碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

2021年の大晦日に

2021年12月31日 | 日々雑感

 

 

2021年の大晦日です。

 

この1年、

大変お世話になりました。

 

ありがとうございます!

 

来年も、

どうぞよろしく

お願いいたします。

 

碓井広義

 

 

2021年3月刊

 

2021年10月刊

 


言葉の備忘録254 人生への・・・

2021年12月30日 | 言葉の備忘録

駒沢公園 2021.12.26

                                                                                      

 

 

人生への、

人の悲しき十字架への

全(まった)き肯定から生まれてくる

尊き悪魔の温かさは

私を打つ。

 

 

坂口安吾「ドストエフスキーとバルザック」

 

 

 


【気まぐれ写真館】 TOKYOから来た「ミライトワ」

2021年12月29日 | 気まぐれ写真館

TOKYO2020 硬式野球ボール


ガッキーからの「年末のご褒美」アサヒ生ビールCM  

2021年12月28日 | 「日経MJ」連載中のCMコラム

 

 

年の瀬に感じる温かさ

アサヒ生ビール「年末もおつかれ生です」篇

 

気がつけば、もう年末。やり残したことは山積みだが、「よく頑張った!」と自分をホメたい気分もある。

もしもこんな時、新垣結衣さんがねぎらってくれたら、かなり嬉しい。アサヒ生ビールの新CMは、そんな1本だ。

新垣さんが「人と人に距離ができやすい時代、温もりの大切さを感じた1年」と語りかける。

リモートワークも悪くないが、どこか孤立感があるのは確かだ。無理をしているつもりはないけど、オフィスで同僚と交わす何気ない会話や、行きつけだった店のざわめきが時々恋しくなる。

1986年に登場し、多くのファンがいた生ビール。そのマイルドな味わいが復活した。

しかも、「日本の皆さん、おつかれ生です」というガッキーの笑顔とセットだ。これは年末のご褒美だろう。

バックに流れる曲は、竹内まりやさんの「元気を出して」だ。37年前、薬師丸ひろ子さんに提供しただけでなく、自身のカバー曲としてもヒットした。

失恋した友人を、やさしく励ます女の子の言葉が時代を超えてあたたかい。

(日経MJ「CM裏表」2021.12.27)

 


【気まぐれ写真館】 信州から来た「渕東なぎさ」

2021年12月28日 | 気まぐれ写真館

信州・松本のアルピコ交通

上高地線のイメージキャラクター「渕東(えんどう)なぎさ」


「婦人画報」に、名作ホームドラマについて寄稿

2021年12月27日 | メディアでのコメント・論評

婦人画報 2022年2月号

 


【気まぐれ写真館】 石垣島から来た「ゲンキくん」

2021年12月27日 | 気まぐれ写真館

八重山ゲンキ乳業のキャラクター、ゲンキくん

 


【書評した本】  『筑紫哲也「NEWS23」とその時代』

2021年12月26日 | 書評した本たち

 

 

「筑紫哲也」から続く、

 もの言うキャスターのDNA

 金平茂紀

『筑紫哲也「NEWS23」とその時代』

 講談社 2200円

 

1989年、TBSで始まったのが『筑紫哲也NEWS23』だ。個人名の冠がついた定時ニュースの番組は日本初だった。筑紫は後にがんの治療に専念するまで、実に18年半もメインキャスターを務めた。  

報道番組のディレクターやプロデューサー、さらにモスクワ支局長も歴任した著者が、この番組の編集長となったのは94年。8年にわたって筑紫と並走してきた。当時の関係者への新たな取材も加えて書かれた本書には、「秘話」とも言うべき生々しいエピソードが満載だ。  

中でも96年の「TBS・オウム・ビデオ事件」は、番組と筑紫にとって最大の危機だったと著者は言う。坂本弁護士一家殺害事件をめぐって、TBSが放映前のインタビューVTRをオウム真理教幹部に見せていた事実が発覚したのだ。

「TBSは今夜、今日、私は、死んだに等しいと思います」と語った筑紫。著者は局内の混乱や人心荒廃の実態も明かしながら、筑紫の心情に迫っていく。  

就任の際、筑紫がこだわったのが「編集権」だった。どんな出来事をニュースとして選び、それをどのように伝えるか。その決定権を持つことで、自身と番組の責任を明確にしようとしたのだ。

企業としてのTBSにとって不利な事実であっても徹底的に追及する。その姿勢は、2005年に楽天がTBSの株式を大量取得した、敵対的企業買収事件の「自社報道」でも発揮された。  

筑紫が亡くなったのは08年秋だ。著者はその2年後から始めた『報道特集』のメインキャスターを現在も続けている。「シリーズ秘密保護法案」など、時の政権と対峙するテーマにも挑んできた。

権力を監視する役割を担おうとする意志。何より金平茂紀という、最近では珍しくなった「もの言うキャスター」の存在が大きい。そこに、かつて『筑紫哲也NEWS23』が見せてくれた報道の矜持と、「筑紫哲也のDNA」を感じる人は少なくないはずだ。

(週刊新潮 2021年12月23日号)


【気まぐれ写真館】 クリスマスの椿

2021年12月25日 | 気まぐれ写真館

2021.12.25


アエラドットで、「ネットでの誹謗中傷」について解説

2021年12月25日 | メディアでのコメント・論評

 

 

神田沙也加さん交際相手、

前山剛久への誹謗中傷

「叩きのエンタメ化」懸念 

聖子の紅白出場で荒れるのか

 

女優・神田沙也加さん(享年35)が18日、宿泊していた札幌市内のホテルで急逝したショックがいまだ残る中、沙也加さんと真剣交際していたことを明かした俳優・前山剛久(30)に対するインスタグラムやツイッターなどでの非難、誹謗中傷の投稿が相次いだ。

こうしたネット上での過剰反応は何故、沸き起こって来て、どう対処するべきなのか。また、記事の配信時点で、母の松田聖子がNHK「紅白歌合戦」に出場する可能性が高まっているとの報道もある。

出場した場合に懸念されることを、元上智大学文学部新聞学科教授でメディア文化評論家の碓井広義氏に聞いた。【AERAdot.編集部・上田耕司

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ツイッターを見てみると、前山さんに対し今後を応援する声も多い一方で、誹謗中傷も数多く混じり、渾然一体化している。

沙也加さんの遺作となったミュージカル「マイ・フェア・レディ」で共演していた前山さん自身のインスタグラムには誹謗中傷のコメントが相次ぎ、コメント欄を閉鎖した。

何故、こうした投稿が後を絶たないのか。その心理を碓井氏は、こうひも解く。

「ネットでは、誰かを叩くことが、娯楽もしくは遊びになっているんですね。だから、いつも標的となる人物を探している。そして、エンタメ化していく。誹謗中傷することが爽快なわけです」

どこかで聞いたり、見たり、読んだりしたことをベースにし、叩いていく。

「前山さんを悪者に設定し、叩くことで、自分は正義の人、強い人のように思えるわけです。悪者をやっつけている自分に対する自己評価が爆上がりする。何でもできるという神のごとくの全能感と日常生活ではなかなか得られない快感を味わえるという心理があります」

■芸能人が標的になりやすいワケ

悪者に設定するのは実は誰でもいいが、何もないのに選んでも叩く者同士で共有化できない。自分の”叩き”がネットで拡散しない。ゆえに、必然的に芸能人や有名人、事件の当事者に標的が向かいやすくなる。

「匿名での書き込みというシステムに乗っかって、安全地帯にいながら、溜飲を下げているつもりになる。一種のゲーム感覚かもしれません」

だが、ネットでの書き込みであっても「報道と同じだ」と、碓井氏は指摘し、こう続ける。

「デジタルの時代は、横並びで等価。メディアと書き込みの上下関係がなくなってきています。だから、報道と同じような責任が生じてもおかしくない。実際、そのような裁判所の判決も下っています。自分が発した言葉が自分にブーメランのように返って来る。場合によっては、法的責任も引き受けなければならなくなる。匿名であっても、技術的に誰が書き込んだかを特定できるようにもなってきました。でも、(書き込む人は)ネットに書き込んだくらいで自分が罰せられるとも思っていない。その辺の認識の甘さというのがありますね」

神田沙也加さんと前山さんのケースでは、どうなのか。

「沙也加さんのホテルの部屋には手紙が残されていたと報じられていますが、その文面は沙也加さんと前山さんとの関係において、沙也加さんの側から書かれたものです。それをもって、前山さんを悪者にしていくというのは違うのではないかと思います。恋愛というのは本当に当事者同士にしかわからないもので、たとえ親や親友でもわからないものですから」

■「批判」と「非難」と「誹謗中傷」

小室眞子さんと夫の小室圭さんの10月26日の結婚記者会見でも「誹謗中傷」という言葉が出て、議論が巻き起こった。

眞子さんは「一方的な憶測が流れるたびに、誤った情報がなぜか間違いのない事実であるかのように取り上げられ、いわれのない物語となって広がっていくことに恐怖心を覚えるとともに、辛く悲しい思いをいたしました」と語った。

夫の小室圭さんは「誹謗中傷が続いたことにより、眞子さんが心身に不調をきたしたことを、とても悲しく思います」と、「誹謗中傷」という言葉を使った。

碓井氏は「批判」と「非難」と「誹謗中傷」は、それぞれ意味が違うと言う。

「『批判』は字のごとく、対象を批評して判定すること。『非難』は誰かがしでかした失敗や間違いをベースに、責めたり、咎めたりすること。『批判』も『非難』も一応の根拠があります。ところが『誹謗中傷』は事実に基づかない、根拠のないことであっても、傷つけたくて書き込んでいるので、当事者が読んだら死にたくなるかもしれない。そんなことを言いたい放題いうのは罪深過ぎる」

■聖子「紅白出場」で荒れる可能性

沙也加さんの家族や知人にまで誹謗中傷は広がっている。母の松田聖子は、執筆時点では大晦日のNHK「紅白歌合戦」への出場の可否が明らかにされていない。NHKサイドは「聖子さんサイドのお気持ちを最大限に尊重していく方針」としているが、出場する可能性が高いとも報じられる。民放関係者はこう見る。

「今年の紅白は、出場歌手が弱いと言われています。50回連続で出場していた五木ひろしさんや桑田佳祐さんも出ないし、高齢者が楽しめそうにない。松田聖子さんがもし、出場するとしたら、それは目玉になりますよ。だからNHKとしても、何とか出演してもらいたいというのが本音では」

もし、出場するとしたら何の曲を歌うのか、ということもネット上では話題になっている。

「聖子さんは、沙也加さんが亡くなった当日18日夜のクリスマスディナーショーをやり切っているんですよ。娘への思いを胸に歌うのでしょうね。生の聖子さんを見たいというムードが高まっています。ただし、瞬間視聴率は意外や、聖子さん以外の出場歌手が高いということはあるかもしれません。そんなことを含めて紅白の話題が加速する。生の聖子さんを見たいと、紅白ばかりではなく、来年以降の聖子さんのディナーショーなども客で一杯になると思いますよ」(前出・民放関係者)

前出の碓井氏はこう話す。

「聖子さんが紅白に出たら出たで、彼女の一挙手一投足をやり玉に挙げ、叩く人たちが現れるでしょう。ネットが荒れる可能性は含まれています。とはいえ、ネット社会は罪深いですが、今さらネットのない時代にも戻れません」

結局、生き残った者が責められるのは世の常なのか。その上で、こう警鐘を鳴らす。

「投稿を書いて、ポーンとキーボードを押す前にちょっと一拍置こうよと言いたい。あなたが投げつけようとしている言葉を、そのままあなたが受けたとしたらどんな気持ちになるか、ということは考えてもらいたいですね」

(AERAdot. 2021.12.24)


【気まぐれ写真館】 クリスマスは「トレーシー・アイランド」で!

2021年12月25日 | 気まぐれ写真館

今年のクリスマスプレゼントは、

地球のどこかの洋上にある

トレーシー・アイランド(サンダーバード秘密基地)

2022年に日本語劇場版『サンダーバード55/GOGO』公開!

 


産経新聞で、「バラエティー番組とコンプラ」について解説

2021年12月24日 | メディアでのコメント・論評

 

 

バラエティー番組にコンプラの波 

罰ゲームや容姿いじりダメ?

芸人のビンタや体を張った罰ゲーム、タレントの容姿いじり…。テレビのバラエティー番組で行われてきたこうした表現が過渡期を迎えている。

暴力や性的なことに関する言動に厳しい目を向ける意識が近年高まっているためで、放送倫理・番組向上機構(BPO)の青少年委員会では現在、「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」について審議している。一方でユーチューブなどの投稿動画では、過激な表現が多くの閲覧数を得ている。

テレビにおける表現の自由はどこまで許されるのか。(道丸摩耶)

                 ◇

 ◆芸人戸惑い

「体を張ってリアクションをしているのに、(タライ落としのタライの位置が)年々低くなってる」

11月11日に放送された「ダウンタウンDX」(日本テレビ系)で、バラエティー番組の変化をそう明かしたのは、お笑いコンビ「霜降り明星(みょうじょう)」だ。同番組では「2021年大激変! この先どうなるバラエティー界!」とのテーマで芸人がトーク。

これまでやってきたお笑いの表現について、スタッフから「コンプライアンス(社会的な規範意識)的にだめ」と言われることが増えたと訴えた。

背景には社会環境の変化がある。企業のコンプライアンスに加え、セクシュアルハラスメント(性的嫌がらせ)などのハラスメント行為に対する世間の目も厳しくなっている。テレビの制作現場にもこうした「コンプラ重視」の波が広がり、作り手側も対応を迫られているのだ。

若者がニュースやトレンドを語り合うトークバラエティー「超無敵クラス」(日テレ)の担当プロデューサーは10月の番組開始に先立つ説明会で、新番組のイメージを、ときに赤裸々な恋愛経験の話が飛び出した過去のヒット番組「恋のから騒ぎ」になぞらえながらも、テーマや内容は現代のコンプライアンスに合わせていると説明した。

 ◆ネットは過激ネタ

今年8月、放送倫理上の問題に対応するBPOの青少年委は「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」を審議対象とすることを決めた。

特定の番組が対象ではないが、ある民放ディレクターは「出演者に痛みを与える罰ゲームやドッキリの企画で笑いを取ることを問題視しているのだろう」と解釈する。

青少年委は前身組織だった平成12年、「めちゃ×2イケてるッ!」(フジテレビ)の「しりとり侍」というコーナーを、「大勢で一人をたたき、仲間で笑いものにする場面はいじめの形にきわめて近い」と指摘。まもなくこのコーナーは打ち切られた。

19年には、罰ゲームに代表される「出演者の心身に加えられる暴力」と「性的な表現」に対し、青少年への影響を考慮して表現を検討するよう見解を出した。その後も各局のさまざまな番組が審議されたり、審議されないまでも見解が示されたりしてきた。

こうした社会の流れを受け、番組にも変化がみられる。日テレは今年、高視聴率を記録してきた大晦日(みそか)恒例の「笑ってはいけない」シリーズの放送を休止する。

同局の杉山美邦社長も出演者のダウンタウンの松本人志も、BPO審議との関連性を否定するが、同番組は過去に青少年委から問題視されたこともある。

民放関係者は「休止の判断に、社会の変化が影響していることは間違いないだろう」とみる。

テレビから派手な罰ゲームなどの表現が消える一方で、インターネットの投稿動画では過激なネタが閲覧数を稼いでいる。

あるドラマプロデューサーは「見たいものを見るネット動画と、リモコンを押せば映るテレビ番組は違う」と話し、「本格的な刑事ドラマを作るときも、地上波ではむごたらしい死体を映せないなどの規制があるが、有料の衛星放送では可能だ」と明かす。

 ◆社会インフラに

元上智大教授でメディア文化評論家の碓井広義氏は「あらゆる表現は自由である方がいい」と前置きした上で、痛みを伴う笑いが問題視される理由として、社会通念の変化に加え、とがった番組が減ったテレビが、社会インフラとして安全、安心のメディアと認識されていることを挙げる。

その上で、「舞台や映画、ネットとさまざまな表現の場がある中、テレビという表現の場でどんな笑いを見せるかを考えないといけない」と制作側に注文をつける。

(産経新聞 2021.12.22)

 


【気まぐれ写真館】 今年も「雪だるま」ペア、登場!

2021年12月24日 | 気まぐれ写真館


2021年のテレビドラマ界を振り返る

2021年12月23日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

TV見るべきものは‼

【年末拡大版】

2021年のテレビドラマ界を振り返る

 

緊急事態宣言の延長と解除。東京オリンピックの開催。そして総選挙も行われた2021年。気分はどこか昨年と地続きのままだったが、ドラマに関しては、なかなか豊かな一年となった。

■ 秀逸な「介護ドラマ」だった「俺の家の話」

1月クールの注目作は「俺の家の話」(TBS系)だ。観山寿三郎(西田敏行)は能楽の人間国宝。脳梗塞で倒れて車いす生活となる。プロレスラーだった長男の寿一(長瀬智也)が介護のために実家に戻ってきた。

ヘルパーの志田さくら(戸田恵梨香)と共に父の面倒をみるが、目を離すこともある。

トラブルが発生するのはそんな時だ。「最近は調子がよかったから、まさか」と言い訳する寿一を、さくらが「介護にまさかはないんです!」と叱る。

介護したり、されたりするのが当たり前の時代に、つい目を背けているのが介護問題だ。要介護や要支援の規定からシルバーカー(高齢者用手押し車)利用者の心理までを、笑って見られる物語に仕立てたのは、脚本の宮藤官九郎。異色の「ホームドラマ」であると同時に、秀逸な「介護ドラマ」となった。

■ 既成概念を揺さぶった「大豆田とわ子と三人の元夫」

坂元裕二脚本「大豆田とわ子と三人の元夫」(カンテレ制作・フジテレビ系)が始まったのは4月だ。とわ子(松たか子)と、元夫の田中(松田龍平)、佐藤(角田晃広)、中村(岡田将生)の日常が、じんわりとユーモラスに描かれた。

物語を駆動させていたのは登場人物たちの「関係性」と「セリフ」だ。たとえば勝手な持論を披露する中村に、とわ子が言う。

「私が言ってないことは分かった気になるくせに、私が言ったことは分からないフリするよね」

さらに坂元は、恋愛や結婚の既成概念を揺さぶってきた。「恋愛になっちゃうの、残念」と告白したのは、とわ子の親友・かごめ(市川実日子)だ。自ら選んで1人で生きること。夫婦や恋人の関係を超えて2人で生きること。さらに、大切な亡き人とも一緒に生きていくこと。それらを丸ごと肯定してみせるドラマだった。

夏には「ハコヅメ~たたかう!交番女子~」(日本テレビ系)があった。ハコヅメ(交番勤務)の女性警察官、藤聖子(戸田恵梨香)と川合麻依(永野芽郁)のバディー物だ。藤は刑事課の元エースだが、川合は勤務についた途端、「もう辞めよう」と思ってしまうヘタレ。それが藤と組んだことで変わっていく。いわば川合の成長物語である。

しかも全編、肩の力の抜けた笑いに包まれていた。藤の強さを「マウンテンメスゴリラ」とからかう同僚。川合のことを指す「ナチュラルボーン・ヘタレ」といったセリフ。脚本の根本ノンジの遊び心がさえる。永野はコメディーとシリアスの絶妙なバランスの演技を見せたが、自在に受けとめてくれる戸田の存在が大きい。

戸田の胸を借りて、のびのびと跳ね回る永野が、藤の背中を追いかける川合と重なって見えた。

■ 「最愛」は出色の出来

10月クールでは今月17日に最終回を迎えた「最愛」(TBS系)が出色の出来だった。思えば現代のドラマ作り、特にサスペンスは大変だ。SNSのインフラ化による「一億総考察の時代」。先読み、深読み、裏読みがネットにあふれ半端な展開は許してもらえないからだ。

その意味で、奥寺佐渡子と清水友佳子の脚本は見事だった。隅々にまで気を配った物語構成で、見る側に最後までシッポを掴ませなかったのだ。その語り口はフェアで、整合性と納得感のあるものだった。

吉高主演のサスペンスとしては、昨年の東野圭吾原作「危険なビーナス」が記憶に新しい。しかし物語全体の緊迫度、そして吉高の演技と美しさは今作のほうが断然勝っていた。プロデューサーは新井順子、ディレクターが塚原あゆ子。「アンナチュラル」や「MIU404」を手掛けてきた2人が新たな名作を生んだのだ。

オミクロン株も気になる来年、どんなドラマが見られるのか。「日本沈没」や「ハコヅメ」のような小説や漫画を原作にしたドラマも悪くない。だがその一方で、人物と物語をゼロから創造した、オリジナルドラマの秀作が1本でも多く登場することを願っている。


(日刊ゲンダイ「TV見るべきものは‼」2021.12.22)

 

 


【気まぐれ写真館】 夕暮れの帰投

2021年12月22日 | 気まぐれ写真館

2021.12.22