電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

『カルロス・ゴーン 経営を語る』を読む

2005年12月25日 19時54分37秒 | -ノンフィクション
日産自動車が経営不振に苦しみ、フランスのルノーから社長を迎えるというニュースには、ずいぶん驚かされました。Japan as No.1 の時代に書かれた『覇者の驕り』でも、日産自動車の経営の問題点が指摘されてはいましたが、それにしても新しい社長がフランス生まれでなく、レバノン生まれのブラジル育ちという経歴を持ち、コストカッターというあだ名で知られているという事前の報道は、日産自動車の将来を危ぶませるものでした。
しかし、あれよあれよという間に急速な業績回復。どんなマジックを使ったのだろうと誰でも不思議に思います。何か、他の人には気づかない独自の指標を用いて経営を分析し、専制君主のようにリストラを断行し、負債を他に押しつけて見掛けの業績回復を演出したのではないか、とさえ疑いました。しかし、徐々にそうではないことが明らかになるにつれて、カルロス・ゴーンという個人に対する関心が高まりました。
この本の前半では、カルロス・ゴーンというレバノン生まれの少年が家族とともにブラジルに渡り、中等教育をレバノンで受け、フランスで高等教育を受け、多文化経験を重ねて行く過程が描かれます。特定の文化を絶対視して押しつけることをしないコミュニケーションの秘密が明かされます。そして後半では、タイヤメーカーのミシュランに入り、ブラジルの会社再建を経験します。続いてアメリカに渡り、北米ミシュランで腕をふるいます。やがて、ルノーからスカウトされ、シュヴァイツァー会長の懐刀として日本に派遣されます。
日本における会社再建は、きわめて合理的なもので、現場とのコミュニケーションを重視し、老害ともいえる不合理な点を改め、企業活動のバランスを日産の日本人社員グループが自己組織化できる段階まで微妙に調整するやり方でした。セブン・イレブンと呼ばれたほどの猛烈な働きぶりが、巨大な会社のあらゆるところで、社員との会話に費されたという事実は、何か特別なマジックではなかったことを物語っています。
たいへん興味深く読みました。
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おいしい地酒です

2005年12月25日 14時42分25秒 | Weblog
今日は、雪も一段落したようで、曇り空の中にぼんやりと太陽が見えます。子どもの送り迎えもなし、雪下ろしの肉体労働のあと、少々お酒をいただきました。河北町という小さな町の造り酒屋「あら玉」の和田酒造から発売されている、大吟醸「名刀月山丸」というお酒です。名前は少々いかめしいが、実はこのお酒、昔風に言うと和田酒造の跡取り娘が大学で発酵学を専攻して家業を継いだ、その証明のようなブランドでもあります。跡取り娘とはいえ、赤ん坊の頃から働いている昔気質の酒造り職人たちに囲まれて、いろいろ大変なこともあるのでしょうが、こういう美味しいお酒が新たに誕生するというのは、めでたいことです。また、記事中にもありますが、職人さんの経験と発酵学のデータとが見事に一致した、というあたりは、本物の伝統技術の確かさを証明するものでもあります。
「あら玉」の和田酒造の跡取り娘さんの紹介記事
念のため申し添えますが、このお嬢さん、先ごろ結婚されたそうで、ちまたの噂ではお相手はやはり同じ学問を専攻する大学の先生だとか。めでたいことです。伝統の小さな造り酒屋の将来に乾杯。
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