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ブラックホールの大きさを測るには? 光でも逃げ出せなくなる境界“事象の地平面”までらしいです

2024年05月08日 | ブラックホール
ブラックホールについての記事などを読むと、ブラックホールの大きさは“太陽の○倍の質量”というように、質量で表されているのを見ることが多いと思います。

例えば、私たちが住む地球が属している天の川銀河の中心には、“いて座A*(いてざエースター)”という超大質量ブラックホールが存在していて、その質量は太陽の約400万倍の質量を持っていると考えられています。

とても大きそうだということは何となく分かりますが、半径でいうとどれくらいになるのか想像は付きませんね。
Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center; background, ESA/Gaia/DPAC
Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center; background, ESA/Gaia/DPAC


重力で潰れたコンパクトな天体

太陽のおよそ8倍以上の質量を持った恒星が、進化の最終段階で鉄の中心核を作ると、鉄は宇宙で最も安定した元素なので、それ以上は核融合を行えなくなってエネルギーを作り出せなくなります。

恒星は、中心核で起こる核融合反応により自らエネルギー(外向きの圧力)を生成することで、重力(内向きの圧力)によって潰れるのを回避しています。
なので、核融合ができなくなると重力によって潰れる“重力崩壊”を起こすことになります。

この重力崩壊によって中心核の密度が十分高くなると、外側から落ちてくる物質を中心核で跳ね返して“II型超新星爆発”を起こすと考えられています。

そして、爆発の後に残されるのがコンパクトな天体です。
重力崩壊に対抗できる力が存在せず、無限に潰れてしまった天体はブラックホールとなり、ブラックホールになる手前で重力崩壊が停止した天体は中性子星となります。

中性子星は主に中性子からなる天体で、半径10キロ程度の表面が存在し、そこに地球の約50万倍の質量が詰まっていています。
では、ブラックホールはどうなんでしょうか?


光でさえ逃げ出すことができない境界面

ブラックホールにある程度以上近づくと、光でさえ逃げられなくなります。
そのような、内側に入った物体やエネルギーが、たとえ光速であっても再び外側に逃げ出すことができない境界面このとを“事象の地平面”と呼び、ブラックホールでは光でも逃げ出せないという性質の根幹となっています。

そして、事象の地平面の半径のことを“シュバルツシルト半径”と言います。
ブラックホールの大きさは、このシュバルツシルト半径のことになります。

ブラックホールの半径Rは、意外と単純な以下の計算式で求めることができます。

R=2GM/c2
式の中のMが質量、Gは万有引力定数、cは高速です。

物理定数のGとcの値はいつも変わらないので、ブラックホールの半径Rは質量Mに比例することになります。
例えば、太陽(質量1.98884×1030kg)のシュバルツシルト半径は約3キロ、もう少し正確に言うと約2.95キロとなります。

つまり、太陽を約3キロまでぎゅっと縮めることができれば、ブラックホールになってしまいます。
ちなみに、地球(質量5.972×1024キロ)だと、約9ミリになります。


銀河中心にある超大質量ブラックホールの大きさ

ブラックホールには、大質量星などからできる恒星質量ブラックホールと、銀河の中心部ある超大質量ブラックホールが存在することが知られています。

ブラックホールの質量と半径は比例するので、太陽の10倍の質量を持つブラックホールの半径は約30キロ、100倍の質量のブラックホールの半径は約300キロとなります。

恒星質量ブラックホールは、意外と半径が小さいと感じますね。
でも、銀河中心にある超大質量ブラックホールの半径だと、さすがにもっと大きくなります。

私たちの天の川銀河の中心にある超大質量ブラックホール質量は、太陽の約400万倍と考えられています。

このブラックホールの半径を計算すると、約1200万キロとなります。
太陽系では、太陽から一番内側の水星までの平均距離が約5790万9000キロなので、その4分の1ほどの半径です。

他の銀河の中心には、もっと質量の大きなブラックホールが存在しています。
例えば、太陽の5000万倍の質量を持つブラックホールの場合、半径は約1億5000万キロとなります。

この半径は、太陽~地球間の平均距離とだいたい同じもの。
つまり、太陽質量の5000万倍のブラックホールの大きさは、地球の公転軌道と同じくらいということになります。
さらに、質量が太陽の15億倍だと、半径がほぼ海王星の軌道と同じくらいになります。

銀河団“エイベル85”に属する銀河“ホルム15A”には、もっと質量が大きなブラックホールが存在しているようです。
この超大質量ブラックホール“ホルム15A”は、太陽の約400億倍の質量を持っていて、観測史上最大のブラックホールになるんだとか…

このブロックホールの半径は、私たちの理解を超える驚異的な大きさになるんでしょうね。


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