドラの常識や既成概念を打ち壊し、新たな価値を生み出したことで記憶に残る作品となった。このチームの投入は大河ドラマの可能性を広げるための奇策だ。

語り手は実在した伝説の落語家、古今亭志ん生。明治期を演じるのが森山未来で、昭和期はビートたけしだ。いかにも宮藤官九郎らしい、「いだてん」の姿勢を象徴する仕掛けだが、これも従来の大河ドラマとの落差に違和感を持つ視聴者がいるかもしれない。その一方で、制作陣のチャレンジ精神とユーモアと遊び心に拍手する人たちもいるはずだ。メディアは、ドラマを視聴率という“一神教”で語ることをそろそろ終わりにしてもいい。

(毎日新聞夕刊 2019.01.19)



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デイリー新潮で、「いだてん」について解説

2019年01月21日 | メディアでのコメント・論評


大河「いだてん」が早くもピンチ
 “近現代”と“オリジナル脚本”はコケる
のジンクス

1月6日にスタートした平成最後のNHK大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」は初回こそ15.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)で、昨年の『西郷どん』(主演:鈴木亮平)の初回視聴率15.4%をかろうじて上回ったが、第2話(13日)は12.0%まで急降下。

これを受けてフリーアナウンサーの久米宏は、1月19日放送の「久米宏 ラジオなんですけど」(TBSラジオ)で以下のように語った。

「(昨年)暮れから大キャンペーンをずっと張っていて、その挙げ句が15.5%。『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)にかなり負けている。(中略)さらに2話は『ポツンと一軒家』(テレビ朝日系)の制作費7万円くらいの番組にまで負けて……NHKはショックだろうね。(中略)下手すると、明日は1ケタになるんじゃないか?」

同業者にここまで言われたら、NHKもさぞやショックだろう。

それにしても、朝ドラ「あまちゃん」で実績のあるクドカンこと宮藤官九郎を脚本に抜擢して、なぜここまで視聴率は伸びないのか。

1963年、井伊直弼を描いた「花の生涯」(主演:尾上松緑[二代目])に始まり、今年で58作目となる大河ドラマが「いだてん」だ。これまでの人気作品を見てみよう。

意外なことに「NHK紅白歌合戦」とは違って、古ければ古いほどみんなが見ていたわけではない。1960年代からは2本、70年代からはなく、80年代から6本がランクインしている。90年代に2本あり、2000年以降、ベスト10に入る作品はない。

作品の時代背景を見ると、戦国時代を含む作品が5本、これに安土桃山時代も含めると10本中7本に、日本人の好きな織田信長、豊臣秀吉、徳川家康が出演していることに。
さらに、日本人が大好きな「赤穂浪士」と暴れん坊将軍の「徳川吉宗」は江戸中期の物語であり、9本が近世を描いたものになる。

唯一の例外が「いのち」であり、時代は昭和で、主人公が架空の人物であるばかりか、歴史上の人物が全く登場しない唯一の大河作品である。

「後にNHK会長となる川口幹夫さんが放送総局長だった頃に、戦国時代と幕末ばかりになってしまった大河ドラマの路線転換を図ったんです。“近代大河”と名付け、山崎豊子さんの『二つの祖国』をもとに日系アメリカ人2世を主人公にした『山河燃ゆ』(1984年、主演:松本幸四郎、西田敏行)に始まり、翌年には日本人女優・第1号の川上貞奴を描いた『春の波濤』(主演:松坂慶子)を放送したのですが、どちらも不人気でした。そのため、大河『おんな太閤記』や朝ドラ『おしん』(1983~84年)で実績にある橋田壽賀子さんにテコ入れをお願いし、視聴率を回復させたのが86年の『いのち』です。実際、その翌年の『独眼竜政宗』以降3年連続でベスト10入りしているのは、視聴者の揺り戻しでしょう。NHKも相当懲りたと見えて、以来、大河で近現代を扱うことはなかったのですが、『いのち』から33年ぶりの近現代大河となったのが『いだてん』というわけです」(当時を知るテレビマン)


わかっていたはずの低視聴率

では、逆にこれまでの大河ドラマワーストを見てみよう。

上智大学の碓井広義教授(メディア文化論)は感慨深げに言う。

「原作のないオリジナル脚本が、ワーストのほうに目立つのが気になります。NHKとしては、オリジナル脚本にすることで、ストーリーをいじれると思っているのだと思います。しかし、ガッチリした原作があってこそ、背骨がしっかりしているからこそ、遊びもできるんですけどね。だからこそ、大作家の原作の大河は面白く、人気もあったわけです。でも、やっぱり日本人は、戦国時代と幕末が好きなんですよ。日曜夜8時には、信長・秀吉・家康が出てくる戦国時代の面白いところ、本能寺の変があって、秀吉が天下を取って、その後、家康が幕府を開くという、心地よく刷り込まれた歴史物語なら、繰り返しでも見るんです。それを、手を変え品を変えて見せるのが大河です。一方で視聴者は、知らない時代の知らない人は見たくない。同じ戦国時代であっても、『おんな城主 直虎』は知らないし、平安時代も室町時代も興味がない。ましてや明治以降の話は、まだ評価が定まっていないところもありますからね。『西郷どん』だって幕末の頃は面白くても、征韓論や西南戦争など最後のほうは、いまだに評価が定まっていないところもあります。明治以降の人物は、遺族だって生きている場合がありますし、生々しさがある。そういった話なら、大河でなくてもいいんですよ。『山河燃ゆ』だって、ほかの枠で見たかったと思いましたしね」


どうやら、大河にとって“オリジナル脚本”と“近現代”は鬼門のようだ。特に“近現代”については、すでに33年前に結論が出ていたのである。

“近代大河”を指揮したNHKの川口元会長は当時を振り返り、新聞のインタビューにこう答えていた。

〈時代劇は歴史のロマンを感じさせるかが、近現代はまだ生々しさが残る現実なんですね。でも、思い切って冒険をした意味はあったと思う。日曜夜の定時枠で求められているものは何か、改めて確認できたからです。現場が「時代劇に戻したい」とも意思出て、了承しました。〉(読売新聞:05年12月16日付)

にもかかわらず、近現代大河「いだてん」をスタートさせて、この惨状である。

前出の碓井教授は、それでも見続けるという。

「さすがにNHKだって、結果はなんとなくわかっていたと思いますよ。でも、来年の東京五輪という国策にも、お付き合いしないといけないのでしょう。ひょっとするとワースト大河の1位になるかもしれませんけど、それでも見ようと思うのは、たとえ失敗しても面白がらせてくれるのが、クドカンの作品だからです。でも、従来の大河ファンの方には、来年まで待ってもらうしかないかもしれませんね」


来年の大河ドラマ「麒麟が来る」の主人公は、ご存知!明智光秀だ。クライマックスは「敵は本能寺にあり!」である。「いだてん」は見ないという方、今しばらくお待ちください。【週刊新潮WEB取材班】

(デイリー新潮 2019年1月20日)



<2019年2月15日発売>

ドラマへの遺言
倉本聰、碓井広義
新潮社



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