碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

夏に比べたら(笑)豊作といえる「秋ドラマ」

2016年10月31日 | メディアでのコメント・論評


産経新聞の取材があり、「秋ドラマ」について解説しました。

ヒロイン話題 豊作の秋ドラマ

地上波テレビの秋の連続ドラマが出そろった。テレビ朝日系が「相棒」「ドクターX」といった人気シリーズの新作を放送する一方、日本テレビ系「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子(地味スゴ)」やTBS系「逃げるは恥だが役に立つ(逃げ恥)」など、キュートでデフォルメ感のあるヒロインを描いたドラマが話題を集めている。季節の通り、ドラマ界も「実りの秋」を迎えているようだ。(三品貴志)

 ■ファッションに注目

 日テレ「地味スゴ」(水曜午後10時)は、出版社の「校閲」をテーマにしたお仕事ドラマで、石原さとみがおしゃれ好きでポジティブなヒロインを好演している。

 同局によると、初回(5日)はリアルタイム視聴率12・9%、タイムシフト(録画)視聴率9・7%。第2話(12日)はリアルタイム11・2%、タイムシフト10・1%と推移し、リアルタイムでも録画でも好調を維持している。

 日テレの同じ枠では7月期、北川景子主演「家売るオンナ」が放送。同じ「お仕事もの」の好調な流れを引き継いだことに加え、「地味スゴ」では、1話の中でめまぐるしく変わる石原の豊富なファッションに視聴者の関心も集まっているようだ。

 ■「恋ダンス」話題に

 一方、TBS「逃げ恥」(火曜午後10時)は、男女の奇妙な契約結婚生活を描いたラブコメディーで、新垣結衣と星野源が、互いにどこかズレた“夫婦”役を好演。エンディングで星野が歌う主題歌「恋」に合わせ、出演者が踊りを披露する通称「恋ダンス」がSNSなどを通じて話題になり、無料見逃し配信での再生数が110万回に達した(「TBS FREE」「TVer」「GYAO!」の合算)。

 また、同局によると、初回(11日)のタイムシフト視聴率は10・6%で、リアルタイム視聴率10・2%を上回った。編成幹部は「以前もミステリーなど複雑な構成のドラマは録画でじっくり見られる傾向があったが、『逃げ恥』のようなライトコメディーでは初めての経験」と驚く。

 ■「今期は豊作」

 上智大の碓井広義教授(メディア論)は「今期のドラマは豊作」とした上で、TBS「逃げ恥」について「現状で今期のナンバー1。キャスティングが絶妙で、男女の奇妙な同居生活を新垣さんと星野さんが生真面目に演じることで、コメディーでありながら、不思議なリアリティーとスリリングさが生まれている。今まで見たことのなかったものを見たような『出現感』のあるドラマ」と称賛する。

 また、碓井教授は、「逃げ恥」や「地味スゴ」のヒロインの魅力を「よく練られたせりふや脚本、そして自在な演出が下支えしている」と指摘する。例えば「地味スゴ」では、題材となった校閲の文字が画面上に縦横無尽に登場。「逃げ恥」では、「情熱大陸」や「サザエさん」などテレビ番組のパロディー演出も目立ち、登場人物のひねくれたやり取りが笑いを誘う。


 ■バラエティーに富む作品群

 一方、今期はテレビ朝日が「相棒シーズン15」(水曜午後9時)、「ドクターX ~外科医・大門未知子~」(木曜午後9時)などの人気作を放送し、高視聴率を獲得。定番の強さを発揮している。

 また、フジテレビは亡くなった平幹二朗さんも出演していた月9「カインとアベル」(月曜午後9時)や、学校給食をテーマにした天海祐希主演「Chef~三ツ星の給食~」(木曜午後10時)など幅広いラインナップ。テレビ東京は、市川海老蔵主演の時代劇「石川五右衛門」や、カルト的人気を誇る「勇者ヨシヒコと導かれし七人」などを編成し、異彩を放っている。

 作品のジャンルもいつも以上にバラエティーに富む今期。視聴者の好みが分散している傾向をとらえているともいえるが、中盤から後半にかけて化けるドラマが出現するかもしれない。

(産経ニュース 2016.10.30)

ついにやったね! 祝!! 日ハム 日本一!!!

2016年10月30日 | 日々雑感







【気まぐれ写真館】 秋天の新千歳空港 2016.10.29

2016年10月30日 | 気まぐれ写真館

【気まぐれ写真館】 今月も北海道千歳市「柳ばし」で・・・ 2016.10.29

2016年10月30日 | 気まぐれ写真館

おかーさん曰く、自家製野菜の特製「畑の恵み定食」
(メニューにはありません。悪しからず)



HTB北海道テレビ「イチオシ!モーニング」 2016.10.29

2016年10月30日 | テレビ・ラジオ・メディア














HTB北海道テレビ「イチオシ!」 2016.10.28

2016年10月29日 | テレビ・ラジオ・メディア





















【気まぐれ写真館】 札幌 気温8℃ 2016.10.28

2016年10月29日 | 気まぐれ写真館


テレ朝・TBSは、日テレ「3連覇」を阻止できるか!?

2016年10月28日 | メディアでのコメント・論評



週刊新潮で、「秋ドラマ」についてコメントしました。


「石原さとみ」を「米倉涼子」が踏みつける
「秋ドラマ」視聴率戦争

視聴率3冠を目前にした絶対王者・日テレに最強の刺客が襲い掛かろうとしている。テレ朝は美人外科医に警視庁のはぐれコンビという盤石の布陣を揃え、TBSも大物女優を惜しげもなく投入。秋の夜長を騒々しくする連ドラ“視聴率戦争”の火蓋が切られた――。

 各局の秋ドラマがほぼ出揃ったことで、“視聴率戦争”は今まさに天王山を迎えようとしている。

 スポーツ紙のベテラン芸能記者によれば、

「民放各局にとって、10月改編から年末にかけての最大の関心事は年間平均視聴率に尽きる。なかでも今年は、日テレが3年連続で“視聴率3冠”の座を死守するかが焦点となっています」

 3冠とは、ゴールデンタイム(午後7時〜10時)、プライムタイム(午後7時〜11時)、そして全日(午前6時〜翌午前0時)の3つの時間帯で、トップの視聴率を叩き出すことを意味する。

 その効果は営業面でも絶大で、CM収入が年間100億円近く増えるとまで囁かれる。

 昨年のゴールデンタイムは日テレが12・6%で首位。その後にテレ朝の11・0%、TBSの9・8%が続き、04年から7年連続3冠に輝いたフジは、9・2%で4位に沈んでいる。

 今年の上半期も好調を維持する日テレだが、実は、現在まで続く快進撃を決定づけたのは、他ならぬ“秋ドラマ”だった。

「日テレは11年にフジの牙城を崩して3冠を手にしました。原動力となったのは、最終回で40%という驚異的な視聴率を記録した『家政婦のミタ』です。10月スタートのこのドラマは尻上がりに調子を上げ、年末ギリギリになってフジを僅差で逆転したのです」(同)

 だが、かつて日テレに神風をもたらした秋ドラマは、ここにきて、3連覇を阻む逆風となって猛威を振るい始めたのである。

■テレ朝の独壇場

 戦々恐々としているのは日テレ関係者だ。

「目下、年間視聴率でテレ朝に猛追されているのは間違いありません。サッカーW杯のアジア最終予選の放映権を独占していることも大きい。2時間枠で20%前後の視聴率が期待できますからね。ただ、それ以上に脅威なのは、秋ドラマに大本命の3作品をぶつけてきたことです」

 テレ朝が満を持して送り出したのは、視聴率でも“失敗しない”看板ドラマ「ドクターX」に、来年2月には新作映画の公開を控える「相棒」。そして、シリーズ16作目を迎える「科捜研の女」だ。

 その布陣には、上智大学の碓井広義教授(メディア論)も太鼓判を押す。

「今年の秋ドラマはテレ朝の独壇場でしょう。とりわけ、『ドクターX』は米倉涼子の座長芝居が堂に入っている。見せ場の手術シーンも外連味たっぷりの芝居で飽きさせません。また、敵役の病院副院長に泉ピン子さんを起用したのも大正解でした。シリーズ物で新たな視聴者を獲得しようとすると、若年層をターゲットにしがちです。ただ、今作では泉さんを登場させることで、固定客より年上の層を狙った。好スタートを切ったのも、この戦略が功を奏したからだと思います」


 芸能デスクもこの高評価に異存はない。

「米倉は、いま最も視聴率を稼げる女優です。主婦層を中心に女性からの人気が絶大なので、日中の再放送でも数字が見込めます。今回、テレ朝は1本500万円という破格の出演料でオファーしたそうですが、それでも十分に元が取れる」

 結果、「ドクターX」の初回は20・4%と、今年の民放の連ドラで最高の視聴率をマーク。ちなみに「相棒」の初回は15・5%だったが、

「業界関係者の間では、“過去の実績と比べて物足りない”という声も上がった。ただ、新作のほとんどがひとケタ台に喘ぐ他局からすれば、うらやまし過ぎる数字です」(同)

■放送事故寸前

 テレ朝の盤石ぶりが目を引く一方、日テレに一矢報いようと必死なのは“ドラマのTBS”も同じだ。

 初回が「相棒」に次ぐ13・1%だった、織田裕二主演の「IQ246」は、高い知能指数を誇る貴族の末裔が難事件を解決に導くというストーリーである。

 とはいえ、アラフィフの織田が、妙に鼻にかかる声で変わり者のボンボンを演じる姿には、失笑を禁じ得ないとの声も。

 コラムニストの林操氏は、

「あのキャラクターは放送事故寸前でしたね。今回のドラマを機に織田を笑い者にしていいことになったんだな、と感じました。本人は大真面目なのでコメディではありませんが、大した伏線はないので本格的なミステリーとも言えない」

 だが、前出の日テレ関係者は警戒を緩めない。

「9年ぶりにTBSの連ドラに主演する織田に加え、NHKの朝ドラで大ブレイクした土屋太鳳とディーン・フジオカというキャスティングからは、局の本気度が窺える。『古畑任三郎』と『リーガルハイ』を足して2で割ったようなドラマですが、豪華な出演陣に惹かれて観てしまう視聴者は多いと思います」

■大物起用のTBS

 さらにTBSは、刺客として新垣結衣を放つ。

 先の芸能記者によれば、

「少女漫画が原作の『逃げるは恥だが役に立つ』は完全な“新垣枠”。独身サラリーマンと契約結婚する、大学院卒ながら職ナシのヒロインを演じています。昨年、彼女が主演した『掟上今日子の備忘録』は、ライトノベルが原作で脚本家は今回と一緒。新垣とポップなストーリーの組み合わせには一定数の男性ファンがついていて、初回も10・2%とまずまずの好発進でした」

 TBSの大物起用はこれだけではない。

 トドメは菅野美穂が第1子出産後、初めて主演した連ドラ「砂の塔」である。家族で憧れのタワーマンションに越してきた主婦という役どころで、松嶋菜々子が脇を固めることも話題となっている。

「菅野は『あさチャン!』や『ビビット』といった情報番組だけでなく、バラエティ番組の『モニタリング』や『オールスター感謝祭』にまで出演するなど、番宣に余念がありません。NHKの『あさイチ』に登場した際には、これまで口を閉ざしてきたヌード写真集についても触れるサービスぶり。ただ、初回の視聴率は9・8%でわずかに2ケタには届かなかった」(同)

 前評判はともかく、内容には少々難ありで、タワマンの何階に住むかでヒエラルキーが決まるという設定もあまりに紋切型。EXILEの岩田剛典が菅野を抱きかかえるシーンで唐突にスローモーションになる辺りは、ひと昔前の韓流ドラマのようだ。もっとも、TBSが菅野を主演させた背景には、“打倒日テレ”以外の皮算用もあって、

「TBSの宿願は『半沢直樹』の続編を制作すること。菅野に復帰の場を用意して、堺雅人に恩を売りたいのでしょう。目当ての俳優を口説くために、親族や同じ事務所の役者をバーターに使うことは珍しくありません」(芸能プロ関係者)

 もし実現すれば、その恩恵は“倍返し”どころではあるまい。「半沢直樹2」の影は、来年以降も日テレを脅かすことになる。

(週刊新潮 2016年10月27日号)

石原さとみのフルスロットル演技「校閲ガール」

2016年10月27日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評



日刊ゲンダイに連載しているコラム「TV見るべきものは!!」。

今週は、日テレのドラマ「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子」について書きました。


石原さとみのフルスロットル演技が
すべてを凌駕している

水曜ドラマ「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子」(日本テレビ系)の舞台は、春クールの「重版出来!」(TBS系)と同じ出版界。しかも出版の仕事としてすぐ思い浮かぶ編集ではなく、校閲という設定が特色だ。

開始前、「校閲は果たしてドラマになるのか?」という不安はあった。基本的には目立つ存在ではない。本や雑誌の原稿の誤字・脱字、事実誤認などをチェックする、重要ではあるが縁の下の力持ち的役割だからだ。

しかし始まってみれば、石原さとみのフルスロットル演技がすべてを凌駕している。校閲の守備範囲を逸脱するような仕事ぶりも、リアリティーうんぬんの意見はあるだろうが、過剰と純情こそが悦子のキャラクターだ。

先週も、校閲部の先輩・藤岩(江口のりこ)を「鉄のパンツ」とからかった若い女性社員たちを、悦子が校閲で得た知識を援用して撃退していた。悦子の武器は元気だけではないのだ。

近年の石原は、松本潤や山下智久の相手役、松下奈緒の妹役といった立場で、完全燃焼とは言えなかった。だが今回は、「鏡月」のCMで表現した大人の女性の可愛らしさも、「明治果汁グミ」で見せたコメディエンヌの才能も、思う存分発揮できる。もしかしたらこのドラマ、石原の“セカンドデビュー”ともいえる、代表作の一本になるかもしれない。

(日刊ゲンダイ 2016.10.26)


やっぱり異次元、大谷選手

2016年10月26日 | 日々雑感



広島では、日ハムの連敗だった日本シリーズ。

このまま王手か、カープ。

いやいや、必ずや札幌で巻き返し、と思っていた。

しかし、試合経過は結構シビアで、逆転と同点が続き、おいおい大丈夫か、という10回裏。

やっぱり異次元の大谷がキメてくれました。

すごいなあ、大谷。

いやあ、よかった、よかった。

姿を現した新校舎 2016.10.25

2016年10月26日 | 大学



”激戦地”日曜19時に参戦する「フルタチさん」

2016年10月25日 | メディアでのコメント・論評



週刊新潮で、フジテレビが11月に開始する新番組「フルタチさん」についてコメントしました。


「真田丸」相手では勝ち目がない「フルタチさん」

この3月で12年務めた「報道ステーション」のキャスターを降板し、最近ではバラエティに引っ張りだこの古舘伊知郎(61)。

「面白いことを言いたい人間なのに、それを一切封印されたのがキツかった……」

と、降板から半年が過ぎてもいまだ続ける“報ステ”への恨み節。10月7日放送の「さんまのまんまSP」(フジテレビ系)にゲストとして出演したときのこと。

「よっぽど報道番組はストレスだったんでしょうね。そこから解き放たれて、水を得た魚のような軽妙なしゃべりでした。もっとも、よくよく聞くと、12年間も報道番組をやったわりには、中身のある話ではなかったのですが」

とは上智大学の碓井広義教授(メディア論)だ。


その古舘に念願のレギュラー番組が決まった。2時間枠のトーク番組「フルタチさん」(日曜19時、フジ系)だ。

他局を見渡せば、19時台はTOKIOの「ザ! 鉄腕! DASH‼」(日テレ系)、「モヤモヤさまぁ~ず2」(テレ東系)という人気番組に加え、TBSではロンドンブーツ1号2号のクイズ番組も復活、テレ朝は人気番組「アメトーーク!」のゴールデン版をスタートする。さらに20時からはNHK大河「真田丸」という激戦地。

「視聴者が離れたフジというハンデに加え、他局は若い人向けの番組が多いので、『フルタチさん』の視聴者は高めの年齢層になるでしょうね。しかし、その層は20時になったらNHKに。決して楽じゃない」(同)

上手くいかなければ、フジへの恨み節も始まるか。

(週刊新潮 2016年10月20日号)


書評した本: 勝目 梓 『異端者』ほか

2016年10月24日 | 書評した本たち



「週刊新潮」の書評欄に書いたのは、以下の本です。

勝目 梓 『異端者』
文藝春秋 1836円

今年84歳を迎えた官能文学の大御所が、タブーとされる異端の性愛を描く。主人公は、南房総の古いリゾートマンションで暮す新垣誠一郎。老境を迎えた男が、自ら封印してきた過去の秘事をふり返る。行間から立ち昇るエロスの香りは、勝目マジック健在の証しだ。


坂口昌弘 
『ヴァーサス日本文化精神史~日本文学の背景』

文學の森 2430円

空海と親鸞、芭蕉と一茶、小林秀雄と山本健吉など、16の対比(ヴァーサス)によって日本文化・文学を貫く精神を探ろうという大胆な試みだ。たとえば釈迦とキリストの章では慈悲と愛、さらに「戒」が検討されていく。異質性と同質性から見えてくるものは何か。

(週刊新潮 2016.10.20号)

“ちょっとダーク”な味わいの秋ドラマ

2016年10月23日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム


秋ドラマがスタートした。『ドクターX』、『相棒』、『科捜研の女』(いずれもテレビ朝日系)といった安心の定番もいいが、ひと癖ある新作も健闘している。共通するのは、“ちょっとダーク”な秋の味だ。


●タワマンが舞台の“階層サスペンス”『砂の塔~知りすぎた隣人』

すごいぞ、タワマン。怖いぞ、タワマン。金曜ドラマ『砂の塔~知りすぎた隣人』(TBS系)の舞台である、50階建ての高級タワーマンションのことだ。

引っ越してきたばかりの主婦・亜紀(菅野美穂、好演)は、高層階に住むセレブ主婦たちの言動に戸惑っている。上の階ほど部屋の値段が高いから、住んでいる階数でその家庭の年収や生活レベルも分かるというのだ。

特に、リーダー格である社長夫人・寛子(横山めぐみ)の”選民意識”がすさまじい。なにしろ低層階の住人を指して、「私たちとは”民度”が違う」とまで言い放つのだから。

地位や財産や職業などで区分される「社会階層」と、建築物の階数を指す「階層」を、まんま重ねて見ているのだ。おいおい、逃げ場のない集合住宅で階層差別って・・・。

背景には格差社会、階層社会といわれるこの国の現状があるが、このドラマ、もしかしたら日本初の“階層サスペンス”か!?

一方、タワマンの周辺では幼児の連続失踪事件が起きている。いずれも子育てをおろそかにした母親たちの子供が被害者だ。

ドラマの冒頭、いきなり犯人かと思わせるような描写で登場したのが、フラワーアレンジメントのプロ・弓子(松嶋菜々子)である。しかも、高級高層マンションで隠しカメラって、シャロン・ストーン主演の映画 『硝子の塔』か(笑)。

謎めいたアルカイックスマイルと、何もかも知っていそうな黒幕風たたずまい。じっと住人たちを見つめる表情が、結構怖い。例の家政婦を彷彿とさせて、松嶋、久方ぶりのハマリ役だ(広告代理店の吉良部長には困った)。

脚本は、『黒の女教師』や『アリスの棘』などを手がけてきた池田奈津子のオリジナルだ。ダークヒロイン物を得意とするその手腕には、大いに期待したい。ただし、あまりにもエグすぎると、視聴者も引いてしまうだろう。毎回の“後味”も、脚本家の芸のうちだ。


●テレビ界・芸能界を巧みにデフォルメ『黒い十人の女』

面白い題材を掘り起こしたものだ。ドラマ『黒い十人の女』(日本テレビ系)である。ベースは1961年に公開された市川崑監督の同名映画。このテレビ版は、9人もの愛人を持つドラマプロデューサーが、裏で手を組んだ女たちと対峙するブラックコメディだ。

今回、主人公であるプロデューサー・風松吉役には船越英一郎が起用された。愛人たちの間を遊泳する姿が、妙に(笑)、いや見事にハマっている。55年前の映画では、英一郎の父・船越英二(『時間ですよ』で銭湯の番台に座っていた姿も懐かしい)が飄々と演じていた。

また、「十人の女」たちのキャスティングも、見どころのひとつだ。一筋縄ではいかない、したたかな妻が若村麻由美(こういうの、上手いなあ)。愛人として水野美紀(舞台女優)、佐藤仁美(ドラマAP)、MEGUMI(脚本家)、成海璃子(テレビ局受付嬢)、平山あや(メイク)、そしてトリンドル玲奈(若手女優)もいる。女同士のバトルと、不思議な共闘が笑える。

それにしても船越P、モテ過ぎだろう。しかも仕事がらみの女性にばかり、手を出し過ぎ!

脚本は、『素敵な選TAXI(センタクシー)』(フジテレビ系)で、「第3回市川森一脚本賞」奨励賞を受賞したバカリズムだ。単発ドラマ『かもしれない女優たち』(同)も、なかなかの出来だった。

このドラマでは、原作の基本設定(9人の愛人&妻という「黒い十人」)を生かしながら舞台を現代に移し、今どきのテレビ界・芸能界の生態を巧みにデフォルメして描いていく。

先日も、水野美紀演じる舞台女優の活動を「情熱大陸」風に見せて、思いきり笑わせてくれた。また、愛人の立場に不満をもつ成海とトリンドルが、それぞれに若い男との浮気(?)を敢行。特に成海は、相手がまたもや妻帯者で大騒動となった。

今年は、芸能界を含む現実世界で、不倫騒動が続発している。せっかくのフィクション、また午前零時近くの深夜ドラマであることを踏まえ、脚本も、演出も、一層ディープに攻めてもらいたい。

(Yahoo!ニュース「碓井広義のわからないことだらけ」 2016.10.22)

読んでも読んでも読み切れないシアワセ

2016年10月22日 | 本・新聞・雑誌・活字



書評界(?)の巨匠、<狐>こと村山修さんが亡くなったのは2006年のことだ。もう10年が過ぎたわけだが、今でも時々、本棚から取り出しては読んでいる。

たとえば、「単行本未収録書評を増補」して出された、『もっと、狐の書評』(ちくま文庫)も、そんな一冊だ。

「日刊ゲンダイ」に<狐>名義で書かれたものは、その後、何冊もの単行本になっている。この本では、それらから選抜した書評に「未収録もの」を加え、「オリジナル編集」しているのだ。その数、150本。

基本的には、それぞれ約800字1本勝負だ。決して長くはない。いや、短いはずなのに、かなり”読みで”がある。中身が濃い。

それは、本の内容を凌駕するような、山村さんの見識や博識が背景にあるからだ。もっと乱暴にいえば、選ばれた本、それ自体がもつ価値以上のものが、山村さんによって付加されたような・・・。

いつも、<狐>の書評の「書き出し」に唸っていた。どきどきした。書評の、その先が読みたくなった。

「読めども読めども読み切れない」 (山口昌男『「敗者」の精神史』)

「おそろしい古典である」 (小西甚一校注『一言芳談』)

「大学紀要的(アカデミック)ではない。ずっと実践的(プラクティカル)」  (田中優子『近世アジア漂流』)

「伝記文学の粋である」 (ツヴァイク『ジョゼフ・フーシェ』)


山村さんの書評を読んで、そこで取り上げられている本を、ばりばり読んだかといえば、なかなかそうはいかない。

ジャンルや内容が、興味・関心から遠いものもあれば、難しそうで敬遠したくなるものも多い。でも、読みたくなったし、読んだような気なった。そういう本の存在を知るだけでも収穫だった。

この本の中の、初収録の文章の、次のような一節が好きだ。

   「書評者は伝達者だと思う。
    肝心なのは、
    本を閉ざして自己主張することではなく、
    本を開いて、
    そこに書かれていることを
    伝えることのはずです」

<狐>の書評は、まさに、そのようにして、ここにある。