碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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【気まぐれ写真館】 稲の緑、広がる(信州・大町市にて)

2023年07月31日 | 気まぐれ写真館

2023.07.30


日刊ゲンダイで、市川猿之助&永山絢斗の出演作品 「配信停止」解除について解説

2023年07月30日 | メディアでのコメント・論評

 

 

市川猿之助&永山絢斗出演作品

NHK「配信停止」解除の大英断

 

父親と母親への自殺幇助の疑いで逮捕されている歌舞伎俳優の市川猿之助(本名・喜熨斗孝彦)容疑者(47)が過去に出演していた番組が配信停止になっていた件で、NHKの山名啓雄メディア総局長は、配信停止を撤回すると明らかにした。

山名局長は、26日に行われた定例会見で、「できるだけ速やかに配信を再開する」とコメント。「作品に罪はない」「有料の動画サービスなのでその番組を見るかは利用者が判断すべき」など、配信停止に関して1000件以上の批判の声があったという。

猿之助容疑者の出演作品をめぐっては、NHKは先月末、有料動画サービス「NHKオンデマンド」で配信されていた大河ドラマ「風林火山」「龍馬伝」「鎌倉殿の13人」などの8作品について7月1日午後11時59分をもって終了すると発表していた。

メディア文化評論家の碓井広義氏はこう話す。

「今回のケースでは、猿之助容疑者ひとりのために、すべての作品が見られなくなり、視聴者の利益が大きく損なわれていると感じていましたから、僕はいいのではないかと考えます。NHKは当初、とりあえず配信停止という措置をとりましたが、世論に動かされた部分もあったと思います」

たしかにSNS上では、猿之助容疑者の逮捕翌日の“一括配信停止”で、多くの作品が視聴できなくなることへの悲鳴の声や配信停止を疑問視する声があがっていた。

見る見ないを選択できる自由

また6月に大麻取締法違反容疑で逮捕・起訴された永山絢斗被告(34)が出演していた朝ドラ「べっぴんさん」も配信停止となっていたが、こちらも配信を再開する予定だという。山名局長は、「今後、NHKオンデマンドにおいては、原則、一部の出演者の逮捕での配信停止は行わない」と言明。ただし、「事案によっては総合的な判断で例外的に停止する可能性はある」とした。

碓井氏が続ける。

「この問題はなかなか難しくて、当然、ドラマや映画はたくさんの人が出演していますので、その中のひとりが何か問題を起こした場合、一律にそれを止めてしまっていいのかという議論はあってしかるべきだと思います。しかし、その時々で個別に判断をしていかざるを得ない。例えば直近の主演作や犯罪を彷彿とさせる作品などの場合は、状況が明るみに出るまでは判断を保留せざるを得ないケースもあるでしょう。ただし、今回の例でいえば、大河ドラマなど過去の作品であるわけで、それについては、見られるようにしてもいいのではないかと思います」

さらに、テレビやラジオなど誰の目にも触れるメディアと違って、映画など、視聴者が納得してお金を払って選択して見るものはいいのではないかという議論もある。

「動画配信サービスも、お金を払って自分から見に行くものなので、『猿之助が出ているので自分は見ない』と判断する自由は担保されているので、映画などと同様でしょう」(碓井氏)

視聴者にとっては、“見る見ないを選択できる自由”があった上で、作品が残されていることはやはり大切。今回、NHKの英断といえるだろう。同様に、猿之助作品を配信停止にしている民放の動画配信サービスもこれに追随すると思われる。

(日刊ゲンダイ 2023.07.29)


「ピンズバNEWS」で、松下洸平さんについてコメント

2023年07月29日 | メディアでのコメント・論評

『最高の教師』の松岡茉優さん、松下洸平さん

 

 

松下洸平『最高の教師』を

評論家が徹底分析

「ひっそり咲く花」

「ただの良い夫ではない」

 

7月15日から日本テレビで放送されている松岡茉優(28)主演のドラマ『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』が早くも話題になっている。

松岡演じる「3年D組」の担当教師、九条里奈が卒業式の日に教え子の手により、校舎から突き落とされる衝撃シーンから始まる本作。地面に叩きつけられそうになった里奈が、突如1年前の始業式の日へと舞い戻り、未来の自分の姿を変えんと奮闘するという筋書きだ。

スポーツ紙記者が話す。

「主演の松岡さんは8歳の時に芸能界入り。生徒役である芦田愛菜さん(19)は2011年に放送された『マルモのおきて』(フジテレビ系)でスターへの階段を駆け上がりましたし、加藤清史郎さん(21)もトヨタのCMに“こども店長”として出演したことで世にその名を知られました。子役出身俳優が繰り広げる演技合戦もドラマの魅力の一つです」

『みんなの朝ドラ』(講談社現代新書)らの著書があるドラマ評論家の木俣冬さんが語る。

「子役出身の俳優さんは、芸歴が長いこともあり、役作りをしっかりとした上で撮影に臨む傾向があります。実際に第1話では、芦田さんが6分に及ぶ迫真の号泣演技を見せました。今後も3人の子役出身俳優が繰り広げる演技バトルによって物語全体が緩みのないものになるのでは」

■ドラマ評論家が注目する“隠れたキーマン” 松下洸平の演技力

その中でキーマンとなり得るのが、主演である里奈(松岡)の旦那役・蓮を演じる松下では、と木俣さんは指摘する。

「ドラマのストーリー自体は1年後に里奈(松岡)が生徒に殺される未来を変えていくという構想なんだと思います。そこに松下さん演じる蓮が、どの様に絡んでいくのか。生瀬勝久さん(62)や古田新太さん(57)といったベテラン舞台俳優が多く所属する事務所に籍を置くだけあって、松下さんも舞台出身の演技派。今作でも脇役として、加藤さんや芦田さんに負けない演技を披露するはずです」(前出の木俣さん)

松下の役者としての魅力はどこにあるのか。

「表現力が非常に高いのではないかなと思います。心地よいウィスパーボイスが魅力の松下さんですが、台詞回しは非常に聞き取りやすい。切ない目の表情など細かな演技も魅力です。21年にTBSで放送された『最愛』で吉高由里子さん(34)の相手役を演じ、人気が爆発した今、松下さんが今作で“ただの良い夫”を演じて終わるとは思えません。何か裏があるような演技に期待したい」(前同)

コラムニストでドラマ評論家の吉田潮さんは松下の演技をどう評するのか。

「困っているけど“ノー”とは言えない。そんな表情が絶妙なんです。日本テレビで放送された『トクボウ 警察庁特殊防犯課』(14年)で主人公の朝倉草平(伊原剛志)にこき使われてエプロンをつけて料理をさせられる姿なんて、しいたげられた子犬そのもの。本人が子犬顔だから余計その姿が似合うんです」

■「横にいて欲しい……」繊細な表情に視聴者がハマる可能性

その後、19年後期に放送された朝の連続テレビ小説『スカーレット』に戸田恵梨香(34)の相手役として出演したことで、松下の知名度は全国的なものとなる。その時の演技を吉田さんは「無礼がない」と振り返る。

「ヒロインである戸田さんと相思相愛になって朝からイチャつくんですが、決して俺が俺がと前に出てくる感じがしないんです。相手に敬意を持っていて、嫌味がない。その姿勢にドはまりする視聴者が続出しました。元々、セリフがない場面でも、顔の表情をキュッと絞ったり、細やかに繊細な感情を表すのが得意。スポットライトを浴びてないところで良い表情をするんです。良い意味で華がない。ひっそり咲く花ですよね」(前同)

今作での松下は、今後いかなる活躍をしていくと見ているのか。

「学園モノなのでメインになる役どころではないのでは。主人公の里奈を支えるような、現実世界でも女性が横にいて欲しいって感じる演技を披露してくれるかも。最高のサブキャストだと思います」(同)

今後の演技に期待したいと語るのはメディア文化評論家の碓井広義さんだ。

「松下さんは23年4月期に放送され、天海祐希さん(55)が主演した『合理的にあり得ない〜探偵・上水流涼子の解明〜』(フジテレビ系)で披露したような、相手に寄り添った演技が魅力。だからこそ、今後はエリートサラリーマンなんだけど、裏の顔がある。そんな二面性のある悪役として主演を張るような演技に期待したいですね」

作品ごとに様々な顔を見せてくれる松下。今作ではどの様な姿を見せてくれるのか。

(双葉社「ピンズバNEWS」)


【気まぐれ写真館】 大谷祥平選手、MLB初完封!&初完投!

2023年07月28日 | 気まぐれ写真館

2023.07.28


「家飲みドラマ」再び

2023年07月28日 | 「しんぶん赤旗」連載中のテレビ評

 

 

「家飲みドラマ」再び

 

ビール好きのヒロイン、伊澤美幸(栗山千明)が帰ってきた。ドラマ25「晩酌の流儀2」(テレビ東京系)である。

不動産会社に勤務する彼女は、一日の終わりに美味しい酒を飲むことを無上の喜びとしている。

最高の状態で酒と向き合うためには準備も必要だ。定時に退社して、ボルダリングやボウリングで汗を流したりする。

さらに行きつけのスーパーで安くて旨い食材を探す。モットーは「家飲みで一番大事なのは、最小のコストで最大のパフォーマンスを出すこと」。

帰宅後の手早い料理でガーリック豚テキや茄子の揚げびたしを作るかと思うと、焼き鳥や握り寿司にも挑戦する。

毎回の見せ場が待望の1杯目だ。うっとりした目でビールが注がれたグラスを見つめ、やがて静かに、しかし情熱的に黄金色の液体を喉に流し込む。

そして2杯目。美幸は「これが私の流儀だ!」と、別のグラスを冷蔵庫から取り出す。適度に冷えた状態のグラスで飲み続けたいからだ。このこだわりが快感を呼ぶ。

振り返れば、グルメドラマは社会の価値観の変化を反映してきた。食と向き合うドラマという新ジャンルを切り開いたのは「深夜食堂」(TBS系)だ。

次に架空の人物が、一人で実際の店に行って食事をする構造を「孤独のグルメ」(テレビ東京系)が完成させた。

好きな場所で好きなものを食べる自由という幸せを提示しただけでなく、一人飯のネガティブなイメージを払拭し、個人の多様性を尊重する社会に先駆けたのだ。

長く続いたコロナ禍の中で、「家飲み」に注目したのが昨年の「晩酌の流儀」だった。

自分の家で、誰にも気兼ねすることなく、好きな酒を好きな料理と共に味わう。一見当たり前のような行為の中に、自分にとっての価値を再発見したのだ。

食も酒も身近な存在でありながら奥の深いテーマだ。おかげでグルメドラマには幅広い年齢の視聴者が集まる。またテレビ局にとっては小さな予算で制作可能な優良コンテンツでもある。

今や刑事ドラマや医療ドラマと並んで、ドラマジャンルの新定番となった感があるグルメドラマ。一人飯、一人晩酌の次はどんな仕掛けが登場してくるのか、大いに楽しみだ。

(しんぶん赤旗「波動」2023.07.27)

 


言葉の備忘録339 二度と・・・

2023年07月27日 | 言葉の備忘録

2023.07.27 朝5時

 

 

 

二度と来ない

今日という一日を、

どうぞ

大事に大切に

お過ごし下さい。

 

 

 

石澤典夫

NHK『ラジオ深夜便』エンディング

 

 

 


【気まぐれ写真館】 猛暑日の夕景

2023年07月27日 | 気まぐれ写真館

2023.07.26


【気まぐれ写真館】 ベランダ測候所、本日も40℃超え

2023年07月26日 | 気まぐれ写真館

2023.07.26


目黒蓮主演「トリリオンゲーム」の見どころは躍動感

2023年07月26日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

目黒蓮主演「トリリオンゲーム」TBS系

見どころは躍動感だ

 

猛暑に対抗できる、ぶっ飛んだ勢いのドラマがあってもいい。「トリリオンゲーム」(TBS系)はそんな1本だ。

ハル(目黒蓮)とガク(佐野勇斗)は中学の同級生。新卒採用試験で再会し、一緒に起業することになる。だが資金も人脈も事業計画もない。あるのはハルの飛び抜けた話術とガクの優れたIT技術だけだ。

にもかかわらず、ハルは「1兆ドル(トリリオンダラー)を稼ぐ!」と宣言。徒手空拳の戦いを開始する。

目黒といえば、昨年秋の「silent」(フジテレビ系)で演じた聴覚障害の青年が鮮烈だった。

今回は全く逆のキャラクターだ。饒舌でハッタリが得意。計算高いくせに悪いことにはノーブレーキ。ただし発想力と実行力は特筆ものだ。

ガクをハッカー大会に出場させて大物投資家(吉川晃司)とつながる。

生真面目な大学生・凛々(福本莉子)を採用して社長に抜擢。

さらにAI(もどきの)機能付きオンラインショップを開き、フラワーアレンジメントで成功する。

このドラマの見どころは、対照的な個性とスキルの2人が組んだことで生まれる、物語の躍動感だ。

投資ビジネスの現実がどこまで描かれているかより、大ボラのような夢に挑む彼らがどこまで行けるのか、具体的にどうやって到達するのか、それが見たくなってくる。

原作は同名漫画で、脚本は朝ドラ「マッサン」などのベテラン、羽原大介だ。

(日刊ゲンダイ「TV見るべきものは!! 2023.07.25)

 


「時効警察」コンビ再現、笑い誘うマックCM

2023年07月25日 | 「日経MJ」連載中のCMコラム

 

 

「時効警察」コンビ再現、笑い誘う

日本マクドナルド

大人のご当地てりやき

「濃いして大阪」篇

 

マクドナルドのCM、大人のご当地てりやき「濃いして大阪」篇である。

街道脇に駐車した大型トラック。運転席にオダギリジョーさん、助手席には麻生久美子さんがいる。2人が手にしているのは新しいハンバーガーだ。

もうこれだけで笑ってしまう。そして嬉しくなる。2人が出演した『時効警察』シリーズ(テレビ朝日系)を連想するからだ。

主人公は、すでに時効となっている未解決事件の真相を探るのが「趣味」だという警察官、霧山修一朗(オダギリさん)。捜査の女房役が同じ総武警察署時効管理課の三日月しずか(麻生さん)だった。

「変わったわね、あんた」と麻生さん。「こんなてりやきじゃなかったのに」と言いつつ、オダギリさんを見つめる。

ナレーションが「変わったのは大阪お好み焼き風ソースたまごてりやき」と説明し、オダギリさんの「そんなお前に、てりやいてるぜ。」という心の声をテロップが代弁。

トラッカーのオダギリさんが潜入捜査の変装に見えてくる。1本で2度おいしいCMだ。

(日経MJ「CM裏表」2023.07.24)


【新刊書評2023】 3月後期の書評から 

2023年07月24日 | 書評した本たち

 

 

【新刊書評2023】

週刊新潮に寄稿した

2023年3月後期の書評から

 

岩合光昭『アフリカではゾウが小さい~野生動物撮影記』

毎日新聞出版 2750円

『岩合光昭の世界ネコ歩き』は人気番組だが、著者はネコばかりを撮っているわけではない。世界的な動物写真家の集大成とも言えるフォト・エッセイが本書だ。いのちのリレーを見せてくれる、ボツワナのゾウ。夜明けの月の下で水たまりを歩く、ナミビアのキリン。その美しさや躍動感は、「彼らは自然とともにある。ヒトもまた自然とともに」という思いでレンズを向ける著者ならではのものだ。(2023.02.20発行)

 

保坂正康『Nの廻廊~ある友をめぐるきれぎれの回想』

講談社 2090円

昭和27年、札幌の中学に越境入学した著者は、同じ列車で通学する一歳上の「すすむさん」と心を通わせる。それから30余年、自身は昭和史に迫るノンフィクション作家となり、すすむ少年は学生運動闘士や経済学者を経て保守思想家「N」となっていた。生真面目で妥協を許さないNが著者だけに垣間見せた、「海を渡って内地に向かう少年」の素顔と葛藤。同時代を生きた畏友への感謝と鎮魂の書だ。(2023.02.28発行)

 

山本昭宏『残されたものたちの戦後日本表現史』

青土社 2420円

戦争で生き残った者たちが表現した「残されたもの」は何を語っているのか。気鋭の研究者が探っていく。ラバウルから生還した水木しげるは、ひたすら異形なるものを描いてきた。満州からの引き揚げを体験した別役実はヒロシマと不条理を書いてきた。そして原爆によって家族を奪われた中沢啓二は、凄惨な記憶と怒りを漫画作品に注ぎ込んだ。戦争が遺した「者とモノ」の実相が見えてくる。(2023.02.28発行)

 

佐高 信『佐高信評伝選3 侵略の推進者と批判者』

旬報社 2970円

満州国設立を推進した石原莞爾。軍事力による植民地支配を批判した石橋湛山。本書では彼らの実像に迫り、歴史的評価を下していく。両者の違いは「国権と民権の違い」だと著者。ただし『石原莞爾の夢と罪』が市川房江と犬養道子による対照的な石原観から始まるように、評伝にありがちな編年形式ではない。時代と格闘した生身の人間としての人物像が、ゆっくりと螺旋状に厚みを増していく。(2023.02.28発行)

 

奥 祐介『東京名酒場問わず語り』

草思社 1760円

マスクをせずに外を歩けるようになってきた。久しぶりで酒場に足を運んでみようと思っている人も多いのではないか。本書は元書籍編集者による酒場エッセイ集。大いに刺激となり参考となる一冊だ。たとえば浅草では「酒の大枡」「ぬる燗」「うまいち」といった店を巡行するが、その柔らかな語り口だけで十分酔える。他に銀座、大塚、神楽坂などの行きたくなるバーや居酒屋、蕎麦屋が並ぶ。(2023.03.06発行)

 

いとうせいこう:監修、毎日新聞出版:編

『われらの牧野富太郎!』

毎日新聞出版 2420円

4月に始まるNHK連続テレビ小説『らんまん』。神木隆之介演じる主人公のモデルが、『牧野日本植物図鑑』などで有名な植物学者・牧野富太郎だ。本書は「牧野ワールド」を知る絶好の入門書である。簡潔なライフヒストリー、植物専門家による解説、牧野が全国を巡った植物の旅、さらに朝ドラの脚本家・長田育恵といとうせいこうの対談も収録。「なぜ今、牧野なのか?」が見えてくる。(2023.03.15発行)

 


【新刊書評2023】 3月前期の書評から 

2023年07月23日 | 書評した本たち

 

 

【新刊書評2023】

週刊新潮に寄稿した

2023年3月前期の書評から

 

 

渡辺京二『夢と一生』

河合出版 1100円

『逝きし世の面影』などで知られる著者が亡くなったのは昨年の暮れ。92歳だった。本書は生前最後となる語り下ろしである。日本近代史や資本制市民社会を問い直す鋭い考察は、いかにして生まれたのか。その思想的原点を、熊本での子ども時代に始まる半生の歩みと共に明かしていく。中でもコミュニズムとの出会いと葛藤の率直な回想が興味深い。著者の独自性を知る意味でも貴重な一冊だ。(2023.02.10発行)

 

川本三郎『映画の木洩れ日』

キネマ旬報社 3630円

『キネマ旬報』の連載「映画を見ればわかること」がテーマ別の一冊となった。音楽、文学、戦争、家族といった章が並ぶ。『スリー・ビルボード』での「善」と「おぞましさ」の同居。『砂の器』における原作と映画の違い。戦争映画『ダンケルク』で見つけた美しい場面。すべての文章に、映画評論とは「読者に感動を数倍にして再体験してもらうもの」という著者の姿勢が反映されている。(2023.02.13発行)

 

森まゆみ『アジア多情食堂』

産業編集センター 1320円

雑誌『谷根千』元編集人の著者は無類の旅好きだ。本書は中国、韓国、台湾、さらにタイやラオスなどを歩いた、いわば旅日記である。「行く先々でふつうの人々の暮らしを見てきた」の言葉通り、現地の人と食に平常心で向き合っている。魯迅が愛した紹興の店で食す、タニシや黄ニラの炒め物と白飯。台南の牛肉スープも味わってみたくなる。市場と町の食堂、こぢんまりとした宿はアジアの宝だ。(2023.02.15発行)

 

丸山俊一+NHK「サブカルチャー史」制作班

『アメリカ流転の1950ー2010s~映画から読む超大国の欲望』

祥伝社 2200円

秀作ドキュメンタリー『世界サブカルチャー史 欲望の系譜 アメリカ編』の書籍化である。戦後から2010年代までの社会と文化を考察している。50年代の『裏窓』は冷戦時代を深く物語った。若者たちの反抗が始まった60年代の『俺たちに明日はない』。葛藤の80年代に愛国心を搔き立てたのは『トップガン』だ。さらに喪失の90年代から分断の10年代へと続く本書は、今を知るための過去への旅だ。(2023.02.10発行)

 

後藤正治『クロスロードの記憶』

文藝春秋 2035円

著者は「人の人生を描く」ことを続けてきたノンフィクション作家だ。本書では記憶に残る人たちが「他者と交差したひと時」にスポットを当てている。藤圭子と彼女を見出した作詞家・石坂まさを。伝説の名トレーナー、エディ・タウンゼントは若き天才ボクサー、井岡弘樹を鍛えた。また吉本隆明を陰で支えた、川上春雄という“個人編集者”がいた。いずれの交差路にも明るい憂愁が流れている。(2023.02.25発行)

 

内田 樹『夜明け前(が一番暗い)』

朝日新聞出版 1760円

『直感はわりと正しい』『常識的で何か問題でも?』に続く時評コラム集だ。辺野古新基地建設問題。権力者による不正の横行。突然のパンデミック。強行された東京五輪。そして経済の低迷。目の前で起きている事象をどう捉えるべきなのか。その本質とは何なのか。著者の視点と指摘がヒントとなる。本書はスリリングな同時代ドキュメントであり、「もうちょっとましな国になる」ための処方箋だ。(2023.02.28発行)

 


【気まぐれ写真館】 富良野にて(2)

2023年07月22日 | 気まぐれ写真館

Soh’s BAR ソーズバー(Sohは、倉本聰先生の名前から)

倉本先生の書斎を再現

内外のタバコのパッケージコレクション

倉本聰先生と

 

 


【気まぐれ写真館】 富良野にて(1)

2023年07月21日 | 気まぐれ写真館

ドラマ『優しい時間』の舞台「森の時計」

佐藤のりゆきさんと


【気まぐれ写真館】 富良野へ

2023年07月20日 | 気まぐれ写真館

旭川空港 気温25℃

富良野へ

空知川

クマもいます。